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REPORT

2023.12.14

独自の世界観と共に音楽の楽しさを分かち合い、新たな世界へ飛躍するステージに――“降幡 愛 4th Live Tour USAGI”東京公演レポート

独自の世界観と共に音楽の楽しさを分かち合い、新たな世界へ飛躍するステージに――“降幡 愛 4th Live Tour USAGI”東京公演レポート

11月8日にリリースしたフルアルバム『Super moon』を引っ提げて行われた“降幡 愛 4th Live Tour USAGI”。ツアーファイナルとなった東京キネマ倶楽部には、多くのファンが詰めかけた。初めて声出しが可能になったライブで、会場に詰めかけたファンと“音楽”の楽しさを分かち合ったライブの模様をレポートする。

TEXT BY 塚越淳一

80’sのサウンド、いわゆるシティポップを全面に出して活動している降幡 愛がアーティストデビューしたのは2020年。つまりコロナ禍である。デビューからの3年、精力的にライブ活動を行ってきたが、観客の声はなく、無観客ライブを行っていた時期もあった。シティポップ自体は体を揺らして思い思いに楽しむことができるミュージックではあるが、それでもやはり声があるとないのとでは全く違う。観客も曲が終われば、拍手だけでなく歓声を届けたいし、歌えるところがあれば歌いたい。そういう意味で、彼女にとって初の声出しが可能となった今回のツアーは、これまで歌っていた曲が、さらに進化するような感覚があったのではないだろうか。

東京キネマ倶楽部は、昭和というより大正ロマンの雰囲気を感じさせてくれるライブハウスなのだが、そのレトロ感は彼女の音楽にも絶妙にマッチしている。2022年11月に行った“3rdライブツアー”でも同会場を使用しているほど、彼女自身も気に入っている場所なのだろう。ライブのオープニングSEが流れるなか、ライブメンバーである西野恵未(Key)、会原実希(Cho,Sax)が登場したあと、降幡がステージのセンターに立つ。そしておもむろに後ろにあるラジカセ(2003年製)のスイッチを入れ、カチッという音からミュージックが流れ始めた。1曲目は「Fashion」。“look at my fashion”という彼女の歌声で、会場がクラップに包まれる。心地良いBPMと降幡の歌声とコーラス。彼女の繰り出すポップミュージックに、観客も体を揺らしながら楽しんでいた。

「みんな!声出せますか?歌えますか?踊れますか?」と叫ぶと、「イエー!」と返ってくる大きな声。観客もこの瞬間を待ちわびていたようだ。そしてそのまま「シャンプー」へ。まったく途切れることがないクラップも、とにかくノりやすい彼女のライブならではかもしれない。この曲の終盤、“Bubble over”のところでは、シャボン玉がステージに広がる演出。彼女自身もシャボン玉が出る銃で、客席へシャボン玉をばらまいていた。

11月8日にリリースしたフルアルバム『Super moon』収録の2曲で会場を盛り上げたあとの最初のMCでは、みんなの声が聞けることへの感慨深さを話していく。そして「私のしゃぼん玉の出が悪かったですけど、皆さんの“フー!”の声で、どうにか紛れました」と言って笑いを誘う。こういうキャッチボールができるだけで、ライブの空気は全く違うものになる。

明るくかわいらしい雰囲気の2曲から、今度は切ない系の「シンデレラタイム」へ。真っ直ぐな歌声と歌詞の雰囲気、そして歌謡曲感がレトロなキネマ倶楽部のステージにマッチしていた。本間昭光が作・編曲をした「PLAY BOY」では、“だって僕はただのうさぎなんだ”という歌詞で、ツアータイトルの“USAGI”のフレーズも登場。イントロ&アウトロのシンセフレーズのレトロ感が最高に素晴らしい曲なのだが、何と言っても間奏の会原のサックスが痺れるほどにかっこいい。そこに観客のクラップと声が乗り、ライブならではの良さが生まれていた。降幡のエモーショナルなボーカルが響いた「夜のグラデーション」では、コーレスも起こり、会場全体で盛り上がっていた。

「この3曲は“シンデレラタイム”ということでお届けしました。声出しが可能になって、まさかのコール&レスポンスが起きて、動揺して歌詞が飛んでしまいました(笑)」とリアルな感想を漏らすと、くつろぎながら見るライブも良かったけど、オールスタンディングで声出しできるライブも「これはこれで最高ですね。すごく愛を感じました、ありがとうございます!」と喜ぶ一面も。

続いては、スタンドマイクで歌う3曲。「パープルアイシャドウ」でもコーレスは起こっていたが、歌謡曲でのコーレスは昭和感があって絶妙に良い雰囲気だ。「サンセットに忍ばせて」では、会原がコーラス&フルートで大活躍し、「真夜中のフライト〜約束の時間〜」では、“『ATTENTION,PLEASE!』”の声出し、そしてサックスソロが見事だった。ここは昭和生まれならばかなり懐かしさを感じるブロックであり、若い世代には新鮮さも感じたところではないだろうか。

「この3曲は、朝、昼、夜と時系列に沿ったパートにしていました。自分で歌詞を書いているんですけど、1曲1曲にドラマがあって主人公がいるんです。自分も主人公になりきって歌っていて、悲しい歌が多いんだけど、サウンドはとてもカッコよくてノれるんです」と語る。そして「アルバム『Super moon』の中には、うさぎをテーマにしている楽曲もあって、自分もうさぎみたいにぴょんと飛び跳ねたい、飛躍した1年にしたい!と、この1年間思っていました。デビューからアーティスト活動としての自分のあり方を“月”としていて、皆さんから光を当ててもらってやっと輝ける存在だと思っていたんです。なのでこのツアーで、自分が伝えたい想いを皆さん1人1人に直接ぶつけることができて嬉しかったし、声出しもできて本当に感慨深いライブになりました」と感謝を伝え、自分のパフォーマンスによって、少しでも背中を押せればいいなと語る。

そして月と言えば……という流れがあってから、『美少女戦士セーラームーンR』のEDテーマ「乙女のポリシー」をカバーする。早速みんなに勇気と元気を与える楽曲を歌うと、さらに自身のカバーアルバム『Memories of Romance in Summer』にも収録されていた、中山美穂の名曲「You’re My Only Shinin’Star」を、キネマ倶楽部特有の階段を上った先にあるサブステージで披露。降幡の心のこもった歌声に浸ることができ、シンセやフルートによるサウンドも心地良かった。

「次の曲は、スマホのライトで照らしてもらっていいですか?その明かりで私を照らしていただきながら、ロマンチックな感じで歌わせてもらえたらと思います」と言って、Night Tempoの楽曲で降幡がフィーチャリングゲストとして参加している「Be With You」を披露。スマホのライトが揺れる美しい景色のなか、ダンスチューンに揺れていると、続く「ハネムーン」で、テンションが一気に高まる。降幡の熱の入った歌声に、オーディエンスもクラップをしたり、声を上げたりしながら楽しんでいた。

「この一瞬一瞬を、かけがえのないこの時間を本当に大切にしたいと思っています。ライブで皆さんの笑顔を見ると、これって当たり前のことではないんだよなと感じます。3年間、私の尖った音楽や世界観について来てくれる皆さんは勇者だと思うんです。自分の信念に真っ直ぐ突き進みたいなって思っている私についてきてくれている皆さんに感謝しかありません。皆さん、1人1人に感謝を込めた楽曲を書きましたので、聞いてください」と伝え、アルバムのタイトル曲であり最後に収録されている「Super moon」を、満月が浮かび上がったステージからしっかりと届ける。途中のクラップも徐々に合っていき、会場が1つになったなかでライブ本編は幕を下ろす。

“ふりりん”コール、そしてこのツアーから始まったという“降幡”コールに、自分で「降幡!降幡!」と言いながら再登場した降幡。スペーシーなイントロが印象的な「AXIOM」では、みんなで振りを踊りながら楽しむ。大きな歓声も起こり、会場は幸せな気持ちに包まれていた。そして「出し切る準備はOK?最後にとびきり盛り上がれる曲です!」と言って、デビューミニアルバム『Moonrise』に収録の、彼女の始まりの曲「CITY」を披露。この曲も「AXIOM」同様、これまでのライブでじっくり育て上げてきた感じがあり、降幡の熱唱、西野のシンセソロ、会原の超絶フェイクと、3人で完璧な世界を作り上げていた。そしてそこに歓声が加わったことで、新たなフェーズへと辿り着いたような想いになる、それくらいに最高の盛り上がりっぷりだった。

最後に「このツアーのリハーサル期間は不安だったんです。自分の突き進む方向に行っていいのかな?このままでいいんだろうかって悩む時期もあったんですけど、皆さんの笑顔を見て、自分は間違えてない!どんどん自分の好きなことをやって、皆さんをどんどんどんどん巻き込んでいきたいと思えました」と清々しい笑顔で挨拶をし、ステージをあとにした。

シティポップという独自の世界観を貫きながら活動してきた彼女だが、声出し可能となった今回のツアーで、さらにその先の世界を見せてくれた。そしてシティポップは、声を出したり踊ったり、もっともっとみんなが参加して一緒に楽しめるものなんだ、ということを証明したライブだった。この最高に楽しい空間をより多くの人と共有してほしいし、彼女の音楽が日本を飛び越えて世界へまで広がってほしい。

■降幡 愛 4th Live Tour USAGI
11月25日(土)@東京「東京キネマ倶楽部」

<セットリスト>
M1.Fashion
M2.シャンプー
M3.シンデレラタイム
M4.PLAY BOY
M5.夜のグラデーション
M6.パープルアイシャドウ
M7.サンセットに忍ばせて
M8.真夜中のフライト~約束の時刻~
M9.乙女のポリシー
M10.You’re My Only Shinin’Star
M11.Be With You
M12.ハネムーン
M13. Super moon
<ENCORE>
EN1.AXIOM
EN2.CITY


●リリース情報
降幡 愛 1stフルアルバム
『Super moon』
発売中

【初回限定盤(CD+BD)】
価格:¥5,280(税込)
品番:LAPS-35022

【通常盤(CD)】
価格:¥3,520(税込)
品番:LAPS-5022

<収録内容>
■CD
1. CITY
作詞:降幡 愛 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
2. パープルアイシャドウ
作詞:降幡 愛 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
3. AXIOM
作詞:降幡 愛 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
4. ハネムーン
作詞:降幡 愛 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
5. 東から西へ
作詞:降幡 愛 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
6. -PROPORTION- Ⅲ
作詞:降幡 愛 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
7. PLAY BOY
作詞:降幡 愛 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光
8. Fashion
作詞:降幡 愛,YUSA 作曲:YUSA,沢井美空 編曲:blue but white
9. シャンプー
作詞:降幡 愛 作曲:YUSA,沢井美空 編曲:永見和也
10. 夜のグラデーション
作詞:降幡 愛 作曲:吉田悠祐 編曲:吉田悠祐
11. Super moon
作詞:降幡 愛 作曲:Tokyo Music Lovers 編曲:Tokyo Music Lovers

■Blu-ray
1. 「PLAY BOY」Music Video
2. 「Fashion」Music Video
3. 「Super moon」Music Video
4. Artist photo Making Video
5. Animethon 2023 Behind the scene

関連リンク

降幡 愛
公式サイト
https://furihataai.jp/

公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/furihata_ai

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