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INTERVIEW

2024.03.12

ASCA、新作はまさに“VIVID”な1枚に!ニューアルバム『VIVID』に込めた想いを語る

ASCA、新作はまさに“VIVID”な1枚に!ニューアルバム『VIVID』に込めた想いを語る

シンガー・ASCAの約3年ぶりとなる3rdフルアルバム『VIVID』は、人気アニメの主題歌をはじめ、実力派アーティストが書き下ろした3つのラブソングなど全13曲が収録された、文字どおり“色鮮やか”な1枚だ。海外での積極的なライブ活動、昨年2月の声帯ポリープの摘出手術、コロナ禍など、前作『百希夜行』からの3年間は彼女にとって激動の期間でもあった。進化と変化を両立させる彼女にアルバムへの想いをじっくりと語ってもらった。

INTERVIEW BY 北野 創
TEXT BY 河瀬タツヤ

音楽の楽しさを取り戻した“ASCAの第2章”

――1月27日に行われた“リスアニ!LIVE 2024”のパフォーマンスは今回も素晴らしかったです。

ASCA ありがとうございます。“リスアニ!LIVE”での声出し解禁が4年ぶりということで、セットリストもそこを加味しながら考えました。特に声出し楽曲の「Howling」はコロナ禍でも「心の中でもみんなと一緒に叫びたい」という思いを抱きながら“リスアニ!LIVE”でずっと歌い続けてきたので、今回も「『Howling』をやらないと始まらない!」と思って選んだんです。(コロナ禍で)何年も我慢してきたので、「この時を待っていたんだ!」という熱を自分自身からもお客さんからも感じることができましたね。

――今回で4年連続5回目の出演ですし、今やASCAさんは“リスアニ!LIVE”には欠かせないアーティストですね。

ASCA 2019年の初出演のときには想像もしていなかったので本当にありがたいですね。今回はFictionJunctionさんや、TVアニメ『豚のレバーは加熱しろ』(の主題歌タッグ)で出会ったMyukさんなど、見知った顔が年々増えていくのも真剣に音楽を続けてきたからこそ生まれたものだし、これからもご縁を大事にしていきたいです。今回、(FictionJunctionのfeat.ボーカルとして“リスアニ!LIVE 2024”に出演していた)レーベルの先輩のLiSAさんも「先輩からもらった優しさを後輩に渡している」とおっしゃっていましたし、私も後輩ができた時はそういう優しさをどんどん継承していきたいなと思います。

――そんなASCAさんの最新作が、3年ぶりとなる3rdアルバム『VIVID』になります。1stアルバム『百歌繚乱』、2ndアルバム『百希夜行』はどちらも“百”という単語が入っていましたが、今回の英語のアルバムタイトルで雰囲気がガラッと変わっています。今回はどんなコンセプトで作り始めたんでしょうか?

ASCA まず、このアルバムの制作時期にASCAの制作チームのメンバーが大きく変わったんですね。加えて、昨年2月に声帯ポリープの摘出手術を受けたことも大いに影響していて、手術前は思うように歌えず歌に対して消極的になってしまうときもあったんですけど、それらを経たことで、続けていくことの尊さや、続けたことで見えた希望を今の私は絶対に歌えるという確信が芽生えたんです。なので、まったく新しい“ASCAの第2章”を見せたいと思い、“百“をタイトルに入れる案はやめて、タイトルを決める会議を2回もやるくらいタイトル案をたくさん考えました。そのなかで去年の11月にアーティストデビュー6周年を迎えて、(手術を経て)音楽の楽しさを取り戻せたのもあって、”6“という数字を入れるのも新しいなと思ったんです。6はローマ数字で“VI”なので、それを重ねて「VIVI」にしたらかわいいよねとなり、そこから「VIVID」という単語を見つけたときにはチーム全員が「これだ!」となりました。今回のアルバムの内容は今までにやってきていないことをたくさん詰め込んでいるので、「VIVID」の“色鮮やかな”という意味はぴったりで、他にも“生き生きとした”という意味など、色んな意味を込めたタイトルになっています。

――昨年行われた5周年ライブのタイトルも“ASCA 5th ANNIVERSARY TOUR 2023 −ⅤⅤⅤ−”と“V”が連なっていたので、その流れでもありますね。

ASCA そうですね、そのアイデアは継承しました。ビジュアル的には、今までは赤や黒をテーマカラーにしてきましたけど、やっぱりイメージを変えるなら色をガラッと変えるのが最もわかりやすいので、ありとあらゆる「VIVID」の色をかき集めたジャケットで“楽しさ”を派手に表現してみました。濃い原色が集まった色味は好きだしずっとやってみたかったので、ジャケット1つとってもきっと伝わるものがあると思います。

世界中のファンを意識した新たなライブチューン

――そんなアルバムの楽曲について新曲を中心に掘り下げていきます。まず1曲目のインスト曲「Overture」は、作曲クレジットがASCAさんになっていますね。

ASCA 実は作った順番でいうと、「Overture」よりも13曲目の「Departure」のほうが先にできたんです。ここ数年間で海外の多くの国を周って感じたことをアカペラで届けたいと思って作った曲で、「Departure」は世界の街を歩きながら口ずさんでいるイメージで録っています。その時最初に浮かんできたフレーズが「Overture」に入っているメロディなんです。なので、「Overture」と「Departure」には大元になっている共通のメロディがあって、そのメロディを元に編曲して作られたのが「Overture」になっています。

――アルバムのトラックリストの視点で見ると、13曲目の「Departure」を聴いたあとにまた1曲目の「Overture」に戻ってくるような仕組みになっているんですね。

ASCA もし順番に(アルバムを)上から聴いていただいたときに伏線回収のようなことができたらアルバムとして面白いと思ってできた曲になっています。色んな街を歩いて、色んな人と出会って、色んな声を届けてもらって、日本だけじゃなく世界中を感じるような音になったんじゃないかなと思いますね。

――次の2曲目の「VIVID WORLD」でも「国境を超えろ」と歌っていますものね。

ASCA アルバムリード曲の「VIVID WORLD」はまさにその経験を詰め込んだ曲になっていて、日本でも海外でもファンの皆さんと一緒に歌いたいという思いで英語の歌詞をたくさん入れてみました。これまで私が作詞した楽曲は日本語の歌詞が多かったので、今回はそういう点でも新しく挑戦させてもらいましたね。すごく苦戦しましたけど、生き生きとした気持ちやハッピーな気持ち、かっこ良さを全部詰め込んだ「みんなも怖がらずに一緒に新しいことをどんどんやっていこう!」というリード曲になりました。

――曲調は違いますが、「Real Dawn」に通じるギラつきを感じます。

ASCA まさに「Real Dawn」からの流れもあって、海外ではここ最近「Stellar」と「Real Dawn」はマストで歌っているんですよ。「Real Dawn」の間奏の部分に「ラララ♪」で歌える箇所があって、原曲の4倍くらい(尺を)伸ばしてとにかくみんなで「ラララ♪」を歌うことで、「ライブって楽しい!」という体験を(皆さんから)たくさんもらってきたんですね。その流れもあって、「VIVID WORLD」は一緒に歌える箇所を過去最大に多くした曲になっています。海外の方でも一緒に歌えるように英語にしたり、初めて聴いた人でもわかるように「Shout it out!」と同じフレーズを繰り返すパートを作ったり、意識してシンプルに作っていきました。なので、盛り上がってくれなきゃ困りますね(笑)。ライブ曲に育っていくだろうと確信しております。

――作曲・編曲のYOSHIHIRO(KEYTONE)さんとは初顔合わせですよね。この楽曲を選んだ決め手は?

ASCA 一番の決め手はコーラスで、元のデモ楽曲が1人だけじゃなくて何人かで歌っていたんです。“みんなで一緒に歌う”が「VIVID」の1つのテーマとしてあったので、今回のアルバムを象徴する楽曲だと感じて選びました。「Shout it out! 」のコーラスはスタジオに立てた1本のマイクの周りにスタッフの皆さんを配置して歌ったんですけど、恥ずかしそうに歌う人、自信を持って歌う人、音程を気にせず楽しそうに歌う人など色んな人がいて、こんな風にライブもできていくんだろうなという景色がレコーディング段階ですでに見えたので、ライブがすごく楽しみになりましたね。

――歌詞に目を向けると、“過去に生きるなんていやいや”“大人ぶっちゃいらんないやいや”の辺りはキュートな部分もありつつ、ASCAさんらしさを感じるフレーズだと思います。

ASCA 自分は良いことでも辛いことでもあまり過去を振り返らないようにしていて、それは“過去に浸る”ということは今を生きていないことになってしまう気がするからなんです。とにかく今を生きて、自分の周りにいる人たちを大事にして楽しいことを見つける。個人的にはとてもポジティブなフレーズになったんじゃないかなと思っています。

――「VIVID WORLD」はMVも製作されていますが、MVの印象的なエピソードはありますか?衣装もなかなか「VIVID」な色合いでしたね。

ASCA 今まで着たことのない全身真っピンクな衣装でした。MVは夕方の屋上のシーンから撮影がスタートしたんですけど、前髪のセットに時間がかかってしまって、夕日が沈みそうになりながら駆け足で屋上に上って寒空の下で撮ったんです。ただ、屋上のシーンは引きの映像だったので、実際には前髪はあまり見えなかったんですよね。まあ、前髪のこだわりは気持ちよく歌うためのものですから無駄にはならなかったですが(笑)。

アプローチの異なる2つの失恋ソング

――アルバムの新曲のうち、3曲は様々なアーティストの方から提供された書き下ろしのラブソングになっています。まずアルバム3曲目の「上海小夜曲(Shanghai Serenade)」はBURNOUT SYNDROMESの熊谷和海さんによるもので、熊谷さんとは昨年コラボした「KUNOICHI」に続いての提供になります。これはどんなイメージで作られたのですか?

ASCA 熊谷さん曰く「ASCAさんには艶やかに可哀そうな女性であってほしい」とのことで(笑)。

――それは熊谷さんの願望ですか?(笑)。

ASCA この曲は失恋してしまった女の子が主人公で、上海に出張に行った主人公が昔付き合っていた上海の彼との出来事を思い出しながら、上海のホテルの2016号室の窓の下で艶やかに切なく歌っているという曲です。熊谷さんは「KOE」や「雲雀」での私の中低音がすごく魅力的だとおっしゃっていて、その辺りが響くような楽曲を作ってくださいました。「KUNOICHI」は報われない恋をしている女の子が主人公で、キャラクターを演じるように艶っぽく歌ったのが本当に楽しかったので、「上海小夜曲(Shanghai Serenade)」もまさにそんな1曲になっています。ASCAとして歌うというよりも、実在しない上海の元彼との綺麗な思い出を歌っているような感じをイメージしました。レコーディングは熊谷さんがボーカルディレクションもしてくださったんですが、やっぱりご自身でも歌われているのでボーカリストを乗せるのが上手いんですよ。どういう言葉がテンションを上げるのか、すごく考えてやってくださいました。

――ASCAさんにこう歌ってほしいという熊谷さんの理想像もあったんじゃないでしょうか?

ASCA あったと思います。タイトルの“小夜曲”は窓下で恋人を思いながら歌う曲という意味があるらしく、「大勢に向かって歌い上げるのではなく、過去を思いながら口ずさむように声を張らずに歌ってほしい」というオーダーをいただいていました。1番のサビは基本的にファルセットで歌って、途中から熊谷さんにコーラスを入れていただく形になっているのですが、熊谷さんが入ってきた時の声の重なり方が切なすぎてすごく好きなんです。今は会えない昔の恋人の声を表現しているかのようで、昔こうやって会話していた時もあったんだろうなぁ、とか。

――次の新曲はアルバムの8曲目「あなたが居ないこの世界でも」。シンガーソングライターの阿部真央さんによる提供で、「NO FAKE」「regain」に続いて3曲目の書き下ろし楽曲になります。今までの阿部真央さんの提供曲はかなり激情感溢れるイメージでしたが、今回はだいぶ趣が異なりますね。

ASCA 学生の頃から何百回と聴いてきたと自負するくらい、真央さんの失恋ソングが大好きなんですよ。真央さんの曲はピアノとボーカルだけの構成で淡々と歌っている曲があって、もう思う存分泣かせてくれるんですよね。こういう失恋ソングを歌いたいとずっと思っていたので、日頃からプライベートでも仲良くしてくださっているのもあってお願いしたら「やろうよ」と快く言ってくださいました。

――この楽曲もまさにピアノ1本で、穏やかで淡々とした雰囲気の曲になっています。

ASCA とにかく浸りたい時って、あまりボーカルに感情が乗ってないものがいいというのを自分自身も体験していたので、この曲をレコーディングするときは“淡々と”を意識して歌っていきました。私自身もこういうピアノ1本だけの失恋ソングに挑戦するのは初めてだったし、今回は私が真央さんと会話をしながら作り上げていきたいという思いもあったので、真央さんには初めてボーカルディレクションもしていただきました。私も真央さんもとにかくこの曲はサビにこだわっていて、特に1行目の“空は青く 春は遠く”の部分は本当に細かくディレクションをしていただきました。説明が難しいんですけど、「声を当てる場所を、今ちょっと奥側にあるのをもう少し手前にしてもらえる?」みたいな感じで、実際にやってみたら声を当てる場所で声質が変わったので、「こっちのほうが淡々と聴こえる」「こっちのほうが切ない」など、色々分析しながら録り進めていきました。一方で、1番と2番のAメロ・Bメロは、「一番初めにとりあえず歌ってみよう」で何も考えずに淡々と歌ったゼロテイクが使われていたりもします。

――熊谷さんや阿部さんといった歴戦のボーカリストの方々に直接指導をいただいたことで得られたものも多かったんじゃないですか?

ASCA すごく多かったです。自分の中で言語化できなかったことをスパっと言ってくださったり、ひらめきをたくさんいただいたり、長年悩んでいたことを解決してくださったり、特別な体験を皆さんにいただきました。

次ページ:「この先何度でも何度でも幻滅してあげるね」

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