2月14日・バレンタインデーに発売された麻倉ももの12枚目のシングル「Sweet Essence」は、タイトルどおり甘い恋のエッセンスがたっぷり詰まったハイテンポなポップチューンだ。普段から恋の歌を歌う彼女にとって、どんな位置づけの曲になったのだろうか?カップリングに収録された、彼女が初主演を務めた昨年末放送のドラマ『お願いメシ神さま』の主題歌「幸せって書いて」と合わせて存分に語ってもらった。
INTERVIEW BY 北野 創
TEXT BY 河瀬タツヤ
――今回のニューシングル「Sweet Essence」はバレンタインデー当日の2月14日にリリースとなりますが、まずどんなコンセプトで制作を始めたんですか?
麻倉もも 2月14日に発売するというのが先に決まっていたので、もう自然な流れで(笑)。私はいつも恋の歌を歌っていたので、バレンタインに絡めた曲を作ることは割と自然に決まりました。
――2019年のバレンタインデー前日に発売された「365×LOVE」もバレンタインっぽい雰囲気の曲でしたけど、それも意識されましたか?
麻倉 そうですね。「365×LOVE」は“片思いの女の子”を主人公にした明るく元気でポップな曲だったので、最初は差別化を図るためにガラッと変えるのもありかなとは考えました。でも(バレンタインデー特有の)街にチョコが溢れたカラフルな”ハッピー感”はやっぱりあった方がいいなと思ったので、“元気でかわいいハッピーな曲”というコンセプトを最初に決めてそこから作っていきました。今までにやったことのない曲をやりたかったので、(作家陣には)そのようにお願いして何回かやり取りをさせていただきました。
――作詞を担当した月丘りあ子さんは「365×LOVE」の作詞も手掛けていますね。
麻倉 私から言ったわけではないんですけど、今回は「両思いになってからの2人のバレンタイン」をテーマにしていたので、世界観や関係性について「365×LOVE」とリンクしている部分もあるんです。2番の「あの日とおなじメトロの中 ハートの袋抱えて 前髪そっと直した瞬間 デジャブに気づくドキドキ」の歌詞とか、「365×LOVE」を知っていると「あっ!」と思うような歌詞がいっぱいで、月丘さんが色々汲み取ってくださってすごく嬉しかったです。「365×LOVE」は一生懸命さも少し混ざった感情だったんですけど、「Sweet Essence」は“ただただ楽しくて幸せいっぱい”というような歌詞だったので、歌う時もそういう気持ちで歌っていました。(歌詞の登場人物が)同じ人なのかは想像にお任せしますけど。
――確かに「365×LOVE」を踏まえて「Sweet Essence」を聴くと告白が成功した後のアフターストーリー的なイメージが浮かびます。そういえば、以前ライブのMCで「365×LOVE」が大切な曲だとおっしゃっていましたよね。
麻倉 私のソロの音楽活動は「デビューするよ」と突然言われて始まったんですけど、私自身はそんなに音楽を聴いている方じゃなかったので、「どういうことをやりたいのか」「自分がどういう曲が好きか」がまったくわからないところからスタートしたんです。最初は周りに支えてもらいながら「麻倉にはこういう雰囲気の曲が合うんじゃない?」と選んでもらっていたんですけど、「365×LOVE」の頃から明確に「こういうことやっていきたい!」という気持ちが固まってきて、それと同時に自分の意見もちょっとずつ言えるようになっていったんです。「365×LOVE」の制作時に初めて楽曲選考をしたりデモ段階の曲を聴いたりしたので、とても印象に残っていますね。
――「365×LOVE」のリリースから5年経って、今回バレンタインという少し似たコンセプトで楽曲が作られていますけど、その5年間で麻倉さん自身は表現者として自分の活動に対してどんな変化を感じているんですか?
麻倉 自分の中では変化しかないですね。選考に参加した当初は「良い曲だけど(歌うのが)難しそうだな」という理由で選ばなかった曲もあったんですけど、ちょっとずつ自分が表現できることが増えていって挑戦するようになっていきました。あとはライブが大きかったですね。1stライブ「LAWSON presents 麻倉もも Fantasic Live 2018 “Peachy!”」は全然余裕がなかったんですけど、2020年の2ndライブを経て「もっとこういうこともできるかもしれない」という気持ちを持ったのと同時に、「もっと自分のこういう面を見せていきたい!」という気持ちも芽生えてきたんです。最初は「私がこれまでと違う方向性の曲を歌うのって、応援してくれているみんなはどう思うんだろう?」と不安に思うこともあったんですけど、リリースイベントのアンケートやファンの方からのお手紙で「もちょのやりたいことをやっている姿が見たい」「新しいことに挑戦している姿が見たい」という言葉をいただいて、「私が楽しんでやっていることをみんな喜んでくれるんだ!」というのに気付いて、やっとできてきたという感じです。あと、私のファンの方は投げた球をしっかり返してくれるので、それも安心してソロ活動ができる1つの要因ですね。
――初期の楽曲の雰囲気を新しい方向性に変えたという先ほどのお話も、挑戦を続けていきたいという気持ちの表れなんでしょうね。
麻倉 挑戦……なのかな?自分が新しくできるようになったことを見せられたらいいなという気持ちではあるんですけど、言われてみればそれは挑戦かもしれないですね。例えばかわいくて元気でポップな曲という同じような枠組みの曲をずっと歌っているからこそ自分の成長が分かるわけですし。「Sweet Essence」は聴いている印象だと難しそうには感じなかったんですけど、実際に歌ってみたら「5年前の自分だったらちょっと歌えなかったかも」とは思いました。
――確かに「Sweet Essence」は結構攻めた曲調というか、今までにないハイテンポでリズミカルな楽曲ですよね。
麻倉 この曲は言葉がギュッと詰まっているのに(テンポが)早いので、感情を入れようと思ってもすぐ過ぎていっちゃうんですよ。でも、この楽曲の幸せ感を伝えるには歌詞の言葉が重要なので、テンポが早いなかでも1つ1つ丁寧に言葉を汲み取ろうと努力していましたね。あとは幸せな雰囲気を届けたかったので楽曲のハッピー感は常に意識していて、なるべく忙しない中でもゆったり伸びやかな感じが伝わればいいなと思って歌っていました。この曲の主人公は、恋の優先度が高い、学生時代の楽しい時期の女の子のイメージで、相手のことをたくさん考えて喜ばせようとしている、尽くすタイプの良い子という想像もしました。「付き合いたてなのかな?」とか、「相手が冷たい人だったら嫌だな」とか(笑)。
――そういえば「365×LOVE」も「Sweet Essence」もバレンタインシーズンに発売された曲ですけど、チョコレートのようなわかりやすいワードは入ってないんですね。
麻倉 「365×LOVE」は意識的にチョコレートやバレンタインといった単語をあえて書かないようにお願いしたんです。なので 一応バレンタインの曲ではありますけど、誕生日や記念日のような “聴いているみんなの大切な1日”という風にも変換できると思います。
――あと、この楽曲はMVも制作されています。すごく幸せそうな麻倉さんの姿が見られてこちらもハッピーな気持ちになりました。
麻倉 今回のMVはバレンタインだからチョコやお菓子にいっぱい囲まれて撮ろうというコンセプトでした。ジャケットとMVの撮影が同時進行だったので先にジャケットを決めていったんですけど、最初は深い赤と深い緑を基調とした“THE・ヴィンテージ”な背景だったんです。でも、この楽曲はポップな感じだから色をパキッとさせた方がいいかもとか、(バレンタインカラーの)赤色は「365×LOVE」の印象と被ってしまうとか色々考えた結果、チョコと言ったらチョコミントだろうとなり(笑)、私から提案して最終的に現在のジャケットになりました。せっかくならMVもチョコミントカラーを押し出して作りたかったので、MVのカラーリングもジャケットと同じ雰囲気になっています。……でも自分から提案しておいてなんですけど、チョコミントって実は普段あまり食べないんですよね(笑)。
――あははは!(笑)。横にいるスタッフの方がすごく驚いた顔をしているんですけど(笑)。
麻倉 いや、色は好きですし、美味しくないわけじゃないんですよ?(笑)ただ、自分では絶対選ばないので……。あと、MVの撮影現場は大量のお菓子に囲まれていたので甘い匂いがずっと漂っていたんですよ。ある意味それが1番大変だったかもしれないです。ずっと「ラーメン食べたい……」と思いながら撮影していました(笑)。
――あとは「Mocho」という名前の板チョコが登場したのが個人的に面白かったです。
麻倉 あれは「トクベツいちばん!!」のMVのお菓子のパッケージを意識して作ってくださったみたいなんです。他にも、赤色の衣装の髪形は「365×LOVE」のMVの髪形を意識していますし、机の上に置いてあった紙袋は「Good Job!」のMVに出てきたショップバックをオマージュして作ってくださっています。あと絶対に見えないんですけど、後ろの本棚には私の写真集が置いてありました(笑)。みんなに見つけてほしい隠れた遊び心もあるので、細かいところまで見てほしいです。
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