リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2024.02.10

『映画 ギヴン 柊mix』syhが紡ぐ「ストレイト」「パレイド」、飾らない言葉を届ける「スーパーウルトラ I LOVE YOU」に込めた想い――センチミリメンタル×今井文也 スペシャル対談

『映画 ギヴン 柊mix』syhが紡ぐ「ストレイト」「パレイド」、飾らない言葉を届ける「スーパーウルトラ I LOVE YOU」に込めた想い――センチミリメンタル×今井文也 スペシャル対談

ただただ真っ直ぐな柊のモノローグが呼んだ「スーパーウルトラ I LOVE YOU」

――とても気になる場面で終わる今作。その後に流れるのがセンチミリメンタルの「スーパーウルトラ I LOVE YOU」です。こちらの曲はいかがでしたか?

温詞 前作は一旦話が落ち着く、区切りのあるものだったのでバンドとしての結束という1つの大団円にあったのですが、その感じとは打って変わってのエンディング。でも次への期待感に繋がる1曲。特にそういう部分は今回主題歌を作るにあたり、だいぶ悩みましたね。ストーリーの終わり方もわかってはいましたし、どこを切り取ってあげたらいいのかと、今回が一番悩ましかった。繊細な心の揺らぎや関係値の微妙な部分も前作の映画よりも多い気がしていて。前回はわかりやすく別れや新たな出会いという曲にしやすい感情のキャッチーさが強かったのですが、今回はもう少しリアル。どこを切り取れば、見てくださる方たちにこの映画の総括であるとわかってもらえるか、納得してもらえるかを見つけるのが難しかったです。そもそもバラードがいいのか、アップテンポがいいのかも迷っていたくらいで。結果的に映画が完成して最後に流れたときには「これで良かったんだ」と思えたので一安心でした。

――最もフォーカスしたかったのはどの部分ですか?

温詞 感情を美しい言葉や綺麗な世界観、整えられたものとして完成させるのではなく、もっとリアルで、本音的で、整理されていないものが持つ生々しさや、逆に歪さの美しさといった感情のリアリティを出したかったんです。タイトルを見て「おや?センチミリメンタル、どうした?」と思われる方もいらっしゃると思うのですが、「スーパーウルトラ I LOVE YOU」は今までの『ギヴン』ではやってこなかった言葉をあえて持ってきて、人間としての普通の気持ちをより強く出したいと思い、このタイトルにしました。

今井 深い……!テレビも映画もOADも一貫して、物語と合わせながらお一人で楽曲を書くというのは大変だったと思いますし、そんななかでもそうした主題歌の制作は演技とは違うけれど読み解きという部分では似ているところもあるように感じました。僕らは役を代弁するから言葉で伝えることが出来ますが、メロディと歌詞で色々な読み解きが出来るように伝えるというのは、難易度の高い表現ですし、だからこそ聴いていて「良いなぁ」と感じるんだなって思います。

――『映画 ギヴン 柊mix』だからこそ、これまでと違っていたことはありましたか?

温詞 主題歌の話をいただく少し前の時期に、自分の音楽を今後どんなふうに作っていこうかと悩んでいた時期があったんですね。『ギヴン』に提供している曲含め、僕は感情を内向的に掘っていき、さらに内側を掘り進めていって、細かいニュアンスを探りにいくという歌詞の書き方をすることが非常に多いのですが、昔からのバンド仲間と話をしていたときに、その繊細な描写や紡ぎ方は、伝わる人には伝わるけど、もっとライトに音楽を楽しむ人や、そんなに音楽を深く聴かない、普通に日常を生きている人には伝わらないんじゃないかって言われたんです。それならその場所にいる人たちにも自分の思っていることを伝えるべく表現するならどうしたらいいかな、と考えて、そのときに出てきたワードと曲の断片が「スーパーウルトラ I LOVE YOU」で。2022年のことでしたが、それをずっと保管していたら映画の主題歌のオファーがきたんです。もう一度原作を読み直してみたら、真っ直ぐだけど不器用な柊がモノローグで玄純に対して「すきすきすきすきすきすき」って連発しているんですよね。色んな言葉を駆使して、恋愛の痛みや心の機微を繊細に表現しているキヅナツキ先生が、あのシンプルなモノローグを描いている。「そうだよね」って思いましたね。誰かのことを大好きになったときに結局は「すきすきすきすきすきすき」だよなって思ったときに、それくらいシンプルに、ストレートでわかりやすいことを歌ってもいいな、と引っ張り出してきた曲でした。

今井 この取材前に温嗣さんとラジオの収録に参加してきたのですが、その時に「柊と似ているところはありますか」って聞かれたんです。そのときは「どうだろう。ないかな」って思っていたんですけど、あえて言うなら、自分が好きなものや興味のあるものに対して、目の前が見えなくなるというか。そのことばっかりになっちゃうところが似ているかもしれない、と今、思いました。柊ってコミュニケーション能力の高さがありつつも、直観的に行動しちゃう子だとも思うんです。今回のメジャーでの歌も、しっかり自分がコントロールしているようで抑えきれない熱が溢れ出しちゃうし、いざ好きになったらそのことしか考えられない。彼らしい部分がしっかりあって、人間味があって良いなぁって思いますし、本作ではそんな柊の姿が存分に出ているなと感じます。

――そんな「スーパーウルトラ I LOVE YOU」が最後に流れる『映画 ギヴン 柊mix』の見どころを教えてください。

今井 なんといっても週替わりの短編集です、4本!あれは短編と言えないくらいボリューミーで、細かいところまでめちゃくちゃこだわって作られているんです。メイン軸は柊と玄純の物語なんだけど、エンディングで「次も気になるな」っていうところから、ポンッと『ギヴン』の世界観で物語が始まる。本編とはまた違う面白さがあるので、見せ方としても贅沢だなって思います。これをおまけみたいな形で出すのか、と思うくらいこだわりのある短編集なので、楽しんでもらえると思います。楽曲も「ストレイト」「パレイド」とありますが、何度も劇場で観てもらえると感じ方も変わってくると思いますので、ぜひ楽しんでいただきたいです。

温詞 全編通して一貫していますが、作品としての細かい心理描写を映像や声優さんたちの演技やニュアンスでも細やかに表現しているので、一瞬たりとも逃さずに見ていただきたいと思いますし、「パレイド」はMVの撮影というライブシーンとは違う形で楽曲が登場するので、バンドが着実に進んでいるところや裏側を見られるワクワク感があります。そこで聴く楽曲もこれまでのライブシーンとも違いますし、今までにない楽曲の登場の仕方なので、そこも併せて楽しんでください。


●作品情報
『映画 ギヴン 柊mix』
公開中

【短編情報】
2週目:空に上がる
…上映期間 2/3(土)~2/9(金)
3週目:おさななとその周辺
…上映期間 2/10(土)~2/16(金)
4週目:文化祭
…上映期間 2/17(土)~2/23(金)

【スタッフ】
原作:「ギヴン」キヅナツキ(新書館「シェリプラス」掲載)
監督:橋本能理子
脚本:綾奈ゆにこ
キャラクターデザイン:大沢美奈
総作画監督:山形孝二・二宮奈那子・永田陽菜・大沢美奈
美術設定:伊良波理沙・須江信人・斉 婉廷
美術監督:劉 洋・関口静夏
色彩設計:加口大朗
撮影監督:中川せな
CG監督:水野朋也
編集:伊藤利恵
音響監督:菊田浩巳
音楽:未知瑠
アニメーション制作:Lerche
主題歌:センチミリメンタル「スーパーウルトラ I LOVE YOU」(EPICレコードジャパン)
劇中歌:syh「ストレイト」「パレイド」(EPICレコードジャパン)
配給:アニプレックス

【キャスト】
佐藤真冬:矢野奨吾
上ノ山立夏:内田雄馬
中山春樹:中澤まさとも
梶 秋彦:江口拓也
鹿島 柊:今井文也
八木玄純:坂 泰斗

【イントロダクション】
「これは淋しかったこどもたちが大人になる途中の話」

高校生の上ノ山立夏は、佐藤真冬の歌声に衝撃を受け、中山春樹、梶 秋彦と組んでいるバンド「ギヴン」にボーカルとして真冬を加入させる。真冬加入後初のライブを成功させ、立夏は真冬への想いを自覚し、ふたりは付き合い始める。
その後も活動を続ける「ギヴン」はフェス出場をかけたコンテストに出場し、惜しくもライブ審査に落ちたものの、ますます注目を集めていた。

その頃「ギヴン」が落ちたコンテストに受かった真冬の幼馴染み・鹿島 柊と八木玄純のバンド「syh〈シー〉」はデビューが決まっていた。柊は、「syh」に不在のギターの一時的なサポートとして立夏に白羽の矢を立てる。
さらに柊は、立夏に「お前とやってみたいことがあるんだ」ともちかけ……。

関連リンク

『ギヴン』
公式サイト
https://given-anime.com/

公式 SNS(X)
https://twitter.com/given_anime

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP