リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2024.03.21

今年も“飛躍する年”に――MyGO!!!!!「砂寸奏/回層浮」リリース!羊宮妃那、立石 凛、小日向美香がバンドの“今”を切り取った本作、MyGO!!!!!が見据える未来を語る

今年も“飛躍する年”に――MyGO!!!!!「砂寸奏/回層浮」リリース!羊宮妃那、立石 凛、小日向美香がバンドの“今”を切り取った本作、MyGO!!!!!が見据える未来を語る

TV番組への出演や初の野外フェス参戦など、2024年も快進撃を続ける「BanG Dream!(バンドリ!)」発の“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)”が同期するバンド、MyGO!!!!!。1st Album「迷跡波」から間を置かず届けられた4th Single「砂寸奏/回層浮」は、またも今までにない一面を見せる強烈な1枚となった。現在開催中のライブツアー“MyGO!!!!! ZEPP TOUR 2024「彷徨する渇望」”のタイトルと同じ歌詞を含む勇ましいロックチューン「砂寸奏(さすらい)」。ポエトリーリーディングの要素を強めた変幻自在の異色曲「回層浮(かいそう)」。そして待望の初CD化となる「処救生(こきゅう)」。凄まじいスピードで成長していくバンドの“今”という一瞬を切り取った本作について、メンバーの羊宮妃那(高松 燈役/Vo.)、立石 凛(千早愛音役/Gt.)、小日向美香(長崎そよ役/Ba.)に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 三橋優美子

「砂寸奏」に刻まれた燈の成長、その変化を表現するために

――Single表題曲「砂寸奏(さすらい)」は、ライブツアー“「彷徨する渇望」”の初日、東京公演で初披露された骨太なロックチューン。MyGO!!!!!としては新鮮な楽曲に感じますが、皆さんの第一印象はいかがでしたか?

小日向美香 シンプルにライブ映えする楽曲だと思いました。2024年もたくさんの場所でライブを予定していますが、きっとフェスでお客さんと一体になれる曲だと思いますし、今までの楽曲以上にお客さんと作っていく楽曲になる予感があります。

立石 凛 私は個人的に今までのMyGO!!!!!の楽曲の中でもとても好きなノリの曲だと思いました。実際にこの曲の練習を始めたときも、体でリズムを取りながら弾くのがすごく気持ち良くて。お客さんが声を出したり、クラップできるところも結構あるので、ライブを通して成長できる曲だと思います。

――立石さんは元々こういう曲調が好きなんですか?

立石 私が普段よく聴いているバンドは、こういうかっこいい系かもしれないです。NEEさんとかキタニタツヤさんのかっこいい系の曲と近い雰囲気の気がしていて。最近の自分の中でハマる曲はこういう曲調が多いので、聴いた瞬間にズビーンってきました(笑)。

羊宮妃那 私は難しい曲だなと思いました。音楽的な観点と、見せたい方向性がまた違い、サビのところも、音を繋げて歌うと浮遊しているような歌になってしまうので、そこをガツンと響くように歌いつつメロディに乗せるのが難しくて……。歌詞もすごく難しくて、これは最近のMyGO!!!!!の楽曲全般にも言えることなんですけど、歌詞の言葉がそれまで燈ちゃんから生まれてくる言葉から成長していて、自分でもなかなか抱えきれない言葉がたくさんあります。最初の頃のMyGO!!!!!と比べてどんどん成長を感じることが増えましたね。

――その変化を感じる部分について、もう少し詳しくお話しいただけますでしょうか。

羊宮 最初の頃の楽曲だと、例えば「迷星叫」の“交差点の真ん中 急ぐ人に紛れて 僕だけがあてもなく 漂うみたいだ”という歌詞は、すごく情景が思い浮かぶじゃないですか。「名無声」もサビの“僕が見つけた今日の煌めく空 誰かにちょっと伝えたい”という言葉はどんな気持ちなのかがわかりやすいと思いますし、アニメの楽曲も「碧天伴走」は愛音ちゃんとのやり取りを経て生まれた楽曲なので、歌詞から情景が思い浮かぶんです。でも「砂寸奏」は、最初の“同じ音符を追いかけるのに 昨日とは何かが 違うみたいだ”という言葉1つ取っても、聴いた人それぞれが違うものを思い浮かべそうなんですよね。

――確かに抽象的な印象があります。

羊宮 そうなんです。今までは〈悲しい〉とか〈寂しい〉みたいな感情がどこかに見えていたんですけど、“同じ音符を追いかける”っていうのはどういう気持ちなんだろう?と思って。“昨日とは何かが 違うみたいだ”も焦っているのか、悲しいのか、そこに何の感情があるのかを読み解いていかないと全然わからないですし、羊宮妃那として読み解いたうえで、燈として歌うことをしないと難しいんです。“1秒前の僕はもういない”というのは〈悲しい〉や〈寂しい〉だと思うんですけど、そこから“彷徨する渇望 もう止めないで いいよね”と続くと、どんな気持ちなのか理解するのが難しくて……。

――細かい感情の作り方は置いておくとして、この楽曲を歌っている瞬間の燈の状況や成長具合としては、どんなイメージがありましたか?

羊宮 燈ちゃんは成長していくと〈叫び〉がちゃんと〈歌〉になっていくイメージがあるのですが、この楽曲はそもそも音楽的に難しいので、叫べるポイントがないんです。唯一叫べるとしたら2番の“今にしか 叫べない”のところですけど、ここも声を裏返すだけで思い切り叫べるわけではないので、どういう立ち回りをしたら成長して「砂寸奏」を書いた燈ちゃんを表現できるか、すごく悩みながら歌っていました。1つ私から提案したのは、最後の“うたからうたへ”の後に「Yeah~」と歌い上げていくところで、ここは仮歌の段階ではフェイクが無かったのですが、私がテストでフェイクを入れて歌ってみたのですが、それを採用していただいておりました。

――現場で歌のアプローチを組み立てていくことも多いんですね。

羊宮 最近は私の提案を取り入れてくださることが増えました。レコーディング現場が本当に温かくて、音楽的な判断だけではなくて、私が歌に乗せたい気持ちも汲み取ったうえで何回もチャレンジさせていただいていて、燈ちゃんの中に芽生えるものを大切にしてくださっている現場です。

羊宮妃那(高松 燈役/Vo.)

羊宮妃那(高松 燈役/Vo.)

――立石さんと小日向さんは、この曲の歌詞についてどんな印象を受けましたか?

立石 私もすごく曖昧な部分のある歌詞だと感じていました。これはすごく感覚的な話になるんですけど、私は楽曲を聴くと色が浮かぶタイプで、大体の場合、曲調と歌詞は同じような色味に感じることが多いんです。でも「砂寸奏」は、最初に歌詞が入っていない状態の音源を聴かせていただいたとき、パキッとした黄色っぽい色が浮かんだんですけど、歌詞を読んだらくすんだ青っぽい印象があって。

羊宮 そう!くすんでるよね!この曲は感情が見えにくいんですよ。それこそ2番のAメロの“乾いた喉が 掠れる声が 絞り出してた咆哮 この身に刻む”も、例えば“この身にしみる”とか“この身に痛む”だったらどう感じているかわかりやすいと思うんです。「名無声」だと“違うよ”と言っていたけど、この曲では“違うみたいだ”って客観的に言っていますし、全体的に情景をそのまま伝えているだけの印象があって。燈ちゃんとして心情を込めるというより、客観的なものに聴こえる瞬間がたくさんあるんですよね。最後の“旅人のように 泡沫に舞え うたからうたへ”も、まるで詩みたいじゃないですか。どうしたいのかがあまり見えてこないので、より一層私が「迷子」だなって思いました。

立石 凛(千早愛音役/Gt.)

立石 凛(千早愛音役/Gt.)

――詩のような表現になっているのは、燈の成長や進化を表しているのかもしれないですね。

羊宮 それはすごく感じます。最初の頃よりも歌詞の表現の幅が広がっているように感じますし、それを表すことができる藤原(優樹/作詞家)さんが本当にすごいなって、ずっと思い続けています。以前よりも世界観がギュッてまとまりましたよね。それこそこの曲の歌詞も、物語の1つみたいになっているので。

小日向 私は選ぶ言葉の1つ1つに勇ましさが加わったなと感じています。それこそ今回のツアー(“MyGO!!!!! ZEPP TOUR 2024「彷徨する渇望」”)のキービジュアルもMyGO!!!!!のみんなが勇ましくて、今まで見たことのない表情をしているのですが、その表情の燈ちゃんが作った曲だと考えると何となく納得できるなと思っていて。

羊宮 確かにそうだね。

小日向 この曲では、そよちゃんも“Uh Wow wow”のところを歌っているんですけど、プロデューサーさんとしっかりと話し合ったうえで、キリッとした声色で歌わせてもらっているんです。その意味で言うと、みんなの強さが上がった曲なのかなって思いました。

小日向美香(長崎そよ役/Ba.)

小日向美香(長崎そよ役/Ba.)

――なるほど。少し余談になるかもですが、この楽曲をツアー初日で初披露したとき、燈役の羊宮さんが手を振って客席を煽っていたじゃないですか。“リスアニ!LIVE 2024”でも燈が声出しの旗振りをしていましたし、これまでの燈のライブでの振る舞いよりも積極性が増した印象があったんですよね。

羊宮 そこは自分の中で決めた段取りで。“ANIMAX MUSIX 2023”の出演後にみんなで話し合いをして、“リスアニ!LIVE 2024”で新しいチャレンジをして、ツアーでも公演ごとに変化を付けることで、燈ちゃんの成長過程を表現しています。それが難しくて、今は頭の中がパンクしそうなんですけど(笑)。

――それまでの燈にはないアクションだったので、観ていてびっくりしました。

羊宮 そうですよね(笑)。でもキャラクターにせよ三次元の人間にせよ、成長というのは人の予想を超えていくものだと思うんです。

――話を戻しまして、「砂寸奏」はサイドギターの立石さんが弾くギターリフをはじめ、サウンド的にも聴きどころが満載です。演奏面で新鮮さを感じる部分はありますか?

小日向 Aメロのミュートする部分は、ここまでピタッ!て演奏を止めなくてはいけない曲は初めてだったので、演奏するときはみんなの音にすごく集中しています。ライブや練習を重ねてより精度を上げて、技術だけでなく心ごと皆と一体になれたらバンドとしてもっと成長できるなと思っています。

立石 でも、Zeppツアーの初日で初披露したときは、正直、みんなで合わせる練習はそこまでできていなくて。そのライブでは「歌いましょう鳴らしましょう」もライブ初披露だったので、「砂寸奏」ばかりに時間を割くことができなかったんです。

羊宮 あの曲(「歌いましょう鳴らしましょう」)も大変だよね……。

小日向 でも、2番のAメロのところは凛ちゃんのギターと私のベースが同じフレーズを弾くので、本番の当日リハのときに2人で話して「ここは向かい合って演奏しよう」って決めたんです。そうしたら本番は今までの練習以上にピタッとハマって。ライブでその感覚を掴めたのがすごく嬉しかったです。

衝撃のナンバー「回層浮」での新たな挑戦、深い海に渦巻く思い

――Singleのもう一方の表題曲「回層浮(かいそう)」はポエトリーリーディング路線でありつつ、波のように引いては押し寄せるサウンドが斬新なポストロック的ナンバー。正直、とんでもない楽曲ですね。

立石 最初に聴いたとき、情報量が多すぎて「何、この曲?」って思いました(笑)。今、実際に練習しているんですけど(※取材は同曲がライブ初披露されたツアーの福岡公演の前に実施)、ノリとかで合わせられる曲ではないので、バンドでどう合わせるかを迷っていて。この間、いつも練習を見てくれている先生が「この曲はみんなで想像する景色やイメージを統一した方が合わせやすいと思う」とおっしゃっていたので、これからイメージを擦り合わせしていくところです。それで言うと「潜在表明」を初めてみんなで合わせたときを思い出すような曲でもあります。

羊宮 この曲も難しくて、「潜在表明」よりも語りに近しい表現をしているので、歌の発声と活舌のいい発声を切り替えながら歌うのがすごく大変で。しかも単語も情報量も多いので……とにかくすごく難しいです(笑)。

小日向 燈ちゃんのポエトリーリーディングに被せて私たちが歌を歌う曲というのもこれが初めてで、新しい構成だなと思いました。これは私の感想なんですけど、きっとMyGO!!!!!のみんなも演奏しながらも抱えている想いがあって、その感情を表現しているのかなと思ったのですが……。

――このコーラスの被せは何か意図があるのでしょうか?

緒方航貴(ブシロードミュージック・MyGO!!!!!音楽プロデューサー) これは色んな想いが渦巻いているイメージで、実際に歌っているのは皆さんですけど、もしかしたら燈が頭の中で思っているメンバーかもしれない、という側面もあります。なのでコーラスの歌入れのときにも、皆さんには「キャラ感を思い切り出さなくていい」というお話をさせていただきました。もちろん本当の気持ちも入っていると思うんですけど、一応、燈の頭の中で完結しているかもしれない世界、という解釈ですね。

――現在ライブに向けて練習中とのことですが、演奏面でのポイントは?

立石 愛音としては(ストロークで)ジャカジャカ弾くパートがほとんどなんですけど、「回層浮」はアルペジオが今までで一番多い曲です。それと2サビ終わりで入る間奏の部分の楽譜のセクション名が「Deep Sea」になっていて、深い海の中で渦巻くような楽曲なんだなって、その名前を見てすごくしっくりきました。

小日向 え~、すごくかっこいい!ベースのパートは、先生もすごく掴みづらい楽曲とおっしゃっていて、どこで落としてどこにピークを持ってくるかを一番話し合っている曲です。それと新しい奏法にも挑戦していて、ベースは基本1本の弦を弾くのですが、この曲では3本の弦を同時に弾いている箇所があり、音をハモらせています。あとは、しっかりミュートしてリズムを刻む箇所もあって、すごく苦戦しました。メンバーみんなの演奏がガチッとハマったらとんでもなく化ける曲だと思います。

――羊宮さんにとってはとても難しい楽曲というお話しでしたが、歌の表現ではどんなことを心がけて練習していますか?

羊宮 この曲は歌よりもポエトリーリーディングの要素が多いので、どこに盛り上げどころを作るかは私次第になるんですよ。イメージとしては、ずっと焦燥感に駆られているというか、海にどんどん沈んでいくんですけど、そのなかで苦しさがパッと出てしまうポイントが何か所もあって、そのすべてを強く表現してしまうと引き込まれなくなってしまうので、私もまだ迷子になりながら探っているところです。ライブでどのような「回層浮」を披露できるのか、今から楽しみですね。

立石小日向 おおー!

羊宮 ……でも、楽しみは正直1割くらいで、残りの9割は「この曲を噛まずに歌い切れるかな……」っていう不安があります(苦笑)。CDがリリースされた暁には皆さんにもぜひ挑戦してみてほしいです!

――音源での話になりますが、個人的には“僕を離さない”と“僕を抱きとめて”の箇所での燈の感情の爆発の仕方に圧倒されました。

羊宮 ありがとうございます!ちなみに1Aの“僕にしか聞こえない”のところは、私は最初〈悲しい〉イメージで捉えていたんですけど、ここは“僕にしか聞こえない”ことが〈心地良い〉ということだったので、笑いのニュアンスをほんの少し入れるために何回もリテイクさせていただいたんです。そういうこだわりが散りばめられているのがMyGO!!!!!の楽曲なので、今回は少し明かしてしまいましたけど、良かったら皆さんもぜひ探してみてください。

次ページ:立希と楽奈のストーリーに寄り添った“呼吸”の歌

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP