REPORT
2024.04.09
2020年、4年前の春に準備をしたものの開催が叶わなかった『A3!』の春組単独イベントから時を経て、「MANKAIカンパニーpresents “Spring Party!” 2024」が3月16日に開催された。家族のような温かな絆で結ばれた陽だまりのような春組6人は桜の季節がよく似合う。まだ満開とはいかないタイミングではあったけれど、冬来たりなば春遠からじ。春組は会場を春の陽気でいっぱいにした。そんなイベントの、マチネ公演をレポートする。
TEXT BY えびさわなち
MANKAI劇場を思わせる深紅の緞帳に掲げられたカンパニーロゴ。MANKAIカンパニーの春組によるファンミーティングが開催されたパシフィコ横浜のステージに開演を知らせるブザーが鳴ると、スポットの中に春組6人の姿があった。
「お待たせしました!本日はMANKAIカンパニー春組のファンミーティングに来てくださってありがとうございます!」とリーダーの佐久間咲也の声が響くと、碓氷真澄、皆木 綴、茅ヶ崎 至、シトロン、卯木千景が挨拶をしていく。このイベントに向けての想いなどを語らう6人。そんな朗読劇で幕を開けた「MANKAIカンパニー presents “Spring Party!”2024」は、これまでにも開催されてきた『A3!』のイベントの中でも初めての組ごとでの単独イベントとなる。本来、2020年の春に初開催を予定していた春組単独イベントは、コロナ禍の影響で配信生放送となった。あれから4年の時を経ていよいよ開催となった期待度の高いイベントであり、本コンテンツの大きなイベントとしては2022年のブルライ(「A3! BLOOMING LIVE 2022」)以来ということもあり、会場にはたくさんの観客の姿が。そんなオーディエンスの熱気がゲームリリースから7年を経てもなお高い『A3!』の人気を証明していた。朗読劇内では、会場とステージとでコール&レスポンスをし、フロアを温めるメンバーたち。「こういうのって、いつも夏組が担当だから新鮮だね」と至の言葉に観客の声にも熱が帯びた。
朗読劇とコール&レスポンスによって会場の空気が温まったところで、ここからはゲームのユーザーである“監督”と劇団員を演じるキャストとの時間に。咲也役の酒井広大から順に、真澄を演じる白井悠介、綴役の西山宏太朗、至役である浅沼晋太郎、シトロンを演じる五十嵐 雅、千景役の羽多野 渉が自己紹介をしていくと、それぞれの挨拶に大きな拍手と歓声が沸く。4年もの間待っていたファンとメンバーたち。イベントが中止となり生放送となった2020年には「それぞれが別の部屋から配信に参加したよね」と羽多野が思い出の口火を切ると「この4年の間に骨折しまして……」とこの日はまだ治療中の骨折を抱えた白井がその現状を笑いに変える。「え?4年掛けて骨折?」と西山がツッコミを入れると会場には笑い声が溢れる。仲の良い家族のような春組の空気を、冒頭から届ける彼らに会場は春のような陽気に包まれるようだった。
3階席まである、と上部の客席を見上げると、五十嵐が「3階席―!2階席―!フロア全体―――っ!」と呼びかけ、その都度対象階層のオーディエンスがペンライトを振りながら「はーい!」と声を上げ、最後は「春組―――!」の声にステージ6人で「はーーい!」と大きく手を上げた。その姿にほっこりとしたパシフィコ横浜。さらにこの瞬間の気持ちを語らうメンバーたち。なかでもゲーム内ではその本性を“監督”たちに知られている茅ヶ崎 至の、MANKAIカンパニーの役者としてファンの前に立つ表向きの姿を朗読劇で演じ続けていた浅沼は「あんなに長く猫被りバージョンの至を演じることがないので、緊張した」と話すと「誰もつっこまないんだよね(笑)」と羽多野も思わず笑ってしまう。ユーザーである監督たちはわかっているだけに、朗読劇の間も笑い声が漏れてしまっていたのもまたアットホームな春組らしい瞬間だった。
酒井のMCがめちゃくちゃスムーズだ、と言う西山に「今日は春組だから(スムーズ)なんです」と酒井。家族と一緒だからだ、と言う。ほかのメンバーがいると緊張してしまうとか。そんな酒井がMCとしてコーナーを展開していく。まずは「春組公演トークショー!」だ。これまでの春組の公演を振り返りながら、マチネでは好きな公演曲を発表していく。ここまで春組は10公演を上演しており、新生春組旗揚げ公演『ロミオとジュリアス』から第十回公演『ムーン・トラベラー』までを語り合うメンバー。まずは千景役の羽多野。挙げた公演曲は第四回公演『エメラルドのペテン師』の「嘘つきは魔法のはじまり」だ。「最初にやらせていただいた主演ですし、綴が書いてくれた脚本に当時の千景らしさがたくさんあって。乗り越えていかなければいけない壁みたいなものに本人も気づいていない。初めてお芝居の魅力や奥深さに千景が触れたので、自分としてもとても印象深いです」と話す。そこから準主演の咲也役・酒井と共にブルライ(「A3! BLOOMING LIVE 2019」)で歌ったときの思い出も絡めて、楽曲への想いを語った。
続いてシトロンを演じる五十嵐は第六回公演『春ケ丘Quartet』の公演曲「はじまりはカルテット」をセレクト。「本当に個人的で申し訳ないんですけど、この曲が好きなんです。シトロンにとってもほかのメンバーにとっても素敵な曲はあるんですけど、やっぱり主演がシトロンですし、この曲を聴くと春のシーズンに一歩踏み出すことをためらっている人の背中を優しくそっと押してくれるような曲だなとすごく思っていて。教室のシーンが目に浮かぶような旋律を(白井と)2人で奏でた思い出がギュッと詰まった曲」なのだそう。準主演の真澄を演じる白井と共にここでもライブの思い出が語られた。
続いたのは浅沼と白井。なんと二人の選んだ楽曲は同じだったという。それは第二回公演『不思議の国の青年アリス』の公演曲「ワンダーランド・ア・ゴーゴー!!」。「物語の話で言うと、至と真澄がやっと始まった感じがします。主演と準主演をやらせていただいて、今では軽口をたたき合う感じになれたのもこの曲がスタート地点だと思っています」と浅沼。さらに公私にわたって仲の良いシンガーソングライターの大石昌良が作った楽曲ということ、そしてタイトルは浅沼が作った舞台のタイトルをもじったものだったことも思い出深いという。準主演の白井と共にキッズダンサーを交えてのライブの様子も楽しく話して聞かせる。そんな白井は「曲調がすごくポップで明るいのは、それまでの真澄のイメージにはまったくなかったので、すごくギャップが見える曲だなと感じています。“らんらららららん♪”って言うと思わないじゃないですか。真澄が。普段からしたら想像ができないから、そういうギャップを感じられるのも楽しいなっていうのもあって、選ばせていただきました」と話した。
続いて発表したのは、すべての公演の脚本を担う綴を演じる西山。「僕が選んだのは『思い出のねじ巻き』です」と第三回公演『ぜんまい仕掛けのココロ』の公演曲を挙げた。「これが大好きなんですよ。泣けちゃうんですよね。そもそもの公演の世界観や、ストーリーの雰囲気も好きですし、この楽曲自体の三拍子の独特のリズムの取り方だったり、楽曲の雰囲気が本当にカッコよくて。ブルライで初めてやらせてもらったときには雅さんと2人で何回も練習しました」と話すと、準主演のシトロン役・五十嵐とブルライの思い出話に花を咲かせた。
最後は酒井。「僕も本当に悩んだんですよ。『思い出のねじ巻き』も好きだったんですけど、やっぱり……」と前置きをすると、旗揚げ公演『ロミオとジュリアス』の「僕らの絆」を挙げた。「これは外せない。新生MANKAIカンパニー自体の最初の公演で。演じることは楽しくて、やってみたいという気持ちはいいけれど、現実問題として人が足りなかったり借金を抱えていたりとか色んな問題を抱えているなかで紆余曲折あって『ロミオとジュリアス』という旗揚げ公演に辿り着くことができて、大成功した結果そこからあとの夏組や秋組、冬組に繋がっていくという最初の物語の楽曲です。皆さんの力や協力があってこその公演曲です」と真っ直ぐな想いを口にする。最初のブルライで披露されたこの曲。声優として初めてのライブだったという酒井にとっては忘れられない1曲なのだと語った。じっと聞き入るオーディエンスも思い出を共に辿る、そんなコーナーとなった。
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