REPORT
2024.03.05
「アイドルマスター ミリオンライブ!」のライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-4 MILLION THE@TER!!!!」DAY2が2024年2月25日、神奈川県・Kアリーナ横浜にて開催された。
DAY2には春日未来役の山崎はるか、最上静香役の田所あずさ、伊吹翼役のMachico、田中琴葉役の種田梨沙、島原エレナ役の角元明日香、佐竹美奈子役の大関英里、所恵美役の藤井ゆきよ、徳川まつり役の諏訪彩花、箱崎星梨花役の麻倉もも、野々原茜役の小笠原早紀、望月杏奈役の夏川椎菜、ロコ役の中村温姫、七尾百合子役の伊藤美来、高山紗代子役の駒形友梨、松田亜利沙役の村川梨衣、高坂海美役の上田麗奈、中谷育役の原嶋あかり、天空橋朋花役の小岩井ことり、エミリー スチュアート役の郁原ゆう、北沢志保役の雨宮天、舞浜歩役の戸田めぐみ、木下ひなた役の田村奈央、矢吹可奈役の木戸衣吹、横山奈緒役の渡部優衣、二階堂千鶴役の野村香菜子、馬場このみ役の髙橋ミナミ、大神環役の稲川英里、豊川風花役の末柄里恵、宮尾美也役の桐谷蝶々、福田のり子役の浜崎奈々、真壁瑞希役の阿部里果、篠宮可憐役の近藤唯、百瀬莉緒役の山口立花子、永吉昴役の斉藤佑圭、北上麗花役の平山笑美、周防桃子役の渡部恵子、ジュリア役の愛美、白石紬役の南早紀、桜守歌織役の香里有佐、以上全39名のシアターアイドルが全員出演した。
TEXT BY 中里キリ
ミリオンスターズ(シアター組)は2013年にアイドル37名でスタート。2017年6月のアプリ「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」サービスインに際して白石紬と桜守歌織が追加され、全39名になった。2人が追加される前、「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」DAY3にキャスト36名が参加したことはあったが、現行全キャストが同日に集うのは有史以来はじめての出来事だ。いつも以上に熱の入った青羽美咲の前説と諸注意を経て、「アイドルのみんなと一緒に、最高の千秋楽を作りましょう!」との力強い開演宣言とともに、開演ブザーが鳴り響いた。
正真正銘ツアーファイナルの一曲目は、ミリオンスターズ全員による「Rat A Tat!!!」でスタート。TVアニメ「アイドルマスター ミリオンライブ!」のオーディションシーンで描かれた、みんなが夢想した39人での「Rat A Tat!!!」が現実の光景になった。誰一人同じもののない個別衣装を身にまとった39人が立ち並ぶ姿は壮観で、やはりDAY2から参加のメンバーに自然に目が行く。本当によく、誰一人欠けることなくこの日を迎えてくれたと思う。DAY1ではラストソングとしてのムーブが多めだったこともあり、きっちりダンスありの正調バージョンはDAY2が初めて。間奏では山崎が「伝説の千秋楽にしましょうね!」と力強く右手を突き上げた。合唱のパートでは「Rat A Tat!!!」のテンションが限界突破。ソロの歌い継ぎでは、やはりこの曲にはアニメにおけるはじまりのふたりの片翼である田所と最上静香の存在が必要だと感じた。
挨拶を挟んで、本編オープニングを飾ったのは、種田梨沙、中村温姫、野村香菜子、桐谷蝶々、渡部恵子による「サウンド・オブ・ビギニング」。歌唱オリジナルメンバーだ。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」に参加できなかった37人目のピース、種田梨沙がセンターを務める楽曲だ。種田は髪型を含めた琴葉のビジュアル再現度がとても高く、「みんな、始まるよ!」と音頭を取ってパフォーマンスはスタート。歌い出しの“ねえ なにが始まるだろう 予想できたことないね”のフレーズがライブに臨むこちらの心情に重なるようで微笑んでしまう。新しい世界に飛び込むワクワクときらめきが、10年のその先に向かおうとするアイドルたちと重なるようだった。
大関英里、夏川椎菜、小岩井ことり、雨宮天のTeam1stは「Star Impression」を披露。39人が揃ったライブだからこそ、アニメでバトンをつないだ8つのチームが順番に登場する王道の組み立てだ。もちろん、当然オリメンフルメンバーである。初めて4人が揃って感じたのは、フォーメーションダンスのバリエーションが豊かな楽曲だということ。大関と雨宮のダブルフロントを基本に、立ち位置を入れ替えながらパフォーマンスを繰り広げる。青い閃光に照らされながら、疾走感のある歌声が空間を切り裂いていく。キメどころ、大関のしゃがみこみが印象的なポーズも、4人揃って初めて完成形の絵を示した。4人ともメインの感覚がある、切り込み隊長にふさわしいユニットだった。MCで大関は素の表情で「(4人が揃って)嬉しくてにこにこしちゃった」と語っていた。
諏訪彩花は「フェスタ・イルミネーション」を歌唱。アニメ「ミリオンライブ!」のこけら落としライブ、そして現実の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE 1st LIVE HAPPY☆PERFORM@NCE!」を思い出すソロトップバッターで、「フェスタの開演!」の台詞がこの上なくぴったりくるタイミングだ。円形ステージで歌い踊る諏訪の姿と空気はまつり姫そのもの。「みんなで!」の呼び込みに大コールが応えていくとあざやかに「ありがと!」。キラキラのパワーに満ちたステージをやりきった諏訪は、MCでとても緊張したことを明かすと、「皆さんのコールアンドレスポンスがすっごく嬉しかったです!」と感謝を伝えていた。
角元明日香は「ファンタジスタ・カーニバル」を披露。祭りつながりで登場すると、「せーのっいぇーい!!」の全力の掛け声とともに、彼女のエネルギーと存在が会場全体を満たしていく。軽快なステップを笑顔のまま踊る姿はエレナを彷彿とさせる躍動感だ。間奏もファンサービスと全力のダンスで盛り上げると、「行くよー!」とさらに一段ギアを上げたパフォーマンスで駆け抜けていった。
戸田めぐみは「ユニゾン☆ビート」を歌唱。戸田の久々の登場に、会場の期待感が爆発的に高まっていくのが感じられる。ステージに駆け出した戸田は高いテンションで会場の空気を引っ張り上げると、ダンサブルなパフォーマンスで限界を超えていく。ヘッドセット仕様に、この曲はダンスで魅せるという明確な意志が感じられる。腰の不調を心配していたプロデューサーも多いだけに、よくぞここまで仕上げてくれたという感動が大きい。コールと一体になるサビでは、最高の音響と横ノリのプロデューサーたちが共に寄り添っていった。本当に楽しくハッピーな空間だった。MCで戸田は「ただいま戻りました、みなさんお待たせしました」と挨拶すると、同曲は「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 2ndLIVE ENJOY H@RMONY!!」以来の披露であることを明かし、「お待たせした分舞浜歩に近づいてステージに立ちたかった」と語っていた。
香里有佐は「MUSIC JOURNEY」を歌唱。ムードたっぷりのハミングから、歌い出す口元には彼女らしい笑顔が浮かぶ。安定感のある歌唱と五線譜の上で躍動するようなリズムが印象的だ。心から音と歌を楽しんでいることが伝わってきて、まさに世界中に響かせる歌声だった。MCで香里は「プロデューサーさんと一緒に音楽を楽しみたいな、奏でたいなという想いがありました」と語っていた。
アニメ「ミリオンライブ!」よりTeam2ndの上田麗奈、浜崎奈々、阿部里果、近藤唯、山口立花子は「海風とカスタネット」をフルメンバーで披露。波音と青い揺らめく光が空間を満たし、ステージは夏の砂浜に変わる。同曲初歌唱のセンター・上田麗奈の歌い出しの笑顔が眩しすぎる。近藤が「プロデューサーさん、声聞かせて下さい!」と可憐の精一杯の勇気を表現すると、会場のプロデューサーたちも割れんばかりの歓声で応える。上田は「この想い、みんなでつなげていきましょう!」と宣言。アニメの、そして「ミリオンライブ!」がこれまで見せてきた“つなぐ”コンセプトを体現していた。MCでは浜崎が5人がようやく揃って歌えたことを力強く喜んでいて、自分のことよりも他のメンバーの気持ちを伝えようとしているのが印象的だった。
アニメ「ミリオンライブ!」よりTeam3rdの種田梨沙、藤井ゆきよ、伊藤美来、稲川英里、末柄里恵は「オレンジノキオク」をフルメンバーで歌唱した。ライブでは正真正銘の初披露で、それぞれの想いを込めた歌を雰囲気たっぷりに響かせていく。しっとりとした曲調の中で、環(稲川)のちょっと幼い歌声に胸がぎゅっとなる。5人それぞれが主役で、それを真ん中で“支える”のが琴葉のステージの引っ張り方なのかなと感じた。
山崎はるか、田所あずさ、Machicoの「ABSOLUTE RUN!!!」はライブのクライマックスでも映える楽曲で、序盤戦に持ってきたことに驚く。切り札を初手に切ってきた感じだ。歌い出しは3人がアイドルの楽しさを口々に確かめ合うのだが、それを言い出すのが静香(田所)なのがなんとも良かった。私はここにいる、と青春の輝きと絆を光に変える楽曲を体現するような眩しいパフォーマンスだった。Machicoと田所がステージに座り込むようにカメラをのぞき込むアングルがとてもキュートで印象に残った。今回の披露は会心の出来だったようで、Machicoは「自分たちが入れこみたいものを全てやって成功した」と誇らしげだった。
続くブロックはアニメ「ミリオンライブ!」よりTeam4thの中村温姫、村川梨衣、渡部優衣、野村香菜子、髙橋ミナミ、渡部恵子の「catch my feeling」でスタート。80年代感の漂うサウンドと映像とともに、フルメンバー6人が登場。6人というユニット編成は珍しく、3人3人で2列になるフォーメーションも新鮮だ。大人のムードの中、キャラの立った歌声たちがバランスよく響きあってひとつの世界を作り上げていた。
アニメ「ミリオンライブ!」よりTeam5thの麻倉もも、小笠原早紀、駒形友梨、原嶋あかり、桐谷蝶々は「バトンタッチ」を披露。これまで4人バージョンでの披露はあったが、麻倉ももが加わってついに完全版となった。39人全員で想いのバトンをつないでいく、作品のコンセプトを体現するようなチームと楽曲だ。色とりどりの五色の歌を、センター駒形の伸びやかな美しい歌声が牽引していく。間奏でハンドタッチのバトンを受け渡していく振りはよりアニメに近づけるために工夫したそうで、原嶋はact3では自分から始まったバトンの受け渡しがまた自分に戻ってきたと語っていた。落ちサビの高らかな歌い継ぎも、想いのこもった歌声のバトンを受け渡しているようだった。
ソロメドレーは上田麗奈の「恋愛ロードランナー」から。「行くよKアリーナ!」と笑顔で煽った上田が歌い出すと、疾走する感情とテンションが弾けるようだ。まっすぐカメラを見つめながら笑みこぼれる感じが本当に楽しそうで、海美の感情を伝えてくる。走り抜けるテンションに会場を巻き込んでコールを呼び込んでいく感じが絶妙だ。ラストはずばっとピースから拳を掲げると、あふれる笑顔で「大好き!」。メドレーサイズとは思えないメリハリと密度のパフォーマンスだった。
斉藤佑圭は「パーフェクトゲーム」を歌唱した。スタンドマイクを前にズバズバとキレの良いダンスを見せる姿は、衣装と相まってスタイリッシュでかっこいい昴だ。スタンドマイクを握ると、ストレートで潔い歌声をアリーナに撃ち込んでいく。サビで一段高くなった歌声が抜けていく感じが気持ちいい。ラストはクールな微笑みと共に鮮烈にキメた。
藤井ゆきよは「フローズン・ワード」を披露。10年歌い継いできた楽曲だが、約5年ぶりの歌唱となる。情感豊かな歌唱からは恵美の心情がほとばしっていて、痛切な感情と完成度の高い歌唱がせめぎあっているようだ。ラストのキメで視線をふっとそらし、暗くなった照明の中でカメラを見つめる瞳が情念を感じさせた。
種田梨沙は「Sing a Wing Song」を初披露した。恵美から琴葉という親友同士の並びには意図を感じるが、待機中の種田は「フローズン・ワード」を聴きながら泣いていたとのことだ。君まで届くようにと、想いを込めて丁寧にまっすぐ歌う様子は、まさに琴葉がそこにいると感じるほど。アウトロで手元の動きが繊細なダンスを見せた種田は、やり遂げたような満ち足りた笑顔を浮かべていた。
髙橋ミナミ、末柄里恵、平山笑美、香里有佐の4Luxuryは、「花ざかりWeekend✿」を歌唱した。セットリストの中に、シンプルに強い楽曲をフラットにポンとオリメンで放り込めるのが39人ライブの強みだ。ユニット衣装に着替えた4人が華やかに高らかに歌い踊れば、空間はたちまち週末のダンスフロアに変わる。髙橋が「10周年もその先も、花ざかっていくわよ!」と宣言すると、会場の盛り上がりも最高潮に。最高の歌い継ぎからのぴらみ砲は過去最高と思えるほどの突き抜け方だった。
続くブロックはアニメ「ミリオンライブ!」よりTeam6thの角元明日香、諏訪彩花、郁原ゆう、田村奈央、斉藤佑圭による「Unknown Boxの開き方」初披露からスタート。諏訪をセンターにしたV字のフォーメーションで登場すると、優雅なダンスを披露。角元を前に置いた千手観音のような動きなど、優美な動きとポジションワークで魅せる。全員マイクと逆腕の小指にリボンをつけているのがチャームポイントだ。「私たちの舞踏会へようこそ、なのです」と諏訪が語り掛けた通り、ステージ上で繰り広げられるのは夢の舞踏会。間奏のダンスタイムは特に美しく、観客に魔法をかけるひと時のショウタイムだった。
阿部里果は「…In The Name Of。 …LOVE?」を歌唱した。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」以来の久しぶりの披露となる。独特の独白のような歌い出しはオリジナルな世界で、そこから本格的な歌唱に入った瞬間魔力すら感じる圧倒的なクオリティが押し寄せる。表情は抑え目なのだが、織り交ぜられた微笑みなどが以前よりも感情を豊かに伝えてくるようで、瑞希と過ごしてきた時間の長さを感じる。ミステリアスで魅力的な、10年目の真壁瑞希のステージだった。
近藤唯は「教えてlast note…」を披露。震えて目を伏せているだけの自分に別れを告げる祈りを込めた、変化と成長の歌だ。より強さと安定感を増した歌声は、可憐と一緒に成長し、強くなっていく彼女ならではの繊細な輝きを放つ。ラストノートは香水が最後に残す余韻の香りだが、ラストのキメでの近藤の凛とした強い表情が記憶に残った。MCで近藤は、これからも可憐は変わっていくという決意を語っていた。
恋の歌が並ぶソロメドレーは、桐谷蝶々の「初恋バタフライ」に続く。情熱的なイントロだが、桐谷がおだやかに微笑んで手を打ち鳴らすと、どこか柔らく優しい空気が漂うのは人柄というものだろうか。スカートに留まった青い蝶の飾りが目を惹く。甘い歌声に込められた恋情がストレートに伝わってきて胸に迫って、内なる美也の成長も感じさせた。間奏にさらっと鮮やかなターンが入っていたのが印象的だったが、振付を「ミリシタ」版に近づける工夫を行なったとのことだった。
野村香菜子は「恋心マスカレード」を披露。ステージにゆったりと歩み出し、すっと視線を逸らす仕草にオリジナルな空気があって、大人の雰囲気を醸しだす。うちに情熱の火を宿したしっとりとした歌唱が、徐々に強さを増していく。着用しているのはスターダストマスカレードのアナザー衣装で、赤い色合いと相まってあまりにもこの楽曲にハマっていた。髪にはバラと仮面をあしらっているのもこだわりのポイントだ。歌い終えた野村は瞳を閉じると、華やかな笑顔を浮かべていた。
ソロメドレーの並びのラストは髙橋ミナミの「dear…」。歌い出しの“love song”の突き抜けるような透明感と安定したボーカルが早くもモノの違いを感じさせる。高く抜けても繊細なコントロールを失わない表現で、Kアリーナという音響の良い会場を十全に生かしているように感じる。“大人のこのみさん”ならではの魅力と世界を感じさせてくれる歌唱だった。MCで髙橋は「この曲とともに歩んできた10周年でした」と語り、特別な、最高の場で歌えたことを喜んでいた。
アニメ「ミリオンライブ!」よりTeam7thの戸田めぐみ、木戸衣吹、平山笑美、愛美は「トワラー」を披露。ステージに腰かけた愛美が楽しそうにギターを奏で、歌い出しの独唱を響かせると、3人の広がりのある歌声が続いていく。アニメではプライベートな形で披露した「トワラー」を、もっと大きな会場で披露したらというIFを現実のステージが補完していくようだ。ギターで勝負するシンプルな構成だからこそ歌声と地力が際立つ感じで、階段に腰かけて歌う戸田の包み込むような歌唱に引き込まれる。ラストは3人が愛美の元に駆け寄って、みんなで笑顔で手を振っていた。
伊藤美来、髙橋ミナミ、渡部恵子のユニット・FleurSは「わたしは花、あなたは太陽」を初めて歌唱した。「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ ブランニューソング」から生まれたユニットと楽曲だ。ゲームやアニメだけではない、コミックのそれぞれの世界たちも「ミリオンライブ!」の10年の一部だと感じさせる選曲だ。年季の入ったプロデューサーなら、初めてのツアーで「アイル」がサプライズ披露されたことを思い出すかもしれない。落ちサビの歌い継ぎがあまりにも美しく、これから夢が叶う瞬間のセツナの輝きを映している。まだ何物でもなかったつぼみのアイドルたちが、悩みながら努力して成長して、うつくしく花開いて咲きほこる姿と過程を体現するようなパフォーマンスだった。
駒形友梨、戸田めぐみ、山口立花子、斉藤佑圭は「Dance in the Light」を披露。サイバーで剣呑なイントロが流れてレーザーが乱舞する中、センター戸田の「Let’s Get Dowm」のクールな低音が会場に響く。トップクラスにダンサブルな新曲をこの場で体験できるとは思わなかった人も多いはずだ。戸田や斉藤のかっこよさを基調に置きながら、駒形の歌声の伸びやかさや山口のつややかさがアクセントとなった魅力的なユニットとして成立している。間奏のダンスの乱舞からクライマックスへの流れでは、フロアのテンションが最高潮に高まっていた。
小岩井ことりは「鳥籠スクリプチュア」を歌唱した。「選びなさい」の声が響くと、会場を圧倒的な歓喜と信仰の声が満たす。スタンドマイクとともに登場した小岩井の歌声は流麗で情熱に満ちている。そして「7つの誓い」の口上を生でさく裂させると、「全ては騎士団の名の元に!」の高らかな叫びが、彼女の内なるテンションの高まりをありありと伝えていた。アウトロでゆったりとマイクに手を添えた小岩井は、何かを問いかけるような深みのある表情でこちらを見つめていた。
南早紀は「瑠璃色金魚と花菖蒲」を披露。上手の円形ステージに登場した南は、振り返りざまに歌唱をスタート。歌声の圧倒的な張りが、気合が本当に充実していることを感じさせる。デビューの頃、星の数ほど歌いこんで完成度を追求した楽曲に、感情の高まりという翼が加わった。そのことをラストの圧巻のシャウトが伝えていた。南はMCで「みなさんの声援とライトが勇気になっております!」と高いテンションで語っていた。
村川梨衣は「Up!10sion♪Pleeeeeeeeease!」を歌唱。溜めに溜め、待ちに待ったソロステージだ。会場の期待感は、つんざくようなコールの一体感からも伝わってくる。幾万の「ARISA!!」「Up!10sion!!」の叫びで、会場が渦を巻いているように感じる。変わることなく明るく元気でハッピーな村川の存在がシアターにとってどれだけ大切かを改めて感じる一曲だった。
夏川椎菜は「Happy Darling」を披露。夏川と杏奈の原点とも言っていい楽曲で、衣装のウサ耳がとてもキュートに合っている。アイドルとしての輝きが圧倒的で、軽快なダンスと眩しい笑顔に魅入られてしまう。そして期待が臨界点を迎える中の「応援ください!!」「応援するよ!!」のパスがつながる瞬間の多幸感。笑顔と笑顔で一緒にいられることが本当に最高! と思えるステージだった。
白いスポットに照らし出された雨宮が「私には仲間がいる」と語りだすと、4人が想いのこもった口上をつないでいく特殊演出。コミック「アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover」より生まれたユニット・Cloverの麻倉もも、上田麗奈、雨宮天、木戸衣吹による「Clover Days」初披露だ。上田、木戸という歌う喜びや楽しさを込めさせたら随一のメンバーがエンジンとして存在する強さ。雨宮の優しく柔らかな満面の笑顔に、志保の10年間とCloverとしての日々の歩みを感じる。一瞬の真空からの、落ちサビの雨宮から木戸への繊細で温度のある歌い継ぎが作品に対する愛情と溢れる想いを感じさせる。スクリーンでは笑顔で歌う4人を宿したよつ葉のクローバーが美しく輝いていた。
アニメ「ミリオンライブ!」よりTeam8thの山崎はるか、田所あずさ、Machico、南早紀、香里有佐は「REFRAIN REL@TION」を披露。「ミリオンライブ!」を初期から牽引してきた3人と、もっとも新しい仲間による5人が、アニメで39人でつないできた想いのバトンを受け取る最後のチームになった。田所が本当に楽しそうに、幸せそうに歌っている姿が印象的で、アニメというひとつの物語を背負った楽曲の強さを感じる。台詞の口上では、5人に、いや39人にとってシアターという場所がどれだけ大切な夢のステージであるかが次々に語られた。その言葉と想いを受けて、山崎が想いを込めて歌い、Machicoに受け渡し、やがて5つの声が分厚い物語を持った歌声としてラスサビに雪崩れ込んでいった。
ラストブロックは閃光☆HANABI団の大関英里、駒形友梨、上田麗奈、渡部優衣、浜崎奈々による「BORN ON DREAM! ~HANABI☆NIGHT~」からスタート。理屈無用、問答無用でぶち上げて盛り上げる覚悟を感じる構成だ。駒形の「閃光☆HANABI団、いっくぞ~!」の声に応えて5人が駆け出すと、スクリーンには祭り櫓が映し出され、祭りの時間が始まる。盛り上がり方にも5人それぞれのスタイルがあって、ステージに大輪の花が咲いたような華やかさ。最高に楽しく最高にハッピーな時間だった。
オリジナルメンバー披露が中心の構成の中で、ちょっと異色だったのが田所あずさとMachicoによる「深層マーメイド」だ。Machicoと沼倉愛美(我那覇響)の原曲に、田所がカバーに入った。Machicoと田所といえば同じ大型オーディションからデビューに辿り着いたいわば同じ釜の飯を食べた同志の間柄で、個人的にはDAY1の「電波感傷」と対になる構成であるように感じた。ソロで、アーティストとしても図抜けた実力を持つふたりだけに、楽曲に深く深く潜ってお互いの存在をぶつけ合うようなこの曲はピッタリのマッチング。10年の時を経た才能と才能が真っ向から火花を散らす。ラストは暗転の中向かい合って、シンメトリーのポーズで余韻を残した。
小笠原早紀、原嶋あかり、郁原ゆう、末柄里恵、近藤唯、斉藤佑圭、南早紀は「ESPADA」を披露。ユニット・SHADE OF SPADEから7人が参加する華やかな構成だ。唸るギターとともにレーザーが乱舞し、7人がクールでソリッドなパフォーマンスを見せる。決意の刃をズバッとふるうような振付が鮮やかだ。小笠原や原嶋の鋭さのある歌い継ぎを受けて、末柄の独唱がピタリとはハマる。千刃が舞う映像に照らされてのスタイリッシュな歌唱だった。
10年のクライマックスパートにふさわしい、説明不要の強い曲。選ばれたのは田村奈央、稲川英里、浜崎奈々、渡部恵子、愛美による「侠気乱舞」だった。同曲は任侠物の劇中劇から生まれた楽曲で役柄とのリンクが強いだけに、フルメンバーの構成が一際生きる。ボーカリストとしての愛美のけれん味のある魅力と力量がセンターで爆発する感じだ。田村が楽しそうに歌っているのが印象的で、“カワイイ”寄りの歌声やタイプのアイドルが多めの中、これだけ熱く燃え上がる楽曲に仕上がるのが面白い。オレンジに燃え上がるアリーナを向こうに、5つの個性が燃え上がり乱舞していた。
田所あずさ、麻倉もも、小笠原早紀、雨宮天、平山笑美のユニット・クレシェンドブルーは「Shooting Stars」を披露。前曲からつながるオリジナルメンバー揃いによる圧倒的なパワーは、7年前の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」での「Flooding」初披露を彷彿とさせるものがある。初期の「ミリオン」ライブでは共通曲のように歌い継がれていた名曲だが、フルメンバーでの歌唱はこれが初めてだ。田所、雨宮、平山というトリプルエースに、麻倉と小笠原がオリジナルなニュアンスを加える、おそろしくバランスのいい5人だ。落ちサビで田所と雨宮が伸びのある歌声を響かせると、決めどころの2分割画面がふたりの表情を捉えて、温度を伝えていた。
種田梨沙、郁原ゆう、山口立花子、愛美、南早紀は「夢にかけるRainbow」を歌唱。「ミリオンライブ!シアターデイズ」5周年記念楽曲だ。センターは5周年のビジュアルメインだった白石紬役の南が担当。残り4人はこれまでこの楽曲を未披露のアイドルを敢えて選んできたのが、一人一人が主人公という楽曲コンセプトに重なって見える。アイドルたちの着実な歩みを感じさせる間奏を経て、南の輝かしい落ちサビからの歌い継ぎが見事だった。
終盤に来て、ソロメドレーは残すところ3人。「ミリオンライブ!」を初期から牽引してきた信号機の出番は、Machicoの「恋のLesson初級編」からスタートだ。元気いっぱいなパフォーマンスの中に、翼の小悪魔的な魅力がふんだんにあふれている。おなじみの“L・O・V・E ラブリー 翼”のコールでは長年(自分ではなく)翼の名前を呼んでほしいと言ってきたMachicoだったが、今回は“L・O・V・E ラブリー「翼!!」”と自らコールにかぶせるお茶目なアクションを見せた。伊吹翼はこんなにもかわいくて素敵で魅力的、ということをMachico自身が一番信じていることが伝わってくるパフォーマンスだった。
田所あずさは「Precious Grain」を披露。この2日間は物語の日々を経て柔らかい笑顔になった静香を多く表現していたように思うが、ラストは静香の原点である切実な、歌とこの場所に全てを賭ける姿に振ってきた。歌声の伸びが本当に素晴らしく、広大なアリーナを隅々まで、そして観衆一人ひとりの心を撃ちぬくような突破力がある。これぞ「ミリオンライブ!」が誇る蒼の歌姫と思わせる時間だった。
ソロのラストナンバーは山崎はるかの「未来飛行」。全身のエネルギーを光に変えて放つような「行くよ~!!」の声を響かせると、歓声を受け止めるように両手を広げ、全力の煽りで会場のコールを呼びこんでいく。柔らかく包みこむようなニュアンスがありながらも、みんなを引っ張る強さを秘めた芯のあるボーカル。これからの私を見ていてねとカメラを覗きこむ表情に、本当に繊細な感情と感謝が詰め込まれているようだ。間奏で「プロデューサーさん、10年間どこかで出会ってくれて、本当にありがとうございます。今プロデューサーさんがここにいなかったら、39人みんな揃っていなかったと思います!!」と叫ぶと、改めての応援を心から頼んでいた。優しい落ちサビからあふれだしそうな想いを前に進む力に変えたのは、センターの自覚だろうか。やがて、君に届けと一心に歌う声に応えるように、仲間たちがステージに駆け込んで大団円となった。
ステージに揃った39人によるライブ本編ラストナンバーは、「UNION!!」。何度も聴いてきた楽曲だが、改めて強く、本当に素晴らしい歌だ。ひとりも手放さない。その欲張りで愛にあふれたメッセージを皆が大切にしてきたからこそ、この奇跡のような光景が10年を超えた今、あるのだと思う。
アンコール前の今後の業務連絡では、「ミリシタ」の新モード?である「アイドルグランプリ(仮)」の進捗映像が紹介された。チラ見えした画面ではコンシューマー版やアーケード版「アイドルマスター」シリーズを思わせるようなミニレッスンゲームが登場しており、会場のプロデューサーたちを興奮させていた。
また、「ミリオンライブ!」の10周年の思い出を集めた特別PVを上映。こちらは「【ミリオンライブ!】10周年ありがとうPV【アイドルマスター】」として、YouTubeのアイドルマスターチャンネルにて公開されている。
ライブ関係ではミリオンスターズの単独11thライブが2024年11月9日・10日、Aichi Sky Expoで開催されることと、「HOTCHPOTCH FESTIV@L!! 2」の開催が発表された。「HOTCHPOTCH FESTIV@L!! 2」の映像には「765PRO ALLSTARS × MILLIONSTARS」の文字があり、両チームのアイドルが登場するライブイベントになると思われる。
アンコールナンバーは「Crossing!」。純白の逆光ライトに照らされて、共通衣装に着替えたアイドルたちがステージに歩み出す。歌っているアイドルたちのひとりひとりが幸せそうな笑顔を浮かべているのが印象的だ。これまでの10年の物語とアイドルたちの心情を瑞々しく描き出す楽曲とパフォーマンスに、会場も想いの光と声で応えていた。
アンコールの挨拶では、39人を代表して田所あずさと山崎はるかが行なった。田所は「「ミリオンライブ!」のメンバーが集まると、めちゃめちゃ帰ってきた感じがします。みんなでやるあったかさが「ミリオンライブ!」にはあります」と語ると、作品と静香がどれだけ大切か、そしてみんなへのこれからの応援を求める想いを伝えていた。山崎は「このライブ私たち、尋常じゃない想いで挑んでるんです」と語ると、今回のライブのセットリストや演出に、自分たちの意見がたくさん入っていることを紹介していた。
このライブの2日後には、「アイドルマスター ミリオンライブ!」は11周年を迎える。正真正銘の10年を締めくくるラストナンバーは、はじまりの楽曲である「Thank You!」。曲中に山崎が「ここまで私たちを連れてきてくれたプロデューサーさんに!」と煽ると、39人からの想いを込めた「ありがとう!!」の声がすべてのプロデューサーに届けられていた。ありがとうとありがとうが交差するステージの向こうに、これからまたはじまる、数えきれないステージの輝きが見えた気がした。
THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-4 MILLION THE@TER!!!! DAY2
2024.2.25. Kアリーナ横浜 セットリスト
M01:Rat A Tat!!!(ミリオンスターズ)
M02:サウンド・オブ・ビギニング(種田梨沙、中村温姫、野村香菜子、桐谷蝶々、渡部恵子)
M03:Star Impression(大関英里、夏川椎菜、小岩井ことり、雨宮天)
M04:フェスタ・イルミネーション(諏訪彩花)
M05:ファンタジスタ・カーニバル(角元明日香)
M06:ユニゾン☆ビート(戸田めぐみ)
M07:MUSIC JOURNEY(香里有佐)
M08:海風とカスタネット(上田麗奈、浜崎奈々、阿部里果、近藤唯、山口立花子)
M09:オレンジノキオク(種田梨沙、藤井ゆきよ、伊藤美来、稲川英里、末柄里恵)
M10:ABSOLUTE RUN!!!(山崎はるか、田所あずさ、Machico)
M11:catch my feeling(中村温姫、村川梨衣、渡部優衣、野村香菜子、髙橋ミナミ、渡部恵子)
M12:バトンタッチ(麻倉もも、小笠原早紀、駒形友梨、原嶋あかり、桐谷蝶々)
M13:恋愛ロードランナー(上田麗奈)
M14:パーフェクトゲーム(斉藤佑圭)
M15:フローズン・ワード(藤井ゆきよ)
M16:Sing a Wing Song(種田梨沙)
M17:花ざかりWeekend✿(髙橋ミナミ、末柄里恵、平山笑美、香里有佐)
M18:Unknown Boxの開き方(角元明日香、諏訪彩花、郁原ゆう、田村奈央、斉藤佑圭)
M19:…In The Name Of。 …LOVE?(阿部里果)
M20:教えてlast note…(近藤唯)
M21:初恋バタフライ(桐谷蝶々)
M22:恋心マスカレード(野村香菜子)
M23:dear…(髙橋ミナミ)
M24:トワラー(戸田めぐみ、木戸衣吹、平山笑美、愛美)
M25:わたしは花、あなたは太陽(伊藤美来、髙橋ミナミ、渡部恵子)
M26:Dance in the Light(駒形友梨、戸田めぐみ、山口立花子、斉藤佑圭)
M27:鳥籠スクリプチュア(小岩井ことり)
M28:瑠璃色金魚と花菖蒲(南早紀)
M29:Up!10sion♪Pleeeeeeeeease!(村川梨衣)
M30:Happy Darling(夏川椎菜)
M31:Clover Days(麻倉もも、上田麗奈、雨宮天、木戸衣吹)
M32:REFRAIN REL@TION(山崎はるか、田所あずさ、Machico、南 早紀、香里有佐)
M33:BORN ON DREAM! ~HANABI☆NIGHT~(大関英里、駒形友梨、上田麗奈、渡部優衣、浜崎奈々)
M34:深層マーメイド(田所あずさ、Machico)
M35:ESPADA(小笠原早紀、原嶋あかり、郁原ゆう、末柄里恵、近藤唯、斉藤佑圭、南早紀)
M36:侠気乱舞(田村奈央、稲川英里、浜崎奈々、渡部恵子、愛美)
M37:Shooting Stars(田所あずさ、麻倉もも、小笠原早紀、雨宮天、平山笑美)
M38:夢にかけるRainbow(種田梨沙、郁原ゆう、山口立花子、愛美、南早紀)
M39:恋のLesson初級編(Machico)
M40:Precious Grain(田所あずさ)
M41:未来飛行(山崎はるか)
M42:UNION!!(ミリオンスターズ)
-ENCORE-
M43:Crossing!(ミリオンスターズ)
M44:Thank You!(ミリオンスターズ)
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