リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2024.02.07

sajou no hana、新体制一発目となる新曲「修羅に堕として」リリース――アニメ『異修羅』と現代に生きる人を繋ぐ“満たされない気持ち”を叫ぶ本作へ込めた想いに迫る

sajou no hana、新体制一発目となる新曲「修羅に堕として」リリース――アニメ『異修羅』と現代に生きる人を繋ぐ“満たされない気持ち”を叫ぶ本作へ込めた想いに迫る

昨年12月に、sana、渡辺 翔、キタニタツヤによるバンド体制から、sanaを中心とする音楽プロジェクトに移行したsajou no hanaが、その新体制一発目となる新曲「修羅に堕として」をリリースした。2024年冬クールの話題アニメ『異修羅』のOPテーマとなる本楽曲は、孤高の強さを誇る「修羅」たちが胸中に抱える「満たされない気持ち」、そして弱き者たちの救済を求める心を、sanaが吠えるようなボーカリゼーションで表現したロックナンバー。強烈な1曲を携えて、新たな一歩を踏み出したsajou no hanaのsanaに、今の想いを語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

新体制になった今、sanaが語るsajou no hanaへの想い

――まずはsajou no hanaが新体制に移行したことについてお聞かせください。渡辺 翔さん、キタニタツヤさんを含むバンド体制から、sanaさんを中心とした音楽プロジェクトになりました。

sana 以前からそういう話は上がっていたのですが、2023年にしっかりと話し合ったうえで決まりました。大きな理由はレーベル移籍やコロナ禍など色々な事情が重なりライブ活動が難しくなったことで。でも、私はライブもやっていきたいし、sajou no hanaとして楽曲制作も続けていきたいので、バンドよりも活動を維持しやすい音楽プロジェクトという形に移行することになりました。私としては特別環境が変わったわけではないんですね。

――新体制の発表時に、翔さんもキタニさんも引き続きサポートするとおっしゃっていましたものね。

sana 今後も翔さんがレコーディングのディレクションをしてくださると思いますし、今までと大きな違いがあるわけではないのですが、でも色んな面で私1人でsajou no hanaを背負って出ていかなくてはいけないので、もっとしっかり引っ張っていけるように頑張ろう!という想いはあります。今までは、困ったときは2人に助けてもらえる安心感があったので。

――ただ、sanaさんはTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』の第2弾OPテーマ「Heaven’s falling down」をはじめ、個人名義で活動する機会も増えているわけじゃないですか。そのなかで、sajou no hanaとしての活動を継続していくことを選んだのはどんな想いがあったのでしょうか。

sana やっぱりsajou no hana自体にすごく愛着があるんです。「sana(sajou no hana)」としてアニメや作品側にお声がけいただいて楽曲を歌わせてもらうときは、私の中ではゲスト的な認識が強くて作品のために100%捧げる心持ちなんですけど、sajou no hanaの場合は、アニメのためだけでなく、グループや自分のために歌っている部分もあるし、デビューして最初にいただいた場所がsajou no hanaなので、今はsajou no hanaという名前自体が自分に近しい存在になっていて……サポートしてくれている人たちもずっと一緒にやっているので、この場所を守っていきたいなと思います。

――バンドから音楽プロジェクトという形態になったことで、さらに活動の自由度が増すというか、可能性は広がりそうですね。

sana ですよね。今までは完全に3人だけで完結していたけど、今後は新しいクリエイターの方たちも巻き込んでいけたらと考えていますし、ほかにも新しい刺激が入ってくると思うので……どうなっていくかは私もまだわからないですけど、ファンの皆さんに「前のほうが良かった……」と言われるのは悔しいので(笑)、そうならないように頑張ります!

――その新体制の第1弾となる新曲「修羅に堕として」は、TVアニメ『異修羅』のOPテーマ。タイアップのお話しをいただいたときの印象はいかがでしたか?

sana レーベルのスタッフの方から「すごく力を入れている作品」というお話を聞いていました。それにKADOKAWAさんに移籍してからは初めてOPテーマを担当させていただくので、「ちゃんと結果を残せるように頑張ろう!」という気持ちが強かったです。やっぱりOPテーマを任せてもらえるのは嬉しいことなので。

――その後、原作やシナリオに触れたと思うのですが、どんな印象を受けましたか?

sana 登場人物がみんなびっくりするくらい強すぎて衝撃的でした。世の中には壮大な作品がたくさんありますけど、『異修羅』は壮大さや強さレベルが桁違いで、普通なら「弱い人、中くらいの人、ボス」みたいな流れで順に戦っていくと思うんですけど、この作品はボスみたいな人しか出てこないので、戦っていても「どうやって決着がつくんだろう?」と思って。小さい頃に「どうぶつの森」のタランチュラと肉食動物が戦ったらどっちが勝つのか?みたいな妄想をしていたんですけど、そういう妄想が絵になったような作品だと思いました。

――sanaさんはこういうバトル作品もお好きですか?

sana いやあ、めちゃめちゃ胸が熱くなりますよね。私はいわゆるスポーツをするタイプではなくて、いつも家で大の字になって寝ていて、堕落した生活を送っている側なんですけど(苦笑)、こういう作品に触れると生命としての熱みたいなものが出てくるというか、人間は本来、戦ってきた種族だと思うので、そういった血が沸き立つような感覚になります。

――それで何か行動に移すのでしょうか?

sana いや、何もやらないです。沸き立って「ウォーッ!」ってなって寝る、みたいな(笑)。

――平和で良いですね(笑)。

sana 『異修羅』の世界に平和はないですからね。平和な街だと思っていたら、その街自体がゴーレムだったりしますから。「そんなことある?」と思って(笑)。

――第1話に登場するナガン迷宮都市ですね。迷宮が超巨大なゴーレム(機魔)になって、街に住んでいた人たちを全滅させてしまうという。ゴーレムが人間に襲い掛かるシーンは、目を伏せたくなるほどの迫力でした。

sana あまりにも痛ましいですよね。でも、そこも原作に忠実で素晴らしいなと思って。ここまでスケール感の大きな作品の場合、映像化されるときに不安に思う原作ファンの方が必ずいると思うんですけど、『異修羅』はアニメのクオリティがすごくて、期待を超えてくる作品だと思いました。声優さんもベテランの方が多いので、演技にも深みがあるし、全部が100点満点だなと思って。

――本作には色んなタイプの「修羅」と呼ばれる最強キャラクターが登場しますが、sanaさんは誰がお気に入りですか?

sana 私は星馳せアルスが好きです。こんなにきれいな目をしたワイバーンはいないと思いますし、自由自在に空を飛べるうえに、ワイバーンなのに武器を持っていて銃も使える最強感がたまらないです。スチームパンクっぽいデザインも含めて、オタク心がそそられますね。めっちゃかっこいい!

――少年みたいな感想ですね(笑)。

sana 本当にたまらないです!(柳の剣の)ソウジロウも『銀魂』みたいな感じがあっていいなあと思いますし、美女キャラクターも、肉体すら持っていない骸骨(音斬りシャルク)もいますし(笑)。

『異修羅』と現代に生きる人を繋ぐ「満たされない気持ち」

――「修羅に堕として」はキタニさんが作詞・作曲・編曲を手がけていますが、sanaさんは最初に楽曲を受け取ったときにどう感じましたか?

sana 仮のデモが出来た段階で聴かせてもらったのですが、一瞬でとりこになりました。冒頭の“空っぽなんだ、僕を満たして。”というワンフレーズもすごく印象的でしたし、そこからのイントロのかっこ良さに心をグッと掴まれて。その時点ではまだこの楽曲が採用されるかは決まっていなかったんですけど、「絶対にこの楽曲になるだろうな」と思いましたし、そのときからsajou no hanaの代表曲になる予感がありました。

――バトル作品のオープニングらしい熱さがありますよね。

sana そこはキタニさんもすごく考えて作ってくれていると思います。ただ、『異修羅』は「強さ」が前面に出ている作品ですけど、そこばかりを強調してしまうとsajou no hanaらしさが失われてしまうと思うので、その意味でも絶妙なバランスで出来ている楽曲だと感じていて。sajou no hanaの楽曲は、自分の心の中のことや他人には見えない感情を大切に描いてきたのですが、そういう「弱さ」と「強さ」のバランスがすごく良いなって思います。

――たしかに。ただ「強さ」を描いているだけではなくて。

sana でも、ラスサビの前の“幾千幾万の恐怖を切り裂いていくんだ。”で始まるところは、バトル系の作品の楽曲じゃないとなかなか出てこない歌詞だと思うので、そこは歌っていて胸が熱くなりました。すごく勇ましいですよね。sajou no hanaのオリジナル曲ではまず出てこない言葉だと思うので、そこはタイアップならではだと思いますし、私の激アツポイントです(笑)。

――その意味では『異修羅』らしさとsajou no hanaらしさが両立している楽曲ですね。

sana 表向きに見えることではなくて、自分が他人には見せない顔、裏の感情を描くのがsajou no hanaらしさの1つだと思うんですけど、今回の『異修羅』に登場する修羅たちにも色んな人がいて。圧倒的な力を持っているけど、力が強すぎるがあまりに、他人から理解してもらえなかったり、遠ざけられてしまっている人、自分は1人で平気だと思っていても実はそうじゃないかもしれない人もいるんですね。その強いがゆえの実は満たされていない感情が、この「修羅に堕として」には反映されていると思っています。

――なるほど。

sana でも修羅だけではなくて、ほかの力を持たないキャラクターたちも、あの過酷な世界で生きていくのはすごく大変だと思いますし、力を持っている側の修羅たちを恨んだりすると思うんです。そう考えると、みんなそれぞれ持っていないものがあるし、人というのは永遠に満たされないものでもあると思うので、色んな立場の人たちにも響く楽曲になったと思います。

――その「満たされない気持ち」というのは、『異修羅』の世界を生きている人だけでなく、この現実を生きている人も共感しやすいものですよね。

sana 私もSNSとかを見ていると、年々そういう感覚が強くなっているように感じていて。SNSは本来知る必要のなかった他人の情報が流れてくるじゃないですか。私も結構、自分と他人を比べがちなタイプでもあるので、そういう現代的な悩みにも沿った楽曲でもあると思います。

――sanaさんも「満たされない気持ち」を感じることがよくあるのですか?

sana はい。スマホやSNSが一般的ではなかった時代よりも、「満足」という気持ちをなかなか感じられなくなったように思います。小さい頃であれば、欲しいものを手に入れたら1ヵ月くらいは嬉しかったけど、今は何かを手に入れた瞬間にその欲求は終わってしまって、またネットで新しいものを見つけて「こっちのほうがいいのかな?」ってなることが多くて。今、自分が持っているもので満たされるには、情報が多すぎると思うんです。なので、自衛のために情報の断捨離をしようと思うことがあります。

――そんななかでsanaさんが充実感を感じる瞬間はありますか?

sana 最近はモノよりも、人との繋がりで充実感を感じることが多いです。去年はsana個人でライブに出させていただく機会が多かったんですけど、それまでsajou no hanaでライブができない期間が長かったので、ファンの皆さんの前でパフォーマンスするのが久しぶりだったんです。やっぱり配信リリースだけでは、楽曲がお客さんに届いた実感がそこまで沸かないんですけど、実際にお客さんの前で歌って、皆さんの反応や顔を見ることで、初めて感じるものがある。泣いてくれる人がいたり、目で気持ちを送ってくれたりだとか、そういう「言葉だけではないもの」や「人間の力」みたいなものをライブですごく感じたんですね。

――自分の歌が誰かに届いていることを実感できる瞬間が、sanaさんにとっての充実感であると。「人との繋がり」で思い出しましたけど、sanaさんはSNSでライブ配信もやっていますよね。

sana インスタライブをたまにやっています。「みんなが喜んでくれるかな?」と思って頑張ってるんですけど、私、おしゃべりは苦手なので、ビクビクしながらやっていて(苦笑)。歌っているときのほうが自分に自信が持てるんですよね。この間も、私がボソボソ声でしゃべっているので、あとからDMで「全然声が出てませんでしたよ」って届いたりして。

――そうなんですね(笑)。

sana ラジオに出演するときは結構ハキハキしゃべるんですけど、配信は自宅でやっているので、なかなか気持ちを切り替えられないんですよ。私の場合、大の字で寝ているところから、「よし、インスタライブをしよう!」と思ってやり始める感じなので(笑)。だからいつもダラダラとしゃべっていて。よく視聴者数が減らないなって思いながらやっています。私だったら離脱します。

――いやいや(笑)。でも、ステージに立つとスイッチが入るんですか?

sana 入りますね。普段は集中するのが苦手で、ライブのときも、楽屋にいるときはまだ集中していないことが多いです。ステージの袖に行って、マイクを渡されたときに、キリッとスイッチが入ります。もしかしたら、そのときにようやく人間としてのスイッチが入っているのかも(笑)。普段はずっとOFFモードで生きているので。

――普段は省エネで生きているんですね。

sana でも、省エネに見せかけて、頭の中ではめちゃめちゃ考えているタイプなので、何もしていないのにエネルギーだけはすごく減っています。頭だけ回転して、何も解決しないまま終わるので、ひたすら無駄なエネルギーを消費し続けています(笑)。

次ページ:ステージの修羅を目指して――sanaがライブにかける強い気持ち

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP