声優の山根 綺によるライブイベント“青春のはじまり”が、4月6日、彼女の地元である横浜のライブハウス・1000CLUBで開催された。個人名義では初の音楽作品となる1st EP『青春のかなしみ』のリリースを記念した今回のライブでは、同作に収められたオリジナル楽曲はもちろん、彼女のYouTube音楽チャンネル「YAYA RECORDS」での定番カバー楽曲も披露。小さい頃から歌や音楽が好きで、高校時代には軽音楽部でギターボーカルとしてバンド活動も行っていたという彼女の、音楽への情熱と青春の歩みに触れられる特別な一夜となった。
PHOTOGRAPHY BY Miyu Takaki
TEXT BY 北野 創
この日の会場となった横浜1000CLUBは、その名の通りキャパシティ約1,000人の大きめなライブハウス。フロアは立ち見の観客がぎっしりで、開演前から熱気がすごい。やがて照明が暗転して、ついにライブが開幕……と思いきや、ステージ上手側にあるデスクに置かれた電光板が「ON AIR」と点灯し、山根がパーソナリティを務める架空のラジオ番組「FM YAYA RECORDS」がスタート。番組はあらかじめ収録された音声が流される形で、山根は「ややっほー!」と元気に挨拶すると、今回は1st EP『青春のかなしみ』を徹底的に紹介するスペシャルなプログラムであることをアナウンスする。
音声の山根が「それでは早速お聞きください」と告げると、オープニングSEと共にまずはこの日のライブをサポートするバンドのメンバー、れあい(Gt)、尋瀬ロル(Ba)、MIZUKI(Dr)がスタンバイ。そしてついに実物の山根がステージに登場して会場が沸き立つなか、ライブは開放感溢れるアップチューン「雨色スコープ」で開幕する。白地のスポーティーなウェアを纏った彼女は、ハンドマイクを手に伸び伸びと歌唱。飾らない雰囲気と、自然体で心からライブを楽しんでいる様子が、とても彼女らしい。
最後は会心の笑みを浮かべて楽曲を締めると、ポップなジングルが流れてきて再び「FM YAYA RECORDS」が始まり、音声の山根が先ほど披露された楽曲の紹介を行う。「雨色スコープ」は、この日のライブサポートを務めるほか、「YAYA RECORDS」で公開されているカバー楽曲の音源制作も手掛けるれあいが提供。観客はれあいに称賛の拍手を送る。その流れから、ラジオネーム「れあい」さんからのメッセージが読み上げられ、そのリクエストに応えて次の楽曲「のば」へ。曲始まりで実物の山根が「みなさんこんばんわー!」「最後まで楽しんでいきましょう!」と挨拶すると、ゆったりテンポのバンド演奏に乗せて、生命力を感じさせる歌声を会場いっぱいに届ける。
続いて披露されたのは、CIVILIAN/ナノウのコヤマヒデカズが書き下ろしたセンチメンタルなロックナンバー「わたしは知ってる」。先ほどの温かみを感じさせる歌唱から一転、どこかひりついた雰囲気のひたむきなボーカルが聴き手の心に真っ直ぐ突き刺さっていく。落ちサビでミラーボールにライトが当てられ、ドリーミーな光景の中で響き渡る、切なくも優しい歌と音のアンサンブルが胸に迫る素晴らしさだった。
その後の「FM YAYA RECORDS」では、なんとラジオネーム「杉田智和」さんからのお手紙を紹介。冒頭から「綺の父です」と綴ったネタ満載の内容で会場の爆笑を奪いつつ、「山根 綺さんのどんなマイナス、ネガティブも力に変える強さに、いつも心を打たれています」というちゃんとしたメッセージも。続いて歌われたのは、そのコメントの中でも触れられた楽曲、山根 綺が作詞・作曲した「青春の始まりと悲しみ」。ミディアムバラード調の楽曲と歌詞に込められているのは、山根自身が高校時代や今現在といった自らの“青春時代”に感じた/感じていること。自分自身を好きになれない気持ち、そして在りのままの自分を愛せるようになった今。そんな心の変遷を、サファイアブルーのライトに照らされながらしっかりと歌で表現していく。最後は“生きた証をここに残すよ”というフレーズをしっとりと歌って締めると、会場からは温かな拍手が巻き起こった。
そして「FM YAYA RECORDS」は早くもお別れの時間に。「エンディングはこの曲。皆さんの心の中にある青春を思い起こしながら聴いてください」と紹介して番組を締めると、山根が作詞を手掛けたEP収録曲「第5準備室」が披露される。ささくれだったギター、太くうねるベース、力強く叩かれるドラム。一層アグレッシブになったバンドの演奏に負けじと、いや、それを突き破らんばかりの熱さで、サビの一節を歌い上げる山根の姿に、ファンも「オイ!オイ!」と声を上げて盛り上がる。かつての青春を振り返りながら、その思い出を胸に今を精一杯に生き、その今すらも未来の“青春時代”にしてしまおうとする気持ち。いつまでも変わることなくみんなと青春を謳歌する、まさに“青春のはじまり”に相応しいメッセージを届けてくれた。
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