歓声の中で、ステージはまた新しい景色へ。アコースティックギターを手にしたオーイシは、「44歳で初めての武道館です。意味があるね、40代の武道館はめちゃくちゃ意味があると思うよ、俺は。こういう景色が広がってたんやね、最高やわ」と、改めて武道館公演への想いを語る。
「これが、俺が10年間歩んできた道なんだと思ったら、感慨深いものがありました。改めて、今日集まってくれた皆さん、そして配信で観ている皆さん、 そして今日、残念ながら来れなかった皆さんもね、応援してくれてる皆さんすべてに感謝します。ありがとうございます」
そして「昨日の夜は絶対寝られへんわと思ったんですけども、5秒で寝ました」と笑いを誘い、そんな睡眠に関する歌を……と言いながら、オーイシライブの真骨頂であるギター弾き語りゾーンへと突入する。最初の曲は「枕男子」。“電気消して”の会場のコールに合わせて照明を落とし、「電気点けてください!」の声でオーイシ似のローディー・タカザワくんがギターを抱えて登場するという愉快な演出でお馴染みのこの曲だが、さすがは“オーイシ武道館”。タカザワくんだけでなく、この日はもう1人、オーイシにとても良く似た人物が、楽曲を引き継いだ。それはセンターステージからせり上がりで出現した“大石昌良”(ちなみにオフィシャルでは親戚という設定!)だ。ノーメガネで黒いジャケットを羽織ったオーイシに瓜二つのシンガーソングライター・大石昌良が、武道館を揺るがす歓声の中、色鮮やかなフェイクを決めてテクニカルにアコギでリズムを刻み、弾きまくり、歌い上げた曲は「トライアングル」。大石がライフワークとして続けている“弾き語りラボ”が、オーイシマサヨシのライブで味わえたこの瞬間は、彼の長いキャリアに想いを馳せさせ、何にも代えがたい感慨を与えた。体をのけぞらせながら絞り出すように叫んだ「武道館―!!」のシャウトは、魂の奥から溢れた想いの丈、すべてを表現しているようだった。
そして、スポットライトが元に戻ると、メインステージで真っ白なスーツ姿のオーイシが、にこやかに笑って「確かに似てるけども、親戚のほうの漢字の大石昌良さんやないかーい!」とツッコみ、再び曲を「枕男子」へと引き戻す。エンターティナー・オーイシの計算され尽くしたファンサービスは、なんと楽しいのだろうか。そのまま曲にのせてバンドとダンサーズの紹介を挟み、スタイリッシュな「楽園都市」を高らかに演奏したあとは、エレキギターに持ち替えて、ラップパートも印象的なファンキーな「エレクトリックパレード」へ。オーディエンスのクラップが、楽しさを加速する。
「こんなに大切な“オーイシ武道館”、夢の舞台ですからね。今日はほんとに電気もちゃんとあって、もう邪魔するものは1人もいないですね。このまま最後まで誰にも邪魔されることなく駆け抜けたいですよね」と、少し芝居がかったMCを始めるオーイシに、次に起こる演出を察したオーディエンスから「おぉっ?」と声が上がる。すると案の定不穏なBGMが鳴り響き、ステージに姿を現したのは、咬文嚼字怪獣・ガギュラだ。さぁここからは、『グリッドマン ユニバース』ショーのスタートだ。
「このままでは日本の未来が危ない!」と訴え、全員でダイナゼノンを呼んで始まった曲は「インパーフェクト」!ダイナゼノンとガギュラのバトルにグリッドナイトも参戦し、ガギュラを撃退しヒーロー達はステージから去った。しかし、まだショーは終わらない。ほっと一息ついたオーイシは「これで誰にも邪魔されませんから」とMCを続けるが……その後ろには、アレクシス・ケリヴが目を光らせて立っている。「オーイシ、後ろ後ろ!」という観客の声に振り向き、アレクシス・ケリヴを観て驚愕するオーイシ。「誰か、誰か助けてヒーロー!」と叫ぶと、メインステージのポップアップからスポットライトを浴びて登場したのは……ギターを掻き鳴らすオーイシの盟友・Tom-H@ck!今度は全員でアクセス・フラッシュの掛け声を合わせると、颯爽と駆け込んで来たのはグリッドマン。OxTが揃い、パワフルに「UNION」を叩きつけ、グリッドナイトマン2形態にダイナゼノンも参戦してアレクシス・ケリヴと死闘を繰り広げ、会場の熱は高まるばかり。オーイシもTom-H@ckも演奏しながら、楽しそうにバトルを見つめていたのが印象的だ。そして、豪華なヒーローショーを締め括ったのは雄大な景色を紡いだ「uni-verse」。ヒーロー達は客席を練り歩き、センターステージとメインステージに集結する。オーディエンスの大合唱にのせて、“ここが僕らのユニバース”と熱唱するオーイシ&Tom-H@ck、そしてグリッドマンたちに、盛大な拍手が贈られた。
華やかなショーが幕を閉じ、センターステージに残ったOxTの2人。Tom-H@ckが「これが噂の武道館の景色ですか」と感慨深そうに語ると、2人は互いに「目が合うと泣いちゃいそうだ」と神妙になり、オーイシはTom-H@ckに背中を向けて「とりあえず武道館まで来たわ。この景色見せたかったんよ」と言葉を紡ぐ。2人が出会って12年――OxTを組むときに「大石さんとなら アニメの主題歌の1つや2つ、すぐ取ってこれますわって言ったんです」とオーイシがTom-H@ckとの出会いを振り返ると、Tom-H@ckも当時の思い出を語る。そして「俺、多分やねんけど、もっと大きくなるわ」と言い、「いずれ東京ドームに行こう、そのときはまた助けに来てよ」と続けたオーイシ。頼もしい相棒の言葉に笑顔を見せるTom-H@ck。そして「じゃあ、出会った曲やりますか!」とタオルを用意し、エモすぎて号泣してしまうかも知れないと照れくさそうに笑うオーイシ。改めて曲紹介をして、タオルを振り、放った曲は二人の出会いとなった楽曲「Go EXCEED!!」。“最高のフィールドはここさ”とフロアを指さしてオーイシは誇らしげに微笑み、2人は肩を寄せ合う。歌い終えて呟いた「最高の相方」の言葉がジンと胸を刺した。
再びメインステージに戻ったオーイシは、軽やかにアコギをタップし「最後にひと言、言わせていただいていいですか?……武道館じゃなきゃダメみたーい!」と告げて、RABも顔を揃えて「君じゃなきゃダメみたい」がスタートする。歌詞を“武道館じゃなきゃダメみたい”と歌い変えると、オーディエンスから大きな声が沸いた。
LEDスクリーンのコメントとグリーンのペンライトが元気に振られる会場の「アンコール!」の声が共鳴し、数分のあと、バンドとダンサーズ、オーイシがカジュアルなライブTシャツ姿でステージへ。ニコニコと笑顔で披露したのは「僕らの箱庭」だ。
“あなたと来た道 どこ行く道 ご覧よ 何が起きても ここが僕らの箱庭”と歌われるこの爽やかな旅立ちの歌こそ、ファンと共に10年を歩み、武道館という地に辿り着いたオーイシにふさわしい。ダンサーズが、笑顔でセンターステージに向かうオーイシを祝福しながらゴールドの紙吹雪を撒き、ハッピーな空間を作る。曲の終盤、オーイシを乗せたセンターステージの床が高くせり上がる。カラフルなペンライトの光を見下ろして「めちゃすごい景色やわ、ありがとう」と言って、ラストは全員でワイパー。幸せが溢れた。
アンコールを喜び、客席の至るところに手を振って何度も「好き」と告げるオーイシが、「声出し足りひんのちゃう?ちょうどいい曲ありますねん」と言って次に用意した楽曲は、加藤純一のナレーションが鳴り響く「ドラゴンエネルギー」。オーイシが振り上げる〈ヒーロー〉〈Fu―〉と手書きされたお馴染みのプラカードに合わせ、震えるような大きなコールが武道館を包む。
そして夢の舞台のラストに届けられたのは、「ようこそジャパリパークへ」!Tom-H@ckのギターとRABのダンスが炸裂し、みんなで声を合わせてこれ以上ない勢いのワイパーとクラップが重なり合う。最後は「せーの!」の掛け声で全員がジャンプ! シュパッと音を立てて銀テープが放たれ、キラキラと頭上に降り注いだ。
「え、ちょっと待って、終わってまうんか。明日から俺、何を糧に生きていったらいいんや。もう“オーイシ武道館”ロスが始まってしまっている。ヤバい、でも大丈夫。俺、多分これからもみんなの前に、色んな形で現れると思うから、期待しといて。みんなで一緒に、楽しいこと作っていこうぜ、な!」
何度も「ありがとう、大好き」と告げるオーイシはおもむろにイヤモニを外し、「ようこそジャパリパークへ」のインストにのせたオーディエンスの大合唱を感慨深い笑顔で浴び、「どうもありがとう!」と颯爽とステージを降りていった。そしてオーイシが消えたステージのスクリーンに映し出されたのは、2025年3月29日「オーイシ武道館 Vol.2 開催決定!!」の文字。“オーイシ武道館ロス”どころではない、歓喜の声がドッと沸いていた。
“武道館の魔物”を蹴倒し、10周年の集大成を大成功で終えたオーイシマサヨシの第2章は、ここからまた伝説を紡ぎ始める。40歳でアニソンシンガーを辞めようと思っていたという彼とファンとの絆は、この日また強くなった。その絆は来年の“オーイシ武道館Vol.2”へと、新たな力を繋いでいくに違いない――。
■オーイシ武道館 ~オーイシマサヨシ ワンマンライブ at 日本武道館~
2024年3月2日@日本武道館
<セットリスト>
01. エンターテイナー
02. オトモダチフィルム
03. ギフト
04. 好きになっちゃダメな人
05. 死んだ!
06. なまらめんこいギャル
07. サインはB(TV size)※cover
08. Hands
09. 英雄の歌
10. 碧い砲撃
11. 枕男子 ~トライアングル/大石昌良~
12. 楽園都市
13. エレクトリックパレード
14. インパーフェクト
15. UNION
16. uni-verse
17. Go EXCEED!!
18. 君じゃなきゃダメみたい
<アンコール>
19. 僕らの箱庭
20. ドラゴンエネルギー
21. ようこそジャパリパークへ
●配信情報
オーイシ武道館 ~オーイシマサヨシ ワンマンライブ at 日本武道館~
アーカイブ配信期間:2024年3月9日(土)23:59まで
チケット販売URL
https://ponycanyon.zaiko.io/e/oishibudokan2024
●ライブ情報
オーイシ武道館 Vol.2 ~オーイシマサヨシ ワンマンライブ at 日本武道館~
2025年3月29日(土)
東京都 日本武道館
大石昌良(オーイシマサヨシ)公式サイト
https://www.014014.jp/
大石昌良(オーイシマサヨシ)公式Twitter
https://twitter.com/Masayoshi_Oishi
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