REPORT
2024.02.29
1月に行われた“リスアニ!LIVE 2024”でのパフォーマンスも記憶に新しい新世代シンガー・SennaRinが、昨年の2ndライブ以来となるワンマン<SennaRin 3rd ONE MAN LIVE“Land of NOD”>を東京・大手町三井ホールにて開催した。デビュー以来、澤野弘之とのタッグで数々の楽曲を発表し、昨年も国内外の数々のステージを経て、シンガーとして成長を果たしてきた彼女が、これまでのワンマンとは編成を変えて、デジタルシングル「NOD」と共に見せた世界とは。そして広がった世界の先に見える『ADRENA』とは――。
PHOTOGRAPHY BY 西槇太一
TEXT BY 澄川龍一
2023年のSennaRinは、北南米、ヨーロッパ、アジアと文字通り世界を飛び回り、国内でも2ndワンマン“Qv”を成功に収めるなど、充実した1年を過ごしてきた。今年に入ってからはデジタルシングル「NOD」のリリースを皮切りに、“リスアニ!LIVE 2024”にて初めて日本武道館のステージに立つなど、早くも存在感を見せている。そんななかでの自身3度目のワンマンとなるのがこの日の“Land of NOD”である。これまでSennaRinのワンマンは、2022年から毎年10月7日の“センナの日”に行われてきたが、今年はその日を待たずのライブ開催となったこれまで彼女やプロデューサーの澤野弘之は「ワンマンで新しい一面を見せる」ということを発言してきたのだが、この日のライブはそれがより色濃くでたステージでもあった。自身の成長を裏づけながら、その先の未来を強く示したライブの模様をレポートしていこう。
大手町三井ホールという、これまでのライブハウスとは異なる雰囲気ある会場には、多くの観客が詰めかけている。その観客たちが見つめるステージは、開演前から彼女をイメージする青いライティングで照らされていた。そしてステージ上にはこれまで見られたギターやチェロ、ベース、キーボードのほかに、中央にはドラムセットが置かれている。過去2回とは異なる編成であることは事前にアナウンスされていたが、この時点でこれまでとはまた違ったものになるという期待が開演前から感じられる。
そして会場が暗転すると、場内には彼女のデビューEP『Dignified』から「Dignified-IN」が流れる。これは過去2回のワンマンと同じ展開だ。プリミティブなビートにSennaRinの声がサンプリングされたトラックが流れるなか、バンドメンバーがステージに登場。その最後に、SennaRinがゆっくりと舞台中央に立った。強めのキックがエンディングとして鳴らされたあと、静寂のなか彼女の背後に青いバックライトが照らされる。そんななか聴こえてきたのは、SennaRinの歌声だ。「melt」のサビのメロディが、歌詞のとおり“眩しすぎる光”の中で鳴り響いている。あまりに幻想的な世界で聴かれるアカペラのあと、彼女が公演タイトルの「Land of NOD」とつぶやき、ライブが幕を開けた。幻想的な宇宙空間を抜けて、続けて鳴らされたのは「NOD」の刺激的なバンドセットだ。これまでSennaRinでのワンマンでは伊藤ハルトシ(g、cello)と田辺トシノ(b、piano)に澤野のトラックが合わさるというものだったが、今回はそこに藤崎誠人のドラムが加わることで、彼のキックによるビート感というものに変化が見られた。硬質ながらこれまでにない肉感がサウンドに加わることで、SennaRinのボーカルも野生味を得たかのような、すなわちプリミティブな魅力が展開されていく。それはバンドの質感がより際立つ2コーラス目から強調され、青いペンライトが照らされる会場のボルテージもぐいぐいと上昇していく。ステージ上を躍動しながらサウンドと調和していくボーカル聴かせる、SennaRinの存在感を存分にアピールするオープニングとなった。
続く「S9aiR」でも藤崎の硬いビート、田辺のズシンとしたベース、伊藤の軽快なギターカッティングに乗せて、重力から解き放たれたように軽やかにステージを動き回るSennaRin。クールな楽曲の中でも熱量を持たせたパフォーマンスが広がっていった。そこから最初のMCでは「“Land of NOD”にお越しいただきありがとうございます」と挨拶。「このライブが、皆さんが普段感じる悲しさとか虚しさとか、悔しいこととか、色んな感情の逃げ道になるような時間になればなと思っています」と、“罪からの逃亡”をテーマにした「NOD」を冠するこの日のライブのコンセプトを口にした。
そこから続いての楽曲はSawanoHiroyuki[nZk]:ReoNa「time」のカバー。伊藤のアコースティックギターが鳴る序盤ではデジタルビーツが重くなるなか独特な世界に溶け合った歌唱を聴かせる。そこから藤崎のドラムがインすると、肉感のあるサウンドの中で熱っぽい歌声へと変わっていく。やはりここでもバンドサウンドが主体となると、その声のフィジカルさに拍車がかかるが、一方で1曲の中での表情の変化のつけ方というのはこの編成ならではとも言えるだろう。そうした肉体的な盛り上がりはアグレッシブな「Limit-tension」でも続いていく。スタイリッシュな野生味を心地良く感じていると、ふとここが大手町という都会のなかにあることを思い出す。ビル群の中で聴かせるフィジカルを効かせたボーカルという“都会的なプリミティブ”、これこそがSennaRinの音楽の真骨頂であるのだ。
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