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INTERVIEW

2023.12.16

MYTH & ROIDが描く“彫刻をめぐる物語”――2枚連作、物語の前編となるコンセプトミニアルバム『AZUL』で開いた彼らの新たな音楽世界に迫る

MYTH & ROIDが描く“彫刻をめぐる物語”――2枚連作、物語の前編となるコンセプトミニアルバム『AZUL』で開いた彼らの新たな音楽世界に迫る

曲の大事なポイントであるコーラス、発音のこだわり(KIHOW)

――後半に入りまして、物語は「Tempest-tost」と続きます。こちらはサウンドとしてもメロディアスで、個人的にはMYTH & ROIDらしさが感じられる印象もあります。

Tom-H@ck まさにそうですね。今までのMYTH & ROIDというか。個人的にはイントロのフレーズがめちゃめちゃ気に入っていて、目指したのは90年代くらいのハリウッド映画とか、当時のアメリカの雰囲気というか……ノスタルジー感みたいなものをイントロに入れました。で、その裏に関しては結構J-POP。日本人が大好きなコード進行とメロディー感が詰まっていて、それが融合した楽曲っていう感じです。

――そうしたポピュラーミュージック的なメソッドに乗せる歌詞としても、すごく強いメッセージ性を感じます。

hotaru 従来のMYTH & ROID感のある曲だなっていうのは、僕自身もデモをもらったときに感じていて。サビの歌詞の構成の仕方についても、英語から始まって日本語で繋ぐような従来のやり方をとっています。もう1つ、全体的には先ほどの「MOBIUS∞CRISIS」は温度感が高いというか、対立しているイメージがすごく強い楽曲だったんですよね。そのあとに続く曲として、同じくらいの温度感で対立している感じだと結構しんどいんじゃないかなと思って。なので、この曲は少しウェットな感じで、自分の元を離れていった人を描きました。現実でも、周りの人の考え方が急に変わっちゃったな、みたいなことってありますよね。そういうものに対してきっぱりと「いや、それおかしいよ」って言っているのが「MOBIUS」だとしたら、この曲だと「どうしてそういう風になってしまったんだ?」と、まだコミュニケーションを取ろうとしているウェットさみたいなものを出したくて。

KIHOW 「RAISON D’ETRE」や「MOBIUS∞CRISIS」といったこれまでと違うことをやってからのこの曲のレコーディングだったので、久しぶりにお家に帰ってきた感がありました(笑)。聴いている側からするとシリアスな印象の楽曲だと思うかもしれないんですけど、歌っている自分としては結構穏やかというか。あと、最初に”tonight, midnight, don’t you? aren’t you?”というコーラスが入ってるんですけど、ここがこの曲の大事なポイントで、そこはすごくこだわって録りました。ポツポツした感じではなく、けだるいというか、ダラーンとした、私の中のイメージでいうと音が垂れ下がる感じ。そういう歌い方を意識しました。

――そして、アルバムとしてもクライマックスに向かいながら「ACHE in PULSE」へと続きます。本作の中では唯一アニメのタイアップがある楽曲になりますね。

Tom-H@ck そうですね。一番最初に出来上がっていた曲になりますね。この楽曲はサビが2段階あって、後半の「エオエオ」と言っているところから明るい雰囲気に変わっていく。実はこの部分も後付けで変化していった部分なんですよね。今までのMYTH & ROIDらしい「Tempest-tost」がありつつ、次の楽曲で色んな展開を盛り込んで、でもやればやるほど大衆性やMYTH & ROIDらしさから離れていく、でもやっぱり挑戦したい……という時期で。だから色んな要素を入れて、この曲はどちらかというとデジタル色が強いアプローチでやっていますね。

――そうしたデジタル色が強いなかでのギターのアプローチが熱っぽくてまたかっこいいなと。

Tom-H@ck 最近はMYTH & ROIDの曲でギター使うことが少なくなってきたんですけど、これはギターのギンギンした感じがあったほうが際立つだろうなと思うことがありました。アーティストでいうと、マデオンっぽい感じ。マデオンをロックとJ-POPのところで落とし込んだらこんな感じかなと想像して、そこにギターや生楽器を増やしていき、MYTH & ROIDだったらこうするよなという感じで作り上げた曲です。

――hotaruさんとしてはアルバムのコンセプトと『アークナイツ』の主題歌としての両立はどう考えられましたか?

hotaru 作品サイドからは、作品全体を語るというよりは特定の人物の心情にフォーカスしてほしいと言われていたんですね。それを踏まえてかなり寄り添う歌詞になっているので、『アークナイツ』を観ている人ならわかるような塩梅になっているかと思います。ただ、2コーラス目以降はそこから少し距離を置くというか、もう少し我々アーティストとしてのメッセージに寄せています。

――そこを含めて、KIHOWさんのボーカルとしてはいかがでしたか?

KIHOW 自分の中で個人的に発音でこだわった部分は、サビ頭の”Start it”というフレーズですね。あそこはわざとクセのある発音にしていて。”Start it”ってきれいな英語の発音で言うと、音を置きにいった感じになっちゃうんですよ。でも、ここでは今から始まるぞということを、上に投げる感じで表現しています。発音の仕方が細かすぎて説明が難しいんですけど……そういう部分は気にしてレコーディングしましたね。

――目の前のオーディエンスを上げていく感覚というか、そこは近年のライブの経験も活きているのかなと。

KIHOW そうかもしれないです。ここでみんなに、「今から盛り上がるんだよ」っていう感じを伝えたい気持ちが、前よりも強くなっているので。

シンプルではあるけれども、今の僕の最大値がこれなのかな(Tom-H@ck)

――そして最後に「…And REMNANT」で『AZUL」は幕を閉じます。街が海に沈んでいく終末感のなかで鳴らされるサウンドが、ピアノの美しい楽曲というのが印象的で。

Tom-H@ck バンドインするのが一番最後のサビだけという思い切った構成ですね。そこで水の中に沈んでいく感じを表現しつつ、希望も描かないといけないという塩梅がすごく難しくて。なので、音楽理論的にも色々と詰め込んでいて、ダンス理論やオーケストラ、ワールドミュージックの色も入れています。僕自身もこの歳にならないと形にすることができなかったようなテクニックやインスピレーションも入れることができた、個人的にも大好きな曲ですね。シンプルではありますが、今の僕の最大値がこれなのかな、っていう感じがしています。

――終わりを迎える悲しさがあるなかで美しく陶然とするような世界観ですが、hotaruさんとしては改めてどのような締め括りを考えられましたか?

hotaru 書く前は、ああでもないこうでもないってすごく考えていたものの、最終的にどういう形になるのかまではわからない状態で。でも、いざ曲をもらってみたら、曲自体がシンプルにすごく良くて、あれだけ悩んでいたのが噓のように、2時間くらいですべて書き上げることができたんですよ。書き始めて思ったのは、「忘れたくない」「捨てたくない」という想いが根底にあり、それらの感情をラストに集約していくものとして考えていたということで。書いていくなかで改めて理解することができました。

――様々な感情が内包されていたんですね。KIHOWさんとしてはどんな想いがありますか?

KIHOW ミニアルバムの楽曲は難しい壁みたいなものがあるわけではなく、ただ楽しく歌ってきたんですけど、最後の最後にこんなことが起きるとはという感じで。この曲をレコーディングする直前くらいに「こう歌ってほしい」ということをTomさんに言われて(笑)。

Tom-H@ck 表現が難しいんですけど、極端に言うと普段メタルを弾いている人に対して、いきなりクラシックギター弾いてねって伝えたみたいな。

KIHOW 急だなあと思いながら(笑)。

Tom-H@ck すべては俺が悪い(笑)。

KIHOW でもTomさんに「こうやってほしい」って言われたときに、そのイメージが自分の中でイメージが理解できたので、実際のレコーディングも全然大丈夫でした。

Tom-H@ck これは分けて録らずに、ライブみたいな感じで最初から最後まで一発録りで、ファーストテイクなんですよ。一番最初に録ったテイクが、もう神様が降りてきてるみたいな感じで。聞いた瞬間にビビッときたんですよね。

――まさにメンバー個々でも様々な変化を感じさせるコンセプトアルバムとなりました。そして、その先には『AZUL』の続編も控えています。hotaruさんとしてはどんな作品を想定されていますか? やはり『AZUL』と繋がったコンセプトになっているのかな……と。

hotaru 言っていいと思いますけど、繋がっています。ただ、2部作構成でありますが、今回1枚だけでも1つの終わりを迎える形にしたので、多分次のアルバムの冒頭を聴いていただけると、違うエピソードになるんだなというのがわかっていただけるかなと。海の底に沈んでいる彫刻を巡るお話というのが、今回の『AZUL』だけではないので、2枚を通して“彫刻を巡るお話”を楽しみにしてほしいですね。


●リリース情報
MYTH & ROID Concept mini album
〈Episode 1〉
『AZUL』
発売中

品番:ZMCZ-16971
価格:¥2,750(税込)

<収録内容>
01.<Episode of AZUL>
02. RAISON D’ETRE
03. MOBIUS∞CRISIS
04. Tempest-tost
05. ACHE in PULSE
(TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』OPテーマ)
06. …And REMNANT

MYTH & ROID Concept mini album
〈Episode 2〉
『VERDE』
2024年3月27日(水)発売

品番:ZMCZ-16972
価格:¥2,750(税込)

●ライブ情報
MYTH & ROID One Man Live 2024 Spring Tour “VERDE”

4月13日(土) 静岡 LIVE ROXY SHIZUOKA (開場17:30 / 開演18:00)
4月14日(日) 岡山 YEBISU YA PRO  (開場17:00 / 開演17:30)
4月20日(土) 仙台 MACANA  (開場17:30 / 開演18:00)
4月27日(土) 大阪・心斎橋SUNHALL (開場17:30 / 開演18:00)
4月28日(日) 名古屋 SPADE BOX  (開場17:00 / 開演17:30)
5月12日(日) 東京・Shinjuku BLAZE (開場17:00 / 開演17:30)

【チケット受付方法】
<オフィシャル先行受付>
受付期間:12月8日(水)12:00~12月17日(日)23:59
受付URL:https://w.pia.jp/t/mythandroid24/

<一般発売>
2024年3月16日(土)AM10:00〜

【価格】
各公演共通 ¥6,000(税込/1D別)
特典付き限定チケット ¥8,000(税込/1D別)
※特典としてAZULとVERDEの物語を1つにした[Concept Album “AZUL/VERDE” Story Book]が付属予定

【ツアー特設ページ】
URL:http://mythandroid.com/live2024-verde/

・MYTH & ROID初のゲストを迎えたライブイベント
MYTH & ROID Two-man Live Series「NEXUS vol.1」

2月10日(土) 大阪・心斎橋SUNHALL (開場17:30 / 開演18:00)
出演アーティスト:MYTH & ROID、岸田教団&THE明星ロケッツ

2月23日(金・祝) 東京・下北沢Shangri-La (開場17:30 / 開演18:00)
出演アーティスト:MYTH & ROID、NANO

【チケット受付方法】
<オフィシャル先行受付>
受付期間:12月8日(水)12:00~12月17日(日)23:59
受付URL:https://w.pia.jp/t/mythandroid-vslive24/

一般発売
2024年2月3日(土)AM10:00〜

<MYTH & ROIDプロフィール>
「MYTH & ROID」(ミスアンドロイド)は、インターナショナルで本格的なサウンド、鋭角的でキャッチーなメロディ、圧倒的なボーカルパフォーマンスを兼ね備えた日本のアーティスト。
2015年のメジャーデビュー以降、数々の大ヒットアニメの主題歌を手がけ、MV及び関連動画総再生回数は1億5千万回を超える。
「感情の最果て」をテーマに、音楽、映像、ビジュアルなど、あらゆる側面から国籍や時代にとらわれない普遍的な人間の感情を描いて世界的な評価を得ており、これまでに20ヶ国以上でLIVE公演を行なっている。
2016年に発表した3rd Single「STYX HELIX」4th Single「Paradisus-Paradoxum」は2作続けてiTunes Store(JP)総合ランキング1位を記録。
また、2019年に発表した10th Single「TIT FOR TAT」のMVは公開から約1年で500万回再生を超え、2020年に発表した1st Digital Album「Future is Mine」では遂にサブスクリプションを解禁。同アルバムはノルウェーのiTunes Storeアニメトップアルバム1位を記録。他にもニュージーランド、マカオ、イギリス、イタリアなどの世界各国でTOP10にランクインを果たしている。
ユニット名「MYTH & ROID」は、過去を想起させる「Myth」(神話)と未来を想起させる「Android」を組み合わせた造語。

関連リンク

MYTH & ROID
公式サイト
http://mythandroid.com/

公式X
https://twitter.com/myth_and_roid

公式Youtube
https://www.youtube.com/@mythroidofficialchannel5625

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