REPORT
2024.02.29
MyGO!!!!!にとって初のライブハウスツアー“MyGO!!!!! ZEPP TOUR 2024「彷徨する渇望」”の初日となる東京公演が、2月12日、Zepp Haneda (TOKYO)で開催された。彼女たちの結成までの軌跡を描いたTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』の放送や、自身最大規模となる東京ガーデンシアターでのワンマンライブの成功など、2023年を飛躍の年とした彼女たち。2024年最初の単独公演となったこの日のライブで、彼女たちはバンドとしての進化と成長を、迷い続けた先に見つけた5人だけの輝きを、ファンの脳裏にしっかりと刻み込んだ。
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY Photo 福岡諒祠(GEKKO)
※現在公演中のツアーのセットリスト等を含みます。
2022年4月に本格始動して以来、定期的にライブを行ってきたMyGO!!!!!だが、ライブハウスで単独公演を行うのは2023年8月に神奈川・KT Zepp Yokohamaで行われた“5th LIVE「迷うことに迷わない」”ぶり。それ以前も振り返ると、彼女たちはホール会場でライブを行うことが多かったため、実は2022年7月の“1st LIVE「僕たちはここで叫ぶ」”(東京・渋谷 duo MUSIC EXCHANGE)まで遡ることになる。
筆者は“1st LIVE”も現地で観覧してレポートを執筆したのだが、そのときからMyGO!!!!!はライブハウスが似合うバンドだと感じていた。当時から彼女たちの時に焦燥さえも滲むひたむきさ、歌や演奏と真っ直ぐ向き合う真摯な姿勢に、従来の「BanG Dream!(バンドリ!)」発のリアルバンドとはまた別種の雰囲気、まるでライブハウス叩き上げのバンドのような空気感を感じたからだ(それは彼女たちが演じるキャラクターの性質によるものでもある)。その“1st LIVE”から約1年半、TVアニメの放送によって彼女たちが根源に抱える想い、音楽(というよりもバンドそのもの)にかける情熱が種明かしされた今、やはりMyGO!!!!!は(言い方を選ばないとするならば)“本物のバンド”であることを確信できたのが、今回のライブだった。
1階はオールスタンディング、2階席も満員御礼で、始まる前から熱気に包まれた会場。照明が暗転すると、メンバーたちがステージに上がり、ドラムのドドンッ!という音を合図に竿隊のメンバーも手にしている楽器をかき鳴らしてアピールする。そして燈(Vo./CV:羊宮妃那)が「皆さん、こんばんは。MyGO!!!!!です。今日はよろしくお願いします」と挨拶すると、彼女たちのレパートリーの中でもとりわけ晴れやかなアップチューン「碧天伴走」でライブの幕を開ける。TVアニメ第7話の挿入歌でもある本楽曲、そのストーリーに当てはめるなら愛音(Gt./CV:立石 凛)の背中を押すようなメッセージが込められているわけだが、ライブにおいてはMyGO!!!!!を応援するすべての人々、あらゆる迷子たちに向けた歌として心に響く。
そこから間髪入れずライブの定番曲「影色舞」に突入。燈、愛音、楽奈(Gt./CV:青木陽菜)のフロント3名によるお馴染みのステップ、そよ(Ba./CV:小日向美香)と立希(Dr./CV:林 鼓子)のリズム隊が紡ぎ出すグルーヴが会場を熱狂させる。ブレイクの部分でクラップを煽る愛音、サビで右手を大きく振りながら歌ってワイパーを促す燈、もはや鉄板のパフォーマンスだ。その後のMCでは、愛音が生配信用のカメラに向けて指ハートでアピールするも、立希に諫められる一幕も。すると愛音が「カメラさ~ん、りっきー(立希)も映してあげてくださ~い」と呼び掛けて、その流れで立希、そよ、燈、楽奈もカメラの向こうのファンに向けて挨拶する。燈は楽奈に助けを求めて、2人で一緒にカメラに向けてピースサインをしていたのがかわいらしかった。
そんな彼女たちの賑やかなやり取りを挿みつつ、燈が改めてメンバーたちに「やっぱりこの5人でライブするのは楽しいよね」と伝えてバンドの喜びを噛み締めると、ライブは彼女たちの1st Single「迷星叫」で再開。“1st LIVE”で初披露されて以来、ナンバリングライブでは欠かさず演奏されてきたこの楽曲。今回は燈のアカペラ歌唱から始まるアレンジが施され、バンドの“始まりの歌”をよりエモーショナルに表現してみせる。続く「名無声」でも燈がステージに設置された台に座り込んで自身の内側の感情を抱き締めるように歌う場面もあり、サビ終わりの“Oh oh oh”とみんなで声を合わせるパートでは、客席も大きな声で大合唱。さらに2ビートの疾走パンク「壱雫空」(TVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』OPテーマ)を畳みかけ、嵐のような熱狂を巻き起こしていく。
昨年11月には1st Album『迷跡波』をリリースして、今やオリジナル曲も充実している彼女たちだが、「カバー曲とか聴きたくない?」(愛音)ということで、“1st LIVE”の頃からレパートリーにしていたDECO*27「二息歩行 (Reloaded)」を久々に披露。初期のライブでは重宝されていた楽曲ということもあり、そよのスラップベースや楽奈のギターソロなど楽器隊の見せ場も多かった。そして燈がパーカーのフードを被ると、ポエトリーリーディングを大きくフィーチャーした「潜在表明」へ。数々の大舞台での経験を経て逞しさを増したバンドのアンサンブル、そして燈の内に秘めた感情を吐き出すようなパフォーマンスが、オーディエンスの心に深く刺さっていく。特にラスサビ前での燈の叫ぶような声(ステージに倒れ込むくらいの勢いで歌っていた)、そこからフードを脱いで“生きる”ことを力強く表明する歌声には、並々ならぬ気迫がこもっていた。
「潜在表明」のラスト、ギターのハウリングノイズが後を引くなか、燈は次に歌う楽曲のタイトルをコールする。その楽曲は「君の神様になりたい。」。これも彼女たちが“2nd LIVE”の頃からレパートリーにしてきた、カンザキイオリの楽曲のカバーだ(さらに言うと「歌いましょう鳴らしましょう」を楽曲提供したメガテラ・ゼロの歌ってみた動画でも知られる)。“君を救う歌を歌いたい”という気持ち、“僕は無力だ”と繰り返し連呼する悲痛な想い。過去のライブでもMyGO!!!!!の音楽性や世界観との相性の良さを感じていたが、アニメが放送されて燈のパーソナリティが詳らかにされた今、彼女がこの楽曲を歌うことの意味がより大きくなっていることを実感させられる。時に膝をついて、声を震わせて歌う燈の姿、全身全霊のステージングは圧倒的とも言えるものだった。
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