――そのほかに、今回の2ndアルバム収録曲の中で特に思い入れの強い楽曲を教えていただけますか?
鈴木 悩みますけど、レコーディングで印象深かったのは「Thank you for playing~あなたに出会えてよかった~」ですね。その時期はツアー中で、自分の中でシーレジェとしての歌唱にちょっと悩み始めていたんです。それこそ麻枝さんに「私、シーレジェとしてイケてますか?」って尋ねてしまうくらい、自分のボーカルワークとシーレジェとしてのポジションに対して「この感じでいいのかな?」という疑問があって。でも「Thank you for playing」のときに、もう振り切ってやってしまおうと思って、思い切りかわいく歌ってみたんです。「これは朝倉可憐だからできること」って、自分の中で大げさに取り組んで。そうしたら「シーレジェではこのくらい振り切ってやっていいのかも」というのを掴むことができて、シーレジェだからこそ出せる新しい武器が見つかった気がしました。麻枝さんもいつも「どんどんやっちゃってください」と言ってくださるので、私ももっと飛び込むべきなんだなって思いました。
XAI 私はソロで歌っている「陽のさす向こうへ」ですね。この曲の歌のアプローチは、それまでの自分の中にはなかったものだったんでした。シーレジェの楽曲は作品の中で茅森から出てくる歌だから、それが嘘にならないように、常に自分のこととして歌うように言われているんですけど、「陽のさす向こうへ」は茅森にとって本当に大切な人に向けて、ちょっと照れくさいけど、自分の今思っている本当の気持ちを聞いてほしいという曲なので、ちょっと演技をする感じというか、「相手に向かって語りかけているように歌ってください」と言われたのがすごく印象に残っています。今までもずっと茅森の歌だったんですけど、この曲はメインストーリー第五章前編に合わせて作られた、茅森をフィーチャーしたストーリーの曲ということもあって、これまで以上に深く茅森に潜って、茅森の気持ちに寄り添ってレコーディングしました。
――ある意味、キャラソン的なアプローチでもあったんですね。XAIさんのソロ曲と言えば1stアルバム収録の「贅沢な感情」もありますが、そのときとはまた違う感覚だった?
XAI 全然違いますね。「贅沢な感情」は私の歌声を1番良く聴かせるメロディや歌い方というイメージですけど、今回は相手が目の前にいることを想像しながら、ちょっと笑ってしまったりとか、少したどたどしくてあどけない感じで歌ってみてほしい、というディレクションだったので、目指すゴールが全然違っていて。シーレジェの楽曲はライブですごく育つところがあって、「贅沢な感情」はみんなが自分の中の思い出と一緒にじっくり味わってくれる印象があるんですけど、「陽のさす向こうへ」も早くライブで歌ってみて、もっと色んなことをこの楽曲に対して感じてみたいです。
――ちなみにShe is Legendの楽曲の歌詞は「きみ」に向けて歌っていることが多いですが、ツインボーカルユニットのお二人としては、お互いのことを意識する瞬間もありますか?
鈴木 めっちゃあります。「死にゆく季節でぼくは」は元々やなぎなぎさんが歌われていて(「死にゆく季節のきみへ」)、好きな曲だったのでシーレジェで歌うことになってすごく幸せな気持ちになったんですけど、この曲の“きみだけに(きみだけに)”と繰り返し歌うところは、ライブだとXAIちゃんのほうを向いて歌うんですよ。そのときに目が合ったりすると、「うわあ、この景色を生涯忘れないかも」って思ったりしますね。
XAI 私も「きみ」の相手は目の前で歌を聞いてくれている人だったり、そのときによって変わりますけど、「死にゆく季節でぼくは」のラストで“きみだけに(きみだけに)”と歌っているときはそう感じますね。
――改めて、麻枝さんが作る楽曲について、歌い手としてどんなところに魅力や表現のし甲斐を感じるかも教えていただけますでしょうか。
XAI 良くも悪くも“嘘がない”ところだと思います。先ほどもお話ししたような、その時の素直な感情や気持ちがダイレクトに楽曲に反映されてくるところは本当にアーティストだと思いますし、歌詞もただ頑張れと言っている感じではないところが、すごく魅力だと思います。
鈴木 私は麻枝さんのことを知れば知るほど少年みたいな人だなって感じていて。麻枝さんが作る楽曲からはすごくピュアさを感じるし、やっぱりピュアに勝るものはないのかなって思うんですよ。一緒にお仕事をさせていただくなかで、自分ももっとピュアでありたいと思うことが多いです。それとどの歌詞も生と死の境目をフワフワしていて、どっちを否定するわけでもない感じがある。そういう気持ちを抱えている人は多いと思うし、きっと麻枝さんの楽曲に救われる人がたくさんいると思うんですよね。それを私たちが歌うのはすごく責任のあることだし、同時にすごく嬉しいことだなって思います。
――ありがとうございます。5月からは本作を携えてのZeppツアー“We are 春眠旅団”が開催されます。前回のツアーを踏まえてどんなライブを届けたいですか?
鈴木 本当に素敵な楽曲がいっぱいなので、まずはこの新しい楽曲たちを私たちの歌でしっかりと伝えられるライブにしたいです。前回のツアーは不安になることや悔しい気持ちもあって、完走できたのはたくさんの方たちが支えてくれたからだと思っていて。実は去年、自分のバースデーライブ(“鈴木このみ Birthday Live 2023~CHEERS BURGER~”)のときに麻枝さんからサプライズでお手紙をいただいて、「ちょっと自分に厳しく見えるので、たまには緩めてもいいですよ」というメッセージがすごく心に沁みたんです。この間のツアーを通して、人の肩を借りながら進むことの大切さをより実感できて、ステージ上で誰かが常に隣にいる心強さを初めて知って。XAIちゃんと2人でならもっとできるという気持ちも芽生えましたし、より頼もしいシーレジェになりたいので、あまり気張ることなく、でもお客さんをグイッと引っ張っていくようなツアーにできたらいいなと思っています。
XAI もう全部言ってもらった気持ちもありますけど(笑)、前回のツアーではシーレジェというものを育てて作り上げることや、難しい楽曲たちを届けるためにパワーを注ぎ込んできましたので、今回のツアーではレジェンダ―(※She is Legendのファンネーム)の皆さんをもっと増やして、シーレジェが広がっていくツアーにできたらいいなと思っています。さっき鈴木さんが「第2のホーム」というお話をしていましたけど、シーレジェチームは本当に暖かくて、私のちょっと駄目なところとかもみんな受け止めてくれるんですよ。そんなみんなと一緒に、毎公演、今その瞬間にしかないライブを、お客さんとも噛み締めていけるツアーにしたいです。と言いつつ、とにかく前回よりも暴れ回るツアーにしたいですね。ライブハウスを壊すくらいの勢いで。
――いや、それはやりすぎです(笑)。
鈴木 やっぱり“面白い相棒”なんですよ(笑)。XAIちゃんにはこのまま面白い人でいてほしい、いつまでも。
XAI はい(笑)。
――最後に、今後シーレジェとして叶えたい目標や野望、2人でどんな景色を見てみたいか、もし具体的なものがあれば聞いてみたいです。
XAI ちょっと話がズレるかもしれないですけど、今、この瞬間にあるものって本当に今しかないし、すべてのことは始まったら終わってしまうじゃないですか。
鈴木 うん。
XAI 私はやなぎなぎさんの「夏気球」を聴いていると、どんな日も絶対にいつかは終わってしまうこと、未来がくることを考えて切なくなるんですけど、『Angel Beats!』と「へブバン」のコラボのときにmarinaさんがいらっしゃって(※marinaはコラボイベント「Beautiful the Blood」の楽曲「一番の宝物 (Crow Ver.)」を新たに歌唱した)、スタジオで当時のスタッフの方と思い出話をされていたらしいんですね。そのことをレコーディングエンジニアの方から聞いて、そういうふうに10年以上前のことを話し合えるのって、こんなにも尊いことはないなって思ったんです。
――なるほど。
XAI 私たちは今、青春だと思いながらシーレジェをやっていますけど、10年以上経ったときにいつかそういう日がくるのかなと思って。そのときのために今は全力疾走したいし、いつかそういう日を迎えるのが私の今の夢です。ちょっと遠すぎる話かもしれないですけど。
鈴木 年始のお茶会でまさにそういう話をしていたんですよ。「BE MY BABY」になりたいよねって。
――「BE MY BABY」?
鈴木 COMPLEXの再結成ライブで、吉川(晃司)さんと布袋(寅泰)さんがステージの両端からそれぞれ出てきて、真ん中で握手するだけでお客さんが「ウォー!」って沸くシーンがあるじゃないですか。
――ああ(笑)。2011年に東京ドームで行われた東日本大震災復興支援チャリティーライブ“日本一心”の名シーンですね。
鈴木 私たちもいつかあんな感じのことをやりたいよね、って笑いながら2人で話してたんですよ。シーレジェからはいつも予想外の楽しさをもらっていて。最初の頃はライブをするとはつゆほども思っていなかったのに、今はこんなにたくさんのレジェンダ―の方に囲まれて歌っていて、アルバムもこんなに早いペースでリリースして、チームも仲間がどんどん増えていって。それこそ私は『Angel Beats!』が大好きだったので、まさか自分が麻枝さんの楽曲を毎月歌うことになるなんて想像もしていなかったんですね。シーレジェチームからは、いつかシーレジェが「ヘブバン」というものを飛び越えるような存在になってほしい、という言葉をたくさんいただくんですけど、これからも予想外のことにどんどん飛び込んでいきたい気持ちです。ロックフェスにも出てみたいですし……!
XAI それは絶対出たい!あとは「ヘブバン」だからこそ叶う、VRライブにもチャレンジしたいです。
鈴木 それ!私、「さよならの速度」のライブ映像がめっちゃ好きなんですよ。いつもレコーディングのときに、ライトフライヤースタジオの方が私たちの表情を撮りに来てくださるんですけど、そういう映像の進化もすごいので、いつかそれをVRライブみたいな形でできたら面白そう。
XAI ね。あのモジモジくんみたいなやつ(モーションキャプチャ用のトラッキングスーツ)を着てリアルタイムで歌いたい!
●リリース情報
2nd アルバム
『春眠旅団』
2024年3月27日(水)リリース
【初回生産限定盤】
価格:¥5,720(税込)
品番:KSLA-0213
※レコードサイズジャケット仕様
【通常盤】
価格:¥3,850(税込)
品番:KSLA-0214
1.春眠旅団
2.Heartbreak Syndrome
3.死にゆく季節でぼくは
4.Long Long Spell
5.Popcorn N’ Roses
6.Thank you for playing~あなたに出会えてよかった~
7.How’s everything
8.Autumn Howl
9.放課後のメロディ
10.World We Changed
11.陽のさす向こうへ
12.起死廻生
13.さよならの速度
●ライブ情報
She is Legend Zepp Tour 2024 “We are 春眠旅団”
5月11日(土) 東京 Zepp Haneda(TOKYO)
開場17:00/開演18:00
5月19日(日) 大阪 Zepp Osaka Bayside
開場16:00/開演17:00
6月9日(日) 北海道 Zepp Sapporo
開場16:00/開演17:00
6月16日(日) 愛知 Zepp Nagoya
開場16:00/開演17:00
6月22日(土) 福岡 Zepp Fukuoka
開場16:00/開演17:00
詳細は、以下の公式HPをご確認ください。
She is Legend Zepp Tour 2024 “We are 春眠旅団” ライブ特設サイト
https://she-is-legend.com/shunmin_zepp/
©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS ©VISUAL ARTS/Key
She is Legend 公式サイト
https://www.she-is-legend.com/
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