――11曲目の「Balance」は、佐藤さんのデビュー時から作品に関わっているイワツボコーダイさんが作曲された、ラテン調のスタイリッシュなナンバーです。
佐藤 この曲はデビュー当初から温めていたもので、私は大好きだったので、いつか形にしたいと思っていたんです。今まで発表してきた楽曲とはまた違う曲調なので、アルバムの中で良いアクセントになっていると思いますし、私の中では結構キーになっている楽曲です。元々は歌詞もメロディも今とは違っていて、もっと歌謡曲っぽい感じだったのですが、今回のアルバムに合わせたアレンジにアップデートしていただきました。
――当初は歌謡曲っぽい曲調だったとは意外でした。佐藤さんはこの楽曲のどんなところが気に入ったのですか?
佐藤 まずメロディが、今までの佐藤ミキにはない感じでしたし、そこに上坂さんの歌詞が加わったことで、すごく新鮮な感じになったと思うんです。「ドラマチック」の歌詞でも“古いジョンロブの足音”や“二度と聴けないテネシーワルツ”といったインパクトある言葉を入れてくださっていたのですが、この楽曲でも“アマルーラ”というお酒の名前が出てきたりして。そういう言葉が入ることで情景がパッと思い浮かびますし、メロディのスピーディーな感じも好きです。
――歌詞の内容に目を向けると、「ワンルーム・セレナーデ」にも通じる、女性の複雑な恋心が描かれているように感じました。
佐藤 大人の女性が「らしくないな、私」と思うような、恋愛で子供っぽくなってしまう瞬間、冷静でいられなくなる気持ちを描いた楽曲だと感じていて。私はそういう感じも好きで……やっぱり、ちょっとこじれている楽曲が好きなのかもしれないですね(笑)。
――シンガーとしては、そういう楽曲のほうが表現のし甲斐がありそうですね。
佐藤 そうなんです。この曲も歌っていて楽しかったですし、色んな挑戦ができました。サビは同じフレーズを繰り返す作りになっていますが、全体を通して聴くと、1番のサビ、2番のサビ、ラスサビで状況が明らかに変化しているので、その表現の違いをぜひ聴いていただけたらと思います。やけくそな感じだったり、「こんな私を笑ってね……」となっていたり、情緒が激しく動いて色んな情景が描かれているので、それを歌で表現するのがすごく楽しくて。早くライブで歌いたいです。
――タイトルも「Balance」ということで、心の揺れ動く様とバランスの取り方がテーマになっている楽曲だと思いますが、佐藤さんは自分自身の気持ちが揺れ動いたとき、どのようにしてバランスを取るようにしていますか?
佐藤 まず、悩んだときは落ちるところまで落ちるようにしています(笑)。自分で時間を作って、とにかく考えられるだけひたすらに考えて。その後に、自分がそのときに聴きたいなかから出来る限り明るい楽曲を聴く。そうすると、「なんか元気出てきたかも……」っていう感じで、自分の気持ちを上向きに持っていくことができて、大丈夫になれるんです。(楽曲が)明るすぎると聴いていてしんどいときもあるので、そのときはまた違う楽曲を選んで聴いたりもするのですが、最後は明るい言葉で終わるようにしていて。
――状況に合わせて自分の気持ちを変えてくれる楽曲を聴くようにしているわけですね。
佐藤 あまり人前で出したくはない感情や気持ちも、音楽でなら発散できると思うんです。例えば「Balance」みたいにお酒を飲んでグラグラ揺れている感じって、実際にリアルでそういう行動はしにくいと思うんですけど、そういう心情を表現した楽曲を聴くことで、元気の糧になることもあると思うんですね。私は昔からそうやってバランスを取っている気がします。
――佐藤さんにとっては、ご自身のメンタルケアという意味でも、音楽は欠かせないものなんですね。
佐藤 はい。そういうときにも音楽は絶対に聴きますし、ライブやライブ映像も観ると元気が出ますね。私も音楽をやっているので、歌や音楽を聴くことで、「私にも出来ることがあるはず」と思いますし、届けたい気持ちを思い出して「私も頑張らなくちゃ!」いう気持ちになって。本当に音楽に支えてもらっています。
――ちなみに佐藤さんが普段、よく支えにしている音楽は?
佐藤 昔から元気がなくなったときは、安室奈美恵さんの楽曲を聴いて、ライブDVDを観ることで元気をもらっています。それ以外だと、明るい楽曲を聴きたいと思ったときは、NiziUさんの「Make you happy」を聴くときもありますし、まだそこまで元気が出ていないときは、Vaundyさんの「裸の勇者」を聴いたりもしますね。聴くと頑張ろうと思える楽曲なので。
――そしてアルバムのクライマックスを飾るのが、本作のリード曲でもあるスケールの大きなバラード「モノローグ」。昨年のワンマンライブで初披露されていましたが、佐藤さんにとってどんな楽曲になっていますか?
佐藤 「新しいスタート」じゃないですけど、また1つ、佐藤ミキの新しい指針ができた楽曲だと思います。楽曲自体はすごく壮大で、「さまよいながらでも前に進もう」という気持ちを歌った曲でなんですが、「ここにいてもいいよ」と肯定してくれるような曲でもあって。北海道でレコーディングとMVの撮影をさせてもらったのですが、それも相まって、私の居場所になる曲というか、自分が育ってきた場所を思い起こすような1曲になっています。
――そうなんですよね。歌詞は上坂さんが手がけていますが、ライブで初めて聴いたとき、てっきりご自身で作詞したのかなと勘違いしてしまったくらい、佐藤さん自身の環境・心境が描かれているように感じました。逡巡や葛藤さえも包み込んでくれる場所としての故郷の存在の大きさと言いますか。
佐藤 周りの方にも「私が書いたみたい」と言っていただいたことがありますし、私自身もそう感じているところがあって、本当に私のことを汲み取って書いていただいたと思います。ただ前に進むのではなく、さまよっている部分も書かれているのが、すごくわかるなと思って。私自身、自立しなくてはいけないという気持ちも、故郷なんだけど甘える場所ではないという気持ちもわかりますし……だからと言って「じゃあ北海道には甘えません!」と思っているわけではないんですけど(笑)。今も北海道で暮らしていますし、大事な場所ではあるんですけど、ただ、おんぶにだっこにはなりたくないというか。「ちゃんと自分で歩いていこう」という部分が出ている曲です。
――やはり北海道は佐藤さんにとって大切な場所なんですね。
佐藤 はい。MVのロケに行ったときも「すごい景色だな」と思いましたけど、改めて完成したMVを観たときに、自分が生まれ育った場所で、この楽曲を制作できたことにすごく感動してしまって。北海道の景色とこんなに合うんだ!と思って、すごく嬉しかったです。
――MVは一面雪景色の場所で撮影されていました。
佐藤 楽曲自体が壮大なので、壮大な景色で撮りたいということで、ああいったロケーションでの撮影になりました。地元の北海道とはいえ、私が実際に生活している街とはまた違った場所だったので、最初は自然の尊厳というか北海道の力みたいなものに改めて圧倒されて。MVを撮影したその日にレコーディングしたので、まだその景色や雰囲気が自分の中に残っている状態で歌をうたうことができて、本当に北海道のパワーをもらって録れた作品でした。
――歌唱面でこだわったポイントはありますか?
佐藤 この曲は「モノローグ」というタイトルでもあるので、自分自身に向けて歌うようにしました。それも、悲しくつぶやいているわけではなく、自分の中にある意志を自分に聴かせるような感覚と言いますか、自分を鼓舞するまではいかないんですけど、色々と考える中でスッと進んでいこう、という気持ち。聴いている人の側が意志を感じるというよりも、自分の中で「心に決めた」という感覚があるんですね。なので「自分の背中を押す」という気持ちが近くて。その先で色んな人に届く歌になれば嬉しいな、と思いながら録りました。
――完成音源を聴いたとき、自分自身の背中を押してくれる歌になった感覚はありましたか?
佐藤 決して明るい曲ではないし、歌詞も前向きな気持ちで溢れているわけではないのですが、でも私はこれを聴きながら歌っていると、前向きな気持ちになれます。
――ご自身の居場所にして、今の到達点のような楽曲になったわけですね。改めて今回のアルバムは、ご自身にとってどんな作品になりましたか?
佐藤 この3年間の集大成であり、ここから始まるような気持ちがあります。私、初めてリリースイベントを行うことができたのも去年のことで、2023年はようやくファンの方のもとに実際に会いに行って、楽曲を聴いてもらうことができたのもすごく嬉しかったですし、ライブでも声出しできるようになって、音楽やライブが戻ってきたことをすごく実感できた年だったんです。そこから今年、初めてのアルバムをリリースするということで、なおさらここから始まっていくんだろうな、という気持ちが強いです。
――そんな新たな始まりとなる2024年、佐藤さんとしては自分自身にどんな成長や変化を期待していますか?
佐藤 色んなことを経験して、それを歌に反映して表現していきたいです。今はデビューした頃よりも自然体に近づいていますけど、自分の中ではまだまだだと思いますし、より自分が思っていることを形にすることで、もっと色んな表現ができるっていう感覚があるんです。なので、この先、より自分の感じていることを表現して、それが聴いている人に全部伝わるように歌をうたっていきたいですし、今後もどんどん届けていきたいです!
●リリース情報
『Silky』
発売中
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:VVCL-2336 ~ VVCL-2337
価格:¥3,800(税込)
【通常盤(CD)】

品番:VVCL-2338
価格:¥3,300(税込)
<CD>
01. 名もない花
02. Play the real
03. A KA SA TA NA
04. You & Me
05. Last minutes
06. 東雲の空
07. キックオフ
08. ドラマチック
09. ワンルーム・セレナーデ
10. Dream chasers
11. Balance
12. モノローグ
13. You & Me (Night Tempo Melting Groove Mix)
<Blu-ray>
01. 「モノローグ」Music Video
02. 「名もない花」Music Video
03. 「You & Me」Music Video
04. 「ドラマチック」Music Video
05. 「Silky」Document Movie
佐藤ミキ オフィシャルサイト
https://www.satomiki-official.com/
佐藤ミキ 公式X
https://twitter.com/satomiki_0929
佐藤ミキ 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCatjCAOFtrelaSPOd02cMCQ
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