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REPORT

2023.12.30

完全体の“いい日”を取り戻し、本物の“アーティスト”LiSAという存在を轟かせたステージを振り返る――全国ホールツアー“LiVE is Smile Always~LANDER~”ロングレポート

完全体の“いい日”を取り戻し、本物の“アーティスト”LiSAという存在を轟かせたステージを振り返る――全国ホールツアー“LiVE is Smile Always~LANDER~”ロングレポート

毎回、ポテンシャルのキャリアハイを更新し続けるLiSAが、今年9月よりスタートした14都市・19公演におよぶ全国ホールツアー“LiVE is Smile Always~LANDER~”を完走!全国ツアーとしては1年半ぶり、声出し解禁ライブツアーとしては約4年ぶりの“~LANDER~”ツアーは、これぞLiSA!を証明する、特大スケールのパフォーマンスを見せつけた。その最終公演となった12月17日、東京ガーデンシアターでのステージを改めて振り返ろう。

PHOTOGRAPHY BY Viola Kam (V’z Twinkle)
TEXT BY 阿部美香

これまで何度、LiSAの歌声に、ライブという“自由な遊び場”で勇気をもらっただろう。そしてLiSAに何度、僕らは大声で“ありがとう”の言葉を届けただろう――。そんなことが当たり前だった日が失われ、再び僕らは、待ち望んでいた完全体の“いい日”を、この手に取り戻すことができた。それが、2022年春に行われた3都市での“LiVE is Smile Always〜Eve&Birth〜”以来、しばしのインターバルを挟んで開催された、思い切り声出しができる約4年ぶりの全国ツアー“LiVE is Smile Always~LANDER~”だった。

今年8月に開催したファンクラブ限定ライブ“FC LiSA LAB Presents〜FUN&FANFARE〜”でしっかりとウォーミングアップを果たしたLiSAが、よりスケール感の増した彼女の音楽とパフォーマンスを、LiSA自身を新たな惑星へと運んだアルバム『LANDER』を引っ提げてフル解禁したこのツアーは、2023年9月にロケットを飛び立たせ、全国13都市を巡り、最後の着陸地点となる14都市目、12月16日・17日の東京ガーデンシアターへと降り立った。2日間の動員数は約1万5,000人。正真正銘のファイナル公演となった12月17日の東京ガーデンシアターは、アリーナ席から3段構えのバルコニー席の上まで、びっしりと埋め尽くされ、開演前からツアー最終日を思い切り楽しもう!というファン(=LiSAッ子)が発する熱のこもった空気が満ち満ちていた。

LiSAのライブは、彼女の歌やパフォーマンスを受け取るだけではない“総合芸術”だと、常々感じてきた。世界に名を轟かせるテーマパークが、キャラクターとアトラクションの魅力だけに収まることのない“夢の国”と呼ばれるように、LiSAのライブは、エンターテイナーであり本物の“アーティスト”である「LiSAという存在」を、歌、演奏、照明、映像すべてで丸ごと表現し、音源以上の感動と高揚感に溢れている。彼女がこのツアーに込めた想いとコンセプトを体現するその総合アートは、惑星着陸のコンセプトにふさわしいSF映画に登場する宇宙船のハッチ~ハンガーを思わせる舞台セットにも、オープニングの映像にもしっかりと表れていた。

会場が暗転するとチルなBGMが流れ出し、満員の客席のクラップが重なる。大きなLEDスクリーンに映し出されたのは、モノトーンのアニメーションだ。ピンクの耳と足を持つ線画で描かれた黒ネコが、しなやかな足取りで夜のビル街を歩き、雨をすり抜け、駆け出した先のロケットに乗り込んで、宇宙へと飛び出していく。LiSAがLiSAとしての第一歩を踏み出した12年半前。「Letters to ME」の“行き先はいつか走り出した夜の向こう”の歌声が、頭の隅で鳴る。この黒ネコは、あのときのLiSAだろうか。走り出した夜の向こうに彼女は、自分がランディングするべき新しい世界を見つけたのだ、きっと。

映像が流れる間にバンドがセッティングし、LiSAがオーガニックで風のような歌声を響かせる。新しい光が差し込む世界に降臨したのは、地球外にも旅を続け、未来の新しい自分に会いに行こうと歌った「NEW ME」だ。全身を覆う赤いローブに身を包んだLiSAが、「東京――!」と声を上げると、大歓声を浴びたLiSAは感慨深い表情を浮かべ、バンドが加速度を増す。爽やかなオープニングに続いて、世界はまた景色を変える。放たれたのは「紅蓮華」。客席を埋めていたピンクのペンライトが、一気に色を変えて赤く燃え上がる。間奏では激しく頭を振ってリズムを刻み、オーディエンスは大声で歌を掛け合う。何度も聴いてきたはずの曲なのに、LiSAとファンの息の合った声を浴びると、楽曲からはまた別の香りが匂い立つ。“運命を”とシャウトで投げかけ、客席が応えたこれ以上ない勢いの“照らして”の歌声を、LiSAは両手を広げて全身で受け止めた。

「ようこそ“LiVE is Smile Always~LANDER~”東京、ファイナル! 最高に楽しんで行きましょう、ピース!!」

少し声を上ずらせながら、ピースサインを掲げるLiSA。過去、何度も聞いてきたお馴染みの挨拶に、うぉー!という大歓声が被さっただけで、「ああ、これこそがLiSAのライブだ!」と胸が熱くなる。赤いローブを脱ぎ捨てると、現れたのは黒にビビッドな蛍光グリーンが輝くミニドレス。幾束も客席になだれ込む光のビームに誘われ、ちょっと懐かしい「コズミックジェットコースター」を、ステージの上手、下手を回りながらハイスピードで駆け抜ける。お立ち台に上り、手を額にかざして客席上段までぐるりと見渡すLiSAの顔も満足げだ。オープニングブロックのわずか3曲で多彩な音楽性を一気に見せつけたセットリストからも、これがまだまだこれから始まる怒涛のステージの前哨戦であることと、久々に声を張り上げて一緒に遊ぼう!という彼女のメッセージを感じる。

「ただいま!LiSAでーす!ついにやってまいりました、LANDERツアー、ファイナル!ファイナルということは、どういうことかわかってますね?」と、いたずら好きの子どものような目をして語りかけ、各フロアのオーディエンスをさっそく煽るLiSA。「受け止める準備はいいですか?全国の18公演分、受け止める準備はいい?愛と思いやりを大切に、最高に楽しんで行きましょう!」。いつものフレーズを投げる笑顔が、ようやく戻ってきたライブという日常の喜びに重なる。

沸き立つオーディエンスをいなすように、ここからはポップでキュートな楽曲が続く。オーディエンスに明るく手を振り続け、優しいボーカルを響かせた「アコガレ望遠鏡」。「あいたーい!」と叫び、ピンクのボディとヘッドにキラキラのラメが散りばめられたLiSAモデルのエレキギターを掻き鳴らし、ピックを客席に投げ入れた「シャンプーソング」では、バンドも軽快なサウンドを鳴らす。そしてギターを置いたLiSAはハンドマイクを握り、「dis/connect」で矢継ぎ早に言葉をぶつけ、ステージ上手のお立ち台に寝そべって、妖艶な姿を見せる。ここから、彼女のステージングが新しいゾーンに入ったことが示唆される。

そして暗転の中、スクリーンはノイジーなサウンドと波形を刻む。一瞬のあと、シルバーのミニドレスに着替えたLiSAが、激しいピアノの音とともにワイルドなボーカルを乱れ打ち、さらにスピードを増した「悪女のオキテ」が疾走する。両手でマイクを握りしめて「バカヤロー!!」と叫ぶと、かき回されるバンドの音に野太い声援が呼応する。縦横無尽なバンドセッションを経て、LiSAが激しく頭を振ってシャウトする「赤い罠(who loves it?)」へ。飛び交う赤いレーザービーム。LiSAという嵐は、さらにうねりを上げて暴風を呼び、エモーショナルなボーカルと、獲物を狙う豹のような野生的なパフォーマンスが、鮮やかな熱を伴って渦を巻く。迎えたアウトロ、すべての力を出し切ったかのように、ふらふらと揺らめく体を抱えたLiSAが、野太い声でロングシャウトを絞り出し、観客の獣のような雄叫びが混ざり合う。

ここでひとつのストーリーが、頭の中に立ち上がった。憧れる人に近づけることのできなかった「アコガレ望遠鏡」の少女は、恋を経験して「シャンプーソング」で大事な人との別れの気持ちを吹っ切りひとつ大人になる。だが、求めていたものが手に入らない憤りの矛先は「dis/connect」と「悪女のオキテ」で激しい怒りへと変わり、嘘を糾弾しながら、「赤い罠(who loves it?)」でそれでも惹かれてしまった人への熱情が止まない、やりきれなさを自覚する。なんという圧倒的な“女性”!やりきれない物語は、愛を知り、少女から大人の女へと変わっていく物語に呼応する。求めることは、止められない。だから手に入らないものだとしても、それを手に入れたいと切望し、くじけながらも人は大人になっていく。LiSAの歌は男女の物語を超え、人の本質すらもありありとあぶり出す。

やりきれない強い思いは、次の「逃飛行」でひとつの答えにたどり着く。美しいピアノの音に誘われるように、LiSAはステージの階段を上がり、そこに広がったのはピンク色のスクリーン。シルエットとなった彼女は拡声器を持ち、今までのパッションフルな歌唱から一転。静かな吐息から始まったメカニカルでテクニカル、透明な歌声で、影絵となってジャジーなサウンドに身を任せる。人生がクラッシュしても、何度間違えても、めまぐるしい現実は昨日のこと。美しい私でいるための仮面を外して、気持ちのままに息苦しいこの現実から出航。素顔になって楽園へと旅立つ。LiSAが紡いだストーリーの主人公、その生き様は再び「NEW ME」をフラッシュバックさせる。振り切った思いは、未来の新しい自分に会いに行く旅へとドラマを繋げたように思えた。そんなステージが作れるのも、自らが弱くて強い女で在り続けているLiSAだから。この圧倒的な世界観は、ほかでは決して体験できない。

ここからまたライブは、鮮やかなエンターテインメントへと色を変える。ゆーこー(Ba./柳野裕孝)、PABLO(Gr.)、いくちゃん(Gr./生本直毅)、ゆーやん(Dr./石井悠也)、アッキー(Key./白井アキト)、Nona*(Cho.・Per./岩村乃菜)からなるサポートバンド“わんたんにゅーめんず”が客席とコール&レスポンスして、それぞれが『LANDER』ツアーの思い出をトーク。ネオンカラーのカラフルなフリンジがついたカジュアルなデニムジャケットに着替えたLiSAが合流し、お立ち台に座り込んでメンバーたちのおしゃべりにニコニコしながらチャチャを入れる。ひとつひとつのゾーンで空間をスイッチさせる、ライブならではの面白さもLiSAのライブならではの醍醐味だ。

そんなLiSAの足元には、こちらももうライブではお馴染み、LiSAの声がサンプリングされたドラムパットセットがセッティングされる。「後半戦もいっきまーす!」と明るく叫んだLiSAと彼女の叩くリズムに合わせて、声出しライブだからこその楽しいコール&レスポンスを挟み、鋭いギターリフからコケティッシュな「た、い、せ、つPile up」へとセットリストは進む。オーディエンスは手を振り上げ、モンキーダンスで一体になる。薄暗い照明の中に、LiSAの蛍光フリンジがビビッドに光り輝いた。

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