INTERVIEW
2024.05.09
2024年5月8日に、ClariSの28枚目のシングル『アンダンテ』がリリースされた。TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』のEDテーマである表題曲は、民族音楽的な要素でClariSの新境地を切り開く楽曲にもなっている。そんな「アンダンテ」のレコーディングやMV、お馴染の作家陣によるカップリング曲、久しぶりのツアーや海外イベントの話など、楽しいことが目白押しなクララとカレンのわくわくトークをお届けする。
INTERVIEW BY 冨田明宏 TEXT BY 金子光晴
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ
――まずは約半年ぶりのシングル、「アンダンテ」について伺いたいと思います。TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』のEDテーマになっていますが、作品の世界観をしっかりと引き継ぎつつClariSの魅力を盛り込んだ、素晴らしい楽曲ですね。
クララ 最初は『狼と香辛料』というタイトルを聞いた時、「どういう作品……?」って思いました(笑)。
カレン 私はスパイスに引っ張られ過ぎて、お料理系のアニメなのかなって。カレーライスみたいな感じで(笑)。
――香辛料と言えばカレーだから(笑)。
カレン でも元々やっていたアニメ(2008~2009年放送)を2人で観させてもらって、すごく素敵な世界観だなって思いました。
クララ なかなかない雰囲気の作品ですよね。あと、商売の話も新鮮でした。
――そうそう、『狼と香辛料』って実は経済についてのお話なんですよ。
クララ あのかわいらしい絵柄でシリアスなシーンがあったりして、バランスがとっても面白くて、そんなアニメに寄り添える歌になればいいなと思いながら制作しました。
――「アンダンテ」、音楽用語で「歩くような速さで」という意味ですが、改めて2人にとってどういう曲になりましたか?
クララ 今回は「アンダンテ」という音楽用語でタイトルをつけていただいているんですけど、聴いていてもホロとロレンスと一緒に旅をしているような、自分も前に進む力をくれるような楽曲になっています。ClariSの応援ソングとしても新しいパターンができたと感じていて、「頑張れ頑張れ!」というより、「ゆっくりでもいいんじゃない?自分のペースで一歩ずつ歩いてみようよ」というメッセージがたくさん込められた楽曲ですね。私もこの楽曲に助けられながら制作もしましたし、これからも寄り添ってくれるような楽曲になるだろうなと思ったので、そういう気持ちを込めて歌いました。
カレン ClariSの応援ソングの中でも一段と温かみがあるなというのを感じていて、歌っていても自分にも言っているようにも聞こえますね。現代人って目の前のことに追われてしまって、視野が狭くなることもあると思うんですけど、これを聴くと「あ、今自分はすごく焦ってるな」と気づくことができる楽曲だなとすごく思いました。アンダンテの他にも、クレッシェンドやスタッカートとか、気持ちを音楽用語で表現しているのも、すごくおしゃれだけど伝わりやすくて、すごく好きな部分です。
――これまでも「CheerS」や「Fight!!」に代表される応援ソングがあって、その雰囲気が曲調にありつつも、『狼と香辛料』の作品世界の影響を吸収して、いわゆるケルト的な民族音楽の要素が入っていますね。そして、たとえ歩幅が違っても一緒に歩んでいくというのは、2人のことを歌っているかのような感じもあって、新しく進化したClariSの応援ソングという感じがするんですよ。
クララ 1番のAメロなんかは特にホロの心境が反映されている印象がありますよね。この曲を歌ったり、アニメを観たりしていても思うんですけど、すごくホロってカレンっぽいなって(笑)。
カレン ホントに!?(笑)。とうとう人間を超え、獣人に……(笑)。
クララ 最初はそういう目線でアニメを観ていたわけでも、歌っていたわけでもないんですけど、気づいたら「あれ?これカレンだな?」みたいな(笑)。ホロとロレンスもそうですけど、そんなバディがお互い想い合っている感じが伝わるように歌えたらいいなというのは意識していました。
カレン ホロって実は神様で、最初は寂しさがあるじゃないですか。忘れられていた存在という面では、元々「アンダンテ」で描かれているような存在ではなかったんですよね。でも、ロレンスという真っ直ぐ向き合ってくれる人と出会って旅をすることによって、こういうホロになっていったんだなと思うと、この楽曲はホロの曲でもありつつ、ロレンスのおかげでこうなっていったという面も描かれているのかなと思います。
――ずっと孤独だったホロが、ロレンスとの旅の中で人間味が出てくるじゃないですか。そこも感じつつ、ClariS2人の出会いと歩みにも感じられるというのがすごく素敵なところですね。ところで、さっきカレンちゃんはホロみたいという話がありましたけど、ご自身ではどう思いますか?
カレン どう……なんですかね(笑)。ホロは長く生きているから知識も経験も豊富だけど、無邪気な一面を見せられるというギャップもすごく好きなので、似てると言ってもらえてうれしいです。ホロのような奔放さというか、無邪気さというか……自由なところはあるかもしれないですね。
クララ あとホロって決断力、洞察力がすごくあって、無邪気な部分との対比になっていると思うんですけど、そこもカレンっぽいなと私は思います。私は決断力はないわけじゃないんですけど、悩む時間が長くて。
カレン 直感派じゃないってことだよね。
クララ そうだね。でも、カレンが「これいいじゃん!」って言ったことってだいたい当たっていて、その意見に乗っかるとすごくいい方向に進むことが多いんです。そういう部分でもホロを感じますね。あと、実はすごく頭が良いところとか。
――お二人とも昔から頭も良いし勘も鋭いですよ。
カレン 自然の中で育ったので、野生の勘みたいな(笑)。
クララ 妙に鼻が利くところとかね(笑)。
――「アンダンテ」のレコーディングはいかがでしたか?
カレン すごく大変でした。
クララ 最初は難しい曲とは感じなかったのですが……練習を重ねてレコーディングに臨んだんですけど、リズム感が今までやってきた楽曲にはない変則的なところがあるんです。それに、音数がすごく多いわけではないので、そこはぴったり合わせていかないとオケに合わない部分があって。最近では一番と言っていいぐらいレコーディングに時間がかかって、何テイクも録り直しました。でも歌詞は前向きですし、歌っていて楽しいなという想いは強かったので、試行錯誤も楽しみながら気持ち的には新しい扉を開いた感じで、前向きに歌うことができました。
カレン 踊り出したくなるような、ステップを踏みたくなるようなサウンドだけど、A・B・サビでリズムが違うのもあって難しかったんですよ。サビの言葉が詰まっているところも、一人なら歌いやすくてもユニゾンで歌うことも相まって難しく感じました。でも、終わって振り返るとすごい時間かかったなと思いつつ、レコーディングの時にはそういう気持ちは消えてました。「踊るように聴こえるのはどういう言葉のリズムの取り方なんだろう」とか、語りかけるような歌詞もあったので、そこは歌うというよりもメッセージの伝え方を意識しました。今回のレコーディングは充実感があって楽しかったです。
――そういう試行錯誤の末に、ダンスのようなリズム感がありつつ、ちゃんと曲の持っている温度を伝える歌になっているんだろうなとすごく思いました。そして、この音楽の世界観を見事に表現したMV。衣装もすごく素敵でしたね。
クララ 民族衣装を意識して作っていただきました。「ClariSらしさ」の幅が広がったMVや衣装だと思いますね。見たことあるような私たちなんだけど、新しさを感じるようなMVになったと思ってます。
カレン ステージに立っている私たちというより、普段に近い私たちも出てるのかなと思ってます。いつもいっしょにいるような自然な表情がたくさん出ているMVになっているのもお気に入りです。それに今回、キャストで色々な国の方が出演してくださって、そこが「アンダンテ」らしさを出していますね。私たちだけだとあんなアイリッシュな世界観にはなっていなかったと思うので。
――あとやっぱり、フォークダンスが素敵ですね。
カレン みんなで踊ったんですけど、あのおじいちゃんは、92歳なんですよ。みんなで「大丈夫?」って言いながらやったんですけど、おじいちゃんもノリノリで「ワンツースリー、ハイ!」って(笑)。本当に近所の皆さんと踊っているくらいみんなフレンドリーだったので、初対面なのにあの温かみのあるステップをお届けできたのかなと思います。
クララ 外国の方なので日本語がほとんど通じなかったりもして、フィーリングでコミュニケーションをとりながら撮影したのが楽しかったですね。子供からおじいちゃん、おばあちゃんまでいて、幅広い年代の皆さんがいる環境で撮影したのも、映像から温かみを感じる要素だなと感じました。ソロシーンも私は子供たち、カレンはおじいちゃん、おばあちゃんと撮っていて、撮影というよりは小さい子とお話しているところをただ撮っていただいたような、自然な雰囲気でとっても楽しかったです。
カレン 年代によって歩幅は違うけど、みんな一緒になって作ったからこそ、「違う歩幅でもいい」という歌詞の意味が伝わって、MVを見ると楽曲の印象も変わるんじゃないかなと思います。
――あと、ダンスオンリーのMVも別に作られていますね。
クララ そうなんです。MV本編では私たちのダンスシーンはほとんど使われていないので、また別の世界感になっているんじゃないかと思います。楽曲に合った振りを付けていただいて、ダンサーの皆さんにも入っていただき、「マイムマイム」のようなフォークダンスになっているので、皆さんにも一緒に踊ってほしいなと思うようなダンスに仕上がっています。
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