声優・アーティストの岡咲美保が、4月24日に2ndアルバム『DREAMING』をリリース。本作には既存曲に加え新曲5曲が収録される他、CD+Blu-ray盤にはそれまでの持ち歌・全23曲を披露した1stワンマンライブ“Miho Okasaki 1st LIVE 2024 ~キラメキブルーム~ supported by animelo”の本編映像も収録。ここ最近彼女を知ったという方にもうってつけの1枚だ。今回はそのリリースに合わせて、アルバム収録曲への想いやこだわりはもちろん、“第一章”の締めくくりとなった1stワンマンを終えた率直な心情等について、じっくり語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
――初のワンマンライブの開催から3ヵ月ほどが経ちますが、今振り返るとどんな日になったように思われていますか?
岡咲美保 アーティスト人生だけじゃなくて、岡咲美保の生涯を振り返るなかでも欠かせない1日になったように思っています。不安や緊張もすごく大きかったですけど、デビューからたくさんあった「1人でがむしゃらに」みたいな時間……皆さんには今後も見せなくていいような時間ごと、夢が現実になったこのライブの幸福感が受け止めてくれたように感じたんです。おかげで充実感や満足感・達成感いっぱいのすごくポジティブな思い出になりましたし、少しおこがましいかもしれないですけど「生きている意味が、ここにあるな」と初めて強く思えたことはすごく衝撃的でした。
――そのなかでも、あの空間だからこそ歌えた歌だったと感じたものはありましたか?
岡咲 どの曲もそうなんですけど、1曲だけ挙げるなら、2ndアルバム『DREAMING』にも収録されている「カレイドスコープ」ですね。これは自分で作詞させてもらった曲なんですけど、「歌詞が、やっとここで生きてきたな」という感触があったというか、“ライブで歌うことで完成した感”がすごく強くて。皆さんにも、私の感動やライブで発したものがそのままの熱量で届いているようにも感じました。それに、視線や手の振り方などから“私が作詞した”ということで普段から特別な存在として聴いてくださっているんだろうな……というのも感じられて嬉しかったです。
――そういった模様も、CD+Blu-ray盤のBlu-rayで全部観ることができるんですよね。
岡咲 そうなんです!“キラメキブルーム”では既存曲を全部披露させていただいたので、さらに新曲も収録した『DREAMING』は、“岡咲美保スターターセット”です!(笑)。
――そんな2ndアルバム『DREAMING』は、どんなアルバムになりましたか?
岡咲美保 前作『BLOOMING』よりもすごく主体的に制作に参加させていただいたことで、“私の好き”が色濃く出た1枚になったと思います。特に今回は、「アンビリバボーアンセム」以外は 全曲コンペのテーマ決めからさせていただいて、全曲私も聴いたうえで選んでいったので。
――曲ごとだけでなく、アルバム全体についての「どんな1枚にしたいか」というイメージもあったんですか?
岡咲 もともと2ndアルバムを作るという話にはなっていたんですけど、「その前に配信でチャレンジしていこう」というところから3曲配信シングルを出させていただくなかで、自分のやりたいことに素直になっていった……という経緯があったんです。なので今回は“私の好き”というものを大事にして、制作しながらそれを更新し続けていったような感じでした。バラエティに富んだ選曲になっていますけど、そうなったのはいろんな曲を通じて色んな私に出会ってみたいし、それを通じて喜んでくれる皆さんを見たいからなんです。
――では、まずはリード曲「スターフラワー」のコンセプトや、初めて聴いたときの印象から教えてください。
岡咲 初めて聴いたときから「“新しい私”を教えてくれそうな曲だなぁ」と思いましたし、今でもそう感じています。テーマは「岡咲美保の新曲として」という結構幅広いものだったんですけど、それなのに歌詞の修正がゼロだったくらい、今の私が歌うべき歌詞でビシッと決めてきてくださって……それはきっと、初期の頃からお世話になっている志村真白さんが手掛けられたからこそというのもあるんでしょうね。でもそれくらい私もチームのみんなも感動して、「この曲は、大事な節目で歌わせていただきたい」という気持ちだったので、“満を持して”という感じがしています。
――特に魅力的に感じたのは、どんなところでしたか?
岡咲 すごく斬新さを感じた「祝福のメッセージ」という言葉です。自分のテーマとして“可能性”といいますか、「もっと頑張ろう」みたいな気持ちをずっと持っているので、「1回立ち止まって、自分に拍手してもいいんだ」とハッとしたといいますか……。曲をいただいたときは、「『拍手できる』心境にあるかな?」と思ったんです。でも、“キラメキブルーム”をすごく楽しい時間にできた今は、すごくいい笑顔でお届けできる気がしていて。皆さんのおかげで、未来が「スターフラワー」の歌詞どおりになったような感覚もあるんです。それに、実は「祝福のメッセージ」を受け取るのは私だけだとも思っていないというか……。
――聴いてくれる方も受け取れそうですよね。
岡咲 はい。「今の自分に当てはめて、何か1つ“あ、頑張ったな”と一息つけるような時間」でもいいと思うんです。なのでそこは、皆さんに自由に受け取ってもらえたら嬉しいです。きっとライブのときには岡咲美保への祝福の空気にしていただけるんでしょうけど(笑)、みんなで一緒に進んでいきたいし、立ち止まるときも立ち止まりたい。今は「みんなで、一緒に喜びたい」という気持ちが強いです。
――その1stワンマンでの一体感とリンクするのが、ふんだんに盛り込まれたシンガロングです。
岡咲 そうなんです!そこはまさにライブを意識したポイントで、この曲はみんながいて初めて完成する曲ですし、Dメロの後の歌詞がカッコになっている部分は私の声がシンガロングに包まれた、私が「みんなの中の1人」でいたい場所なんですよね。
――そんなこの曲、レコーディングではどんなイメージを持ちながら歌われたんですか?
岡咲 私、毎回1枚絵みたいに曲のイメージがバーっと浮かぶことが多いんです。それがこの曲だと、1人でいたところに下からシャボン玉がふぁーって浮かんできて、その1個1個に「あの日の自分」とか「あのときのみんな、1人1人の顔」、「あのときのお手紙の言葉」みたいなハイライトが浮かんできて「ひとりじゃないな」と感じる……みたいな。そういう作品像に、等身大の自分でぶつかっていきました。
――そのなかで、特に大事にされたことはなんでしたか?
岡咲 その等身大さと、曲から感じる壮大な未来の両方を表現したくて……それが難しかったんです(笑)。アニメの主題歌の場合は世界観や寄り添う気持ちを読み取ることではっきり輪郭が取れるんですけど、この曲は自分事に寄り添って書いていただいたので、録っても録っても足らない気がしてしまったんです。だから未だに正解がわからない部分もあるんですけど、完成しきった歌声で録れていないところも、なんだかこの曲らしいようにも思うんです。あと、レコーディング時期が“キラメキブルーム”前だったというのもあって、節目ごとにもっともっと鮮やかに色づいていく曲になるような気もしています。
――この曲ではMVも撮影されていますが、ストーリーやテーマはどのようなものになっていますか?
岡咲 目覚めてから花瓶に刺さっているいろんな花を見て、「きれいだなぁ。でも何か足りないな」と、福寿草という寒いところにしか咲かない黄色い花を探しに行く……という物語です。それは監督さんが提案してくれたテーマでもあったんですけど、「まだ見ぬ自分に会いに行きたい」という私の気持ちにもつながったものでもあるんです。でも「今あるものがちゃんと綺麗で、そこに満足感も得ている」というのもこの曲に合うように思っていますし、家の中のシーンの他にも雪の中でお花を探しながら歩いていたりと動きも多かったので、常に「進んでいるな」という印象も強いです。
――そして、福寿草を見つけた後の終盤には、「雪原の中に1人」というシーンもあります。
岡咲 そのシーンも、色んな取り方ができるように思うんですよね。それこそ先ほどお話した「ひとりでお仕事と向き合う時間が、1stワンマンで報われた」みたいな解釈もできますし……今後もそういう楽しくも苦しくもある時間って絶対にあって、それがちゃんと足跡として残っていくのも事実だと思うので。その“足跡”が、雪原なのでよりはっきり見える……という意味合いもあります。
――さて、続いてはユズハ役で声優としても出演中のTVアニメ『THE NEW GATE』のEDテーマ「カナタボシ」についてお話しいただけますでしょうか。
岡咲 世界観が割と重めで、「覚悟」とか「深い愛」みたいなところがテーマになっていく作品なので、岡咲美保としてこの作品に曲の面からお力添えできる要素というと、やっぱりバラードかなと思ってこの曲を選びました。
――選ぶ決め手になったのは、どんなところでしたか?
岡咲 声に出したときに、一番しっくりきたことですね。曲も大切な作品の一部なので、ちゃんと「ここで生きる!」というときに歌われるべきだなと思うんです。それで言うとこの曲はメロディの運び方も心地良いですし、曲調と歌詞の言葉選びの雰囲気を踏まえると、私の歌声が合わさってより『THE NEW GATE』らしくなるように感じたんです。
――そんなこの曲は歌声も含めて、悲しさもあるけれども最後には温かく、ちょっと前を向いて終わるような印象があります。
岡咲 歌うときにもそういうイメージはありました。理想の未来を思い描くことって、結構怖いことでもあって。そうならなかったときには傷つくし、悲しいし寂しいと思うんです。だけど、それを経たDメロには「それでも信じよう ヒトツボシ」という言葉が来ていて……それが一番大切な部分だと感じたので、レコーディングでも特に大事に歌いましたし、「カナタボシ」というタイトルもそこから私がつけさせていただきました。
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