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INTERVIEW

2024.03.07

自身最大規模のライブツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART”が映像化!水瀬いのりが“アート”だらけのツアーを振り返る!

自身最大規模のライブツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART”が映像化!水瀬いのりが“アート”だらけのツアーを振り返る!

2023年9月から10月にかけて全国5都市6公演で行われた、声優アーティスト・水瀬いのりの自身最大規模のライブツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART”。進化し続ける彼女のステージング、大型スクリーンを使った大胆な演出、4年ぶりとなる観客の声出し解禁など、参加した人にとっては片時も目が離せない最高のライブ体験となったに違いない。今回はツアーファイナルの模様を収録したライブBlu-rayの発売に合わせて、改めて本人に本公演を振り返ってもらった。彼女の目にはどんな“アート”が映ったのだろうか?

INTERVIEW BY 北野 創
TEXT BY 河瀬タツヤ

“水瀬いのりのイメージを良い意味で裏切りたい”

――今回の“Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART”(以下、“SCRAP ART”ツアー)は、アーティスト・水瀬いのりとしてどんなステージを見せたいという思いだったのでしょうか?

水瀬いのり 水瀬いのりのライブの“定番” がファンの皆さんの中でなんとなく固まっている気がして、例えば最初は明るい曲で始まり、かっこいい曲やかわいらしい曲を中盤に配置して、最後はみんなで1つになれる楽曲で盛り上がる。それを良い意味で裏切るような構成にしたかったのが、私の中で核になっていた部分です。(直近にリリースされた)「アイオライト」「スクラップアート」の2枚のシングルも“水瀬いのりのイメージ“を変えるような作品だったので、その追い風も感じながら“水瀬いのりのアーティスト像”とは違うところを見せられるようスタートしました。

――ファンの中にあるイメージ像を良い意味で裏切りたいという気持ちは、ご自身のどういう思いから生まれたのでしょうか?

水瀬 皆さんが何をきっかけにファンになってくれるのかを私は制御できないけれど、多くの人に見てもらえるライブなら自分のイメージをダイレクトに届けられるし、歌や所作も交えて一番解像度が高くなると思ったんです。私は“自分を表現すること”があまり得意ではないのですが、ここ数年のライブでは割と赤裸々に自分の本心をファンの皆さんに伝えられていると思っています。今回、“完成された美術品ではない”という「スクラップアート」のテーマが自分のマインドとすごくシンクロしたので、そういった人間味をこのツアーを通して表現していきました。

――邪推かもしれませんが、優等生的なイメージ像を壊したい気持ちもあったんでしょうね。

水瀬 そんなつもりはなかったんですけど、気づくと優等生的な活動になっていたんですよね(苦笑)。私は自分のありのままの姿を限られた時間で出すのが苦手なタイプで、ライブに恐怖心を抱いていた期間も長かったんです。でも、ライブを重ねていくにつれてスタッフの方々が全力で向き合ってくれていると思える瞬間がたくさんあって、そこからはライブが色々な自分を発信できる場所に変わっていきました。おかげで、この“SCRAP ART”ツアーでは今までにないチャレンジをするシーンも多かったです。

――確かに今回は色んな表情を見せてくれる公演で、なかでも巨大なLEDスクリーンを使った演出が目立ちましたね。

水瀬 各楽曲が大きな枠として繋がっている今までのライブの演出も自分的にはノリやすいんですが、今回はそれをより細かく、楽曲の持つ色やパワーをしっかり具現化して「この曲のための演出」を作っていきたいと自分なりの言葉で舞台監督さんにお話ししました。なので、今回は楽曲ごとに後ろのLEDの演出や照明も変わっていて、つぎはぎのパーツが1つのアートになる“スクラップアート”の世界観を演出面でも叶えていただけてすごく嬉しかったです。ほかにも光の屈折でサイバーな空間にも幻想的な空間にもできて、視覚的な部分の見え方・かっこよさに特化した演出も今回のツアーならではの雰囲気だったと思います。

――直近のシングル2作品を携えてのツアーでしたが、セットリストはどう決めていったのでしょうか?

水瀬 セットリストは最初にプロデューサーさんがベースを考えてくださって、それに対して歌いたい楽曲をパズルのように当てはめて選定していく感じでした。カップリング曲も含めると新曲は6曲ですけど、そのなかでも「アイオライト」と「スクラップアート」をどこに配置するかはすごく迷いましたね。「スクラップアート」から始まるのもかっこいいけど、「アイオライト」から始まるのも舞台が幕開けした感じがして素敵だと感じて。一方で、“WWWシリーズ”(※頭文字が“W”のワードを3つ連ねた楽曲「Well Wishing Word」「While We Walk」「Winter Wonder Wander」の通称)を3曲並べて歌うのは3作目ができた時に想定していたので、ようやく公式で実現できて胸熱でした(笑)。

衣装や演出でも魅せる“スクラップアート”の世界

――ここからはブロックごとのこだわりポイントをお聞きしていきたいです。冒頭にお話しされたように、明るい曲で始まるいつものイメージを覆して最初は「スクラップアート」から始まります。

水瀬 OP映像の途中で階段を上がり、私がLEDのボックスの上に立ったタイミングで映像が終わって (「スクラップアート」の)頭サビの“どうしてここにいるの”というフレーズに繋がります。曲の雰囲気もあり、かっこつけたい気持ちがあったんですけど、初日はその瞬間に「お客さんがいっぱいいる!」という素の私が出てきてしまい(笑)、日和る気持ちを抑えながら曲に入り込んでいきました。このゾーンは暗い世界観ではあるんですけど、2曲目以降の「identity」「brave climber」、日替わり曲の「リトルシューゲイザー」で少しずつ朝に変わっていくところは、ダークだけど救いがあることを意識した表現になっています。1着目の(黒ドレスの)スカートに付いているマジックテープを外して2着目のデニム地の衣装が出てくる20秒間の早着替えを経て「僕らだけの鼓動」に変わる部分が個人的にお気に入りです。

――1着目のストリート感のある衣装も、2着目のデニム地の衣装もどちらも印象的で、衣装のこだわりも強そうに思えました。

水瀬 衣装は基本的に、私が20歳のときから一緒に仕事をしているスタイリストさんが考えてくれているんですが、私よりも私に似合う衣装を知っていて(笑)、全幅の信頼を寄せています。「スクラップアート」のジャケ写やMVはすべて黒を基調としていて、今までのライブ衣装で重ための黒色にはあまり挑戦していなかったのもあり、エナメル素材の黒い衣装にしてみました。よく見るとチェーンやメッシュ地などの異種素材が衣装に組み込まれていて、それが「スクラップアート」の“異なる素材でできている”という部分に繋がっていたりします。あとは髪にエクステが付いていて、メイクさんが各公演で気まぐれメニュー的に「今日はこの色にしよう」と決めた色が付けられています(笑)。

――「僕らだけの鼓動」から「クリスタライズ」とバンドメンバー紹介を経て、次の「アイマイモコ」からはかわいらしい衣装のブロックに移ります。

水瀬 このブロックの衣装は(自身の公式キャラクターの)くらりちゃんをモチーフにした服を着たいと漠然とお伝えして、それを形にしてもらいました。なので、このゾーンに関してはまったりゆったりした女の子らしい空間がキーになっています。皆さんが(ライブグッズの)「くらりライトチャーム」を振ってくれたり、青色のペンライトで海を作ってくれたのが、ステージ上から見ていてすごく綺麗でした。実はバンドメンバーの楽器や譜面台の近くにもくらりグッズがセットされているんですよ。私が走り書きで描いて生まれたくらりがたくさんの人に届いてることを実感できて、すごく温かい空間でした。あと、(デビューシングル「夢のつぼみ」のカップリング曲の)「あの日の空へ」をワンマンライブで披露するのが実は初めてだったので、20歳の頃の楽曲を7年越しに披露できてすごく感慨深かったです。

――今まであえて取っておいたわけではなかったんですね。

水瀬 「あの日の空へ」は冬っぽい曲なんですけど、あまり冬にツアーをやる機会がなかったんですよね。だから今回生バンドで歌ったことで、「ニュアンスの込め方は当時と一緒だな」「昔よりもリラックスして歌えているな」といった自分の中で変わった部分と変わらない部分がすごく照らし合わされました。レコーディング当時は大変でしたけど、改めて続けてきて良かったなと思いましたね。

――その後の幕間では、水瀬さんが絵画などの様々なアートに挑戦するムービーが上映されました。Blu-rayには全会場分6本のムービーが収録されていますが、どのアートが一番楽しかったですか?

水瀬 6種類のアートの中では、ちぎり絵に初めて挑戦したんですけど、私が作ったアートは平面ではなく立体になってしまったので、厳密に言えばちぎり絵ではないらしいんです(笑)。でもすごく楽しかったし、お寿司を作ったのですが、個人的にクオリティがすごく高かったと思っているので、是非それを見てお寿司を食べに行ってもらいたいですね(笑)。

止まっていた時間が動き出す“声出し”の瞬間

――そんな楽しげな幕間ムービーが終わり、次に「アイオライト」から始まるブロックは映像とパフォーマンスが重なる演出で、世界観がグッとかっこ良くなりますね。

水瀬 幕間の映像とは色んな意味でギャップがあるので、皆さんを本編に引き戻す役割も兼ねて椅子に腰掛けて座りながら歌う「アイオライト」から始まっています。「アイオライト」は1音目から曲の世界に入ることができる曲で、不安や緊張を和らげてくれるような手応えを感じられる1曲にもなっています。次の「クータスタ」をはじめ、このブロックは誰かに聴いてほしい曲というよりも、自分のなかの答えを見つけていく楽曲が並んでいるので歌っていてもすごく気持ちが入りました。

――紫色のエレガントな衣装も素敵でした。

水瀬 「アイオライト」がすみれ色ということで作っていただいた衣装で、髪もエクステでちょっとロングになっています。あと、(アイオライトは)“多色にきらめく石“でもあるので、今までの私とはまた違う側面を衣装でもスタイリングでも楽しんでいただけると思います。ニーハイのブーツとタイトなスカートはプライベートでは履かないので、すごく新鮮でしたね。

――個人的には「約束のアステリズム」や「Million Futures」での客席の声出しの盛り上がりがすごかったです。

水瀬 確かにイントロが流れた瞬間の皆さんの「待ってた!」と言わんばかりの地鳴りのような歓声はすごかったです。特に「約束のアステリズム」はコロナ禍前に行われた“Inori Minase LIVE TOUR 2019 Catch the Rainbow!”以来でしたし、止まっていた時間の象徴のようになっていたので、皆さんやっと昇華できたんじゃないかなと思います。元々「約束のアステリズム」は七夕とライブを掛けた“離れていてもきっとまた会える”と約束する楽曲なので、このツアーで皆さんが色々なことを我慢して乗り越えた時間という意味ではすごく力強かったなと思います。

次ページ:ファンの声で完成した「僕らは今」

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