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2024.02.23

Myuk、3年間の軌跡をコンパイルした『Arcana』と共に新たな旅路へ――「concert tour 2024 “Arcana”」ツアーファイナルレポート

Myuk、3年間の軌跡をコンパイルした『Arcana』と共に新たな旅路へ――「concert tour 2024 “Arcana”」ツアーファイナルレポート

2024年1月にメジャー1stフルアルバム『Arcana』をリリースしたソロアーティスト・Myukが、全国4ヵ所を回るツアー「concert tour 2024 “Arcana”」を開催した。初めてフルバンドで開催した2023年11月のワンマンライブ“Knockin’ On Night Door Vol.5”と同じ顔ぶれのメンバーで回ったリリースツアー。ファイナルの渋谷PLEASURE PLEASURE公演のステージには、仲間に囲まれて健やかな表情で歌うMyukの姿があった。

TEXT BY 沖さやこ

曲に込められた思いを丁寧に伝える、語り部としての矜持

Myukとバンドメンバーが一斉にステージに登場すると、「ひとりじゃないよ」でライブがスタートする。演奏が音源よりもアップテンポなのも影響してか、歌詞に綴られたポジティブなメッセージがより際立っていた。名古屋、大阪、福岡と短期間でツアーを回ったことで、培ったグルーヴや熱が途切れないままファイナルに臨めたことも好手となっているのだろう。繊細ながらも凛々しく、堂々とした歌声で、会場の視線と意識を鮮やかにさらった。

「今日は3年間の感謝を伝えに来ました。最高に素敵な夜になりますように、心を込めて歌いたいと思います」と笑みを浮かべるMyukの目は爛々と輝き、落ち着いた声には力強さが宿る。この日の我々の目の前にいるのは、夜の扉を叩いて闇夜を静かに明るく照らす彼女ではなく、“Arcana=箱舟”で我々を新しい世界に連れ出していく彼女だった。「星に願いを」では切実な想いを歌に乗せ、「シオン」では夜明けを迎えに行くような、開けたムードを纏う。5人全員で作り出す瑞々しい空気は開放感に溢れていた。

「今日はただMyukの楽曲に飛び込んで、わたしと一緒に1曲1曲を巡りながら、箱舟に乗って曲の中を旅するようなイメージで楽しんでいただけたら嬉しいです」と告げるMyuk。「snow」のイントロでは客席からクラップが湧き上がり、Myukがアコースティックギターを構えた「あふれる」は彼女のアルペジオをじっくりと味わえる前半、バンドとのアンサンブルの妙が小気味良い後半と、曲中で異なる趣を見せた。the peggiesの大貫みく(Dr)が作る朗らかなリズム、andropの前田恭介(Ba)の洗練された低音、西野恵未(Key)のクールで優雅なプレイ、それを大きな器で包み込む大久保友裕(Gt)のバリエーションに富んだ音色と、それぞれの持ち味が淀みなく発揮される。Myukもバンドのサウンドスケープに安心して身を任せるように、のびのびと歌い上げた。

「次に歌うのは食べ物がテーマの曲なので」と前置きをしたMyukは、観客に「お一人様でも食べに行けるお店」のアンケートを取り、その後はバンドメンバーとツアーを振り返る。和気あいあいとしたあたたかい時間が流れる様子は、船でゆっくりと揺られるような心地良さだ。そして「pancake」を披露する旨を明かしたMyukが、楽曲制作者である大久保に、この曲に込めた想いを語ってほしいと促す。すると彼は、この曲をコロナ禍で塞ぎ込む時期が続いていた期間に「パンケーキのようにちょっとした楽しみが日常にあるからこそ日々を乗り越えられる」と思ったことがきっかけでこの曲が生まれたと明かした。その背景を念頭に置いたうえで聴く同曲は、甘さが増したような気がした。

3年間で出会った仲間とともに迎えた、新しい旅の始まり

「みにくいアヒルの子」をモチーフにした「フェイクファーワルツ」では自らの道を切り開く覚悟を歌に乗せ、熊川みゆ名義でリリースした「夜の舞踏会」ではミステリアスかつ躍動感で魅了すると、最新アルバム『Arcana』への想いを語り「わたしは良い人たちに出会っていく才能があるなって思ったんです。ツアーでもそれを再確認しました」と満足げな表情を浮かべる。「ラブソングの衝動」「Gift」「encore bremen」はその充実を立証するように、勇敢でポジティブな空気感で会場一帯を包み込んだ。

観客に歌ってほしいと呼びかけた「愛の唄」は、初披露から曲が着実に育っていることを実感するパフォーマンスだった。彼女がアコースティックギターをプレイしたこと、バンドメンバーとの結束を高めたことなども起因し、ロック色の強いサウンドが爽快感をもって鳴り響く。彼女がギターを弾きながら歌う場面が多かったのも、このツアーの特徴の1つだろう。アコースティックギターとともにソロで音楽活動をスタートさせた彼女が、こうして様々なプレイヤーとともに1つの音楽を鳴らしている光景は、胸に迫るものがある。隙あらばマイクを離れて、ギターをかき鳴らしながら観客に歌声を求める彼女の笑顔は、とても眩しかった。

ギターを降ろしてハンドマイクスタイルになると「この4人の(バンドメンバーの)方々とツアーを回ることができて本当に嬉しくて……本当に幸せな気持ちでいっぱいです」と喜びを噛み締める。「アイセタ」を披露したあと、歌うことは悲しいことやつらいことを乗り越える手立てであると語り、「皆さん1人1人に歌をうたっていたいです。ずっと味方でいるので、それだけは覚えておいてほしいです」と真摯に伝えると、本編ラストに1stシングル曲「魔法」を贈る。歌詞の一言一言を噛み締めるその歌声は、彼女の思いを我々1人1人の心の奥まで届けるように、真っ直ぐ響いた。

アンコールでは1人でステージに現れ、アコースティックギターを肩に掛けると、熊川みゆ名義での1stソング「あの日夢を」を弾き語りで届ける。祖父が他界し、初めて夢に出てきたことをしたためた同曲について「悲しい別れの曲が出会いをくれました」と語る彼女は、祖父やこれまで出会ったすべての人々に愛情や感謝を伝えるように優しい歌を響かせた。

バンドメンバーも登場すると、Myukは最後に「音楽をすることが、旅をしているみたい」「皆さんは旅で出会った仲間。皆さんがいてくれるからこそ歌を歌い続けることができるし、もっと広い景色を見たい、旅を長く続けたいと思う」と語る。そして“Myuk”はみんなで作っていくものであると告げ、「“Myukキャラバン”の団長としてこれからも頑張っていこうと思います」「わたしは歌で皆さんのそばにいたいし、皆さん1人1人の旅の力になれるような音楽と歌を届けていけるように、もっと成長して努力していきたい」と強い眼差しを浮かべて誓った。

ツアーの締め括りに選んだのは、アルバムのタイトルトラック「Arcana」。音に乗って自然体の感情で歌う彼女の声と佇まいは、晴れやかな旅立ちのシンボルにも思えた。この日序盤から溢れていた凛々しさは、Myukとしての3年間の軌跡をコンパイルした『Arcana』というアルバムを世に放ち、新たな旅の始まりを迎えたからこそ湧き上がったものなのだろう。長い旅路の中の、1つの節目とも言うべきツアーファイナル。仲間とともに作り続けてきたMyukという船はこの日、大きな帆を掲げた。

■concert tour 2024 「Arcana」ツアーファイナル
2024年2月11日(日)@東京 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

【セットリスト】
M-1 ひとりじゃないよ
M-2 星に願いを
M-3 シオン
M-4 Snow
M-5 あふれる
M-6 Pancake
M-7 フェイクファーワルツ
M-8 夜の舞踏会
M-9 ラブソングの衝動
M-10 Gift
M-11 encore bremen
M-12 愛の唄
M-13 アイセタ
M-14 魔法

EC1あの日夢を
EC2 Arcana


●1st Album「Arcana」
https://smar.lnk.to/jPvUhX

●「Arcana」(Music Video)【Prod by Guiano】

関連リンク

Myuk 公式サイト
https://myuk.jp/

Myuk 公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/myukmusic

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