REPORT
2024.05.02
2012年に声優デビューを果たした内田雄馬。彼の音楽活動はそれから6年後の2018年5月30日にシングル「NEW WORLD」でアーティストとして音楽シーンというフィールドに踏み出した彼は、そこからシングル11枚、フルアルバムを3枚、と勢力的に制作し、ポジティブなサウンドワールドで着実にオーディエンスを獲得してきた。デビューから5年。5周年のアニバーサリーイヤーを、リリース、そしてライブで彩ってきたこの1年。そこから先の活動に加速をつける日本武道館公演の模様をレポートする。
PHOTOGRAPHY BY ウチダアキヤ・釘野孝宏
TEXT BY えびさわなち
内田雄馬のアーティストデビュー5周年イヤーの締め括りとなる日本武道館公演“YUMA UCHIDA 5th Anniversary LIVE Y”。アリーナにはセンターステージから延びる花道とその先に二股に分かれた道が。そう。「Y」の文字を象った花道があり、存在感を放っていたのだ。フロアが暗転し、流れ出したのは内田の声のハーモニクスで紡ぐアカペラ曲の「Harmony of waves」。ステージに立つ彼の伸びやかな高音が会場を震わせると、そのまま「NEW WORLD」へと繋がり、ライブは幕を開けた。彼の音楽活動の“始まり”を告げたこの曲。フロアは青いペンライトが光を放ちながら、新たな世界へと駆け出すナンバーの追い風を巻き起こすように大きく揺れた。オレンジが鮮やかなMA-1を着た内田が会場を見渡せば、畳みかけるように爽快なサウンドが響く。2枚目のシングルとして2018年にリリースされた「Before Dawn」は夜明けの前の鼓動を宿すアッパーチューン。ポジティブな想いに満ちた1曲は「Speechless」へと繋がる。TVアニメ『この音とまれ!』の第1クールEDテーマとして生まれた爽やかなポップチューンはそのイントロからフロアのファンの歓喜の悲鳴を生み出した。「Before Dawn」からメドレーで紡いできたコーナーを締め括ったのは「Rainbow」だ。「Speechless」と同じくTVアニメ『この音とまれ!』の第2クールEDテーマで、鼓動を思わせる力強いビートとピアノの旋律が印象的な、軽快なナンバーだ。笑顔いっぱいに歌い上げる内田に、フロアのオーディエンスも同じく笑顔の花を咲かせた。
「皆さん、こんばんは!どうも!内田雄馬です!皆さんようこそ今夜はお越しくださいました!」と大きく手を挙げた内田。好天となったこの日。「皆さん、ここからもっと熱くなります!」と宣言した内田に大歓声が応える。「最高の1日を作ってくれますか!?」と放つと「イェーーーイ!」と声が上がり、内田雄馬の5周年を想い、ここから共に踏み出そうという決意をも共にするファンのライブへの熱が会場を席捲。その勢いと熱のままにライブは「Over」へと突入した。TVアニメ『あひるの空』の第2弾EDテーマでもあったこの曲の、疾走するビートと吹きすさぶ風のようなギターリフが響くと、フロアはヒートアップ。内田はYの文字の花道を駆け、大歓声が彼を包み込む!声を上げて歌うオーディエンスの声へ向けてマイクを向け、耳を傾ける内田の姿が印象的だった。ガラリと空気を変えたエレクトロが会場を浸食する。そう、「DNA」だ。フロアユースで都会的なエレクトロロックをエモーショナルに歌い上げ、ダンサーと共に華麗なステップで魅せる内田。ここまでの5年で内田が見せてきた多彩なサウンドワールドを鮮やかに感じさせる。続いたのは浮遊感あるミディアムなエレクトロチューンの「Image」。アーバンな雰囲気のサウンドのなかで生のドラムのビートが温もりを生み出し、内田の高音が伸びやかに美しく響いていくと、オーディエンスはその心地いいビートに体を揺らしていく。続いたのは「SOS」。ピアノの音が静かに紡がれ、内田が歌声を重ねていく。静謐な始まりからバンドの音が加わり、ゆっくり心音を刻むように会場へとリズムが届き、響くストリングスの凪ぐ風にも似たゆるやかな旋律に体を預けるように、観客はじっと聴き入っていた。
「5周年ともなるとありがたいことにシングル11枚!アルバム3枚!そんな感じで色々楽曲を制作してきたんですけど、今日はたくさんの人に内田雄馬の音楽を聴いていただこうと作っております」と語り出す内田。「内田雄馬の音楽はみんなで作りたいな、というのがあります。これからの1曲はみんなで一緒に歌いたいと思います」。そして流れてきたのは「I’m not complete」。みんなで歌いたいという気持ちを込めて作ったこの曲は、今年開催されたファンクラブイベントで練習もしてきたのだという。練習してきたオーディエンスはしっかり準備も出来ているので、初めてライブで体感する人もそれについてくれば一緒に歌える、と言う内田の言葉どおり、会場一体となって歌声を紡ぐことに。全員で1つになって楽しむ“内田雄馬のライブ”。切々と歌い上げる言葉が大きな歌のかたまりとなって日本武道館に大きく響いたのだった。感動の場面に続いたのは「ここからは皆さん、お待ちかね“内田雄馬化コーナー”をやりたいと思います!」という内田の宣言。ここからの1曲についてはスマホでの撮影が可能に。撮った動画、撮影した写真はどんどんSNSに掲載してしまおう!という時間に客席ではあちらこちらからスマホ画面の光が。撮影OKの1曲は「SHAKE!SHAKE!SHAKE!」だ。TVアニメ『怪病医ラムネ』のOPテーマであるアッパーでポップなダンスナンバーに軽快なボーカルが駆ける。うなりを上げるギターにホーンの音も重なり、ビッグバンドさながらの音が軽やかに会場を席捲していく。こんなにライブを楽しんでいる姿、スマホに収めないなんてもったいない!とばかりにカメラが向けられるステージ上の内田は、笑顔いっぱいに客席のカメラに向かって歌を放っていった。そんなダンスチューンに続いたのは、今日と言う日にこの場所に集えたことを喜ぼう!と会場全部で声を上げた「Congrats!!」。うちダンサーズも全員登場で、歓喜の歌を内田と共にパフォーマンスでも魅せた。音楽で繋がり、音楽を楽しむ。これぞ彼の“ライブ”のスタイルなのだと改めて感じさせた熱い時間だった。
盛大な拍手を受けた内田がステージから姿を消すと、スクリーンに映し出されたのは、自分の楽曲を聴きながら、前へ前へと進んでいく内田の姿。景色が変わっていき、天気も変わっていく。夜道の頭上に降り注ぐ星空、流星。楽曲と共に歩んでいく、そんな時間の経過が見え、彼とファンが共に進んできた5年という時を感じさせた。そしていつしか夜は明けていき、新たな時間へと羽ばたく内田がステージに再び立つ。鳴り出したイントロに歓声が沸き上がり、放たれたのは「I’m here」。タイトルの通りオーディエンスに「ここにいる」と告げるように、未来という大空へと羽ばたくための力強さが漲るナンバーに、内田の透き通った声が重なる。吹きすさぶ風の音が響き、そのまま荒々しくも重厚なロックンロールが轟くと、ライブは「DangeR」へ。武道館を震わせるほどヘビーでラウドなサウンドに雄々しい歌声を乗せる内田は先ほどまでの伸びやかな歌声とは違う表情をそのパフォーマンスで見せつける。続いたのは「Hope」。うなるギターリフのイントロからパワフルなボーカルで畳みかけるように歌い上げる内田。ドラマチックでエモーショナルなナンバーに大きくペンライトの光が揺れる。慟哭にも似た、アグレシッブな歌声でその卓越した歌唱力と表現力を示したのだった。
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