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REPORT

2024.02.22

濃密で、激しく、美しい、世界に向けての宣戦布告――ワンマンライブ“Ave Mujica 1st LIVE「Perdere Omnia」”を振り返る

濃密で、激しく、美しい、世界に向けての宣戦布告――ワンマンライブ“Ave Mujica 1st LIVE「Perdere Omnia」”を振り返る

“破壊”と“創造”の先で辿り着いた“本当の私たち”

クワイアのようなコーラスのみならず、オブリビオニスのシアトリカルな合いの手が楽曲をよりドラマチックに演出した「Choir ‘S’ Choir」に続いては、再び演劇パートに。自らの手で滅ぼした“世界”に祈りを捧げる5人。時間さえも動きを止めて空っぽとなった“世界”に、ティモリスは背徳感と愉悦を覚え、モーティスは喜びのあまり涙を流す。歪んだ愛情と狂気を垣間見せるアモーリス。自身の起こした所業に戸惑うドロリス。オブリビオニスは「この仮面があれば、あなたはあなたであることすら忘れられる。自分自身をも壊すことができるの」と語り、月が落ちて仮初めの命が果てるそのときまで、5人でマスカレードを続けることを促す。

そしてライブは「Mas?uerade Rhapsody Re?uest」で再開。激情に満ちた演奏が雷鳴のように鳴り響き、Ave Mujicaを見守る観測者たちと世界を蹂躙していく。間奏で、ドロリスが両手で頭を抱えて、何かに抗うかのように絶叫すると、オブリビオニス、ティモリス、ドロリス、モーティスが横並びになってヘドバンしながら演奏。サビの“ああ もうどうだっていい”という捨て鉢なフレーズが、彼女たちを象徴するかのようだ。そこから間髪入れずCreepy Nuts「堕天」のカバーに繋げ、裏拍のリズムを刻みながら激走するスカコア風の大胆なバンドアレンジで会場を熱狂させる。特に間奏でドロリスとモーティスがステージ中央で向き合いながら腰を落としてギターを弾き合い、ブレイクと共にクルッと回転してラスサビに突入する演出は目を見張るものがあった。

ティモリス(Ba./CV:岡田夢以)

ティモリス(Ba./CV:岡田夢以)

神に背いて楽園から追放されたアダムとイブの物語を題材にした「堕天」に続いては、重厚極まりないパワーバラード「神さま、バカ」。神の摂理に抗い、“世界”に破滅をもたらした今の彼女たちにこれ以上なく相応しい楽曲と言えるだろう。途中でモーティスがオブリビオニスに近づき、オブリビオニスがモーティスの肩を優しく押して送り出す場面も。TVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』で描かれた2人の関係性を踏まえると、その挙動も意味のあるもののように思えてならない。ドロリスの慟哭にも似た歌声、お立ち台に座り込んでエモーショナルにギターソロを弾く姿もまた、心を震わせるものがあった。

アモーリス(Dr./CV:米澤 茜)

アモーリス(Dr./CV:米澤 茜)

オブリビオニス(Key./CV:高尾奏音)

オブリビオニス(Key./CV:高尾奏音)

そして今宵のマスカレードは終幕へと向かう。月が沈み、“人形”たちの仮初めの命がもうすぐ尽きようとするなか、ドロリスは“終わり”が来ることを実感できないと語る。空っぽになった世界であらゆる過去もしがらみもなくなり、「僕は今、こんなにも自由だ」と気づくドロリス。「これは、始まりの時」と告げるアモーリス。「今まさに、新たな世界を創造する時」と語るティモリス。新たな“世界”を自ら創造することで、本当の“自分”になれることを確信した5人は、“新しい月”を作り上げる。どこからともなく聴こえてくる“新しい世界”の産声。世界の破壊から誕生までのすべてを見届けた観客たちは、Ave Mujicaの“目撃者”であり“共犯者”だ。ドロリスの「私たちは、本当の私たちに生まれ変わる」という言葉に続いて披露されたのは「黒のバースデイ」。今まさに新しいAve Mujicaが産み落とされたのだ。

そしてマスカレードの終幕を飾ったのが新曲「Angles」。白いスポットライトを浴びたオブリビオニスが儚くも美しいイントロを奏でると、ドロリスが座りながらハンドマイクを手に切々とした歌声を会場に響き渡らせる。激情の中に僅かな光明が覗くような、哀切感漂うバラード。“’死’ それは私たちを結びつけるわ”というフレーズが、ただならぬ運命を予感させる。ドロリスの圧倒的なボーカルとバンドの重厚なサウンドが悲壮な光景を描き出し、アウトロで2本のギターが絡み合う中、ゆっくりと幕が下ろされて、この日のマスカレードは完結を迎えた。

“Perdere Omnia(=すべてを破壊する)”という公演名が示す通り、あまりにも終末感溢れる黙示録的なストーリーと、暴力的と形容したくなるほどヘビーなサウンドに貫かれた今回の公演。キャスト自身のMCは排除し、あくまでもキャラクターとしての演劇的な見せ方(しかも劇中劇)を徹底していた部分を含め、従来の「バンドリ!」のライブ観をいい意味で打ち壊す世界観が広がっていたように思う(それは本公演がオペラハウス形式のホール会場で開催されたことも含む)。だが、これはまだ彼女たちの物語の序章に過ぎない。破壊の後に自らの“理想の世界”を生み出し、“本当の私たち”に生まれ変わったAve Mujicaがこの先どんな道を歩むのか。世界をも覆す彼女たちの運命に引き続き注目したい。

■Ave Mujica 1st LIVE「Perdere Omnia」
2024年1月27日(土)@横須賀芸術劇場
公演詳細: https://bang-dream.com/events/avemujica_1st

M1 Ave Mujica
M2 ふたつの月 ~Deep Into The Forest~
M3 KINGS
M4 素晴らしき世界 でも どこにもない場所
M5 暗黒天国
M6 Choir ‘S’ Choir
M7 Mas?uerade Rhapsody Re?uest
M8 堕天
M9 神さま、バカ
M10 黒のバースデイ
M11 Angles


●リリース情報
Ave Mujica 1st Single
「素晴らしき世界 でも どこにもない場所」
2024年4月24日(水)発売

【Blu-ray付生産限定盤】
価格:¥7,700(税込)

【通常盤】
¥1,540(税込)

詳しくはこちら
https://bang-dream.com/discographies/3669

●ライブ情報
Ave Mujica 2nd LIVE

日程・会場:
神奈川公演
2024年6月8日(土) 神奈川県民ホール 大ホール

愛知公演
2024年7月7日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール

・チケット:Ave Mujica 1st Single「素晴らしき世界 でも どこにもない場所」
初回生産分に封入の申込券で最速先行抽選申込へご応募いただけます。

詳しくはこちら
https://bang-dream.com/events/avemujica_2nd

©BanG Dream! Project

関連リンク

「BanG Dream!」公式サイト
https://bang-dream.com

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