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INTERVIEW

2024.04.12

【特集】She is Legend 2ndアルバム『春眠旅団』:プロデューサー・麻枝 准 インタビュー 前編/新アルバムの魅力、今作への想いに迫る

【特集】She is Legend 2ndアルバム『春眠旅団』:プロデューサー・麻枝 准 インタビュー 前編/新アルバムの魅力、今作への想いに迫る

ドラマチックRPG「ヘブンバーンズレッド」(以下、「へブバン」)が2周年を迎えた。XAIと鈴木このみという、タイプの違う超強力な二大ボーカルを擁するラウドロックユニットのShe is Legend は、リアルバンドとして精力的にツアーを行い、現実でも存在感を発揮している。2ndアルバム『春眠旅団』のリリースを機に、今作の音楽のキーパーソン、全楽曲の作詞・作曲を手掛けるプロデューサー・麻枝 准に改めて今作への熱い想いを語ってもらった。前編ではその新アルバムの魅力を掘り下げる。

【特集】She is Legend 2ndアルバム『春眠旅団』

INTERVIEW & TEXT BY 前田 久

「春眠旅団」――“化け物みたいな曲が生まれた”手応え

――アルバムのタイトルであり、リードトラックの曲名でもある「春眠旅団」という言葉はどこから?

麻枝 准 そもそもはタイトルの前に、2ndアルバムのジャケットのコンセプトを決めなくちゃいけなかったんです。1stは「みんながスーツを着てたらカッコいいじゃない!」と自分が発案してサッと決まったんですけど、2ndはどうしようかと。31Aの6人を描いてもらうことは決定だとしても、コンセプトがないことには発注できないですからね。そこでふと、あの6人が春の桜吹雪の中を旅をしているような、そういうジャケットだったらいいんじゃないかな?と思いついたんです。

――まずはそんなビジュアルイメージから。

麻枝 1stアルバムのタイトルが『Job for a Rockstar』と思いっきり英語だったので、テイストを変えたかったんですよね。それで四字熟語がいい、しかも見たことがないような……と考えていき、「春眠」と「旅団」を合わせた造語はカッコいいんじゃないかな?と思い付いて。1stとガラリと印象が変わるし、少しアジアンテイストも入る。

――そして、そこから楽曲の制作に。

麻枝 そうですね。でも、曲は先にあったんです。ストック曲の1つで、これは書いたときに自分の中で「化け物みたいな曲が生まれた」と感じたんですよね。ラジオ番組「ヘブンバーンズレディオ」で、XAIさんと鈴木このみさんも同じようなことを話していたみたいですが。書き上げたときに自分でも興奮して、とにかく早く世に出したかったんですけど、しばらくゲームでこの曲に合う適正なイベントがなかったんです。だったら、2ndアルバムのリードトラックにしたらいいんじゃないか?と。そこで、思いついた「春眠旅団」という言葉にふさわしい歌詞を書いて、完成……みたいな流れですね。

――「化け物みたいな曲」という手応えは、どの辺りで感じたんですか?

麻枝 『Love Song』という、今でも自分のコアなファンの間ではそれが一番の名作だ、どのシナリオより、どの曲よりも名盤だとされているアルバムがあるんですけど(笑)、それに収録されている「僕らの恋」という曲のアップテンポバージョンみたいな曲ができたなと思ったんです。特にブリッジのところ。ピアノのコード進行が変わらずにしばらく曲が進んで、いきなりコード進行がぐわっと動き出すと、同時に何か物語が動き出したように思える。そこに手応えを感じましたね。……あ、そうだ。もう1曲、神聖かまってちゃんの「23歳の夏休み」にも似てるなと思っていて。神聖かまってちゃんの曲の中でも、「ロックンロールは鳴り止まないっ」と「23歳の夏休み」が特に好きなので、そういう意味でもすげえ良いなと思いました。

――「ヘブバン」絡みの曲だと「銀河旅団」という曲もありますよね。この楽曲との繋がりはないんですか?

麻枝 あ、全然ないです(笑)。どちらかというと、この言葉を思いついたときに自分の中で思い浮かんでいたのは、平沢 進さんの「バンディリア旅行団」でしたね。でも「旅行」はちょっと具体的すぎるので、「旅」がいいなと思って「旅団」にしました。

She is Legendでしか聴けない言葉、面白い歌詞を書くためのこだわり

――今作に収録された楽曲を書くうえでは、1stアルバムの収録曲を書いたときとの意識の変化はあったのでしょうか。

麻枝 やっぱりShe is Legendがツアーを行ったこと、この影響がすごく大きかったです。「ライブだとこういう反響があるんだ」とか、「2人はこういうパフォーマンスをしてくれるんだ」というのがわかったことで、最初からライブで2人が歌うとどうなるかを念頭に置いて曲を書くようになりました。そこに観客がどう参加できるか、どう楽しむだろうか、今はそんな想像をしながら曲を書いていて、そこが明確に変わったところですね。

――なるほど。

麻枝 1stフルアルバムは「“She is Legend”とはこういうものですよ」という名刺代わりの1枚だったんですけど、今回は挨拶が終わったあとですしね。結構バラエティーに富んだ曲が揃ったかなと感じています。曲の構成もそうですし、コール&レスポンスができたり、みんなで踊れたり、きっと振り付けがつくんだろうなと思える曲もあったり、色々楽しんでもらえるんじゃないかな。問題は作詞のほうで、こっちは逆にどんどんとワードが被り出してきてまして。手癖で書くと、やっぱりどうしても被るんですよね。“何かを置き去り”にしたり、“瞳の奥が燃えて”いたり……(笑)。

――あはは(笑)。

麻枝 「もっと違う、新しい何か、出てこい!自分の中から!」……って、言葉を探す作業に結構苦労しています。もう「ヘブバン」だけで50曲くらい書いてますからね。過去の歌詞と被ってないことを確認するための、専用のチャンネルをスタッフとのSlack上に立ち上げたりしましたよ。

――そんな仕組みも作ったんですね。

麻枝 曲は自分でわかるんですけど、作詞は自分だと「これ、前にもあったっけ……?」みたいなことになりがちですから。「ヘブバン」だけじゃなく過去作も合わせると、何百曲と作詞してきているので、作詞は本当にどんどん大変になってきている感じです。

――「リスアニ!Vol.49.2 Key音楽大全」でお話を伺ったときも作詞のご苦労を話されていて、「ヘブバン」でバンドメンバー6人全員が歌詞を持ち寄り書く設定にしたのは、単一人物の視点で歌詞を書き続けていくとワードセンスが限られてしまうから、それを回避するためだった……みたいにおっしゃっていましたが、それでも……。

麻枝 やっぱり大変になってきましたね(笑)。作詞の本を買って読んだりもしてみましたけど、考え方の話だったので全然参考にならなかったんです。これだったら語彙や表現の辞書みたいな本を買ったほうがよかった。でもまあ、自分がシナリオを担当していないイベントストーリーだったら、その担当やディレクターに作詞のキーワードをもらうことで言葉を増やしたり、イベストのシナリオを読むことで新しくひらめくものがあったり、そういうヒントは上手く拾いつつやっています。……でもやっぱり「ところどころ、あっ、被ってた!」みたいなことは、どうしてもありますね(笑)。

――それだけのご苦労があるからでしょうけど、本当にユニークな飛躍が多い歌詞ですよね。このフレーズからこのフレーズに繋がるのか!みたいな面白さがある。

麻枝 ああ、面白い歌詞を書くことは心がけてますね。「なんだこりゃ!?」っていう、自分にしか表現できない歌詞を書こう、と。どこかにある、聞いたことがある、それだったら別のアーティストの曲を聞いてればいいじゃん!じゃなくて、She is Legendでしか聴けない歌詞を書くことは、めちゃくちゃ意識しています。

次ページ:ツアーを経たShe is Legendの成長

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