完全体の“いい日”を取り戻し、本物の“アーティスト”LiSAという存在を轟かせたステージを振り返る――全国ホールツアー“LiVE is Smile Always～LANDER～”ロングレポート

「はぁ～」と溜息をもらし「久しぶりの声出しライブということもあって、声出しの楽曲たくさんたくさん詰め込みながら、このツアーやってきました。でも今日の東京、マジ最強！今日はみなさんの気合を、私達の気合いも受け取ってもらえるんだなって感じています。本当にどうもありがとうございます。」「みんなが汗だくになって楽しんでくれている姿を間近で感じられているこのツアー、至福の時をたくさんたくさん感じさせてもらってます。今日は全国で集めてきた至福の時、みなさんに全力でお届けします」

「手拍子お願いします」とLiSAとアコースティックギターの音が導いた曲はもちろん「シフクノトキ」だ。歌詞を“私の帰りを待ってるのは　果実の柔らかい“東京”の味”と歌い変え、スクリーンには、LiSAッ子から募集した至福のときを感じる写真とLiSAのツアー中のオフショットが散りばめられる。穏やかで優しい時間。“大丈夫　わたし　げんきにやってる”の歌声は、LiSAからファンへのメッセージでもあり、会場に足を運んでくれたファンから、こうして声出しライブができた喜びをLiSAに伝えるメッセージのようでもあった。フォトムービーの最後は、東京タワーをバックに自撮りされたLiSAの笑顔。その写真に合わせて「東京、着陸でーす！」と笑顔を見せるLiSAの姿に、ツアーファイナルならではの感慨が、改めてよみがえった。

イラストになったマスコットのモモコとLiSAがバンドメンバーを紹介するコーナーを挟んで、映画『スパイダーマン：アクロス・ザ・スパイダーバース』の世界に入りこんだLiSAを描いた「REALiZE」のビジュアルワークとなっていたスタイリッシュな黒の衣装に身を包んだLiSAが再臨。「一緒に歌って！」の声から「一斉ノ喝采」がスタートする。オーディエンスの大合唱を、マイクを客席に掲げて凜として立つLiSAが受け止め、満足げにサムズアップ。LiSAがドライブする東京ガーデンシアターに、雄大な景色が広がる。

「東京マジ最高なんですけど、今日の東京、もっといけますよね？」と煽るステージは、ハイテンポのパンクナンバー「1センチ」でさらなるカオスへ。昨日公演から生まれた東京弁のキーワード「てやんでぃ！」を盛りこんだ、爆速のてやんぃバージョンの「1センチ」を2度掛け合って、オーディエンスのMAXテンションを引きずり出す。その勢いは、バンドがステージに集結したライブアンセムの1曲「say my nameの片想い」でスパーク。LiSAッ子が待っていたLiSAが着陸した惑星は、この上ない多幸感に包まれる。

「みんなの声ヤバいね！」と喜んだLiSAは、オーディエンスとの触れ合いもしっかり楽しむ。ここで客席に「10代の人―、20代の人―」と呼びかけながら、年代調べアンケートを敢行。すると最年長は75歳、最年少は5歳という結果が！年齢層の広さに驚くLiSAは、「90歳になるまでついてきていただくよう、よろしくお願いします！」とニッコリ。

「ここから一気にいくよ！」と呼びかけて、本編ラストゾーンへ。畳みかける圧巻のボーカルを浴びてオーディエンスが思い切りジャンプした「REALiZE」、そして戦いの賛歌「Thrill, Risk, Heartless」、LiSAがフロアタムにマレットを激しく振り下ろす強大なリズムが野生を呼び覚ます「ADAMAS」と、特大のラウドなロックチューンが、これでもか！とファンに襲いかかる。この3曲はどの曲も、理不尽と戦うこと、運命に抗いながら何度でも立ち上がり、光を目指す孤高の強さを歌った曲だ。ここでもう一度、心の中のストーリーが動きだした感触を持った。中盤で紡がれた、大切な人との運命的な物語。新しい自分を見つけ出そうと旅だった、あのストーリー。その経験を超えたからこそ、あの物語の主人公は、強さを手に入れ、これから生きていくことの使命を見つけられたのではないか。もがき、悩み、苦しんだ先にある、剥き身の自分、その強さ。そしてその自分を信じ抜くこと。それはLiSAがこの世に“表現”を放ってからの長い年月、自ら体現し、ファンに向けて楽曲で磨いてきた原石、ダイヤモンドの光だ。

そんな希望の光が、激しいライトとなって観客の目を射抜き「ROCK-mode」へ。負けない強さを得たからこそ、“大事なものだけ持って　楽しい事しようよ”と歌うLiSAは、妖艶な姿を見せながら、バンドと共に賑やかにパフォーマンス。彼女の思いを真っ直ぐに届ける魔法の言葉“たりらたりら”を会場の全員が大合唱。どんなことがあっても、ここ（＝ライブ）に来れば、すべてのことは昇華できる。そんなことを改めて感じさせてくれるフル声出しのライブアンセムは、紛れもない希望の歌だった。

「いつかまた、こんな声が聞ける日を願って作った、幕が開ける日を願って作ったこの曲、一緒に歌ってくれる？」

ぶつけられたメロディーは“夜明け”をタイトルに掲げた「dawn」。急に訪れた非日常、存在を試されている不安の中で、ライブをファンの歓声と共に完成させられる日を待ち望んだ。“生き残ったこの世界で　新しい　眩しい　幕開けを迎えに行こうか”と誘うLiSAの歌声とファンのコーラスは、どこまでも大きく膨む。

「この先、どんな長い夜がまたやってきても、私達でまた最高の幕開けを何度でも迎えよう！今日は最高な幕開けでした。本当にありがとうございました、ピース！」

そう言い残してLiSAが去っても、彼女を求める声はどんどん大きくなる。ステージが生き返り、滑らかなピアノのメロディーが奏でられると、デコラティブなTシャツに着替えたLiSAが、ゆっくりと深くお辞儀をして、左手を大切そうに胸に当て、階段を降りてくる。静かに歌い出された「炎」。バンドが合流して太陽のコロナを思わせる炎がスクリーンに映し出され、幻想的な風景を醸し出す。ふくよかな歌声とオーディエンスの静寂が、東京ガーデンシアターを感動的に包み込んだ。

目を閉じて大きな拍手を浴びたLiSAは、涙を堪えてニコリと笑いかけ、噛みしめた表情になる。そして万感の思いを込め、時に言葉を詰まらせながら、こう語った。

「まだ世界が灰色のとき、いや、真っ暗なとき。いつか明けるかもと思いながら過ごしていた何年か間。それでもライブがしたくて、10周年がしたくて……『LADYBUG』ツアーを行いました。そのときに作った楽曲もたくさんあって……いつかこんな日を夢見て作った曲がたくさんあったんですけど……あれから時が経って、季節がたくさん変わって、私自身も、世界も新しくなって。こんなに最高の今日を迎えられたことを、最高の今日を迎えにきた私達を、誇りに思います。今日は来てくれて本当にどうもありがとうございました！」

客席から口々にLiSAの名前が呼ばれ、拍手が起こる。

LiSAが紡いだ言葉は、そのままファンがLiSAに贈りたい言葉でもあったことを、気づかされる。そして、またもいたずらっ子のような瞳を輝かせてチャーミングに「ラストいっとく？」と放たれたのは、宇宙船が着陸したLANDERツアーにふさわしい「ジェットロケット」だった。遮るものがなくなった世界、1個だって譲らないで、オリジナルなジェットロケットで最高の君の元へ――。“どんな時だって　一人じゃない、わかるでしょ?”。LiSAはアリーナに降り、みんなとハイタッチを交わし、手を振り、ツアーが終わることを惜しむようにファンとの絆を確かめ合う。アリーナの客席をぐるりと跳ね歩くLiSAを囲むいくつもの笑顔に、今ここにいる幸せが満ち溢れている。「今日は、ほんとにほんとにほんとに……でらありがとう！ピース！」と明るくシャウトし、会場全員とピースサインを交わす。

「楽しかったですか？また来年も思い切り叫んで遊ぼうね！」「また会える日を楽しみにしています」と温かな言葉をかけ、最後は投げKISSを放って「今日もいい日だ！ばいちー！」と大声で告げたLiSA。彼女が去ったあと、スクリーンに映されたのは、あの黒ネコが再びロケットに乗り込む姿だった。

アンコールで発表された次なるライブは、東京日本武道館で2024年4月19日・20日に13周年の節目に開催される“LiVE is Smile Always～i SCREAM～”の2daysだ。そしてその前には、2024年1月27日に日本武道館で行われる“リスアニ！LIVE 2024”DAY1に、梶浦由記の個人プロジェクト・FictionJunctionのゲストボーカルとしての出演も決定している。ワンマンでは見られない、また新たなLiSAの姿が、きっと見られるはずだ。

以前、LiSAと話していたとき、とても印象に残ったライブにまつわる言葉があった。「私って、泳いでないと死んじゃう魚と一緒なんですよ。ライブをしてないと、歌ってないと、きっと死んじゃう（笑）。だから、ずっとずっとライブは続けなくちゃいけないの！」。あのロケットが次に降り立つ場所まで、LiSAはきっと歩みを止めない。今日を“いい日”にするために、私達も強く歩き続けよう――。