【連載】畑 亜貴「旅の空にてアニソン日和」第3回：台湾で聴きたい！可愛くほんのり懐かしさがあるアニソン

作詞家・畑亜貴が旅先の雰囲気で思い浮かんだ曲をお薦めしていく連載「旅の空にてアニソン日和」がスタート！その時々の写真とともに、畑さんのお薦めアニソンを紹介していきます。第3回目は「台湾で聴きたい！可愛くほんのり懐かしさがあるアニソン」。

ポータルサイト「リスアニ！」をご覧の皆様、遅れ馳せながら明けましておめでとうございます、畑亜貴です。
「旅の空にてアニソン日和」では、私が制作に関わった曲の中から、旅先の雰囲気で思い浮かんだアニソンをお勧めします。この連載が皆様のアニソンライフのご参考となれば幸いです。

さて今回は「台湾で聴きたい！可愛くほんのり懐かしさがあるアニソン」について、語ってみます。

今年の年末年始は台湾、鈴木このみさんとプライベート旅行でした。鈴木このみさんは、「第5回全日本アニソングランプリ」で優勝を勝ち取りアーティストデビューが決定。私はその時の審査員、リリックプロデューサーとしてデビュー作を担当することになったという経緯があります。

TVアニメ『黄昏乙女×アムネジア』OPテーマ「CHOIR JAIL」でデビューした時のこのみちゃんは15歳。大阪在住の彼女がこの年齢で仕事を始めて東京へ通うということが、私は心配でたまりませんでした。娘のように見守り続けたこのみちゃんが今は27歳。作詞、作曲、声優、ギターと挑戦を続け、起業もして経営者となり大成長を遂げた昨今、時々食事に行って近況を報告しあっています。

そんなこのみちゃんとの台湾旅行、台湾の食べ物を堪能する旅でもありました。きらめくビル群の合間に現れる路地の年季が入った店達には美味しいものがたくさん。そしてその可愛さのある街並みに感じる懐かしさ。今この地で聴きたい曲は、可愛くてどこか少し懐かしい曲だなと思ったのです。

このみちゃんにちなんで、まずは「Love? Reason why!!」。TVアニメ『恋愛フロップス』OPテーマで甘々なラブソング。トリッキーで疾走感のある楽曲の中心に、切なさから情熱へ駆け上る感情を表現する歌があります。独り言のような声から想いの強さへと段々変わる声音がとても気持ち良いのです。

本人的には大いに恥ずかしかったと思われる台詞が入るこの楽曲、最近の曲なのにほんのりと懐かしさが漂うのは、古のアニメやゲームの王道ラブソング感がエッセンスとして入っているところから来るのではないかと。安定した歌唱力、表現力がある彼女は難易度が高い楽曲を歌いこなすイメージが強いけれど、私はこういう可愛さがある曲を素直に歌い上げるこのみちゃんの声も大好きです。

可愛く懐かしさがあるアニソン、2曲目は「エウレカベイビー」。TVアニメ『バカとテストと召喚獣にっ！』EDテーマとして流れたこの曲、オケにたくさん詰まったきらきらした仕掛け、麻生夏子さんの中低域に特徴のある優しい声とリズム感が重なり、歌い出しから可愛さが飛びこんできます。

台湾で聴きたくなるのはなぜだろう、と考えてみて可愛さの温度感かなと思いました。私が台湾で感じるのは、可愛さへの許容範囲が広いということです。街中で可愛いキャラクターを見かける頻度は高く、日本のアニメやコミックが受け入れられ（アニメイトもありますね）、夜市で買う食べ物のパッケージにも昔の少女漫画のようなキャラクターが描かれていたり。由来が何かはわからなくても、可愛さと自然に同居しているように思えます。その雰囲気と「エウレカベイビー」の表現する自由さの親和性が高いのでは、と。

そして、世界で大活躍するサンリオのキャラクター達を、台湾でもたくさん見かけました。TVアニメ『ミュークルドリーミー』ED主題歌「トキメキコレクター」を口ずさみながら近寄ってしまいます。サンリオのキャラクターはミュークルドリーミーよりハローキティー先輩やシナモロール先輩がここでは頑張っているようですが、作詞を担当した身としては、やはりミュークルドリーミー推し。活躍を陰ながら見守る所存です。

「トキメキコレクター」の可愛さから、「恋せよみんな、ハイ！」を歌うPyxis（豊田萌絵さん、伊藤美来さん）の可愛さへ繋げてみたい。TVアニメ『ノブナガ先生の幼な妻』OPテーマであるこの曲の可愛さは歌うお二方からして当然なのですが、ほんのり漂う懐かしさを考えてみると、「好き」という単語を真っ直ぐ届ける表現力が、伝説のアイドル達が持っていた力に通ずるところから来るような気がしています。

きゃいきゃい＆わちゃわちゃした合いの手、鋭く要所を決めるギターリフの繰り返しが気持ち良いこの楽曲を聴きながら、台湾（をお勧めしたい）、いや近所の街でも散歩してみてください。足元がちょっと浮かれます。