REPORT
2024.01.11
充実したここまでのステージを受けて、続いてのMCでは八木沼も前に出てバンドメンバーとトークをしたあとは、「Next Song Is All English」と八木沼が英語で語り「more than you know」へ。サイケ調のサウンドに乗せたこれも新鮮な1曲だが、ここで聴かせる2人のボーカルも低音を効かせた新たな魅力を感じさせるものだった。そしてトランシーなシンセリフから阿部が「いくぞー!」と観客を煽って「an Effect of Fate」へと続く。攻撃的なサウンドのなかで2人のハーモニーが響きわたる圧巻のパフォーマンスに、観客も大歓声で応える。ここでも2人の声のシンクロは昨年よりもより波長が合っていて、繰り返しになるがグループとしての進化というものを再度感じることができた。対してロッキンな「Your Way」では、それぞれのソロをスピーディにリレーしてみせ、楽曲に応じたボーカリゼーションを見せていた。
「次のブロックはしっとりと」と八木沼が言って、椅子に座って「You」がスタート。『iR2』のラストを飾る、土着的なサウンドが印象的なこの曲。八木沼が「大切な人を思い浮かべながら聴いて」と語るように、サウンドもボーカルも、力強さと優しさの両方を併せ持った感情を揺さぶられるパフォーマンスとなった。ほっこりとした余韻のあとには、「Freezing rain」「Insoluble Snow」とfripSide十八番のバラードが続く。もちろん客席は白いペンライトで応える。切ないバラードを聴かせたあとは阿部のソロコーナーへ。黄色のペンライトが光るなかで正調fripSideサウンドの「Trust in my soul」は、ダンサーを従えて阿部もキレのあるダンスを見せる。こうしたアクティブなステージは彼女の大きな武器であり、fripSideのライブに重要な躍動感を加えていった。そこから上杉が戻っての「crescendo -version2022-」で再び切ないメロディを2人で力強く歌い上げ、いよいよライブも終盤戦へ。
上杉が「まだまだみんな声が必要なんですが、まだ声出せますかー?」と観客を煽ったあとは、「Two souls -toward the truth -version2023-」のあのギターリフが鳴らされる。観客はここぞとばかりに声を張り上げ、八木沼もセンチメンタルなイントロを弾きながら「せーの!」といつもの警報を鳴らす。fripSideのお家芸がこうして日常に戻ってきたという高揚感に、八木沼も再びサムズアップを見せていた。そこから「save me again -version2023-」のイントロが鳴らされる。fripSide印のメロディに八木沼のコーラスも加わってよりエモーショナルな雰囲気に包まれた会場が、一転して会場が赤く染め上げられ、「black bullet -version2023-」の荘厳なイントロが鳴らされる。どよめきと歓声がまざった熱狂の中、宇佐や板山といったダンサーも加わり披露された「black bullet」は、まさに完全版ともいえるゴージャスさ。ステージの両翼で激しいダンスを見せる一方で、中央の阿部と上杉はあえて微動だにせず熱のこもったボーカルを聴かせる。この静と動のコントラストも実にかっこいい。そこに観客のシンガロングも加わり会場のボルテージは最高潮に達した。そんな熱狂の先に待っていたのは、第3期屈指のアンセム「infinite Resonance」だ。1年前のZepp Haneda(TOKYO)でこの曲は本編最後に披露されていたが、ここまでの熱狂も引き継いだこの日のパフォーマンスは説得力が段違いだった。シンメトリカルなダンスから声の熱量、観客も煽って熱量を生み出していくパフォーマンスは、明らかな成長を感じさせる。確かな進化を目撃することができた見事な締め括りだった……と思わせたその直後、鳴らされたのはfripSideの新たなアンセム「Red Liberation」。ただアーティストとしての成長を見せただけではない、fripSideとしてその次を見せるような展開は間違いなくこの日のハイライトに。この日もっとも分厚いサウンドを鳴らし、残ったエネルギーをすべて放出するような圧巻のパフォーマンスを見せ、本編は幕を閉じたのだった。
アンコールではヒリついた会場を和らげるように、ポップな「trust in you -version 2022-」が鳴らされ、ステージ上の阿部と上杉もどこか緊張から解かれたように、客席に手を振るキュートなダンスを見せる。そのあとのMCでは八木沼が4日後に控えた20周年ライブに触れ、「(初代ボーカリストの)naoさんもめちゃくちゃ気合い入っているみたい」と話す。「1月8日は本家が聴けるとして、今日は3期でお送りしたいなと思います」と言って「magicaride -version 2022-」がスタート。およそ20年にわたって第1期から第3期まですべてのフェイズで歌われてきた名曲に、観客も大歓声で応える。そしてそのあとには、この日最後の曲にして第3期始まりの曲「dawn of infinity」が響きわたる。昨年のツアーではこの曲が幕開け、様々な意味で新たなfripSideを象徴する楽曲となったが、それから1年経って、この曲がライブの最後を締め括るようになったというのはやはり感慨深い。
あのとき――それは2022年4月のさいたまスーパーアリーナもそうだったが――緊張感たっぷりのなかでの歌い出しだったのが、今ではfripSideの代表曲として実に堂々とした姿で歌われている。阿部も上杉も、振付でガチガチに固めるのではなく、アンコールというのもあって自由に動きながら歌っている。この光景こそが、これまで数々感じてきた彼女たちの成長を、もっとも感じさせる瞬間だったのかもしれない。熱狂と、確かな自信をもたらした『iR2』ツアーファイナルは、最高の形で幕を閉じたのだった。
この日のMCで八木沼は、プロデューサーとして2人のボーカリストの成長を讃え、そしてその先にさらなる伸びしろがあると強調して語っていた。それでもなお、この日のステージで感じたのは、現在のfripSideがこの1年かけて“仕上げてきた”というものだった。彼らの未来に期待することは多くあるが、その一方で2024年1月4日時点で仕上がっている状態が見られたことは非常に重要である。2022年4月から阿部と上杉はfripSideというレガシーを背負いながら活動してきた。そしてこの日から4日後には、Phase 1、Phase 2というレガシーそのものと同じステージに立つ。すべてのフェイズが集まるそのタイミングで“仕上がった”現在のfripSideが見られること、それは20周年という大きなお祭りである一方で、20年のその先を示す重要な瞬間となるはずだ。
※2024年1月8日開催“fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled- supported by animelo”のライブレポートは近日公開予定!
<セットリスト>
M01 Invisible Wings
M02 final phase -version2023-
M03 The Light of Darkness
M04 Newage
M05 Distance to starry sky(上杉真央ソロ)
M06 dual existence -version2023-
M07 more than you know
M08 an Effect of Fate
M09 Your Way
M10 You
M11 Freezing Rain
M12 Insoluble Snow
M13 Trust in my soul(阿部寿世ソロ曲)
M14 crescendo -version 2022-
M15 Two souls -toward the truth- -version2023-
M16 save me again -version2023-
M18 infinite Resonance
M19 Red Liberation
~ENCORE~
EN1 trust in you -version 2022-
EN2 magicaride -version 2022-
EN3 dawn of infinity
fripSide オフィシャルサイト
https://fripside.net/
fripSide オフィシャルサイト(レーベル公式)
https://nbcuni-music.com/fripside/
fripSide オフィシャルX(八木沼悟志)
https://twitter.com/sat_fripSide
fripSide オフィシャルX(上杉真央)
https://twitter.com/maouesugi
fripSide オフィシャルX(阿部寿世)
https://twitter.com/hisayoabe
fripSide オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCp8U4DpexC_DbOrQzjwc7Tw
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