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INTERVIEW

2024.03.27

“青き民”への感謝の想いを込めて――。雨宮天、4thオリジナルアルバム『Ten to Bluer』、そして活動10年を迎えた今の気持ちを聞いた。

“青き民”への感謝の想いを込めて――。雨宮天、4thオリジナルアルバム『Ten to Bluer』、そして活動10年を迎えた今の気持ちを聞いた。

今年8月にアーティストデビュー10周年を迎える雨宮天が、通算4枚目のオリジナルアルバム『Ten to Bluer』をリリースした。青をこよなく愛し、自身のファンのことを“青き民”と呼ぶ彼女が今作に込めたのは、10年の活動を支えてきてくれたファンへの感謝の気持ちと、今後も青と共に歩んでいく決意。「Love-Evidence」や「衝天」といったシングル曲に加え、自ら作詞・作曲した楽曲を含む6曲もの新曲を収録し、“雨宮天”という美しい青の色味をさらに濃くした本作について、存分に語ってもらった。

INTERVIEW BY北野 創
TEXT BY 河瀬タツヤ

10年の活動で感じる変化と成長、アルバムタイトルに込めた想い

――まずはアーティストデビュー10周年を迎えることに対しての今の率直なお気持ちをお聞かせください。

雨宮天 今まで自分の活動年数を意識することがあまりなかったので、突然10周年がやって来た感覚がありますし、「もうそんなになるんだ」という感じで、今もあまり実感が沸いていないです。でも、10年ぶんのことをやってきた自負はありますし、充実感みたいなものは感じますね。

――その10年のなかで、アーティスト活動において様々な変化もあったと思います。ご自身としてはどんな実感がありますか?

雨宮 新人の頃はまだ自分は何が好きで何が出来るかもわかっていなかったので、漠然と「かっこいい感じでいきたい!」みたいに思っていたのですが、10年活動していくなかで、自分の好きなものや得手不得手がわかってきて、自分が何をやりたいか、例えば「かっこいい曲を歌う」にしてもそのイメージをより細分化できるようになりました。それと私は新人の頃、「大きい会場でライブをしたい」という目標があったのですが、今は華やかなステージに立つよりも、意外と家で作詞作曲をしたり地道な作業をするほうが好きなんだなということに気づいて。ライブも今は会場の大きさというよりも自分が歌いやすい場所でやりたいと思うようになりましたし、より自分の心地良い環境を求めるようになりました。

――実際、雨宮さんはこの10年で自ら作詞・作曲する機会がとても増えました。なんでもCubase(音楽制作用のソフト)を使って自分でデモを作るというお話しですよね。

雨宮 まだまだではありますけど、一応そういった勉強もしています。2020年に開催した“The Clearest SKY”というライブのタイミングで新しい音楽チームになって、今のサウンドプロデューサーの角田(崇徳)さんとご一緒するようになったのですが、角田さんはご自身で編曲もされる方なので音楽理論にも精通されていて、その頃はちょうどコロナ禍で時間があったので、リモートで教わりながら本格的に音楽制作の勉強をするようになったんです。それまでは音楽は目に見えないしフワッとしたものだと思っていたのが、ちゃんと色んな理論の上にあるものだし、最終的にはセンスや直感も大事だということがわかって、「なんて面白い世界なんだろう!」と感じたんですよね。学べば学ぶほど楽しいです。

――もう1つ、10周年に絡めて聞きたかったのが、今回のアルバムにも収録されている最新のシングル曲「衝天」についてです。この楽曲はデビュー曲「Skyreach」(2014年)と同じ座組み(作詞:古屋 真、作曲・編曲:伊藤 翼)で制作されていて、ある種、デビュー1年目の自分と10年を経た自分を見つめ直す機会にもなったと思うのですが、ご自身の中で表現において成長を感じる部分はありましたか?

雨宮 「衝天」でまず思ったのは、この10年がなければ歌えなかっただろうなということで、転調もたくさん入っていますし、とにかく場面転換が激しい楽曲なので、新人の頃であれば自分の気持ちが追い付かなかったと思うんですね。でも、今の私は場面転換する方法をたくさん知っていて、例えばAメロとBメロでテンポの取り方を切り替えたり、息の量や声の使い方の細かな調節で場面が変わったことを表現したり、この10年でたくさんの武器を手に入れたんです。気づけば武器がたくさんあることに「衝天」を歌って気付きましたし、「Skyreach」と「衝天」は大きな視点で見ればどちらも“アニソンチックなロック”という括りで捉えられるなかで、10年前の自分との表現力の違いは見せつけられたと思います。

――そんな10年の経験の成果を詰め込んだのが今回のニューアルバムだと思います。どんな作品にしようと思って制作されたのか、タイトルの『Ten to Bluer』に込めた想いを含めて教えてください。

雨宮 『Ten to Bluer』はダブルミーニングになっていて、まず「Ten」は「私(=天)」で、「Bluer」は造語で私のファンの「青き民」のことを指しています。私から青き民に向けて、この10年間の感謝の気持ちを届けたい、という意味ですね。それと「10年間」の「Ten」から、この先さらに青くなって私らしさを追求していくぞ!という気持ち、「ここからまだ行きますよ」という未来への野心も込めました。

――雨宮さんの青好きは有名で、これまでのオリジナルアルバムのタイトルにも必ず「Blue」という単語が入っていました。今回もやはり青に関わるタイトルにしたかったのでしょうか。

雨宮 それが、ベストアルバム(『雨宮天 BEST ALBUM – BLUE -』『雨宮天 BEST ALBUM – RED -』)も出しましたし、ここから10年の先が始まるタイミングでもあるので、一度ブルー縛りをやめてみないか、という話になったんです。それでチームのみんなでブルーなしの案を出し合ったのですが、結局、私が『Ten to Bluer』というタイトルを閃いてしまって、我ながらいいなと思ったので、このタイトルにしました。でも、やっぱり「Blue」という言葉を入れるだけで、グッと私らしさが出るんですよね。じゃあこれからも私は青と共に歩もうと思って(笑)。

常に全力で生き、ギラつくほど派手に!10年目だからこそ歌える曲

――ここからはアルバムの収録曲のうち新曲について詳しく聞いていきます。1曲目の「Fireheart」はアルバムの幕開けに相応しい力強いデジタルロックチューン。

雨宮 この楽曲は、他のアルバム楽曲がある程度固まってきたなかで、わかりやすくライブの光景が想像できるような、ある意味ファンライクな楽曲を入れたいという話になって制作しました。メロディを聴かせていただいたときに、サビでUO(ウルトラオレンジのペンライト)が炊かれるイメージが浮かんで。10周年を節目に終わったりしぼんでいくのではなくて、「まだまだここからエンジンに火をつけて加速するぞ!」みたいな意気込みも感じられますし、「Fireheart」だけに高火力なアルバムのスタートになりました(笑)。

――歌詞は「火の鳥」がモチーフになっていますよね。

雨宮 そうなんですけど、どちらかと言うと「アンチ火の鳥」な内容なんですよね。「不老不死なんてクソ食らえ!」みたいな感じというか、短命である我々人間の意地みたいなものが感じられて、今のこの人生を“生き尽くせ”っていう感じがめっちゃロックだなって思いました。実は最初の仮タイトルが「Firebird」だったんですけど、歌詞が「アンチ火の鳥」だったので、それをもじって「Fireheart」にしたという経緯もあります。

――そういった一回限りの命を全力で生きる精神は、雨宮さんの人生観にハモる部分はある?

雨宮 めちゃくちゃあります。私は常に全力で生きていて、だらだらと長く生きるくらいなら、燃え尽きるように生きて短命なほうがいい!って思っているくらいなので(笑)。

――ということは歌うときも気持ちが入れやすかったのでは?

雨宮 サビのパワー感は「今のこの一瞬を生きるんだ」っていう、自分も元々持っている価値観をイメージして歌いました。でも、AメロやBメロは怠け者に対して「そんなのでいいの?」って言っているような、ちょっと毒を孕んだ歌い方にしていて。全力で生きるのは難しいことで、常に誘惑があるし、サボろうと思えばいくらでもサボれるわけじゃないですか。だからこそ、自分の中に沸き起こる怠け者な気持ちに対して喝を入れる、というイメージもありました。

――そこから「BLUE BLUES」「衝天」「Love-Evidence」といった楽曲を挿んで、5曲目の「mellow moment」は開放感のある爽やかなポップナンバー。でも歌詞には少しほろ苦い雰囲気もあって。どんなイメージで作られたのでしょうか。

雨宮 今回のアルバムでは洋楽っぽい雰囲気も取り入れたくて、その中で「等身大で寄り添ってくれる系の洋楽枠」として制作しました。実は最初にいただいた歌詞は恋愛のほろ苦さを描いたものだったのですが、私としては、ライブでは柔らかい光のなかでお客さんとみんなでクラップしながら楽しめる曲、というイメージが音から浮かんでいたので、みんなが自分ごとに思えるような、もう少し広い人間愛や人間関係を描いた歌詞に変えていただきました。今回のアルバムは全体的にライブの光景を想像して歌詞の方向性を調整してもらった部分が多くて、この曲もその1つです。

――みんなで気持ちを共有し合えるような楽曲にしたかったんですね。

雨宮 はい。私は放っておくと世界観の強い曲を歌いがちで(笑)、みんなを巻き込むというよりかは、「孤高の存在」とか何かの役になり切って歌うことが多いので、それとはまた違った曲にしたくて。人間関係の悩みというのは誰もが持っているものだと思いますし、私も人間関係が苦手だったんですけど、この10年の活動の中で青き民や身の回りの人との繋がりがすごく好きになれたので、人間関係を題材にしていきました。

――この曲では、昔の苦い思い出も受け止められるようになった心情の変化が描かれているようにも感じて、その意味では10年経って大人になった今だからこそ歌える楽曲だと思います。

雨宮 確かに!20歳の頃の私がこの曲を歌っても、きっとあんまり説得力ないですよね。そう思うと大人の歌かも。

――歌声からも柔らかさというか、笑顔が浮かぶ印象がありました。

雨宮 この曲では声の出し方を普段とは少し変えていて、より丸く、角がなくなるような響きで歌いました。私が隣で歌っていても不快にならないような歌声と言いますか、時間がゆっくり流れているイメージ、柔らかい時間を演出できたらいいなと思いました。

――そして6曲目「JACKPOT JOKER」はアルバムのリード曲。雨宮さんの作品ではお馴染みの塩野 海さんが提供されていて、同じく塩野さんが手がけた「VIPER」「irodori」などに連なるジャジーかつゴージャスな楽曲です。

雨宮 私は今まで塩野さんに作っていただいた楽曲はどれも大好きなので、10周年を記念するアルバムのリード曲となったときに、「塩野さんにお願いするしかないでしょ!」と思ってお願いしました(笑)。最初にリモートで打ち合わせをさせていただいたときに、「私はとにかく塩野さんが作るデラデラギラギラで派手な世界観が大好きなので、そういう曲を歌いたいです!」とお伝えして。歌詞も含めて塩野さんにお任せしたので、結構フワッとしたお願いになったんですけど、その結果、塩野さんはめちゃくちゃ悩まれたみたいで。

――その塩野さんが悩んだ末に出来上がった楽曲を聴いていかがでしたか?

雨宮 「これこれ!」って思いました(笑)。私の好きな派手さがたくさん詰まっているのと同時に、これは絶対に私のための楽曲だという確信があって、私に宛てた私信のようにも感じたんです。例えばサビのメロディが、普通はそうはならないと思うような独特のメロディラインで、これは私と塩野さんの今まで築き上げてきたものがあって、私の好みを知ってくださっているからこそだと感じましたし、「雨宮さんなら歌えるだろう」というものを託された気がして、すごく嬉しかったです。

――タイトルの“JOKER”もそうですが、歌詞に目を向けるとトランプにまつわる言葉がたくさん散りばめられていて。以前に塩野さんがアレンジを手がけた「TRIGGER」(『雨宮天作品集1-導火線-』収録)にも繋がるイメージがありました。

雨宮 そうなんです。カジノをイメージして書いてくださったみたいで。でも、だからこそ私はレコーディングのときにどう歌うかを悩みました。最初は大人の女性のイメージでかっこつけて歌おうと思ったんです。だけど、もしそう歌ったら悪い意味で「TRIGGER」の続編みたいになってしまうのではないかと思って、そんな塩野さんが作ってくださった楽曲を殺すようなことはダメだ!って思ったんです。それでレコーディングの1時間くらい前に閃いて、かわいい寄りの歌い方にしました。

――歌声からは奔放な女性像が浮かぶようで、色んな表情で誘惑してきますよね。

雨宮 ありがとうございます!そこを目指していたの嬉しいです。楽曲の情報量だけでなく私の情報量も多くしたくて、10年分の技術をつぎ込みました(笑)。結構細かい技術をたくさん入れ込んだので、まさに10年分の自分の集大成が詰まっていると思います。

――声優としてのキャリアも活かせた感覚はありますか?

雨宮 それは絶対的にあります。声優業では色んな人物を演じますし、その人物ごとにしゃべり方や言葉のクセが違うので、息の使い方やどうしゃべったらどういう風に聞こえるかを常に研究していて。声優としての10年ちょっとの経験もこの楽曲には込められたと思いますし、正直自信があります。

――そんな雨宮さんが自信をもってオススメしたいポイントを教えてください。

雨宮 サビの最後の“ねぇ?”という言葉や、途中の“Whoo Whoo Yeah~”っていうフェイクは2回ずつ出てくるのですが、その同じフレーズに対してそれぞれ違うアプローチをしていて。声優さんは同じセリフが出てきたら表情を変えて演じるという病気にかかっているので(笑)、ここは自分が獲得してきたものが詰まっていると思います。ぜひ聴き比べてもらって、どんな違いがあるのかを確かめてほしいです。

――個人的には、落ちサビの“赤と黒のダンスフロアで”のところ、歌い出しはバックの音が全部止まって、雨宮さんの声だけで表現されているところの声の入り方の表現が素晴らしいなと思いました。

雨宮 ありがとうございます!実はその部分、元々はスクラッチ音が入っていたのですが、TD(トラックダウン)のときに塩野さんが「ここは雨宮さんの声から入ったほうが良くないですか?」と言ってくださって、音を削っていただいた部分なんです。なのでそこを褒めてくださると塩野さんも嬉しいと思います(笑)。

――「JACKPOT JOKER」のMVの撮影エピソードについてもお聞かせください。雨宮さん自身がメインで出演されていますが、これは奔放な女性のイメージで撮影されたのでしょうか。

雨宮 そうですね。館の女主人の私と、奔放に歌って踊っているショートパンツの私がいるのですが、どちらも「奔放ないたずらっ子」を意識して撮影しました。そもそも私がいたずらっ子なので撮影も楽しかったです(笑)。

――いたずらっ子なんですね(笑)。

雨宮 私は人にいたずらするのが大好きなので。私のMVでは珍しく他のキャストさんもいらっしゃって、執事のヒツジと、1人称視点を手で演じてくださっている方のお二人がいたのですが、1人称視点の方はいたずらされている演技をしてくれるので、私も楽しくなってしまって「よしよし、もっとこちょこちょしてやるぞ」って気持ちが乗ったところもありました(笑)。

――オチもいいですよね。そのいたずらされていた一人称視点の人が実は……。

雨宮 3人目の私だったっていう。あそこまでストーリーがあるMVも私の作品では珍しくて新鮮でしたし、あの最後のシーンは実際に最後に撮影して、そのときから「このオチはみんなびっくりするだろうな」と思って早く観てほしいなと思っていました。MVの「another ending ver.」(アルバムの完全生産限定盤/初回生産限定盤に収録)にはもう1つびっくりがあるので、青き民には絶対に観てほしいです!

次ページ:情念渦巻く和ロック、洋楽調のダンス曲――雨宮天の新たな表情

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