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INTERVIEW

2024.03.27

【特集】She is Legend 2ndアルバム『春眠旅団』:She is Legend(XAI・鈴木このみ)ロングインタビュー

【特集】She is Legend 2ndアルバム『春眠旅団』:She is Legend(XAI・鈴木このみ)ロングインタビュー

ドラマチックRPG「ヘブンバーンズレッド」(以下、「へブバン」)から誕生した、XAI鈴木このみのツインボーカルを擁するラウドロックユニットのShe is Legendが、2ndアルバム『春眠旅団』を完成させた。

2022年に始動し、ライブイベント“HEAVEN BURNS RED LIVE 2022”での本格的なステージデビューを皮切りに、ライブ活動を活発化させている彼女たち。生バンドを引き連れての初全国ツアー「She is Legend Live Tour 2023 “Extreme Flag”」も大盛況のうちに終え、今夏には“Animelo Summer Live(アニサマ)”への出演も決定するなど、今最も注目すべきユニットと言えるだろう。

今回のアルバムも麻枝 准が全楽曲の作詞・作曲・プロデュースを担当。ツアーや数々の経験を経てさらに絆を深めた、茅森月歌ボーカル担当のXAIと朝倉可憐ボーカル担当の鈴木このみによる鮮烈なデュエット(カレンちゃんのスクリームはSerenity In MurderのAyumuが担当)は、どのような進化を遂げたのか。常に最高を更新し続けるShe is Legendの現在に迫る。

【特集】She is Legend 2ndアルバム『春眠旅団』

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

初の全国ツアーで培われた2人の関係性とシーレジェへの想い

――まずは昨年9月から今年1月にかけて行われた初の全国ツアー“Extreme Flag”についてお聞かせください。お二人にとってはどんな経験になったでしょうか。

“あの日のふたりはあまりに無敵だった” ――伝説を残した初のライブツアー「She is Legend Live Tour 2023 “Extreme Flag”」ファイナル公演レポート

鈴木このみ シーレジェ(She is legend)という「青春」を体現したようなツアーでした。「人と力を合わせるとこんなにパワーが溢れるんだ!」って思いましたし、終演後にみんなでご飯を食べながら「明日はもっとこうしよう」みたいな話もして。もし自分がバンドをやっていたらこういう感じだったのかな、ということを体験できたツアーでした。

XAI 私も「青春」というワードはシーレジェの根幹にあるものだと感じていて。ソロ活動は孤独な部分もあるので、隣に鈴木さんがいることが本当に心強かったし、一緒にステージに立つと毎回、そのパフォーマンスや歌の説得力にすごく刺激をもらえます。私はシーレジェとしてだけでなく、自分にとっても全国ツアーは初体験だったんですけど、ファイナルが終わってから色んな人に「すごく変わったね」と言ってもらえることが多くて。個人的にもすごく成長させてもらったツアーでした。

――XAIさん自身は自分のどんな部分が変わったと感じますか?

XAI ライブをしているときにお客さんの前で心から笑えるようになりました。昔はプレッシャーや不安な気持ちが大きくて、ライブで笑うことに対して難しさを感じるときがあったんですけど、今はみんなと同じ時間やライブを共有することが最高に楽しくて。自分にとってはすごく大きな変化です。

鈴木 私も横で見ていて、XAIちゃんはツアーでめっちゃ変わったなと思っていました。初日の大阪公演(9月8日の大阪・umeda TRAD公演)のときは、私が楽屋で「おはよう!今日からツアーだね!」ってハイテンションに挨拶したら、XAIちゃんは「そうだね……」みたいな感じですごく沈んでて(笑)。

XAI 本当にあのときはマックス暗かった(苦笑)。マイナスからのスタートというか。

鈴木 でも、ツアーの中でXAIちゃんは色んな新しい表情や歌やパフォーマンスをたくさん見せてくれました。それはきっとXAIちゃんが元々持っていたものだったと思うんですけど、多分お客さんもライブで会うたびにXAIちゃんの変化を感じていたと思いますし、私も隣でそういう姿を見ながら「自分も頑張って成長しなくちゃ」っていつも思っています。

XAI ありがとうございます!

――ツアーやその間を含めほぼ毎月行っているというレコーディングなどを経て、お二人の距離もさらに近くなったのではないのでしょうか。

XAI シーレジェで一緒になってからは毎年、年の初めに2人でお茶会をしてどんな年にしたいか真面目なお話をする間柄なんですが、ツアーを通してさらに仲良くなりましたし、何本も一緒にライブをすることで育った信頼感、言葉で交わすことのできない感情が生まれたと思います。ツアーの北海道公演(10月7日の札幌・SPiCE公演)の日、スタッフさんたちとの打ち上げのあとに、ホテルの私の部屋に2人で集まってプチ打ち上げみたいなことをしたんですよね。コンビニで食べたいものを全部買って。

鈴木 2人で同じパックをつけながら、シャインマスカットとかをむさぼる会だ(笑)。

XAI そのときに「2人で一緒にシーレジェというアーティストをやっているんだな」っていうことをすごく実感できて。鈴木さんはアーティストの大先輩で、本当に尊敬するシンガーなのですが、ツアーを経て本当の意味で“同志”になれたような感覚があります。

鈴木 私もXAIちゃんが隣にいることがすごく自然に感じるようになりました。それこそ初めてお会いしたときは、2人ともどちらかと言うと社交的ではないタイプだと思うので、おずおずと一生懸命シーレジェになろうとしていた感じがあったんですけど、今はすごく自然に会話をしながら「ここの歌、もう少し強くしてみる?」みたいなことを言い合える仲になりました。レコーディングも最初の頃はバラバラで録っていたけど、今は2人で集まって別々のブースに入りながら一緒に「せーの」で録るやり方になったことも大きいと思います。XAIちゃんはいつ会っても面白いし、レコーディングでもどんな歌が飛び出してくるのか本当にわからなくて。隣にいると「私も凝り固まらずにちょっとはみ出しちゃってもいいかな?」みたいな気持ちになれるんです。いつもすごく刺激をもらっていますし、普通の相棒というよりも“面白い相棒”って感じがします。

XAI 確かに、自分でも「シーレジェの不安定担当」なのかもって思う(笑)。常に均衡を崩す側というか。

鈴木 違う違う!それだと悪口みたいじゃん!(笑)。もっとリスペクトを込めての話だから。

XAI でも、シーレジェには懐の深さを感じていて、「こうなっちゃったけど、これもシーレジェらしさ」みたいなところがあると思うんです。私はそういう波紋を起こす担当みたいなところがあるかも。

――そういう意味ではXAIさんは茅森月歌っぽいのかもしれないですね。ちなみにShe is legend自体は今のお二人にとってどんな存在になっていますか?

XAI ひと言で説明するのは難しいですけど、プロデューサーの麻枝 准さんが色々なインタビューで「シーレジェは今の自分の中で生き甲斐だ」ということを言ってくださっているんですよね。私もシーレジェをもっと大きくしていきたいし、まだまだ可能性があるアーティストだと思うので、シーレジェは“みんなで叶えたい夢”だなって思います。

鈴木 私もそう思うし、個人的にはここにきて“もう1つのホーム”ができた心強さを感じてる。毎月のようにスタジオで歌を録っているし、ツアーも会場がライブハウスだったからこそお客さんの熱がダイレクトに伝わってきて、ライブをすることで「私はこの人たちに歌を届けているんだな」というのがよりクリアに見えるようになったんですね。私の居場所がもう1つできたことを実感できたので、今はこのホームのためにできることを頑張りたい気持ちです。

原点を越えていく――麻枝 准の自信作「春眠旅団」が見せる景色

――そして、早くも2ndアルバム『春眠旅団』が完成しました。お二人は全体的にどんなアルバムになったと感じますか?

XAI 1stアルバム(『Job for a Rockstar』)と明確に変わったと感じるのは、ツアーと麻枝さんの楽曲制作が同時進行で進んでいたので、ライブでのお客さんのリアクションを経て、ライブ映えを意識して作った楽曲が増えたと思います。ツアーでは毎公演、定点の映像を撮影していて、麻枝さんはそれを毎晩観ていたらしいんですよ。ツアー中にレコーディングがあったときは毎回、麻枝さんに「早く新作がほしい」って言われていたくらいで。麻枝さんにとって私たちのライブ映像は「新作」なんです(笑)。

鈴木 あと、スタッフの方に「定点で撮る画角をもっと良くしてくれ」とも言っていたよね(笑)。

XAI 「新宿公演は神回だった」と言ってくれるくらい、映像もたくさん観てくださっているみたいで。ご自身で楽曲を作っているのに、私たちの一番のファンでもいてくれています。

鈴木 シーレジェの楽曲は月1の「ヘブバン」のゲーム内ストーリーイベントで追加されるので、そのスケジュールに合わせてツアーのセトリも組んでいたんですよ。まだ楽曲ができていない段階から、「どうやらこの新曲をリリースした3日後のライブで初披露するっぽい」みたいな(笑)。そういう意味でも結構ライブ中心になっているアルバムになった気がします。

――話の流れで、今回のアルバム収録曲のうち、ツアーで披露して印象深かった曲を教えてほしいです。

鈴木 私はライブだと「Long Long Spell」が大好きで、この曲を歌っていると必ず(客席で)泣いている方を見かけるんですよ。その顔がいつもすごくキラキラしていて、「わかるよその気持ち、一緒に頑張ろう」という気持ちになるし、その涙にすごく勇気づけられるんです。私はファンの方からいただくお手紙がめちゃめちゃ好きで、私だけにそっと教えてくれるような気持ちがたくさん詰まっているように感じるんですけど、「Long Long Spell」を歌っているとそれと似たような気持ちになるんですよね。お客さんと1対1でお話ししている感じ。その特別な関係がすごく見える曲だなって思います。

XAI 良い話。私も「Long Long Spell」ですね。この曲、歌詞を見るとすごく過激なことを歌っていると思うんですよ。「放課後のメロディ」にも“死ぬ覚悟が出来ないだけ 惰性で生きてる”という言葉がありますけど、「Long Long Spell」は明確に“死のうと思って”という言葉が出てきて、でも「それでもいいじゃん」って言ってくれるんですよね。「死にてーよな、わかる。でもお互いがいてなんとかやっているからそれでいいじゃん」みたいな。そういう気持ちを言葉にしているのが好きなところで、私も歌っていると感極まるものがあるんですよ。それがシーレジェの歌いたいことだと思うし、包み隠さない言葉でこんなにも伝わるものがある麻枝さんの歌詞はやっぱりすごいなって思います。

――「Long Long Spell」は自分もツアーのファイナル公演(1月21日の東京・豊洲PIT公演)で拝見してすごく心に残っています。最後に“LaLaLa…”と歌うパートがまた良いんですよね。

XAI そこはレコーディング当日に変更してできたパートなんですよ。元々は違うメロディで歌詞も付いていたんですけど、最後はみんなで一緒にシンガロングできるように変えよう、という話になって。私はサビの“でもそれでもいいじゃん”のところでいつも歌から逸脱して泣き叫びそうになる。

鈴木 私はその前の“お互い大変で”のところだなあ。だからいつも同じくらいの場所で2人とも感極まっていて(笑)。レコーディングのときも、麻枝さんから「ここからはもう別人格で歌ってください」というディレクションが明確にありました。すごく死にたいと思っているけど、“お互い大変で でもそれでもいいじゃん”のところからパッと明るくしてほしいんです、っていう。

――アルバム表題曲の「春眠旅団」の印象についてもお聞かせください。お二人はどんな楽曲だと感じましたか?

XAI レコーディングの日に、麻枝さんが「また怪物のような楽曲を生み出してしまいました」と自信満々におっしゃっていました。そこまで「今回の楽曲が自信がある」みたいなことはあまりなかったんですけど。

鈴木 確かに。逆に「今回めっちゃ良い曲ですね!」って言っても「いやいやいや……」って言われるパターンの方が多いかもしれない(笑)。だから私もめっちゃ記憶に残っています。歌い終わったあとに麻枝さんから拍手をもらえたのも嬉しかったです。麻枝さんが拍手するのは本当に良かったときなので。

XAI 私たちも今までのシーレジェを更新する気持ちでレコーディングに挑みました。これは個人的に感じることなんですけど、シーレジェの楽曲はその時々の麻枝さんのモードがダイレクトに反映されていると思うんですね。「オーバーキル」や「シガチョコ」のときはラウドロック最高!っていう感じで鈴木さんのスクリームパートもたくさんあって、そのあとに1回落ち込んで「Thank you for playing~あなたに出会えてよかった~」という楽曲が生まれて。そこから持ち直して、美メロのエモい楽曲をたくさん作るようになって。そういうふうに色んなモードになって転げ回った先で生まれたのが「春眠旅団」なのかなと感じます。次なる展望を見せてくれる楽曲だと思いますし、きっと「旅団」というタイトルもツアーで各地を旅してきた私たちに重ねて付けてくれたのかなって思っていて。

鈴木 私の中では、1stアルバムの頃のシーレジェは雨とか群青や藍色みたいなイメージがあったんですけど、今回のアルバムはジャケットイラストも淡い色合いで、旅立ちみたいなイメージがあるんですね。それは麻枝さんが「シーレジェは旅に出てもっと広い場所に飛び出して行きなよ」と言ってくれているのかなと受け取っています。歌詞の最後のほうに“孤独の果ても虚数の海も越えていけるそんな旅団さ”というフレーズがあるんですけど、私たちの原点の曲「Burn My Soul」にも“孤独の果て 虚数の海”という言葉が入っていて、エモ!って思ったんですね。「Burn My Soul」の頃は私たちもまだ手探り状態でシーレジェになろうとしていたのが、2年越しでまた同じフレーズを歌うことで、もっと前に進みたい気持ち、引っ張っていきたい気持ちが沸いた曲でした。

XAI 確かに。そう考えると“虚数の海も越えていけるそんな旅団さ”って熱いなあ。

鈴木 もう「越えていけ」って言われてるようなものだよねぇ。激しいとかメロが難しいっていうより、とにかく感情の面で「怪物のような曲」になっている。めちゃくちゃ良い曲なのでぜひ聴いてほしいです。

次ページ:いつか訪れる日のために、今のこの青春を全力疾走する2人

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