――2曲目の「イバラヒメ」は、『ハイキュー!! TO THE TOP』で同時期にオープニングとエンディングを担当してから、コラボも続いているBURNOUT SYNDROMESの熊谷和海さんが作詞・作曲。関係性は、もうファンの方もよくご存じですよね。
CHiCO はい。BURNOUT SYNDROMESのアルバムにフィーチャリングで参加させていただいたり、ライブにもゲストで出ていただいたり。本当に色んなご縁があるので、熊谷さんには絶対参加してもらわなきゃ!くらいの勢いでお願いしたんですけど……とても物語のある、意外な曲を作ってくださって! 熊谷さんは、“もしCHiCOがアイドルだったら?”を、コンセプトにしてくださったんです。
――なるほど!スポットライトを浴びたくて、周りの望むように踊り続けてスターになったアイドルの女の子が、どんどん自分を失っていくイメージを、童話的な世界になぞらえている。ダークファンタジーな世界観ですね。
CHiCO そうなんです。熊谷さんの曲にはいつもドラマがある。私もイメージがすごくふくらみました。ただ、どうしてこういう世界を考えられたのか、裏話はまだお聞きしてないんです。今度ゆっくりお聞きしたいです。
――曲調も、クラシック音楽を彷彿とさせるイメージがあり新鮮でした。CHiCOさんの歌い方も、とくにサビはファルセットを駆使してとてもテクニカル。聴き入ってしまいました。
CHiCO そこの歌い方は、モーツァルトのオペラ「魔笛」の「夜の女王のアリア」を参考にしました。でもオペラ歌手のようではなく、口をあまり開けず、張らない裏声を頑張ったんですけど……全体的にすごく苦戦しました。こう……上手に曲にハマらないぞ!と、自分の歌にちょっと頭抱えながら(苦笑)。5曲の中でも、特に難しかった曲です。でも、去年の末に、熊谷さんが私に楽曲提供したことを知らせるポストをXでしてくれたんですけど、そこに“CHiCOさんの声は、空気を支配する強さ、魔力がある”と書いてくださっていて。すごく嬉しかったです。ライブで歌えるのも楽しみですね。
――3曲目の「駅」は、諫山実生さんの作詞・作曲。諫山さんに楽曲提供をお願いした理由は?
CHiCO 私が小学生の頃、NHK「みんなのうた」で「月のワルツ」という曲を聴いて、いつかこんな歌い方をしてみたい!と憧れた方なんです。楽曲も本当に素敵で。楽曲提供をされているという情報をSNSで偶然見かけて……ダメ元でスタッフさんを通じてお声がけさせていただいたら、なんとOKが!
――感動ですね。
CHiCO はい。私が歌を目指す1つのきっかけになった方なので、本当に嬉しかったです。楽曲をお願いする際も、直接お話することはできなかったんですが、「月のワルツ」や諌山さんのほかのこういう曲が大好きで!……と、完全なファンレターと、もし良ければバラードを書いていただけたら!というリクエストを書いて、諌山さんにお送りしました。
――そして出来上がったのが、とても心温まるバラード。
CHiCO いつも駅のベンチで帰りを待っている2人がお互いを求めながら、まだ言えない……みたいな、もどかしさがすごく素敵な楽曲にしていただきました。歌詞でもエピソードはそんなに多く語られないんですけど、逆に出会った頃から心惹かれていて、すごく大事に好きという気持ちを育ててきたんだなという。
――風景の描写と情緒あふれる言葉たちと、CHiCOさんの優しいボーカルに癒されます。
CHiCO デモの仮歌も、諌山さんが歌ってくださっていて。今ではそれも私の宝物なんですけど(笑)、すごく素敵だったんです。でも、諌山さんの歌い方に寄せてしまうと、私の歌ではなくなってしまうから、ちょっと素朴な歌い方で届けたいなと思いました。このふたりが、これからどうなっていくのか、皆さんにも想像してもらえたら、楽しいですよね。
――そして4曲目の「たがため」は、福岡晃子(元チャットモンチー)さんの作詞・作曲です。福岡さんにお願いしたのは?
CHiCO チャットモンチーも、私にとってはすごく思い入れもある大好きなバンドで。高校時代、軽音楽部でバンドを組んだ時に、初めて人前でギター・ボーカルとしてカバーしたのが、チャットモンチーの「風吹けば恋」。諌山さんと同じく、私が音楽を志すにあたってのキッカケになったアーティストさんなので、ぜひにとお願いしていただきました。
――とても小粋でかわいらしい曲になりましたね。歌詞を見ると、日常の1コマを描きつつ、“誰のためのわたしなんだろう だけど誰かに見ててほしい”とあったり、この曲も今のCHiCOさんのリアルを写し出しているように感じました。福岡さんとは、どういうお話をしたんですか?
CHiCO 雑談みたいな感じでした。最近、嬉しかったこととか、腹が立ったこととか、悩んでることとか、 頭を抱えたこととか。月末になると、マネージャーさんから交通費の清算の催促が来て大変なんですとか、洗濯物を取り込むのが苦手で、とか(苦笑)。音楽活動でいま思っていることだけじゃなく、普通に雑談をしながら進めていった楽曲で。日常の中のふと思いにふける瞬間のひとこまを、書いていただいた感じです。
――言葉のチョイスも面白いですよね。1番には“たまりたまるやらなきゃリスト とりあえず起動カタリスト”、2番には“世界を救うボーカリスト それでもわたしはカタリスト”というフレーズが出てきますよね?
CHiCO はい。色々な解釈ができると思うんですけど、私は1番のカタリストは、パソコンのキーボードをカタカタ叩いてる人で、2番は世界観を語る=カタリストと解釈してます。
――確か……CHiCOさんがプレイしているゲーム「Apex Legends」にもカタリストというキャラクターが登場しますよね?
CHiCO そうなんです!そういえば、福岡さんと「私、パソコンで朝までゲームやっちゃうんですよね」「何やってるんですか?」「『Apex』です」「あ、知ってますよ」みたいな会話をしたんです。で、「どのキャラクター使ってるんですか?」って聞かれて、答えました「カタリストです」って(笑)。
――じゃあ、ダブルミーニング、トリプルミーニングとして入れてくれたんでしょうね。元々カタリストという英語は、化学反応を促進させる触媒の意味がありますが、アーティストという存在も音楽を通じて聴き手に化学反応を起こさせる触媒と言えますし。
CHiCO そうですね、福岡さん、すごい。そういう言葉遊びもそうなんですけど、福岡さんの歌詞は心の繊細な部分をすごく汲み取って切り取ってくれているので、白神さんが書いてくれた「エンパシア」と同じように、この曲にも私自身を救ってもらっている気がします。日々生きてて、疲れる瞬間って誰しもあるじゃないですか。そんな時に考えることに、共感してくれる人も多いんじゃないかな。
――そしてEPのラストを飾るのが、渡辺 翔さん作曲、CHiCOさんが作詞を手がけた「Prelude Romance」です。
CHiCO 渡辺さんは、CHiCOソロをスタートする時に、色々な作家さんに楽曲提供をお願いしていた中のお一人で。一番いいタイミングで発表したかったので、ずっと温めていたんです。
――すごくキラキラとした、オシャレで華やかでポップなラブソングですが、作詞家・CHiCOさんとしては、どんなテーマで歌詞を紡いでいったんですか?
CHiCO やっぱり恋するって素敵だなと思える、憧れの恋愛スタイルですね。デモの段階ではもう少し素朴な雰囲気だったんですけど、水野谷 怜(Arte Refact)さんのアレンジがとてもダンサブルできらびやかに仕上げてくださったので、舞踏会のイメージが頭から離れなくなっちゃって(笑)。一度書いていた歌詞を書き直しました。憧れの恋愛といえば私の中では『シンデレラ』。『シンデレラ』の映画を3作観て、キャラクターの台詞とかも書き起こしてイメージをふくらませつつ、リスペクトを込めて書いていきました。
――王子様に見初められてプリンセスになる……女子にとっては永遠の憧れですよね、『シンデレラ』の物語は。
CHiCO そうなんです。でも、ただ受け身の恋が描かれているんじゃないんだな、とも思ったんです。3作品観た中で舞踏会を開こうとする時に王様が、お嫁さん探しに消極的な王子に向かって「放っておいてロマンスが生まれるものか」と怒る場面があったんですね。ああ、幸せな恋愛をするっていうことは、そういうことだなと思ったし、姉のいじめに負けなかったシンデレラも強い女の子。そこからインスパイアを受けて、自分で幸せを掴み取ろうとする女の子の恋愛を書きました。めちゃめちゃ悩みながら、いつも作詞する時に相談させていただく作詞家の真崎エリカさんからもアドバイスをいただいて、1ヵ月くらいかかってようやく自分でも納得できる歌詞にできました。
――歌詞にもあるように、“ハッピーエンドは自分で掴まなくちゃ”ですからね。
CHiCO 私自身が、本当に恋愛には疎いタイプなので(苦笑)、私もこの曲の主人公のように変われたら素敵だな!みたいな願望も込めています(笑)。
――そんな『PORTRAiT』を引っ提げて、間もなく大阪・横浜でのCHiCOソロ初のワンマンライブ「LAWSON presents CHiCO 1st Zepp Live 2024“PORTRAiT”」が始まります。どんなライブにしたいですか?
CHiCO 『PORTRAiT』は本当に自信作ばかりのEPになりましたし、これまで発表してきた楽曲も、色んなタイプの曲がそろっているので、新しいCHiCOを観に来てもらえたら嬉しいです。それにプラスして、今まで応援してくれている皆さんの気持ちに応える曲も歌いたいですし、新しく挑戦する曲もやりたいし、すごく気合いが入ってます! もう自信しかないですね!(笑)。
――めちゃめちゃ楽しみですね。そしてソロ活動2年目となる2024年。ぜひ個人的な抱負も聞きたいです。
CHiCO アコギを頑張る1年にしようと思っています。今までは、下手なのに人前で演奏するのは恥ずかしいなと思って、なかなか練習もできてなかったんですけど、弾き語りができたら、1人でも歌えるし、配信で観てもらうこともできるじゃないですか。音楽活動の幅を広げるためにも、ギターの練習、頑張ります!
●リリース情報
「PORTRAiT」
2月7日発売
【完全生産限定盤】
品番:SMCL-863~864
価格:¥3,300(税込)
(CD+オリジナルウォッシュタオル)
【初回仕様限定盤】
品番:SMCL-865
価格:¥2,200(税込)
<CD>
1.エンパシア
作詞:白神真志朗 作曲:白神真志朗、堀江晶太 編曲:堀江晶太、白神真志朗
2.イバラヒメ
作詞・作曲:熊谷和海 編曲:Wolf Kid (Digz, Inc. Group)
3.駅
作詞・作曲:諫山実生 編曲:水野谷 怜(Arte Refact)
4.たがため
作詞・作曲:福岡晃子 編曲:河野 圭
5.Prelude Romance
作詞:CHiCO 作曲:渡辺 翔 編曲:水野谷 怜(Arte Refact)
●ライブ情報
CHiCO 1stEP「PORTRAiT」発売記念リリースイベント
2024年2月11日(日・祝)
13:00~(集合時間 12:30)
場所:イオンモール幕張新都心グランドスクエア
イベント内容:ミニライブ+特典お渡し会
詳細
https://www.chicoxxx.com/information/detail/?id=558806&artist=chico
LAWSON presents CHiCO 1st Zepp Live 2024 “PORTRAiT”
CHiCOソロとして初となるワンマンライブ。
本EPを引っ提げ、バンド編成で大阪、神奈川の2公演を実施。
2月18日(日Zepp Osaka Bayside 17:00 開場 / 18:00 開演
2月23日(金・祝)KT Zepp Yokohama 17:00 開場 / 18:00 開演
1F全⾃由 ¥ 7,200 (税込/ドリンク代別/整理No.有)
2F指定席 ¥ 7,200 (税込/ドリンク代別)
チケット:https://l-tike.com/chico/
詳細
https://www.chicoxxx.com/live/detail/?liveid=51255&artist=chico
CHiCO 公式サイト
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