“表現者”甲田まひる、彼女の素顔に迫る――TVアニメ『ぶっちぎり?!』エンディング・テーマ「らぶじゅてーむ」リリースロングインタビュー

よく似てる？まほろの目線で書かれた歌詞

――今回の歌詞は作品のどういう部分を落とし込んで書こうと思われたんですか？

甲田　クラスメートの神まほろちゃん目線で書こうと思いました。まほろちゃんのキャラクターは結果的に男の子を振り回すような子じゃないですか（笑）。で、私のスタッフさんから「まほろちゃんって、まっぴー（＝甲田）に似てるじゃん。名前もまほろとまひるで似てるし、顔も似てるしいいじゃん」って言われたんですよ。全然似てないんですけどね（笑）。「じゃあ、まほろちゃん目線で書きます」っていうのが発端です。

――でも、エンディングでまほろちゃんの持っている独特の危うさとか、周りを振り回して困らせる感じが出ているので、作品を観ている人たちもすごく腑に落ちる感じがするというか。

甲田　結果、まほろちゃん目線で書いて良かったと私も思いました。あの荒仁くんとの関係性とはちょっと違うけど、歌詞の中ではまほろちゃんがちょっと惚れてるくらいの世界線でも面白いんじゃないかなと思って、そういう世界線を想像して書いてる部分もありますね。そのちょっとワガママな感じをラブソングにしたらどうかなと思って書いてます。

――『ぶっちぎり?!』という作品の印象はどうでしたか？

甲田　作画がめっちゃ素敵ですよね。試写会で大きなスクリーンで観させていただいたんですけど、すごく綺麗でした。私は古いものが好きなので、そういう要素もすごく感じるし、最初に企画書をもらったときから「めっちゃ面白そう！」って思っていました。

――その辺の懐かしい80～90年代的なヤンキー漫画っぽい設定が若い子たちにどう映っているのか気になってたんですよ。あと中華料理屋が実家だったりとか。

甲田　そうなんですよね。“あの店寄って”という歌詞も中華料理屋のことを書いてたりします。

――『ぶっちぎり?!』に関するワードが色々入ってますよね。観ている人たちに、歌詞に込めた想いとかキーワードとかを読み取ってもらえたらいいですよね。

甲田　そうやって聴いてもらえたらすごく嬉しいですね。“ぶっちぎり”というワードを入れられたのは本当に良かったです。予定をぶっちぎるというのが特によくないですか？自分で言っちゃうけど、最高（笑）。

――まさに。ここが一番のパンチラインになってますから。

甲田　でも、曲先行で知ってくれた人も「踊れるしノリの良い曲だな」と思って聴いてもらえたら嬉しいですね。これはみんな悩むと思うんですけど、アニメに寄せすぎると自分の曲として浮いちゃうかもしれないというラインがあるじゃないですか。

――それは大事ですよね。お互いの良いところを結び付けて最大化させるのが本来の「タイアップ」で、全部アニメに寄せるなら専門の人たちがいるわけじゃないですか。その点、この曲には甲田さんが作る意味というのをすごく感じました。それに、やっぱりアニソンとしてはめちゃくちゃ新しい曲なんですよね。

甲田　えっ、どうしてですか？

――この業界でジャズとかヒップホップ、R&B、ブレイクビーツとか、ブラック・ミュージックのカルチャーをベーシックな音楽体験としてアニメ主題歌を作っている人ってまだまだ少ないんですよ。しかも絶妙な距離感でアニメ作品にも寄り添えているし、すごく新鮮でした。『ぶっちぎり?!』はアニメ完全オリジナルなので先が読めないですし、これからの展開が楽しみですね。

甲田　もっと注目されて、まほろちゃんのコスプレ衣装が販売されるくらいになってほしいですね。私がやりたいから（笑）。今年のハロウィンはまほろちゃんのコスプレやるんで、それまでにコスプレ衣装が出てほしいです！

色々な表現を届ける「表現者」として認識される年に

――さて、今年はどんな1年にしていきたいですか？

甲田　今年は頑張りたいですね。人生で一番頑張る年。ジャズもそうなんですけど、3年くらいやって自分の中で形が見えてきたので、そろそろ自分の中で色んな要素が一致している瞬間が見たいなという感じです。

――今まで種を蒔いてきたことが芽吹いてそれぞれが結びつき、1本の活動として集約されていく時期ということですね。

甲田　そうですね。私は色んなテイストの曲を作るので、ジャズしか知らない人もいれば、最近知ったという人もたくさんいるし、どこまで私がやっていること全部が届いているかわからないので、ジャンルに捉われずに「私の音楽が好きだから聴く」という人が増えてほしいなという想いはありますね。

――甲田さんはモデルや舞台もやられていて、出会うチャンネルをたくさん持ってるじゃないですか。それがアーティスト活動に集約されていって、「甲田さんってこういう良い音楽を作ってるんだ」と、みんなを巻き込んでいけるといいですね。『ぶっちぎり?!』で知ったという人もそうですし。

甲田　そうですね。Twitter（X）でも「パワーちゃん（舞台『「チェンソーマン」ザ・ステージ）やってた子が『ぶっちぎり?!』の曲歌ってるんだ！」という人もいました。自分にとってはどれも自然とやり遂げてきた活動でも、外側からはどう見えているかはわからないですよね。確かに、もし自分がリスナー側だったら「？」ってなりますもん。

――あまり前例のない活動をしてると思います。モデルや舞台で活動されていて、インスタでも盛り上がっていて、それぞれの活動に注目しているファンがいる。その人が実は、めちゃめちゃヒップホップのオタクで、アニソンも聴いていて、スタジオですぐ曲書いちゃって「リテイク楽しー！」とか「私の音楽を聴けー！」とやってる人だとは、誰も思わない（笑）。

甲田　どうやって結び付ければいいんだろう？

――今年、色々な表現をしていることが浸透していって「それぞれで才能が突出しているすごい表現者なんだ」という認識が生まれる年になったら、勝ちなのかもしれないですね。

甲田　それです！これからインタビューで今の言葉を自分のセリフであるかのように言っていきます（笑）。

――差し上げます（笑）。。音楽を作ることの楽しさは伝わってきましたが、歌も本当に楽しそうですよね。

甲田　めっちゃ楽しいです！

――それが伝わってきます。

甲田　本当ですか？良かったです。最近、「歌い手になってきたね」と言われてめっちゃ嬉しかったんですよ。

――ご自身の意識の中では「歌う人」なんですか？それとも「作る人」なんですか？

甲田　今はまだ「作る人」という感じなんですけど、ライブとかを経て自分がこうなりたいというイメージがもう少し見えてきたら、より歌の表現にフォーカスできるんじゃないかなと思います。今も歌い手としての自覚は持っているんですけど、もっとカバー曲を歌うとか、そういう場面が増えたりしたらまた変わるのかなって思いますね。

――甲田さんのような新世代らしいアーティストが出てきてくださって本当に嬉しいです。ここ最近、新しいアーティストとの出会いって、ボカロか歌い手がすごく多かったんですよ。そのみなさんが作る音楽ももちろん素晴らしいんですけど、甲田さんはその流れとはまったく違うじゃないですか。シンプルに良い音楽を聴いて、ルーツから遡ってディグるし勉強もするし、自分で作るのが大好きで、そして歌うこと、表現することが大好きだという若きミュージシャンに、久しぶりに出会ったかもしれません。

甲田　でも、今はAIが発達して音楽の知識がなくても誰でも曲が作れちゃうじゃないですか。戦国時代が始まってますよね。怖い怖い（笑）。

――でも「らぶじゅてーむ」みたいな複雑な構成を持った曲は、まだ作れないと思うんですよ。それに「私の音楽を聴け！」という強力な欲を持った曲も（笑）。

甲田　確かに（笑）。そこは人間の想いでしか伝わらないですもんね。

●配信情報
甲田まひる
「らぶじゅてーむ」

配信中
https://mahirucoda.lnk.to/LoveJetaime

●作品情報
TVアニメ『ぶっちぎり?!』
毎週（土）23時00分からテレ東系列ほかにて放送中
放送直後よりPrime Videoにて最速配信
※放送日時は変更の可能性がございます

＜イントロダクション＞
―逃げぬ心と見つけたり―
灯荒仁(ともしびあらじん)は、かつての親友浅観音真宝(あさみねまたから)との再会をきっかけに強者たちの戦いに巻き込まれていく…。
そんな中、巨大な魔人の影が現れ…？！

監督・内海紘子、シリーズ構成・岸本卓、キャラクターデザイン・加々美高浩、制作・MAPPAが贈る、ヤンキー×千夜一夜物語！

【スタッフ】
原作：内海紘子・岸本卓・MAPPA・東宝
監督：内海紘子
シリーズ構成・脚本：岸本卓
キャラクターデザイン・総作画監督：加々美高浩
サブキャラクターデザイン・総作画監督：齊田博之/伊藤公規/伊藤晋之
衣装コンセプトデザイン：澤田石和寛
美術監督：鈴木くるみ
色彩設計：垣田由紀子
撮影監督：加藤慎之助
編集：長坂智樹
音楽：大島ミチル
オープニング・テーマ：『Sesame』Kroi
エンディング・テーマ：『らぶじゅてーむ』甲田まひる
魅那斗會チームソング：『ステゴロ』KDH ＆ Novel Core
シグマスクワッドチームソング：『God Mode』BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE
NG BOYS チームソング：『E-NERGY BOYS』DA PUMP
音響監督：菊田浩巳
音響制作：dugout
アニメーションプロデューサー：小川崇博
制作：MAPPA

【キャスト】
灯荒仁：大河元気
浅観音真宝：星野佑典
千夜：こばたけまさふみ
まほろ：永瀬アンナ
摩利人：佐々木望
拳一郎：斉藤次郎
座布：野津山幸宏
駒男：山口勝平
王太：竹内良太
蛇走：古川慎
刃暮：葉山翔太
阿久太郎：鈴木千尋