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INTERVIEW

2024.04.03

山根 綺、日本武道館ワンマンを目標に掲げ1st EP『青春のかなしみ』でアーティストデビュー!YouTubeの音楽チャンネル「YAYA RECORDS」、そして音楽に対する真っ直ぐな想いを語る。

山根 綺、日本武道館ワンマンを目標に掲げ1st EP『青春のかなしみ』でアーティストデビュー!YouTubeの音楽チャンネル「YAYA RECORDS」、そして音楽に対する真っ直ぐな想いを語る。

「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の緋田美琴役をはじめ、多数の人気アニメ/コンテンツに出演する声優の山根 綺が、自身名義では初の音楽作品となる1st EP『青春のかなしみ』を4月3日に配信リリースした。2023年にYouTubeの音楽チャンネル「YAYA RECORDS」を開設してカバー動画の投稿を開始、同年11月にはカバーライブを開催するなど個人での音楽活動にも精力的に取り組んできた彼女。“青春”をテーマにした今回のEPには、自身が初めて作詞・作曲を手がけた楽曲を含む5曲のオリジナル曲を収録し、アーティスト・山根 綺として表現したいもの、届けたいメッセージが詰まった瑞々しい作品になっている。今まさに新しい“青春”をファンと共に謳歌している彼女が、この活動にかける想いとはどんなものなのか。アーティストとしての初インタビューで迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

音楽チャンネル「YAYA RECORDS」の活動がもたらした成長と気づき

――まずはYouTubeの音楽チャンネル「YAYA RECORDS」についてお聞かせください。2023年から様々な楽曲のカバー動画を公開してきて約1年になりますが、当初はどんな気持ちで始めたのでしょうか。

山根 綺 実は小さい頃からアーティスト活動をやってみたい気持ちがあったので、マネージャーさんから音楽活動のお話をいただいたときは、二つ返事で「やります!」と応えました(笑)。最初はキャラクターやコンテンツの力を借りていない“山根 綺”という人間に、どれくらい興味を持ってもらえるか自信が持てなくて、いきなりオリジナル楽曲を発表するのは不安だったので、カバー動画から活動を始めて土台を作っていくことにしたんです。色んな楽曲のカバーをすることで、自分の歌のイメージも掴みやすくなると思ったので。

――カバーの選曲も、YOASOBI「アイドル」やmilet「Anytime Anywhere」といった話題のアニメ主題歌から、Vaundy「踊り子」や藤井風「花」といった近年のJ-POPの人気曲、ZONE「secret base~君がくれたもの」などの少し懐かしいナンバーまで、幅広いですよね。

山根 そうなんです! J-POP中心の選曲にしたのも、もちろん私がJ-POP好きというのもあるのですが、いわゆる「声優のアーティストデビュー」とは違った印象を持ってもらいたくて。他にも、歌ってみた動画はマイクの前で歌う画角が主流だと思うんですけど、YAYA RECORDSでは私が六畳一間のお部屋でカメラに向かって歌うシチュエーションで、カメラも自分で録画をスタートして止める演出が中心になっています。多分、今まであまりない形だと思います。

――どの動画も、山根さんが実際に自分のお部屋で歌っているような映像に仕上がっていて、距離感の近さを感じられるのがいいなと思います。

山根 ありがとうございます!でも、最初は私もお部屋で歌いながらどう動けばいいのかわからなくて、この1年、監督と色々と試行錯誤しながら作ってきました。それこそカメラ目線になる回数や長さも、現場ですごく相談しながら撮影していて。(カメラを)見過ぎるとアピールしている感が強くなってしまいますし、見なさ過ぎだと(動画を)観てくださる方を置いてけぼりにしてしまうので、正面や横、下を向くタイミングや量もバランスよく調整しながらやっています。それが親近感に繋がっていたらいいなと思います。

――同じお部屋でも楽曲によってシチュエーションや動きのバリエーションが違っていて、すごく工夫されていますよね。

山根 最初の頃はどんな動きをするかアイデアをご提案いただいて、私がその動きをやってみるパターンが多かったのですが、「ソラニン」(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の頃から私が「こういう動きはどうですか?」と提案することが増えました。「ソラニン」の間奏で私が寝ながらギターを弾いているカットや、「燈」(崎山蒼志)で最後に灯りを1つずつ消していく演出も、自分のアイデアを汲み取っていただいたもので、この1年で「もしかしたら山根にもクリエイティブな部分があるのかもしれない……!」と自信を持てるようになりました(笑)。

――ちなみに今までの動画の中で、山根さんが普段自分のお部屋で過ごしている雰囲気に一番近いのはどれだと思いますか?

山根 それはいい質問ですねー!でも、どれだろう?……あっ、「愛を伝えたいだとか」(あいみょん)だと思います。あの動画は朝っぽいシチュエーションで撮っていて……あれ?でも私、朝ご飯は食べないので違うかも。

――朝ご飯のことはとりあえず置いておきましょう(笑)。

山根 であればやっぱり「愛を伝えたいだとか」ですね。私はお部屋ではごろごろしていたり、忙しなくしていることが多いんですけど、この曲は最後に私が撮影を止めずに、服を選んでバーッと画面からはけていくんですよ。その忙しない感じが普段の私と結構似ている気がします。朝はいつも時間がなくて、家に出る時間の15分くらい前に起床する日もあるくらいで。

――起きるのが苦手なんですか?

山根 そんなこともないんですけど、寝るのが好きなので、ギリギリまで寝ていたいんです。あまりメイクもしないし……本当にすみません。

――なんで急に謝るんですか(笑)。

山根 もっとちゃんとした格好をしろっていう感じなんですけど、カチッとした格好をしていると気が張ってしまって緊張しやすくなるので、フラットでラフな服装が好きなんですよね。

――でも、そういうところが、YAYA RECORDSの自然体な雰囲気に反映されているようにも思います。

山根 うんうん、そうかもです。それとYAYA RECORDSを始めて良かったなと思うのが、アニメやコンテンツを通じて私に興味を持ってくれた方が、YouTubeで私の歌を聴いてくれるんですよ。それがきっかけで私のライブに足を運んでくださる方もいらっしゃって。今までにない反応で嬉しいですし、最近は少しずつ積み重ねてきたものが形になっていることを実感しています。

“青春の始まりと悲しみ”、そのすべてを包み込むような1枚に

――YAYA RECORDSを始めるまでの音楽遍歴についてもお伺いしたいです。動画やライブではギターを弾くこともありますが、楽器経験は元々あったのですか?

山根 小さい頃に3年くらいピアノを習っていたのですが、年1回の発表会がすごく苦手で、弾く楽曲も自由に決められなくて、クラシックの楽曲ばかりだったので、それがハマらなくて辞めてしまったんです。でも音楽や歌うことはずっと好きだったので、高校生の時に軽音楽部に入ってギターを始めて、そこでギターボーカルを3年間やっていました。男性ボーカルの曲をコピーするときはベースの男の子が歌うから楽器を交換していたので、ベースも少しだけ触っていたことがあって。この業界に入ってからも、『SHOW BY ROCK!!』という作品でルフユというドラマーのキャラクターを担当して、そこでドラムを3年ほどやっていました。

――バンド周りの楽器は一通り経験があるんですね。ちなみにその頃はどんな音楽を好きで聴いていたのでしょうか。

山根 東京事変さんが大好きでした。ただ、私が知ったのは解散寸前のタイミングだったので(※東京事変は2012年に活動を終了。その後、2020年に再始動した)、もう少し早く知っておけばライブに行けたのに!と強く思っていました。あとはRADWIMPSさん、ELLEGARDENさんみたいなゴリゴリのロックが好きで、9mm Parabellum Bulletもよく聴いていました。人生で初めてライブ参戦したのが、高校生のときに観に行った凛として時雨さんの武道館公演で、そのとき「また観に来たいな」という気持ちよりも「私もここに立ちたい」という気持ちのほうが強かったんですよ。だから私はずっと(アーティスト活動を)やりたかったんだと思います。

――それでYAYA RECORDSでは「六畳一間から武道館を目指す」というスローガンを掲げているんですね。山根さんは声優のお仕事でもキャラソンの歌唱やライブの経験が豊富ですが、それが今の音楽活動に繋がっている部分はありますか?

山根 ないです(笑)。というのも理由が明確にありまして、私は(声優の仕事で)私として歌ったことがないんですよ。例えば「アイドルマスター シャイニーカラーズ」であればシーズの緋田美琴として歌いますし、「ウマ娘 プリティーダービー」であればダイタクヘリオスとして歌うので、キャラクターを背負っていると、やっぱり1人じゃない感覚があって。隣に演じているキャラクターがいてくれているような、2人いるくらいの感覚があるので、1人で歌ったりステージに立つときも寂しさを感じないですし、私はいかにキャラクターの力を借りているのかをすごく感じるんです。それこそキャラソンでリズムやピッチが取りづらい曲があったとしても、練習では全然できなかったのに、「もっと〇〇らしく歌ってみて」と言われてキャラクターを纏うとすんなり歌えたりするんですよ。山根はできなくても、その子(キャラクター)ならできる。きっと周りの人から見たら「いや、同じ人じゃん」ってなると思うんですけど、自分の感覚は全然違います。

――ということは、声優さんがアーティスト活動を始めるときによく、自分自身の歌声がわからなくて悩むというお話がありますけど、山根さんもそういう部分で苦労されたタイプでしょうか?

山根 はい。私も「自分の歌って何だろう?」というところから始まったので。「私が私として歌ったらどんな表現になるんだろう?」というのは常に模索していて、今でも「これは私なんだろうか?」と思う瞬間がありますし、自分で練習しているときも、自分が演じているキャラクターっぽさが出ると「これは違うかも」って思ってしまうんですよ。その意味では、私はまだ本当の自分を探している最中なのかもしれません。

――そういった模索の成果が表れているのが、今回の1st EP『青春のかなしみ』なのかもしれないですね。

山根 今回は、もちろん伝えたいものはあるのですが、「こうだよね」という押しつけはしたくなかったので、結構フラットに歌いました。キャラソンではキャラクターとして歌うことが一番大切で、その子が表現したいものを余すことなく盛り込み伝えるのが求められるのですが、今回の作品は“青春”をテーマに掲げて制作したので、“青春”というのは人それぞれで想像するものが絶対に違うじゃないですか。いいものや悲しいもの、ちょっとエモい感じ、ノスタルジックな雰囲気、人によって感じ方が全然違うのが“青春”だと思うので、それを「こういうものだよね」と決めつけるようなことはしたくなくて。なのでスッと聴ける仕上がりになっていると思います。

――自分も作品を聴かせていただいて、歌声の感情がフラットで透明と言いますか、ここから色んな方向に色付けられる余地のある面白さを感じました。

山根 ありがとうございます!これもある意味の賭けで、今回みたいにあえてフラットに歌ったものだと、それが届く人と届かない人のどちらもいると思うんですよ。でも、これは自分の性格の問題もあると思うんですけど、自分から「こういうものだよね」という正解を提示したくない気持ちが強くあって。歌詞を見たときに「ここはちょっと共感できるかも」みたいに感じられる、寄り添える作品にしたかったんです。

――それは歌声のアプローチに限らず、楽曲を制作するうえでの方向性としても意識されていたことでしょうか。

山根 そうですね。今回なんで“青春”をテーマに掲げたかというと、私の人生の中で青春時代、高校生の頃は人生の転換期で、本当に色々なことがあったんです。で、私はお花が大好きなんですけど、花言葉を調べているときに、プリムラというお花の花言葉が“青春の始まりと悲しみ”ということを知ったんです。その言葉がいいなと思ったのと、プリムラは冬に咲くお花で、私は冬生まれなのでそれもちょうどいいなと思いましたし、冬に咲いて春頃に散っていくのも、自分が青春に対して思い描いている気持ちとリンクしていたので、EPのタイトルは『青春のかなしみ』、その発売記念ライブのタイトルを“青春のはじまり”にしました。それとEPがリリースされる4月は、色んな出会いと別れがある季節で、楽しいこと・嬉しいことと同じくらい、寂しいこと・悲しいことがセットになっていると思うんです。何かが始まって何かが終わる季節でもあるので、それを表現したいなと思いました。

――今回のEPには色んな方々から楽曲提供を受けていますが、皆さんにはそのテーマも伝えたうえで楽曲を制作していただいたのですか?

山根 はい。青春には出会いや別れ、悲しみ、色んなものがあるけど、その全部を優しく肯定して寄り添えるようなもの、みんなが歩いてきた道を包み込めるような一枚にしたいです、ということをお伝えしました。年齢に限らず青春しているときは、自分の気持ちが大きく動いて、これから先の未来を決める大事な決断をすることが多いと思うんですよ。私も声優の道に進むことを決めたのは青春真っ只中のときでしたし、今も別の青春をしていると感じていて。そういう青春時代の決断をそっと後押しできるような、「嬉しいことも寂しいことも全部あるよね」というのを伝えられる1枚にできればと思って楽曲制作をお願いしました。

次ページ:在りのままの自分を愛せるようになった彼女が今届けたいもの

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