REPORT
2024.03.02
「アイドルマスター ミリオンライブ!」のライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-4 MILLION THE@TER!!!!」DAY1が2024年2月24日、神奈川県・Kアリーナ横浜にて開催された。
DAY1には春日未来役の山崎はるか、伊吹翼役のMachico、島原エレナ役の角元明日香、佐竹美奈子役の大関英里、所恵美役の藤井ゆきよ、箱崎星梨花役の麻倉もも、野々原茜役の小笠原早紀、望月杏奈役の夏川椎菜、ロコ役の中村温姫、七尾百合子役の伊藤美来、高山紗代子役の駒形友梨、中谷育役の原嶋あかり、天空橋朋花役の小岩井ことり、エミリー スチュアート役の郁原ゆう、北沢志保役の雨宮天、木下ひなた役の田村奈央、矢吹可奈役の木戸衣吹、横山奈緒役の渡部優衣、二階堂千鶴役の野村香菜子、大神環役の稲川英里、豊川風花役の末柄里恵、宮尾美也役の桐谷蝶々、福田のり子役の浜崎奈々、真壁瑞希役の阿部里果、篠宮可憐役の近藤唯、百瀬莉緒役の山口立花子、永吉昴役の斉藤佑圭、北上麗花役の平山笑美、周防桃子役の渡部恵子、ジュリア役の愛美、白石紬役の南早紀、桜守歌織役の香里有佐、以上32名が出演した。
TEXT BY 中里キリ
同ライブは2023年4月からスタートした「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR」のラストを締めくくるもので、DAY1には32名、DAY2には39名全員のシアターアイドルが出演する10年の集大成というべきライブだ。開演前にはスクリーンにて、765プロの事務員・青羽美咲より想いと熱のこもった前説と諸注意が行なわれた。劇場を思わせる開演ブザーと壮大なオーバーチュアが鳴り響き、スクリーンには横浜を思わせる大都市のストリートに出演アイドルたちのシルエットフラッグが立ち並ぶ光景と、シアターの幕が開く演出が繰り広げられた。
開幕とともに流れたイントロは「Welcome!!」。歴代メインテーマの中ではライブでの披露がかなり久しぶりとなる楽曲に、会場は待ちに待ったというムードだ。ステージの上下段にズラリと並んだアイドルたちは、全員がそれぞれにデザインが違う個別衣装を着用。ライブでのユニット衣装のバリエーションが多い「ミリオンライブ!」だが、アイドル個人の個別衣装によるライブは初めての試み。それが32人となると本当に華やかで、遠目でも各アイドルのカラーが確認できる。山崎はるかが「プロデューサーさん、お待たせしました!」とツアーファイナル公演への呼び込みを高らかに告げてライブはスタート。盛り上げどころで「ようこそ!」「みんなと会えて嬉しい!」「私、頑張ります!」「夢をかなえるために!」と続く呼びかけは山崎→Machico→南早紀→香里有佐のリレー。作品を初期から支えてきた信号機のふたりからもっとも新しいふたりへとバトンをつないだ。
開演の挨拶では、南が個別衣装についてふれると会場は大歓声に包まれた。観客の「回って~!」のリクエストに応えて32人がくるりと回ると、その個性の豊かさに驚くばかりだ。
改めての開演宣言を受けてのトップバッターは、麻倉もも、伊藤美来、小岩井ことりによる「Legend Girls!!」。オープニングには「プロデューサーさん、ここから始まる私たちの伝説、見届けてください!」と声を揃えた。同曲は2013年に発売された「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE 02」の収録曲であり、全体曲の「Thank You!」を除けば最初にリリースされた楽曲だ。ここからまた新しい伝説をはじめていくという意志を込めたパフォーマンスは、この3人ならではと言えるカワイイの三重奏。まさに伝説の目撃者となっていることを実感する。麻倉が「みんな一緒に歌ってくださいね!」と呼び込むと、会場はうねるような大歓声とコールで応えていく。3人がステージを楽しんでいる様子が眩しい笑顔からも伝わってきて、ラストは最高の笑顔のピースサインで締めくくった。
ソロの先陣を切ったのは小笠原早紀の「AIKANE?」。スーパーハイテンションで「茜ちゃーん!!」の声を響かせると、「Act4ではソロ曲をメドレーでやっちゃいまーす!」と宣言した。猫耳と猫しっぽの衣装がキュート! アップテンポなパートからこぶしを効かせて歌い上げるパートまで盛りだくさんで、全力で繰り広げるAKANEちゃんワールドだ。“あかねちゃん”あいうえお作文も繰り出して、テンション最高潮のまま駆け抜けるステージだった。
平山笑美は「FIND YOUR WIND!」を歌唱。ステージに歩み出した平山はゆったりと手を振ると、歌い出しと共に即トップギアへ。高く突き抜ける歌声がKアリーナ全体に響き渡っていった。衣装にあしらわれた紫に染め上げたレースの花が目を惹く。「ハイ!ハイ!」とコールを呼び込むと、会場全体を揺らすような声援が打てば響くように応える。圧倒的な歌唱と安定感を両立したステージに、MCで駒形友梨も思わず「歌うまいよね」と直球のコメントをしていた。
駒形友梨は「Only One Second」を披露。トップギアのまま駆け抜けるような曲の並びだ。ビジュアルもボーカルもあまりに鮮やかな歌い出し。「ハイ!ハイ!」の煽りで会場をうねりのような歓声と光が包みこむさまはまさに“最高の光景に会える場所”で、駒形からは感情があふれだすようなシャウトが漏れた。アウトロのキビキビとしたダンスも潔く、ゆったりと突き上げた人差し指が高々と天を指した。メドレーサイズならではのフルスロットルの歌唱だった。
大関英里は「SUPER SIZE LOVE!!」を歌唱。ステージに飛び出した大関は「Kアリーナ、声聞かせて!!」。元気とエネルギーを具現化したようなパフォーマンスを見せると、拳を元気いっぱいにつきあげる。ラップパートで客席のコールを全力で呼び込むと、それ以上のパワーをステージから返していく。会場全体の「おかわり!!」を浴びた大関は、全力ピースとともに「ありがと」の形に口を動かし、はにかんだように笑っていた。MCで大関は圧倒的な歓声について「おかわりが降ってきた」と表現していた。
角元明日香、中村温姫、原嶋あかりは「ゲキテキ!ムテキ!恋したい!」をオリジナルメンバーで披露。星座ユニット・レオの楽曲で、「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」以来の歌唱となる。この3人らしい心浮き立つようなハッピーなステージで、センターで小柄な原嶋が一際躍動している。明るく楽しい楽曲なのに、歌詞の中身はビターな恋の終わりを歌っているギャップがこの曲の魅力だ。間奏ではダンスとピースサイン掲げを3分割画面で切り抜いた。息の合ったパフォーマンスのラストは、どやっとかわいらしいポーズでキメた。MCで角元は、歌い分けをCD音源に合わせた苦労を語っていた。
山崎はるか、藤井ゆきよ、小笠原早紀、夏川椎菜、駒形友梨は「ショコラブル*イブ」をオリジナルメンバーで披露。10日遅れのバレンタインプレゼントに、5人それぞれのキュートさと愛情を目いっぱいに込めていく。センターの藤井が「大好きだよ、10年間ずっとね!」とこの場ならではの言葉を届けて観客を魅了。ラストは全員の想いを込めて「好きです! これからもずーっと、よろしくね!」と声を揃えていた。
大関英里、藤井ゆきよ、渡部恵子、南早紀は「花びらメモリーズ」を歌唱。劇中劇「聖ミリオン女学園」発の楽曲をオリジナルメンバーで披露した。ややダークで疾走感のある曲調の中で、渡部の物語に入り込んだ抒情的な歌唱や南の情熱的な歌唱などそれぞれの色が弾ける。間奏前の南の「このまま!」の祈りのようなフレーズが鮮烈だ。ゆったりと歌い上げる藤井のビジュアルの仕上がりが素晴らしい。ラスト、感情があふれ出すように切実な大関のキメが印象に残った。MCでは、南と大関がやっとフルメンバーで歌えた喜びを爆発させていた。
「スペードのQ」は郁原ゆう、雨宮天、斉藤佑圭が披露。妖しい空気の旋律の中、斉藤の目元のハートのメイクと楽曲のマッチングがいい。間奏のちょこまかとした移動がかわいらしい。雨宮や郁原のどこかつややかな笑顔の表現のニュアンスの違いが印象的で、雨宮はMCで「それぞれのヤンデレの表現が違う」と話していた。個人的に記憶に残ったのは斉藤の表現の仕上がり具合で、ジャケットプレイのちょっとした動きで表現するセクシーさや、ラストの闇の中に浮かぶ表情感が鮮烈だった。
山口立花子は「Border LINE→→→♡」を歌唱。イントロのセクシーかつキュートに躍動するダンスで引き込むと、セクシーで余裕たっぷりの莉緒ならではの世界をステージに展開していった。最後はアウトロのダンスと最高のキメで締めくくった。
末柄里恵は「オレンジの空の下」を披露。ドレッシーな衣装で優雅に舞いながら朗らかに歌うと、まぶたの裏に夕暮れの美しい光景が広がるようだ。心が浄化されるようなステージを終えると、末柄は優しく華やかに笑いながら手を振っていた。MCで末柄は「ミリシタ」の振付も取り込んで10年の歴史を込めたと語っていた。
中村温姫は「STEREOPHONIC ISOTONIC」を歌唱。絵の具のボタンやパレットの飾りなど、ロコらしいアートが衣装にも展開されている。ロコ語を交えながらの表現はキュートで元気いっぱい。見せ場はやはり超高速のロコラップパートで、今日もパーフェクトにさく裂していた。MCで中村は「自分を信じてくれるみんながいるという自信で頑張りました」と語っていた。
浜崎奈々は「マイペース☆マイウェイ」を披露。のびやかでエネルギーを感じさせる歌唱が気持ちいい。楽しくもあり、どこか胸がぎゅっとなるような感動もある不思議な楽曲だ。ラストの“マイペース☆マイウェイでいこう♪”の気持ちがほとばしるような堂々たる歌唱と笑顔が印象的だった。
木戸衣吹は「おまじない」を歌唱。オレンジ色を基調にした衣装やビジュアル、ステージングのすべてがこれぞアイドルという輝きを放っている。ポーズのひとつひとつが絵になって決まっていて、「約束だよ!」と小指を突き出す姿には、視線を釘づけにされるような華があった。MCで木戸は「次は私がみんなにおまじないをかける番という気持ちで歌いました」と語っていた。
麻倉もも、田村奈央、桐谷蝶々、近藤唯は「旅立ちのコンパス」を披露。ユニット・Fleurangesがフルメンバーで揃った。足元の靴下やローファーまでこだわりのある揃いの衣装に着替えての登場だ。田村奈央の素朴でオリジナルな歌声でつかみ、桐谷のとろりとした甘い歌唱が続いたりとそれぞれの声質と歌質が本当に個性的な4人だ。ステージには癒しのオーラがあふれていて、新しい一歩を踏み出す勇気が湧いてくるようなパフォーマンスだった。
伊藤美来、小岩井ことり、香里有佐は「Harmony 4 You」を歌唱。同曲は「アイドルマスターミリオンライブ! シアターデイズ」4周年記念楽曲で、全体曲をトリオで披露するのは意外な構成だ。追いかけあう清涼でまっすぐなボーカルたち。センター香里の頼りになる存在感が「ミリシタ」とともに重ねてきた日々を感じさせる。歌声の粒がはっきりわかるトリオ編成にしたことで3人のアイドル性の強さが立ち上って、また違った魅力を持った正調アイドルソングとして成立している気がした。
夏川椎菜、木戸衣吹、愛美は「CHEER UP! HEARTS UP!」を披露。いずれもオリジナル歌唱メンバーだ。木戸、夏川、愛美と続く歌い出しのラップパートはとてもキュートで、中でも愛美のビジュアルと表情があまりにもジュリアそのものを感じさせて強い。3人の歌声とパワーがひとつになって、だんだんと力強さを増していくイメージだ。アウトロに至るまでエンターテイメントとしての強度が高く、応援で元気を届けるようなパフォーマンスだった。
渡部優衣、桐谷蝶々、阿部里果は「夢見がちBride」を歌唱。軽快なラップの歌い出しは阿部で、抑揚抑え目の瑞希らしいラップと柔らかなウィンクのギャップが印象的だ。渡部の関西テイストにあふれたラップ、桐谷のスイートなラップと個性豊かな歌い継ぎが楽しい。空間がハッピーなテイストにあふれていて、ステージにひと時の初夏が訪れたようだった。MCで桐谷は結城アイラの詞を絶賛すると、いつかフルメンバーで歌いたいと夢を語っていた。
ソロメドレーゾーンは郁原ゆうの「絵羽模様」からスタート。柔らかな笑顔と包み込むような表現とともに、エミリーの世界が美しく広がっていく。和のテイストを取り入れたドレスが優美で、ふくらみのある袖のデザインが舞うようなダンスにぴったりくる。足元の足袋風のブーツがキュートだ。彼方を見つめながら“まほろば色”を歌う時の優しい笑顔が記憶に残った。
田村奈央は「あのね、聞いてほしいことがあるんだ」を披露。これは久しぶり……と思いきや、なんと8年前の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」福岡公演以来だ。朗らかに笑いながら会場に手を振ると、ひとつひとつの振付を確かめるような丁寧なダンスがひなたらしい。素朴な歌声から優しくまっすぐな心情がストレートに胸に届いてくる。10年目の“ずっとこれからも マイペースなわたしだけど どうぞヨロシクね”のフレーズが、特別な意味を帯びて響いた。
原嶋あかりは「アニマル☆ステイション!」を歌唱。原嶋が「次は「アニマル☆ステイション!」だよ!」と弾むようにステージに飛び出すと、会場の盛り上がりと野生のギアが瞬く間に一段上がっていく。まさに躍動するかわいさだ。原嶋の「みんなー集まってー! 一緒に遊ぼう!」の声に応えて、Kアリーナに動物の鳴き声コールと黄色の光が渦を巻いた。原嶋はMCで「ついに横浜も動物園にしてやりましたよ!」とドヤ顔でアピールしていた。
勢いそのままに、稲川英里は「たんけんぼうけん☆ハイホー隊」を披露。仲良くなったアニマルたちと一緒に冒険に出るイメージだ。DAY1の稲川は環のセカンドヘアスタイルに寄せた左右のおさげがチャーミングで、表情からは環が感じているであろう楽しさと喜の感情が弾けている。稲川が全身から発する元気に応えるように、会場のコールも絶好調。ステージ上の“環の”感情もラストの“みんな友達だ!”でマックスにほとばしっていた。MCで稲川は、この曲を出演できなかった「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-2 5 TO SP@RKLE!! DAY2」で歌唱する予定だったと明かすと、「忘れ物を回収できてとても嬉しいです」と語っていた。
一瞬の間を取って、ギターをかき鳴らすジャーンの音が響くと、会場に期待感が弾ける。ギターを下げて登場したのはもちろん愛美、楽曲は「流星群」だ。「ツアーファイナル、かかってこいや!」と楽し気に挑発すると、全身でリズムを取りながらギターをかきならす姿に思わず目を奪われる。間奏のギターソロも鮮烈で、愛美の表現者としての10年の進化がそのままジュリアにフィードバックされているようなイメージだ。ラストをエモーショナルに歌いきった愛美がきっぱりとした笑顔で「Thank you!!」と締めくくると、アリーナを爆発的な歓声が包み込んだ。MCで愛美はライブの原点の楽しさと気持ちを思い出したと語っていた。
前曲とは全く違うベクトルで、衝撃度はそのままに。藤井ゆきよ、小岩井ことり、野村香菜子、山口立花子のユニット・夜想令嬢 -GRAC&E NOCTURNE-が披露したのは「昏き星、遠い月」。エドガーとクリスの出会いのシーンからはじまるステージは、『ミリオンライブ!』の歴史の中でも特異なチャレンジとして記憶される舞台歌劇だ。ヘッドセットを着用していることもあり、両手と全身を使った表現が繰り広げられる。物語性と破壊力の高さは、「どうして俺たちを殺そうとするんだ!」の藤井の絶叫で頂点を迎える。山口の悪女然とした演技と母性の落差が印象的で、カラーコンタクトをいれた瞳のアップのシーンははっとする説得力だった。
夏川椎菜、中村温姫、伊藤美来、阿部里果、斉藤佑圭のユニット・Chrono-Lexicaは「dans l’obscurité」を披露。待ち望まれていたフルメンバー5人が揃う瞬間を目撃する歓喜が会場全体で爆発する。明滅するライトと激しいサウンドの中、悠然と歌い出す中村の姿はロコであってロコでないよう。楽曲のダークなテイストにぴったりと合わせたそれぞれの表現が絶妙で、やはりこの5人の色と歌声の成分が合わさってこそ真のChrono-Lexicaだと再確認させられた。間奏部で独白をつないでの伊藤の「目覚めよ、Chrono-Lexica!」の台詞の瞬間の5分割映像で、並び立つキメポーズがあまりにも鮮烈だった。
MCを挟んで麻倉ももは「きまぐれユモレスク」を披露。初期衣装であるハピネスクローバーと楽曲のマッチングがあまりにもぴったりだ。歌い出しの“すき きらい すき すき きらい”のフレーズがあまりにもキュートで、はにかんだような微笑みもあいまって思わず魅入られてしまう。ちょっと悪い子、すらも表現できるようになった星梨花のアイドルとしての成長と、すべてを飲み込む大波のようなかわいらしさの洪水に酔いしれるステージだった。MCで麻倉は、初の声出し解禁披露の感動と、楽しく歌えたことを語っていた。
渡部恵子は「ローリング△さんかく」を歌唱。元気にキュートに躍動するパフォーマンスに応えて、客席には三本のライトのトライアングルが無数に踊った。長年愛されてきた彼女の代表曲のひとつだが、時間を重ねて桃子が周囲と一緒に頑張ることを知っていったこれまでと、曲の中で線が増えてだんだんと丸に近づいていく様子がリンクしているようで。演者とアイドルが一緒に成長していることを感じるような時間だった。MCで渡部は会場を埋め尽くす三角形に感激していた。
雨宮天は「ライアー・ルージュ」を披露。彼女の表現力を見せつけた原点とも言える楽曲だ。イントロの決然とした振付から、その歌声と自信にあふれた魅力的な表情に引き込まれる。間奏でゆっくりと視線を動かし、こちらを“視る”何気ない表情がハッとするほど美しい。曲を通じて視線の動きは丁寧に意識されていて、想いを込めた歌唱で伏せていた瞳を、“まっすぐ見つめる瞳を”ですっとこちらに向ける仕草が目力を何倍にも印象的に感じさせた。
初期曲の並びで、伊藤美来は「透明なプロローグ」を歌唱した。華やかな笑顔でゆっくりと舞う伊藤のアイドルとしてのポテンシャルの圧倒的な高さ。そこに百合子という少女の内面と透明な輝きを丁寧に乗せていく。10年を超えて、アイドルを体現して輝き続ける、そのシンプルで困難な道を軽やかに超えていくパフォーマンスだった。MCで伊藤はこの曲への思い入れと思い出とともに、10周年で歌えた感慨を語っていた。
渡部優衣は「Super Lover」を披露。挑発的なパフォーマンスで大人でクールな奈緒を表現していく。セカンドヘアスタイルのストレートヘアと、衣装も楽曲のイメージにぴったりとハマっており、信じられないほど腰の位置が高い。オリジナルな声質で奈緒らしさをキープしながら、かっこいいにもセクシーにも自在に振れるのは彼女ならではの特質だろう。最後は鮮やかなウィンクでキメると、“ありがと”の形で声にしないメッセージを残した。
小岩井ことり、郁原ゆう、南早紀のユニット・花咲夜は、ユニット衣装に着替えて「矛盾の月」を披露。比較的レアなカップリング曲で、フルメンバーがナンバリングライブで揃うのはこれが初めてだ。扇子を使った優雅なダンスと3人の溶け合う歌声が魅力的。扇子で切るようなメリハリのある動きを見せたり、ゆったりと円の動きを見せたりと自在の扇子捌きで、ラストの余韻を残すキメもとても美しかった。
駒形友梨、浜崎奈々、近藤唯は「カワラナイモノ」を歌唱。最初の「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE」シリーズに収録の初期曲だが、シアター組のオリジナルメンバーが揃って歌うのはこれが初めて。忘れ物を見つけて行くようなセットリストだ。背後のスクリーンには満開の夜桜。力強く背中を支え、一緒に歩むような歌声。時を重ねても変わらない思い出と友情の歌は、10年の時を経ても変わらぬ、さらに眩い輝きを放っていた。
野村香菜子、末柄里恵、平山笑美は「カンパリーナ♡」を披露。三浦あずさの気配がする楽曲が並んだのは偶然だろうか。シアター組が揃っての歌唱はもちろん、ライブ披露自体が初めてとなる。ゴージャスなムードとサウンドの中繰り広げられるのは大人の夜のステージ。淡い色調の衣装が調和していて、あつらえたユニット衣装のようだ。末柄と平山というハイクオリティなボーカルとともに、野村の華やかな存在感がセンターで輝いていた。
ラストブロックは、角元明日香、小笠原早紀、雨宮天、野村香菜子、香里有佐による「クルリウタ」からスタート。「ミリオンライブ!」最恐とも言われる楽曲で、最終ブロックがただでは済まない予感が走る。わらべ歌のようなイントロの中、不穏なライトとともに踊る5人。歌い出しの雨宮の流麗な歌声が、一気に空間を恐怖の物語の世界へと連れていく。熱量と感情のこめられた力強い歌い継ぎ。主人公の小笠原を円で囲みながら歌う4人の姿が印象的で、距離を詰めた野村の指先が妖しく小笠原に触れていく。落ちサビの小笠原の歌い上げの痛切さと、野村の場を圧倒するような気迫に満ちた歌い上げが記憶に残った。
最恐の座は譲らない。大関英里、木戸衣吹、阿部里果、近藤唯、平山笑美は「赤い世界が消える頃」をオリジナルメンバーで披露。こちらも配役投票企画から生まれた楽曲で、テーマは学園ホラーだ。ポイントになるのが笑顔の表現で、ソロパートに織り込まれるそれぞれの妖しい笑顔がホラーテイストに満ちていて、中でも木戸の笑顔が怖い! 背景のスクリーンに異界と化した音楽室が映し出されているのが学園ホラーならではだ。照明表現も絶妙で、“みぃつけた”の瞬間木戸の瞳のハイライトが消えて見えるのがゾワッとした。
ホラー物が続いたら、中和する楽曲は「DIAMOND DAYS」…と思いきや、ここでダイヤモンド違いの「DIAMOND JOKER」を持ってきた。歌唱はオリジナルメンバーよりMachicoと藤井ゆきよのふたり。サイバーでソリッドな空気感はそのままに、デュオ歌唱によりワンオンワンのバトル感が加わった。Machicoのボーカル戦闘力の高さは言うに及ばないが、藤井も完成したビジュアルに彼女ならではの世界を上乗せしてバチバチに渡りあっていく。ホラーブロックの余韻を切り裂いて次につなぐステージだった。
南早紀、香里有佐のユニット・オフィウクスは「電波感傷」を歌唱。昨夏のMRライブ「765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」での印象が強い楽曲が、スクリーンを飛び出してアリーナに降り立った。歌声とパフォーマンスはソリッドで疾走感に満ちていて、近未来感のあるスクリーン映像も相まって、都市の上空を駆け抜けるような爽快さがある。たったふたりの同期が互角の輝きで火花散らし、向かい合って出会いの運命を歌っているのは感動的な光景だった。
Machico、平山笑美、愛美は「Marionetteは眠らない」を披露。最初の「LIVE THE@TER PERFORMANCE」楽曲にシアターオリジナルメンバーが揃った。CDの時点で片鱗はあったものの、これほど傑出した『ミリオンライブ!』を代表する歌姫たちになるとは。歌声の強さと説得力が高いレベルでバランスしているトリオだ。今の3人と星井美希=長谷川明子が揃ったステージを改めて見てみたいと感じた。
山崎はるか、桐谷蝶々、渡部恵子、香里有佐は「シークレットジュエル~魅惑の金剛石~」を歌唱。こちらもシアター組オリジナルメンバーによるカルテットだ。それぞれのソロ衣装に、山崎は着用した黒手袋がキマっている。原曲センターの水瀬伊織=釘宮理恵の存在感が強大な楽曲だが、歌い出しの印象的なソロは渡部が担って見事に歌いこなす。別のカッティングを施した魅惑のダイヤモンドがそこにあった。
角元明日香、中村温姫、田村奈央、渡部優衣、野村香菜子、阿部里果は「Shamrock Vivace」を披露。ビッグバンド風のオシャレなサウンドと共に、パワフルなボーカルたちが観客たちを特別なショウタイムの世界へといざなう。ウェルカムトゥシャムロックパーティー! エンターテイメントとしての強度が高く、アリーナクラスに届いたシアターのステージとしてとてもしっくりくるメジャー感だ。共に手を打ち鳴らし、音楽を楽しむハッピーな空間がそこにあった。
ステージに一旦全員が揃ってのラストナンバーは「EVERYDAY STARS!!」。アイドルそれぞれの個性あふれる台詞が入る自己紹介的ナンバーだが、まさかこの曲を32人で歌うとは! という驚きが最初に来る。ステージに1/4が残って最初の8人分を歌唱すると、いつの間にかステージ上段に次の8人が現れて歌い継いでいく趣向だ。浜崎が「ミリオン!」コールを巻き起こしたりと、限られた尺の中で工夫を凝らした、それでいて明日のライブにもつながる台詞を届けていく。上下段やステージのカミシモをうまく使って出演者を入れ替えながら、ついには32人のメッセージを届けきった。全員でMCをするのは難しい規模感のライブの中で、全員が魅せ、DAY2につながるパフォーマンスを一曲で見せたのはコロンブスの卵だった。
アンコール前には、スクリーンの青羽美咲から今後の活動に関する様々な告知が行なわれ、「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR」全公演のライブBlu-ray化決定が発表された。
アンコールナンバーは「ミリオンライブ!」10周年記念楽曲「Crossing!」。白い逆光気味のライトの中共通衣装に着替えた32人がステージに歩み出す。32人並んでの披露は壮観で、絡み合う虹が空を超え、夢の宇宙を往く映像がエモーショナルだった。
ラストの挨拶は、メンバーを代表してMachicoが行なった。久しぶりのツアーを10周年の節目に行なえた感謝や、「ミリオンライブ!」が自身のデビュー作で良かったという心情を伝えると、「明日は「ミリオンライブ!」全員でめちゃめちゃ最高な日にしたいと思います!」と締めくくった。
Machicoが「私たちの夢の扉を、思いっきり!」と煽って扉を叩く仕草を見せれば、DAY1を締めくくるラストナンバーはもちろん「Rat A Tat!!!」だ。アニメから始まった新しい夢の楽曲は、ラスト曲らしくフリームーブ満載で、客席のコールや歌声をどんどん呼び込んでいく。クライマックスの“Rat A Tat!!!”はステージと会場がひとつになって、やけくそのような熱量のハッピーな大合唱だった。
最後は山崎が音頭を取っての「アイマスですよ、アイマス!」で、10年を締めくくるツアーファイナルのDAY1は幕となった。多人数出演ゆえのオリジナルメンバー歌唱と、メドレーで歌い継ぐソロ曲の両輪のライブで、DAY2で待ち受ける伝説がますます楽しみになる内容だった。
●THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-4 MILLION THE@TER!!!! DAY1
2024.2.24. Kアリーナ横浜 セットリスト
M01:Welcome!!(ミリオンスターズ)
M02:Legend Girls!!(麻倉もも、伊藤美来、小岩井ことり)
M03:AIKANE?(小笠原早紀)
M04:FIND YOUR WIND!(平山笑美)
M05:Only One Second(駒形友梨)
M06:SUPER SIZE LOVE!!(大関英里)
M07:ゲキテキ!ムテキ!恋したい!(角元明日香、中村温姫、原嶋あかり)
M08:ショコラブル*イブ(山崎はるか、藤井ゆきよ、小笠原早紀、夏川椎菜、駒形友梨)M09:花びらメモリーズ(大関英里、藤井ゆきよ、渡部恵子、南早紀)
M10:スペードのQ(郁原ゆう、雨宮天、斉藤佑圭)
M11:Border LINE→→→♡(山口立花子)
M12:オレンジの空の下(末柄里恵)
M13:STEREOPHONIC ISOTONIC(中村温姫)
M14:マイペース☆マイウェイ(浜崎奈々)
M15:おまじない(木戸衣吹)
M16:旅立ちのコンパス(麻倉もも、田村奈央、桐谷蝶々、近藤唯)
M17:Harmony 4 You(伊藤美来、小岩井ことり、香里有佐)
M18:CHEER UP! HEARTS UP!(夏川椎菜、木戸衣吹、愛美)
M19:夢見がちBride(渡部優衣、桐谷蝶々、阿部里果)
M20:絵羽模様(郁原ゆう)
M21:あのね、聞いてほしいことがあるんだ(田村奈央)
M22:アニマル☆ステイション!(原嶋あかり)
M23:たんけんぼうけん☆ハイホー隊(稲川英里)
M24:流星群(愛美)
M25:昏き星、遠い月(藤井ゆきよ、小岩井ことり、野村香菜子、山口立花子)
M26:dans l’obscurité(夏川椎菜、中村温姫、伊藤美来、阿部里果、斉藤佑圭)
M27:きまぐれユモレスク(麻倉もも)
M28:ローリング△さんかく(渡部恵子)
M29:ライアー・ルージュ(雨宮天)
M30:透明なプロローグ(伊藤美来)
M31:Super Lover(渡部優衣)
M32:矛盾の月(小岩井ことり、郁原ゆう、南早紀)
M33:カワラナイモノ(駒形友梨、浜崎奈々、近藤唯)
M34:カンパリーナ♡(野村香菜子、末柄里恵、平山笑美)
M35:クルリウタ(角元明日香、小笠原早紀、雨宮天、野村香菜子、香里有佐)
M36:赤い世界が消える頃(大関英里、木戸衣吹、阿部里果、近藤唯、平山笑美)
M37:DIAMOND JOKER(Machico、藤井ゆきよ)
M38:電波感傷(南早紀、香里有佐)
M39:Marionetteは眠らない(Machico、平山笑美、愛美)
M40:シークレットジュエル~魅惑の金剛石~(山崎はるか、桐谷蝶々、渡部恵子、香里有佐)
M41:Shamrock Vivace(角元明日香、中村温姫、田村奈央、渡部優衣、野村香菜子、阿部里果)
M42:EVERYDAY STARS!!(ミリオンスターズ)
-ENCORE-
M43:Crossing!(ミリオンスターズ)
M44:Rat A Tat!!!(ミリオンスターズ)
THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR」公式サイト
https://idolmaster-official.jp/live_event/million10th/
「アイドルマスター」シリーズ 公式サイト
https://idolmaster-official.jp/
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