INTERVIEW
2024.04.09
4月12日に初のワンマンライブを開催するアイドルグループ・XlamV。2021年に誕生した2次元アイドルのオーディションプロジェクト「VS AMBIVALENZ」(バーサス アンビバレンツ/通称:ビバレン)から生まれたグループだ。アイドルのオーディションプロジェクトと言えばガールズグループ・ME:Iが誕生した「PRODUCE 101」などが記憶に新しいが、JO1やZEROBASEONEなどアイドルオーディションプロジェクトから誕生したグループは今や音楽シーンを席捲している。そのオーディションを2次元コンテンツで楽しむ「VS AMBIVALENZ」で、7色のカラーをそれぞれ担う2人のアイドル候補生から二者択一の投票で選ばれた7人によって結成されたのがXlamVだ。一体このプロジェクトはどのように生まれたのか。初ライブを前に総合プロデューサーに話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――「VS AMBIVALENZ」というコンテンツの始まりとローンチまでの道のりをお聞かせください。
毛利泰斗 IPを作っていく会社なので、色々とキャラクターコンテンツを展開していくなかでアイドルものをやっていきたいという想いが個人的にありました。ただ、この企画を立ち上げた2020年くらいにはすでに大小含め数多くの類似コンテンツがありましたし、完全に後発で。そうなった時に、トレンドでもあるオーディションで進めていくのはどうだろう、と思い至りました。ちょうど話題にもなっていましたし、オーディションものをキャラクターコンテンツとして実現できたらいいなと考えて立ち上げました。当時、オーディションものをやりきっているコンテンツはなかったので、ちゃんと2次元で再現できれば可能性はあると思いました。
――ほかのアイドルコンテンツも多い今、そのどれとも違う独自の魅力はどこでしょうか。
毛利 7色の担当カラーをそれぞれ担う2人のアイドル候補生から二者択一でオーディションを行うという、独自の形式や、その形式がゆえに演者さんに1人2役を演じてもらっているところがほかのコンテンツとの大きな違いであり魅力です。
――毛利さんからご覧になって、オーディションプロジェクトやサバイバル番組はどのような印象がありましたか?
毛利 熱中できる仕組みがありますよね。一体型であり、オーディションの中で展開されるドラマといいますか、ドキュメンタリーが熱量をさらに引き上げる装置にもなっていますし、投票で自分の意見を反映できるというのは今の時代に一番映えるような形式のプロジェクトだなと思っていました。生身の人間がやるからこその面白さがあると感じていたので、それをキャラクターコンテンツでどうやって再現すればいいかをすごく考えました。
――そのコンテンツの活動の場を、APPゲームなどではなくSNSを選択されたのはどうしてだったのでしょうか。
毛利 APPゲーム市場はレッドオーシャンなのが自明だったので、当時オリジナル作品がいきなり向き合う場所ではないかなという考えがあったことと、SNSはオーディションとの相性がすごく良いんですよね。投票があってリアルタイムで結果がフィードバックされるということが重要だったので、SNSを中心に対象を掴むことで、より熱狂を作っていく仕組みは上手くハマったかなと思います。
――コンテンツは2021年からスタートしました。14人のアイドル候補生が2人1組、7色の担当カラーを割り振られてオーディションを受けるところから始まりますが、先ほど「他コンテンツとの違い」の部分でもお話をしてくださったように声優は「1人2役」での表現をされています。そのアイデアはどのように生まれたのでしょうか。
毛利 二者択一のオーディション形式というのは本企画のシリーズ構成・脚本を担当されている関根アユミさんのアイデアです。これまでにもたくさんのキャラクターコンテンツに関わられてきた関根さんですが、既存のコンテンツはどうしてもキャラクター自身に投票するというよりも表裏一体であるキャラクターボイスを担当される声優さん自体の人気投票みたいになっている側面もあるのかなと思っていたそうなんですよね。僕としてもキャラクター自体を見てもらって、そのうえで自分の推しに投票してもらうという流れを作りたかったので、CVが同じキャラクター同士が1対1で戦って、得票数で勝者と敗者を決めるというふうにシンプルな構造にすることでキャラクターをよりよく見てもらえるのでは?と考えました。それに中堅を含めた今の若い声優さんたちは1人2役くらいは平気でやってのける実力を持っていらっしゃるので、2役やることは問題ないだろうと思いましたし、主要キャラクターがそれぞれ1人2役やるというコンテンツそのものが珍しいので、この形式は面白いんじゃないかなと。
――そもそも関根さんとご一緒されるというのはどういった経緯だったのでしょうか。
毛利 僕自身がアイドルコンテンツに携わった経験がなかったですし、最後発くらいでの参入だったので、このフィールドでの知見に優れているクリエイターの方とご一緒するのがいいだろうと思ったときに、関根さんが浮かびました。最も大きな決め手となったのは、ご自身が手掛けられている作品についてSNSで呟いているのを見たときの印象です。言葉の力がすごく強くて、刺さりやすいとも思ったんです。物語を作るうえで言葉はとても大切になっていきますし、言葉に力がある人がいいなと思っていたのでお願いをしました。
――キャラクターデザインをされた風李たゆ先生に関してはどういった経緯でしたか?
毛利 関根さんも風李先生も、お二人それぞれのXを見てDM経由でお願いをしました。風李先生は本当に繊細な絵を描かれますし、作家性が高いキャラクターデザイナーだと感じていて。独自のクリエイティブを作らなければとも思っていたので、それも考えたうえでお声かけをしました。
――そんな皆さんとキャラクターを生み出す際に最も意識したのはどんなことですか?
毛利 そこは物語と密接に関わる部分なので、関根さんに一任しました。それこそ性格やどういう背景があるかといったところは特にですね。僕のほうから厳密に「こういうキャラクターを作りたいです」というオーダーはなかったのですが、カラーごとそれぞれに何かしらか対になるものや、似たような部分があったりといった組み合わせの妙が出るような部分はご提案させていただきましたし、この子と組み合わせるならこういう子じゃないと面白くないよねとか、対戦相手はライバルなので、そこに燃えるような展開があったり、投票する側がやきもきするようなストーリーかという部分は僕もすごく意識してシナリオを読ませていただきました。
――担当する声優さんは指名とのことですが、2人分の声を想定しながらのオファーになったかと思います。苦労されたことはありましたか?
毛利 そこはあまりイメージしていなくて、どちらかがイメージできればもう片方もやれるだろうと声優さんに大きな信頼を寄せていました。だからあまり2役として意識はせずに、もう片方のキャラクターをどう演じるのだろうかと予測がつかなくてもアサインしていったイメージではありました。また、ハマり役を選びすぎるのも違う気がしていました。それこそ皆さん、様々な役を演じてこられていますし、あまり想定内だと面白みもないかなと思っていましたから。とにかく他コンテンツと違いが出せるように、と考えていました。例えば黄色のCUC(クック)/NAGOMU(ナゴム)役の浅沼晋太郎さんですが、NAGOMUというキャラクターはわかりやすくファンの方ならイメージもできたかと思うのですが、CUCをどう演じるだろうかという部分は誰も想像できなかったと思いますし、想定外なものを演じてもらうことは決めるときに意識しました。
――先ほどもお話に上がりましたが、本コンテンツはファン参加型のオーディションというスタイルをとっています。この形式でのコンテンツ運営での面白さはどのようなところにありますか?
毛利 一番面白いなと感じたのは「投票」です。投票は生き物だなと感じます。ドラマの展開1つ、楽曲、MVの公開1つでガラリと結果が変わりますし、票の動きも目に見えて違っていくので、最初の結果を最後まで維持したことはもちろんないんです。我々も最終結果が出るまでどちらが勝つのかわからない組み合わせもあるくらい、生き物であり、僕らもお客さんと同じくドキドキしているという緊張感を作れたので、投票システムとSNSは組み合わせとしても良かったなと思いました。
――ドラマの中でのそれぞれのキャラクターの見え方は関根さんとも綿密に相談をされたかと思います。例えば出てきた分量や見え方によっても得票に影響は大きく出るかとも思います。その辺りで懸念が出たり、悩まれたりしたことはありましたか?
毛利 本当におっしゃる通りで、平等に扱わなければならない、ということは本当に気をつけました。ドラマとしてはどうしても、どちらかの問題を解決したりどちらかがトラブルを起こしてしまうという流れが出てくる。キャラクターが14人しかいないうえに、地下にこもって14人のメンバーだけで生活をするというストーリーでしたから、誰かしらかが何かしらかの発端であり、何かを負い、課題を生んでそれを解決するという流れになると、誰かが失敗する物語構成になることは当然でした。なので平等であることは意識しつつも、物語が何よりも大事だということはプロジェクトスタッフの間でも言っていたので、「この回ではこの人の見え方が悪くなるよね」というのはどうしてもあったのですが、それもドラマとして必要ですし、その失敗も見てもらうことで魅力に気づいてくれる人がいるといいよねという感覚でやっていました。言い方は難しいですが、偏りが出ないように、限りなく平等であることを目指しながらも物語の動きや生ものでもある脚本のうえで、「このキャラクターはもうちょっとこういうふうに言わせてあげたいよね」という感じで出し引きを開けていきました。
――こうして14人の魅力が放たれていくなかで彼らの名刺代わりの1曲であるテーマソング「Go My Own Way」が誕生しました。どんな曲にしたいと考え制作を進めていかれたのでしょうか。
毛利 楽曲自体はコンペで決めました。たくさんの曲を聴くなかで自分のイメージに一番近かったのがこの「Go My Own Way」でした。制作のコンセプト的にはアイドルソングというよりもオーディションプロジェクトのテーマソングみたいな意識があったので、それにマッチしている曲だと感じました。あとは歌詞やメロディもそうですが、テーマソングだからこそ最初に流れるけれど、オーディション最終結果発表でも流れる歌なのかなと思ったので、最初に聴いた時と結果が出たうえで聴いた時に味わいが変わるような奥深い曲になるといいなというイメージでオーダーしました。
――イメージに一番近かったとのことですが、そもそもどのようなイメージを抱いてコンペに臨まれたのでしょうか。
毛利 全員歌唱曲なので、そのイメージがまずはできるかということを意識していましたし、「とにかくエモくあれ」という部分を大切にしました。ラスサビ前、落ちサビ前にソロパートがあるのですが、あそこに魅力が詰まっていると思います。オーディションプロジェクトとして14人で作っていきますし、最後にその中から7人が残るという悲哀もある。悲しい気持ちで聴いてもハマるし、嬉しい気持ちで聴いてもハマるという両方の魅力ある曲を選びました。
――オーディションのテーマ曲はオーディションが終わったあとにも投票してきた人たちにとってはずっと残る曲ですしね。
毛利 当時の記憶も思い出せる曲ですよね。つい先日改めて聴いたのですが、いい曲だなあと思いました。僕的にはオーディションのために様々なものを作っていたときのことを思い出しました。聴く人それぞれの、色々な記憶を吸収しているような曲だなと思いますね。
――そんな「VS AMBIVALENZ」を応援する“グランツ”(ファンの通称)の皆さんはプロジェクトの始まりからどんどん増えていきました。その様子をご覧になっていてどのようなことを感じていらっしゃいましたか?
毛利 オーディションプロジェクトなので、応援する声はしり上がりに盛り上がりが作られていくだろうと思っていましたが、実際にそうなっていきました。中間結果発表が出てドラマも佳境に入っていくにつれて、グランツの皆さんの声も高まっていった印象があります。あとはやはりコロナ禍で誕生したコンテンツではあるので、SNS中心に展開してきてはいましたが、後半はイベントも開催したり、アニメイトさんでフェアをやらせていただいたりと、リアルでもお客さんが触れ合えてコミュニティが生まれてきた感がありましたし、日を追うごとに熱量の高まりは感じていました。
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