【北川勝利・藤村鼓乃美 ボーダーズの“音の場” season3】#9 両国～蔵前編

ボーダー柄の服をトレードマークに、ユルくマジメに音楽と向き合うコンビ――。“ボーダーズ”こと北川勝利と藤村鼓乃美が贈る「ボーダーズの“音の場”」。今回巡る両国駅から蔵前駅。相撲好きの方ならピンとくる、そう両方とも国技館の町なのです。ロケのタイミングでは本場所は開催されていませんでしたが、おふたりは相撲に興味津々のようで……。

PHOTOGRAPHY BY 山本マオ　INTERVIE ＆ TERXT BY 田中尚道

――近況をお伺いしましょうか？

北川勝利　最近はずっと花澤香菜ちゃんのアルバムを作っています。4月発売なので今、追い込みですね。空間オーディオというのがあって、apple musicに搭載されているんですが、アルバム全曲を対応させると言うことで、その勉強をしながらという感じです。

――それは北川さんが直接指示をだされるんですか？

北川　僕が直接というよりエンジニアさんと相談しながらですね。普通の曲としては完成しているんですが、空間オーディオ対応に向けて試行錯誤しています。それと前回に引き続きアナログ盤を出すので、その準備も同時進行です。

――空間オーディオは対応のオーディオセットでなくても聞けるのでしょうか。

北川　Air Podsなど対応するデバイスが必要なようです。音の場所が立体的に配置されているそうなんですが、それをどう表現すればいいのか、まだ正解が見えていないと言いますか。

藤村鼓乃美　Air Podsで聞いているとそれになっていることがあって、首を振っても音の場所が変わらないんです。

北川　ライブ音源の5.1ch化は、周囲のお客さんの音とかがあってわかりやすいんですが、スタジオ録音のものはどうすればいいのか。音をぐるぐる回した方が楽しいだろうかとか、あんまりやるとやり過ぎじゃないかとか。

――藤村さんは？

藤村　北川さんの作っているアルバムのコーラスに参加したり、門前仲町～清澄白河編の時にお話しした私が作詞している「星芥ショータイム」の曲が全曲リリースされました。10人×3曲の30曲あるので、ぜひ聞いてください！

北川　フジムラップも入ってるの？

藤村　フジムラップは全体曲です。

北川　30曲って、1曲が短いんでしょ。

――最近はTikTokで使いやすいように短いセンテンスの曲を作るのが流行っているみたいですね。最近だと『マッシュル-MASHLE-』の2ndシーズンのOPテーマ、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」がアジア圏を中心に世界中でバズってますが、あれもTikTokを意識しているとか。

北川　TikTokを意識するってみんな言うよね。TikTokでバズるようにとかよく言われるけど、それがわかって作れれば苦労はしない。

藤村　踊ってる奴ですよね。昔、事務所の後輩だった川島零士（君）が『マッシュル-MASHLE-』に出演していて躍っていました。

――いい曲だとは思うんですが、世界中ですごくバズっていると言われると、そうなのか……とついていけなくて少し寂しい。

北川　そうなんですよね。どうしたらいいんでしょう？という悲しい話から本日のロケですが。

――フリをありがとうございます。本日は、改装中の江戸東京博物館から、すみだ北斎美術館に向けて歩きました。北斎美術館の前が緑町公園という公園になっていますが、あの場所は、津軽藩の上屋敷跡であり、葛飾北斎の生誕地であり、ボーダーズでも時々話題に上がる「風雲児たち」の幕末編に登場する江川太郎左衛門の屋敷跡でもあります。さらに公園が面している北斎通りと言われている道が昔は掘割で、本所の七不思議のひとつである置いてけ堀の舞台です。緑町公園のわきに相撲の神様である野見宿禰を祀った神社があり、そこに歴代横綱の碑がありました。

北川　そのあと北斎の像を見ましたよね。あれは？

――それは北斎の旧居跡とされる信用金庫の脇にあったものですね。北斎は引っ越し魔だったそうで、そもそも長生きではあるのですが、生涯に90回以上引っ越しをしたのだそうです。その中で、榛稲荷神社のそばに娘のお栄さんと住んでいたという記録があってのものです。杉浦日向子原作のプロダクションI.G.作品に『百日紅』というアニメがあるのですが、ここでも描かれています。旧居跡から両国駅に戻るときに北川さんはお知り合いに会われてたようですが。

北川　ノーナ・リーヴスっていうバンドの奥田（健介）君です。ギタリストなんですが、坂本真綾ライブとかではいつも弾いてもらっていて。パン屋の前でばったり。

――北川さんがパン屋に寄られて、出てきたところで丁度でしたからね。

北川　両国に横綱パンっていうクリームが入ったアンパンがあるんですが、それを昔食べたことがあって、あるかなと覗いて出てきたところで腕を掴まれて。ちなみにアンパンは売り切れでした。

――そこから七不思議の舞台のひとつである椎木屋敷、その隣の刀剣博物館、旧安田庭園と周りました。

北川　刀剣博物館はやってなかった。

――企画展をまとまった期間開催してそのあと休業してしばらくしてからまた展覧会というスタイルで、僕もあまり開いているところを見たことがありません。旧安田庭園の敷地にあるのですが、旧安田庭園は墨田区立で、これまでの庭園と違って入場無料でしたけどいかがでした？

北川　これまでの庭に比べるとこじんまりしてました。

藤村　すごく整備されている印象です。

――墨田区はお金持ちなのか町に遺構の説明板も多いですね。

北川　確かに。ネタはたくさんありますもんね。

藤村　前回と今回は説明板めがけていくじゃないですか、そうすると一緒に見ている人が多かった。今までは道行く人に「なにやってるんだろう」って見られることが多かったんですが。

北川　なんでそこで写真撮ってるの？って感じだったけど。確かに今日はほかにも来ている人がいて、移動するとその人たちも一緒になってた。

――説明板に数字が振られていたんですが、あの数字の通りに見ていくと、北斎コースとか忠臣蔵コースとかのテーマ別のモデルコースになっているんです。

北川　公園を一周して、そこから？

――関東大震災と東京大空襲の慰霊堂があった横網町公園ですね。

藤村　青春してたところだ。

北川　そうそう。

藤村　ちょうどロケ日がバレンタインデーで、チョコを渡している高校生がいたんですよ！

北川　藤村とカメラマンさん、すごい盛り上がってたよね。

藤村　行き場もなくふたりでひと区画を歩きながらしゃべりっていう感じで。

北川　公園を出ると帰宅途中の男子高校生の一団がいて、なかなか帰らないのはチャンスを夢見ているのだろうかと、勝手なストーリーで盛り上がってた。

――あそこはもともと軍服などを作る陸軍被服廠があったんですが、それが手狭になったので引っ越すにあたり当時の東京市が公園にする計画でした。その公園の建設の最中に関東大震災が起きて、広めの空き地だったのでみんなが避難してくるのですが、家財道具や布団などを持って逃げたのでそれに火が燃え移ってたくさんの人が亡くなりました。その後太平洋戦争末期に本所深川は東京大空襲で焼け野原になるのですが、その時にの遺体があそこに仮埋葬され、その後身元不明の遺骨とともに慰霊堂に納骨されたそうです。

北川　火災の熱で溶けた鉄とか沢山置かれてた。でも今はいい公園になっていて、その置かれた遺物で幼稚園児たちが楽しく遊んでたりしていて、それも良かったな。そのあと橋？