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REPORT

2024.03.08

10年間の“アニソン愛、アニソンファン愛”の集大成、オーイシ流・極上のエンターテインメント・ショーを振り返る―― “オーイシ武道館“ロングレポート

10年間の“アニソン愛、アニソンファン愛”の集大成、オーイシ流・極上のエンターテインメント・ショーを振り返る―― “オーイシ武道館“ロングレポート

2024年3月2日、アニソンシンガーとしてのデビュー10周年イヤーを駆け抜けるオーイシマサヨシが、初の日本武道館ライブ“オーイシ武道館 ~オーイシマサヨシ ワンマンライブ at 日本武道館~”を開催した。チケットは7ヵ月前に早々にソールドアウト。立ち見席を含めた約1万人の現地ファンと、2万人以上の生配信視聴者に、スペシャルゲスト満載で届けたオーイシ流・極上のエンターテインメント・ショーを振り返る。

TEXT BY 阿部美香
PHOTOGRAPHY BY 大参久人、二上大志郎、濱谷幸江

伝説の幕開けは1万人の手拍子と大声が響く「エンターテイナー」から

昨年11月、「リスアニ!」でのシングル「好きになっちゃダメな人」のリリースインタビューで、来たるべき“オーイシ武道館 ~オーイシマサヨシ ワンマンライブ at 日本武道館~”に向け、チケット完売を喜びながら「『いっちょ伝説作ったろ』と思っております。この言葉を見出しにして、太字にしてもらっていいくらい気合いが入っております。」と語っていたオーイシ。1964年の開館から日本の伝統的武道の聖地としてだけでなく、1966年ザ・ビートルズの来日コンサート以降はロックバンドの聖地、音楽ライブの聖地として、数々の伝説を紡いできた日本武道館。そこは、アニソンシンガー/アニソンクリエイターとしての10年間を築いてきたオーイシマサヨシにとってだけでなく、彼を愛するファンにとっても、特別な感情を揺さぶる場所だったに違いない。(もちろんバンドマンとして、シンガーソングライターとして、堅実にキャリアを重ねてきた大石昌良にとってもだろう!)

常に“一分の隙もないエンターテインメント”を届けてくれるオーイシのステージは、まさに“ショー”と呼ぶのにふさわしい。彼はいつも初心者からマニアまで「誰も置いていかないライブ」を公言。練り込まれた構成で1ステージの毎分毎秒、どうやったらみんなを楽しませることができるか?を、とことん追求する。そのオーイシ流のおもてなしは、武道館公演開催をサプライズ発表した1年前の“オーイシマサヨシ ワンマンライブ 2023”が、ある種の完成形かと思われたが……その予想は甘かった!オーイシの実力派アーティストとしての高みと、出し惜しみナシのショーマンシップが見事なまでに融合し、スケールアップした今回の“オーイシ武道館”は、彼の10年間の“アニソン愛、アニソンファン愛”の集大成であったと同時に、アニメ界においてオーイシマサヨシが、いかに重要な地位を築いてきたかを身を以て体現してくれた素晴らしい空間だった。

アリーナ席から2階スタンド奥の立ち見席まで、どこまでも人、人、人で埋め尽くされた武道館。上を見れば、天井から吊り下げられた日の丸が目に入り、ここが本当に日本武道館であることを実感させられる。毎回、工夫が凝らされるワンマンのオープニング。今日はいったいどんなお楽しみが?……と、思っていたところで場内が暗転し、ステージを覆う巨大スクリーンが墨絵タッチの富士山を映す。雅なBGMにのせて「さぁさぁ、いよいよ始まる夢の舞台……」という男性のナレーションが流れ出す。それが声優・津田健次郎の声だとわかった途端、悲鳴のような歓声が沸き上がる。幼少期、卒園アルバムに「かしゅになりたい」と綴ったオーイシの幼少期のエピソードも交えながら、そして津田がオーイシ自身の意気込みを代弁しながら、ライブの注意事項を芝居調でコミカルに読み上げると、いやがうえにもが気分が上がる。

そして津田の声が「いざ、開幕」を宣言して暗転。一斉に赤く染まる客席。アリーナ席の真ん中にスモークが吹き上がり、真っ赤なドレープカーテンを背景にして、センターステージに真っ白なスーツ姿(右ジャケットに描かれた“014 BUDOKAN”の文字が眩しい!)のオーイシマサヨシがポップアップから登場して、マイクを握って凜と立ち、伸びやかな声で歌い出す。彼が夢の武道館の1曲目に選んだのは「エンターテイナー」。1年前のワンマンライブで、エンディングを飾ったあの曲だ。

センターステージに寝転がり、“だけどもう僕は知ってしまった 正真正銘のワンダーランド 1万を超える人が手を叩き大声を上げる なんてこった”と座り込んで客席を見回し、歌い上げるオーイシの表情はほんの少し上気して、何かを噛みしめているようにも見える。“さあ連れてってくれ その理想郷へ”と彼が客席に真っ直ぐ手を伸ばすと、舞台上の3面のLEDスクリーンが一斉に生配信リスナーのコメントを流し出す。スクリーンに流れる大量のおめでとうコメントを浴びながら、その声なき声援にも応えるように、ランウェイを両手を挙げてメインステージに歩み寄るオーイシ。彼がファンと共に夢見た理想郷こそが、今日のこの場所だ。

「今日は最高の1日にしようよ、みんな!」

オーディエンスのクラップにのせて、コンディション絶好調のオーイシの歌声がどこまでも伸び伸びと響いて「オトモダチフィルム」へ。ピンクの照明を浴びて、ニコニコと笑いながら軽快なダンスを披露し、「武道館―!」と嬉しそうにコールする。ドラマティックな演出から、いつものオーイシワンマンへと華麗に誘うこの緩急。それもオーイシのライブだからこその楽しさだ。

「アニソン界のおしゃべりクソメガネこと、オーイシマサヨシです!会いたかったぜ、武道館―!」といつも通りの挨拶をしながらも、いつも以上の大歓声に「ヤバ……」と笑いがこみ上げるオーイシ。男性ファンからのお馴染みの“帰れコール”にも、「通常営業やめてもらっていいですか?夢の舞台なんで」といなし、自らおめでとうコールを要求したりと、コミカルな掛け合いを楽しんでいく。「X」の日本トレンド1位になったこと、配信視聴者数が2万人を超えていることを報告し、「俺、そんな人気あったん?」と笑わせる。舞台がいくら大きくなっても、ファンとのフレンドリーな距離感を変えないのもオーイシらしい。

ファンにはお馴染みの“2人組オタク”も登場!

ここで次の曲は「ギフト」……と曲紹介をするも、早速、今日ならではのお楽しみ企画を発動する。昨年のワンマンではMVでダンス共演を果たしたキュートなモデル・ウーリャがゲスト出演したこの曲だったが、今日は不参加……ということで、せっかくなのでお客さんから「ギフト」をフルコーラス一緒に踊れる「現地ウーリャちゃんを仕込みなしでガチで選びます」と言って客席を見回し、発見したのは、オーイシのフリーライブで「ギフト」のダンスを完コピした様子を撮影した動画がSNSで大バズりした“2人組オタク”! 客席から歓声が巻き起こり、2人はセンターステージへ。オーイシダンサーズと共に、見事なパフォーマンスを披露すると、歌いながらオーイシも爆笑。ラストは3人で肩を組み、喝采を浴びる。

「やっぱオーイシ武道館はこうでないとダメやね、お客さんと作っていこうや!」と嬉しそうに言いながらも、「なんで俺、こんなふうになってもうたんやろ。最初はさ、もっと良い感じのバンドマンやってんけどな。『Mステ』で、女子高生に人気のロックバンドSound Scheduleって言われてたわ。お客さんの比率も9:1で女性のほうが多かってんけど、今7:3で男やからね。あのときの女の子たちどこいったん?」と、笑いながらボヤキ出すと、ここでまた冷やかしのヤジが飛ぶ。そして、「いつの間にか俺、オタクのことが好きになっちゃってて」と告白し、次なる曲は、そんな彼の気持ちにピッタリと紹介された「好きになっちゃダメな人」。キュートなリリックビデオをバックに、グルーヴィな歌声を聴かせて指ハートを贈る。

ほっこりしたステージから一転、ここで強烈なシンセサウンドと不気味な笑い声が響き、暗転したステージからレーザービームが飛び交って、客席でゾンビダンスを踊りスポットライトを浴びたのは、ネルシャツ姿のRAB(リアルアキバボーイズ)のメンバーだ。スクリーンに映し出された「リアルアキバボーイズ参戦!」の文字に、またも歓声が大きくなり、メインステージにRABが集結。始まったのは「死んだ!」。

セットリストはそのまま「死んだ!」同様にRABとMVでダンス共演した、ライブ初披露となる最新ナンバー「なまらめんこいギャル」へとなだれ込む。パンチの効いた泥臭いソウルミュージックと往年のディスコサウンドが融合したこの曲は、ライブで聴いてこその魅力にあふれている。キレのいい奈良悠樹(Gt/バンマス)のカッティングギター、ソウルフルな岸田勇気(Key)のエレクトリックピアノ、髭白健(Dr)が刻むタイトなリズムにのせて工藤 嶺(Ba)のスラップが踊り、湯本淳希(Tp)・とっち(Tb)・ヒロムーチョ(Sax)による強烈なブラスサウンドが、飛び跳ねながらもブレない珠玉の歌声を聴かせるオーイシのボーカルを彩り、RABの面々が華麗なブレイクダンスを決めて、武道館をディスコフロアに変える。華々しいダンスタイムは『【推しの子】』挿入歌「サインはB (TV size)」の振り付きカバーで、さらに盛り上がりを見せた。

『ウルトラマンR/B』のヒーロー達がオーイシを祝福

ダンスで切れた息を整えながら、「男性ソロ・アニソンシンガー初の武道館らしいですよ、今日。ヤバない?アニソンの歴史にオーイシマサヨシが刻まれた瞬間でございます」と報告し、「アニソン界に向けてもね、ミソをつけたくないというか。恥をかかせたくないなと思って、今日はオーイシの持てる力をとコネクションを全て集めて、集大成でお届けしております」と語りかける。改めて、今年はオーイシマサヨシの10周年イヤーであり、「本当にたくさんの方々に出会って、たくさんのキャラクターたち、そしてヒーローたちに出会って、最高の 10年間だったなと思います」と振り返るが……ここで彼が拾い上げたのは、『ウルトラマンR/B』の変身アイテム・DXルーブジャイロだ。ニコリと笑って「じゃあ、“絆を諦めない”曲やりますか?」と言って劇中の合い言葉を全員でコールすると、ウルトラマンロッソとウルトラマンブルが登場。温かなメッセージを紡ぐ「Hands」を歌うオーイシと拳を交わし、ワチャワチャと楽しそうに肩を組み、左右に手を振ってオーディエンスをリードする。

(C)円谷プロ

(C)円谷プロ

コミカルな芝居仕掛けで楽しませてくれたロッソとブルがステージを後にすると、ここからは壮大な楽曲が続く。真っ白なペンライトと美しいライティング、白いドレス姿のダンサーが、オーイシの雄大なボーカルを演出してドラマティックな空間を作り上げた「英雄の歌」。幻想的なスモークがステージを覆い尽くし、聴く者の五感の全てを喰らい尽くすような圧倒的なハイトーンが襲いかかった「碧い砲撃」。こうしたシリアスな楽曲が放たれる場面であればあるほど、アニソンシンガー・オーイシマサヨシとしての徹底したショーマンシップは、彼が卓越した実力を備えた“歌い人”であるからこそ成立し、心を揺さぶる感動を与えてくれていることの証明だ。笑いが絶えない愉快なワンマンライブに、頭を殴られるような重たい楔を打ち込むこの2曲は、彼が唯一無二のアーティストであることを、しっかりと刻みつけた。

次ページ:スペシャルゲスト・大石昌良も鮮烈なパフォーマンスを披露

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