――8曲目「風燭のイデア」は雨宮さんご自身が作詞・作曲した、和の要素がふんだんに盛り込まれた情熱的なロックナンバー。
雨宮 この曲は「和ロック」のイメージで作りました。コロナ以降にオンラインイベントを行うことが増えて、私が画面でお話しするのに対して皆さんがチャットでリアルタイムでお話ししてくれる機会が増えたのですが、そこで過去に何度か「今後どういう曲を作ってほしい?」と聞いたときに、毎回「和ロック」という声があったんです。「じゃあ作る!」と思って取り掛かったのですが、いわゆる和の音階、ヨナ抜き音階で作っていくうちに、気持ちがだんだん演歌になってきて。
――『雨宮天作品集1-導火線-』でもモロ演歌調の「初紅葉」を自作されていましたものね。
雨宮 そうなんです。で、演歌と言えば悲恋じゃないですか。“あなたを 殺していいですか”(石川さゆり「天城越え」の歌詞)じゃないですけど、そういう気持ちになって、こういう歌詞になりました。
――恨み節が全開の歌詞で、演歌というよりも「怨歌」みたいな曲ですよね。
雨宮 気づけばだいぶ恨みの強い恋愛の歌詞になっていました(笑)。でも私はそれも面白いなと思って。歌詞は古風で古文的な雰囲気を入れたいと思って、作詞では百人一首を研究して書きました。百人一首の時代の皆さんは、恋で悲しいことがあると涙で袖を濡らすことから、悲恋を「袖が濡れる」とか「袖が乾かない」という言葉で表していたらしいんですよ。それを2番のAメロに取り入れてみたりして(“袖を濡らす涙も”)。ただ、1番はさらさら書けたんですけど、2番で詰まってしまって。それでチーム雨宮の皆さんに悲しい恋の経験や友人の体験談を色々聞いて、この歌詞が完成しました。
――1番はまだいじらしいところがありますけど、2番で裏切りに気付いて以降の展開がちょっと怖いくらいなんですよね。
雨宮 あまり詳しく説明するのもアレですけど、この曲は妻がいる男性を好きになった浮気相手側の視点の歌詞で、この“裏切り告げる春の報せ”のところは、「奥さんと離婚していると言っていたのに、妊娠してるじゃないの!」のゾーンなんです(笑)。
――だいぶドロドロしてきました(笑)。歌もコブシを取り入れていますよね。
雨宮 私がカラオケでよく演歌を歌うなかで身に付けた歌い方を入れました。結果、メロディが小難しくなった部分はあるんですけど、産みの苦しみがすごく大きかったぶん、満足感の大きい楽曲になりました。
――そして9曲目の「the Game of Life」は、これまた今までとは趣きの異なるスタイリッシュなダンスポップチューン。
雨宮 この曲は、さっきお話しした洋楽のエッセンスを取り入れた楽曲のうち、「ガンガンアゲて行くぜ!」枠の曲になります。新たな私を見せたいなと思って。歌詞にも英語の気持ち良いフレーズを散りばめていただいて、歌うときも皆さんが歌詞の内容を聞き取れないような、崩す歌い方をあえてしています。この歌詞の世界観は、歌詞カードを見ていただいて初めてわかるくらいでいいかなと思って。ノリやニュアンスを大切にしているので、多分1番のサビの最後の“笑ってりゃ大どんでん返しも 甚だあり得るGo On!!”のところは、歌詞を見なかったら本当に何て歌っているのかわからないと思います(笑)。この楽曲の主人公も、言葉で語るというよりも、「私を見て!これが私の生き方だから」っていうタイプだと思うので。
――人生をゲームとして捉えて楽しむような、これまでの楽曲とはまた別の意味で強い女性像が描かれていますものね。ダンサブルな楽曲なので、ライブでどういった演出になるのかも楽しみです。
雨宮 ……私はちょっと戦々恐々としています(苦笑)。
――雨宮さんはダンスが苦手ということを常々お話しされていますものね。
雨宮 そうなんです。この曲はもう踊らせるかのような曲なので、「私、どうなっちゃうの……?」って思っていて。
――でも、この間開催されたイベント“⾬宮天 お遊戯会2024”で、苦手なダンスにもあえて挑戦して克服されたという話でしたが。
雨宮 よくご存じで(笑)。確かに挑戦はしましたけど……という感じなので、ダンスはいまだにドキドキです。
――そしてアルバムのラストを飾る「Dear Blue」は雨宮さんが作詞・作曲された、ファン=青き民に宛てたバラード。こんなにもストレートに想いを伝える楽曲は初めてではないでしょうか。
雨宮 そうですね。作詞・作曲をするようになった今だからこそ、そして作詞・作曲を続けてこられたのも、青き民が私の作ったものに対して「いい」と言ってくれたからなので、青き民が築いてくれた私の力である作詞・作曲を、青き民への感謝を伝えることに使いたいと思ってこの曲を作りました。色々考えたんですけど、比喩表現とかお洒落な言い回しにするよりも、やっぱりストレートな言葉がいいなと思ったんですよね。なので「Dear Blue」というタイトルにも表れていますけど、青き民にお手紙を書く気持ちで歌詞を書きました。作詞の前段階として、私はみんなに何を感謝しているのか、今までのありがたかった具体的なエピソードを書き出していって。声帯炎になったときとか、「あのとき救われたな」っていうことがたくさんあるんですけど、それを思い出してメモしながらもう涙が止まらなくて(笑)。歌詞にすると言っても、本当に音符に合わせて言葉数を選ぶくらいで、本当に真っ直ぐな想いを書きました。
――その想いに関しては、この楽曲を聴けばすぐに伝わる内容になっていますが、あえて聞きたいのは“無理しないでね”や“いつも元気でいて”など、優しく語り掛けるような言葉が多いことで。
雨宮 私は今、青き民に何を伝えたいのかを考えたときに、やっぱり元気でいてほしいんだなっていうことに、自分でも気づいたんですよね。よくイベントの終わりに「ちゃんと布団をかけて寝るんだよ」みたいなことを言うんですけど(笑)、そういう気持ちがそのまま歌詞に出たんだと思います。
――その意味ではちょっと「おかん」っぽいですね。
雨宮 ああー。でもどちらかと言うと、私自身がみんなからこの言葉をすごくたくさんかけてもらってきたのが大きいんだと思います。自分で言うのもアレですけど、私は結構頑張りすぎてしまうところがあるので、それを察して「こんな雨宮さんが好き!でも頑張りすぎないでね」という言葉をたくさんもらってきて。でも、そのおかげで逆に頑張ろうと思えたし、自分の中の「頑張らなきゃ」を「頑張りたい」にしてくれたのが、みんなからの「頑張りすぎないでね」や「無理しないでね」という言葉だったんです。だからこそ、私もこの言葉を返したいと思いました。
――レコーディングのときも、ファンのことを思い浮かべて歌われたのでしょうか。
雨宮 ……そこなんですよね。さっきもお話しした通り、この歌詞の裏には結構具体的なエピソードがあるので、レコーディングなのに泣きそうになってしまって(苦笑)。でも、泣いていたら歌にならないので、想いは込めるけど「冷静になれ……!」って考えながら歌いました。その意味でも今までにない難しさがありましたね。
――それだけ想いを込められた楽曲でもあると。でも、そうなると、ライブで青き民たちを前にして歌うことができるのでしょうか。
雨宮 だからセトリに入れたくないんです、この曲。多分、前奏で泣き出してしまうので(笑)。正直、もう歌になっているかもわからない感じになると思うので、そういう意味で青き民の前ではちゃんと歌えないかもなって思っています。
――それでも青き民は受け入れてくれるでしょうし、きっと受け止めてくれると思います。そういう信頼関係が築けているからこそ、ここまで心のこもった楽曲が出来たんだろうなと思いますし。
雨宮 これはきっと青き民自身も感じていることだと思うんですけど、最初と今とでは青き民との関係性も全然変わったんです。“お遊戯会”もそうで、私がただただ色んな苦手なことにチャレンジしていくのをみんなに見守ってもらうだけのイベントだったので、それって私のことを知ってくれているファンじゃないと本当に意味がわからないと思うんですよ(笑)。それを大成功で終えられたというのは、青き民と関係性を築き上げてきたことの1つの証明だったなって思いますね。
――雨宮さんは青き民の前だと素直になれているんじゃないかなと思って。
雨宮 ああ、確かにそうかも。キャリアを重ねるほど、青き民に甘えがちになっているところがあります(笑)。色んなことを聞いてもらうんですよね。愚痴に近いようなこととか、悩みとか、「こんなことがあったんだけど、どう思う?」とか。「ライブが怖い」とか「人前に立つのが苦手」っていう弱点もどんどん打ち明けてしまっているので、どんどんみんなに寄りかからせてもらっている配分が増えている気がします(笑)。
――それはファンとの関係性としては理想的なのではないでしょうか。
雨宮 そうですね。昔のほうが「自分で作らなくちゃ」という気持ちがあったけど、今は「一緒に作ってもらえばいいんだ」と思えているのは大きいなと思います。
――その10年の積み重ねが反映されたのが今回のアルバムだと思いますが、ご自身としてはどんなアルバムになったと感じますか?
雨宮 青き民への想いもいっぱい込められたし、より青く、というのは新しい自分を模索してくこともそうですし、自分が育て上げてきた私らしさをより濃く表現するという意味でも、本当にタイトル通りのアルバムができたと思います。
――5月からは本作を携えてのツアーがスタートして、8月には10周年イヤーを迎えるわけですが、どんな1年にしたいでしょうか。
雨宮 正直、「10周年イヤーだから気張って頑張るぞ!」という気持ちは全然なくて、「10周年やってこられた私たち、すごくない?お祭りしようぜ!」みたいな感じにできたらなと思っています。その中でみんなに喜んでもらえるようなことを色々やっていけたらと思いますね。ツアーももちろん私なりに精一杯作り上げていく気持ちではありますけど、本番はみんなと一緒に作ってもらって、最終的に「10周年イヤー楽しかったね」って笑い合えるような年にしたいなと思います。
●リリース情報
『Ten to Bluer』
3月27日発売
【完全生産限定盤(CD+BD+グッズ)】
品番:SMCL 880~882
価格:¥9,500(税込)
・3段重スペシャルBOX仕様
・大判マルチクロス
・目標達成カレンダー(充実シール付き)
・超豪華ポスター型ブックレット
・アルバムジャケットスペシャル写真集
【初回生産限定盤(CD+BD)】
品番:SMCL 883~884
価格:¥4,400(税込)
【通常盤(CD)】
品番:SMCL 885
価格:¥3,100(税込)
<CD>
01. Fireheart
作詞:上坂梨紗 作曲:石黑 剛, 小久保祐希 編曲:石黑 剛
02. BLUE BLUES
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:宮永治郎
03. 衝天
作詞:古屋 真 作曲・編曲:伊藤 翼
04. Love-Evidence
作詞:上坂梨紗,西野蒟蒻 作曲・編曲:Saku
05. mellow moment
作詞:西野蒟蒻 作曲・編曲:涼木シンジ
06. JACKPOT JOKER
作詞・作曲・編曲:塩野 海
07. 情熱のテ・アモ
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:宮永治郎
08. 風燭のイデア
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:宮永治郎
09. the Game of Life
作詞:上坂梨紗 作曲:石黑 剛, Giz’Mo(from Jam9) 編曲:石黑 剛, ArmySlick
10. SOS
作詞:上坂梨紗 作曲・編曲:下野 隼
11. Dear Blue
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:荒幡亮平
<Blu-ray>
・JACKPOT JOKER MusicVideo(another ending ver.)
・Making of 衝天(long ver.)
・Making of Ten to Bluer Jacket
・Making of JACKPOT JOKER
●ライブ情報
LAWSON presents 雨宮天 Live Tour 2024 “Ten to Bluer Sky”
詳細はこちら
https://trysail.jp/contents/712658
大阪・オリックス劇場
2024年5月11日(土)17:30開場 /18:30開演
2024年5月12日(日)16:00開場 /17:00開演
埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2024年5月26日(日)17:30開場 /18:30開演
愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2024年6月9日(日) 17:30開場 /18:30開演
東京・立川ステージガーデン
2024年6月22日(土)17:30開場 /18:30開演
2024年6月23日(日)16:00開場 /17:00開演
雨宮天 オフィシャルサイト
http://www.amamiyasora.jp/
雨宮天 オフィシャルX
https://twitter.com/Amamiyastaff
雨宮天 オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCc4xpujLxnUBSI1XX-SdldQ
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