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INTERVIEW

2024.01.16

鈴木このみ、2024年の活動の幕開け!koshi×北川勝利×ebaによるTVアニメ『異修羅』EDテーマ「白花」を通して見つけた自身の新たな可能性を語る

鈴木このみ、2024年の活動の幕開け!koshi×北川勝利×ebaによるTVアニメ『異修羅』EDテーマ「白花」を通して見つけた自身の新たな可能性を語る

パワフルな歌声とエネルギッシュなパフォーマンスで快進撃を続ける鈴木このみ、2024年の活動の幕開けを飾る新曲「白花」はTVアニメ『異修羅』のEDテーマ。最強の修羅たちによる苛烈極まりない争い、そしてその脅威にさらされた市井の人々の想いをも包み込むような、壮大なスケール感を持ったパワーバラードだ。デビュー11年目にして貪欲にチャレンジし続けるこのみんが、koshi(作詞)×北川勝利(作曲)×eba(編曲)という豪華クリエイター陣の制作による本楽曲を通して見つけた自身の新たな可能性とは?2023年の振り返りと、2024年以降の展望を含め、たっぷりと話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

2023年を猛然と突き進んだこのみん、『異修羅』と出会う

――まずは、鈴木さんにとって2023年はどんな年だったかを振り返ってもらえますでしょうか。

鈴木このみ 2023年は声出しのライブが戻ってきた年で、海外にもあちこち行かせていただいて、年の後半にはShe is Legendのツアーもあったので、毎週のように歌っていた記憶があります。なのですごく歌手冥利に尽きる1年だったし、世の中的にも、自分的にも、色んなことが猛スピードで進んでいたので、ずっと体当たりしていた1年でした。

――めんどくさい聞き方ですみませんが、その1年を漢字一文字で表すとしたら?

鈴木 出た(笑)!えーっ、どうしよう?……でも「猛」かもしれないです。猛スピードだったし、「2023年は何をしていたんだろう?」と振り返ったときに、1つのことを思い出すというよりも、色んなことが一気に頭に浮かぶ感じなので、勇ましく頑張れたのかなと思っていて。

――そういえば前作「頑張れと叫ぶたび」の取材のときに、スケジュールが詰まっていて常に「ギリギリトライ!」している、という話もありました。

鈴木 はい(笑)。もちろん1つ1つ丁寧に頑張っていますけど、結構勢いに任せてガーッて進んでいくところもあったので、「猛」という漢字が浮かびますね。

――誕生日当日の11月5日に開催されたワンマンライブ“鈴木このみ Birthday Live 2023~CHEERS BURGER~”も、ダンスやケルティックバンドとのコラボでも魅せつつ、キャリア11年目ならではの貫禄あるステージングに勇ましさを感じました。

鈴木 ありがとうございます!あのライブでは本当に色んなことをやったので、逆に次のライブはどうしよう?と思っていて(笑)。でも、あのライブ以降、歌うことがさらに楽しくなって、今はちょうどレコーディングをたくさんしている時期なんですけど、それにも良い影響が出ている気がします。今はすごく良い循環の中で活動できています。

――そんな絶好調の鈴木さんが、2024年最初に届けてくれた新曲が「白花」。この楽曲はTVアニメ『異修羅』のEDテーマということで、まずはタイアップのお話をいただいたときの印象を教えてください。

鈴木 第一印象からすごく面白そうな作品だなと思いました。キャッチコピーに「全員が最強」とあったので、絶対に激しいやつじゃん!と思って(笑)。アニメになったらめちゃくちゃ面白いだろうなと思って、いち視聴者としてワクワクしました。私は兄が2人いることもあって昔から少女マンガよりも少年マンガをよく読んでいたので、こういう王道のバトル作品は胸が熱くなります!

――楽曲を制作するにあたって、原作やシナリオに触れたと思うのですが、どんな感想を抱きましたか?

鈴木 物語がすごくリズミカルに進んでいくので、そこが面白いなと思いながら読んでいたのですが、タイアップのお話をいただいた時点で「EDテーマは“レクイエム”のイメージでお願いします」ということを聞いていたので、そのことを意識しながら読んでいました。今回のEDテーマには、「全員が最強」と言われている登場人物たちの裏側にいる普遍的な人々、弱者側に寄り添う歌というテーマがあって。最強と呼ばれている人たちの下には何人もの人たちがいるということを、歌で表現するのはすごく難しそうだなと思いながら、シナリオを読み解いていきました。

――尋常ならざる力を持った「修羅」と呼ばれる存在が何人も登場して競い合う、最強同士によるバトルがこの作品の軸になっているわけですが、EDテーマではそれとは別の方向から作品を表現されているんですね。

鈴木 「矛と盾」じゃないですけど、本当にどっちが勝ってもおかしくない戦いばかりのなかで、でも戦いには勝ち負けがあるわけで。その負けてしまった側の人の気持ちもこの楽曲では表現しています。その意味では、このアニメで一番目がいく部分ではないところをテーマにしているので、責任重大だなって思いましたね。でも、それを任せてもらえるのはすごくありがたいことで。元々、チームの間でも「OPテーマで魅せることはやれてきたので、今後はEDテーマで作品をしっかりと締められる魅力も出していきたい」という話をしていたんです。前作の「頑張れと叫ぶたび」(TVアニメ『ブルバスター』EDテーマ)もその部分にトライした楽曲だったので、今回も期待に応えられるように頑張りました。

北川勝利×koshiと共に形にした“すべての人たち”へのレクイエム

――「白花」はミディアムテンポのエモーショナルなパワーバラード。作曲は北川勝利さんが担当されていますが、鈴木さんがご一緒されるのは初めてですよね?

鈴木 はい。チームの皆さんからご提案いただいたのですが、私もぜひ未知なる扉を開いてほしいと思ってお願いしました。私の中では北川さんといえば花澤香菜さんの作品の印象が強くて。ほかにも声優さんによく楽曲を提供されていますし、すごくきれいなメロディを書かれる方というイメージを持っていて。自分の声と北川さんの楽曲がどういうふうに重なるのか想像がつかなくて、個人的にもワクワクしていました。

――確かに。自分もクレジットを見たときに、少し意外に感じましたけど、どんなふうに混ざり合うのか楽しみな気持ちがありました。

鈴木 そうですよね。発表したときにも、ファンの皆さんから驚きの声をたくさんいただきました。実際に北川さんと初めてご一緒させていただいて感じたのは、スピード感がすごいということ。お話をした次の日には色んなものがバンバン!と上がってきていたので、きっと頭の中に無限のメロディがある方なんだろうなと思いました。その時点でメロディを何パターンかいただいたんですけど、その中から一番素敵に感じたものをブラッシュアップしていただく形で進めていただきました。

――この楽曲を選んだ決め手は?

鈴木 直感的に「このメロディが好き!」と思ったのが一番の理由なんですけど、オリエンタルのようなアラビアンのような、不思議な美しさがあって、すごく情緒があるところも好きな部分で。『異修羅』の世界観にもピッタリだと思いましたし、自分の歌声が想像できた部分もあったのでこの楽曲を選ばせていただきました。その後、歌詞を付けるとなったときに、このメロディと作品のことを考えるとちょっと文学的できれいな言葉を書ける方にお願いしたい、という話になって。そのときにチームからkoshiさんのお名前が挙がり、「素敵な歌詞を書いてくださりそう」と思ってお願いしました。

――koshiさんはcadodeでも美しい言葉の歌詞を書かれていますものね。実際に歌詞が上がってきたときの印象はいかがでしたか?

鈴木 本当に「さすがだなぁ…!」のひと言でした!私としては、サビの“悲しみの中で詞(うた)は響くだろう”という1行がパワーワードだと思って。鈴木このみとしても、今の世の中でこれをズバッと歌うことに意味があると思いますし、『異修羅』の世界観の中でも、このフレーズがあることで最強の人たちの足元にいる人たちのことも歌えると思いました。

――先ほど“レクイエム”というキーワードも出てきましたが、ここのフレーズは亡くなった人への手向けとしての歌だけでなく、その亡くなった人の意志が歌として響き続けるようなイメージも浮かびます。

鈴木 自分もそういうイメージが浮かびました。継いでいくじゃないですけど、肉体が無くなったとしても、私の歌は残っていくし、それを聴いた誰かの歌も残っていくだろうし。それと、私は最後の“立ち上がれ けもの道を行け”という歌詞もすごく共感できました。確かに、アーティスト活動をしていると、ずっとけもの道を行くしかないんですよね(笑)。でも、その先に残るものがあるということを、しっかりと歌えたと思います。

――2023年は猛スピードで駆け抜けたというお話でしたが、鈴木さんとしてはけもの道を突き進むような感覚がある?

鈴木 そうですね。よく思うんですけど、私は2年前に社長になったとき(※2022年7月に個人事務所「株式会社115」を立ち上げて代表取締役社長になった)、これからは自分で舵を取っていくことになるので、「よし!これからやっていくぞ!」という気持ちがあった半面、ぼんやりと怖くなった部分もあったんですよ。「これからは自分でコントロールしたものだけが動くんだ」とか「そうだとしたら、これから新鮮なことなんてもうないのかな?」って思って。でも、2023年を通して、自分の予想内のことなんて何もなかったんですよね(笑)。私にとっては、それがすごく良いんだろうなと思っていて。それもあって“けもの道を行け”という言葉が自分の後押しになりましたし、サウンド的にも一番燃え上がるところだったので、レコーディングで歌っているときにも「うん、そうだな」って思えました。

――余談ですが、鈴木さんは性格的に、物事を堅実に組み立てて進めるよりも、未知の領域に飛び込む方が好きだったりするのでしょうか。

鈴木 どうなんでしょうね?自分でもたまに自分の性格がわからなくなるので難しいんですけど(笑)。自分の中では堅実に1つずつコツコツやりたいと思っているけど、いつもそうはいかない、というのが正解かもしれない。でも、それがいいし、そういう人生だなあって思っています。多分、いつも絶妙なバランスを探っているんですよね。私は普通に生きていたら結構堅実に生き続けていたと思うので、アーティスト活動をしているのは、逆にそういうことにワクワクしたいからなのかもしれないです。

――なるほど。「白花」の話に戻しまして、歌うにあたって作品に寄り添うためにどんなことを心がけましたか?

鈴木 感情的だけど、あまりそれを表に出さないように気をつけていました。レコーディング中は「暑苦しくならないように」というワードを大切にしていて。ただただ人が生きて、その証がどんどん継承されていく。そういう部分を歌った楽曲なので、感情をそのまま出すのではなくて、気づいたら潰えているけど何かが残っているような繊細さをとても大事にしました。それは特にAメロで表現できたのかなと思います。その意味では語尾の処理もすごく気をつけましたね。

――そこは本楽曲の“レクイエム”というテーマ性も意識してのこと?

鈴木 そうですね。自分の気持ちに通じるところもありますけど、自分ごとというよりかは、見送る側の気持ちと言いますか。「魂よ、安らかに」と言っている側の歌なので、そこにビックリマークをあまり付けてはいけないなと思って(笑)。そこが難しいところでもあり、歌っていて楽しいところでもありました。

――鈴木さんは普段、ビックリマークがたくさん付いているような歌を歌うことが多いですからね。

鈴木 アハハ(笑)。そういう楽曲の場合は勢いよく録りたいので、まず2~3テイクくらいバーッと歌って、そのあとに気になるところがあったらその部分を歌い直す録り方をするのですが、この楽曲は丁寧に調整をしながら組み立てていきました。ブースの中で悩んでいる時間がすごく多かったです。

――ワンフレーズずつ組み立てていく感じ?

鈴木 そうですね。特に間奏のフェイクの部分は、レコーディング当日に「やってみよう」という話になって、何パターンか試してみんなで丁寧に録って頑張ったので、ぜひ聴いてほしいです!

――そのフェイクの部分もそうですが、全体的に繊細さがありつつ、死者を弔うという意味での包容力みたいなものも歌声から感じました。

鈴木 「癒し」みたいな部分も与えなくてはいけないけど、後半はドラムがガンガン鳴っていたりするので、そのバランスを探るのも難しかったですね。でも、この歌は「勢いでやってしまおう!」という時期では確かに録れなかった曲だと思います。それと、この楽曲自体がボーカルをすごく大事にしてくれていると感じていて。歌の余白がすごく大きい楽曲なんですね。なので、歌いながら「もっと余白を活かせる歌をうたえるようになりたい!」と思いましたし、自分はまだまだ歌が上手くなれるんだなって、貪欲に思えるレコーディングでした。

――まだまだ自分の歌や表現力に可能性を感じることができた、と。そもそもこういう曲調の楽曲を歌うのは意外と珍しいですものね。

鈴木 確かに。「THERE IS A REASON」くらいかも。

――個人的な感想ですが、曲調は少し違いますけどアプローチ的には「Missing Promise」に近いのかなと思いました。

鈴木 ああ、確かにどちらの楽曲も、人の魂を浄化する役割が明確にあるのかなって気がします。でも「Missing Promise」は少女のような無垢な感じがあって、「白花」は色んなことを知っているうえでそれでも受け渡していく、っていうことなのかなと思っています。それに「Missing Promise」は目線として1人に向かって歌っているというか、“あなた”だけに歌う感覚があったんですけど、「白花」はどちらかと言うと“すべての人たち”に向けているところがありますね。そういうところがこの楽曲の壮大さに繋がったんだと思います。

――サウンド的にも、Aメロは抜け感がありつつ、全体的には壮大かつエモーショナルな印象があります。鈴木さんのお気に入りポイントは?

鈴木 全部好きなので悩むんですけど、私は1番のAメロのめっちゃ静かな雰囲気が好きで、MVでもこの部分は何もない空間を歩いているんですよ。空っぽな感じというか。そこからBメロで音がうねるように入ってきて、ラスサビに向けてどんどん身の回りにバーッと景色が広がっていく。そういうイメージが楽器で想像できるところが好きです。きっとフルで聴いてもらうと印象がかなり変わると思うので、アニメバージョンだけでなくフルバージョンも聴いてほしいですね。

次ページ:大きな目標に向けて突き進む、鈴木このみの2024年の抱負

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