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INTERVIEW

2023.12.10

【特集】「聴いている人に届けたい」想いを込めた「Gift Sign」、静香らしさを追求した「Snow White」を語る――TVアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』最上静香役・田所あずさインタビュー

【特集】「聴いている人に届けたい」想いを込めた「Gift Sign」、静香らしさを追求した「Snow White」を語る――TVアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』最上静香役・田所あずさインタビュー

日曜の朝10時に放送中のアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』。プロデューサー(『アイドルマスター』ファンの呼称)たちが10年間待ち望んだアニメ化が、最高の形で実現している。春日未来・最上静香・伊吹 翼を中心にした39人のアイドルの成長と765プロライブ劇場(シアター)の始まりを描いた本作は、TVアニメの放送に先立って実施された劇場先行上映でも高い評判を得た。

今回は、劇中でも素晴らしい歌声を響かせてくれた最上静香役の田所あずさに、あの感動のオーディションシーンをはじめ、様々なシーンを彩った楽曲についてたっぷりと語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 千葉研一

※アニメ最終話までのネタバレを含みますので、ご注意ください。

【特集】アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』夢を追うアイドルたちの“きらめく世界”に迫る

音を外して、こけて、徐々に復活して、最後は必殺技を撃つ!

――このインタビューでは劇中で静香が歌唱した楽曲を網羅して聞いていきたいと思いますが、まずは10年経ってアニメ化した心境から教えてください。

田所あずさ 実は、最初に聞いたときは疑っちゃったんですよ。本当かな?そんなこと言って、嘘なんじゃない?途中でダメになったりしない?って(笑)。アフレコが始まって、そこでやっと本当に実現するんだと実感しましたね。

――実際に完成した映像を観たときはいかがでしたか?

田所 劇場上映より前に動画をいただいて観たのですが、完成形を観るのが初めてだったので、すごく緊張しながら再生した記憶があります。でも、映像のすごさに感激して、おこがましいですけど「ToP!!!!!!!!!!!!!」のライブシーン(第1話)を見たときに「これはもう大丈夫。心配いらない」と感じたんです。

――その反応は完全にプロデューサーさんと一緒ですね。第1幕の上映後にSNSで同じような声をたくさん見かけました。

田所 ずっと関わってきたからこそ、我が子みたいというか不思議な感覚もありましたね。

田所あずさ

田所あずさ

――「ToP!!!!!!!!!!!!!」は、765PRO ALLSTARSのライブ後に、未来と一緒に行った公園で口ずさむシーンがあります。こちらはアフレコブースで録ったとのことですが、歌うと知ったときの心境や、収録のことをお聞かせください。

田所 改めて曲を聴いて丁寧に紐解いていったのですが、この曲ってめちゃくちゃ不思議な音階なんですよ。ゆっくりのテンポで、しかもアカペラで歌うとなるとちゃんと紐解かないといけないので、スマホのピアノアプリで音階を確認しながら練習しました。でも、これが大変で……。例えば、“好きな夢描いたら”と“どんな日も乗り越えて”では、同じようなメロディでもちょっと違うんですよ。それに気づいて、うわー! ってなりましたね。それに、アフレコでも「ToP!!!!!!!!!!!!!」を歌うシーンにはカラオケは入っておらず、ボールド(※セリフを言うタイミングを示すために出る、役名などが書かれた四角いマーク)の点滅でリズムだけが刻まれていて、台本に歌詞が載っていたんです。もちろん、キー出しとかもなかったですし。

――それをアカペラで歌えるのがすごいです。

田所 ありがとうございます。第1話だからすごく緊張もありましたし、アフレコのときに録るかどうかもわかっていなくて。とにかく万全の状態で準備だけはしておこうと思って臨みました。

――しかも、聴いた未来を感動させなきゃいけないわけですからね。

田所 静香ちゃんの見せ場でもあるのでありがたかったです。

――それがあって第2話のオーディションシーンに繋がっていくわけですが、オーディションで歌った「Rat A Tat!!!」は、オープニング主題歌でもあります。レコーディングはオープニングのほうが先だったのですか?

田所 いえ、先にオーディションシーンの「Rat A Tat!!!」を録りました。

――そうだったのですね。台本でどういうシーンか理解したうえでレコーディングしたとは思いますが、かなり大変だったのでは?

田所 台本をいただいたとき、静香ちゃんの口から「アイドルになれないの?」って言葉が出ることがつらすぎて……。何度も家で泣いてしまい、なかなか練習できなかったんです。セリフ部分は全部アフレコで録っていましたので、レコーディングはその音声と映像を見ながらやったのですが、やっぱりつらかったですね。

――レコーディングで意識したことやディレクションについて教えてください。

田所 「音を外してください」ってディレクションがあったんですけど、音を外すのは、ニュアンス次第で結構コミカルになってしまうこともあると思うんです。だから、どうしてそうなってしまうのかという過程を大事にしました。私もステージに立つ経験をたくさんしてきたなかで、緊張すると息が上がってしまうというか、呼吸が浅くなることを何度も経験してきたので、同じような理由で上手く音程が取れなくなる感じを表現したくて。静香ちゃんが音痴だと感じるようにはしたくない、ということもすごく意識しました。

――頭ではわかっていても、実際にやるのは難しそうですね。

田所 めちゃくちゃ緊張はしましたけど、気持ちがわかる部分も多かったので、私自身の経験を活かせたと思います。でも、緊張しているだけではなく、そこから復活しないといけない。だから、ディレクションも細かく「ここで音を外して、ここでこけて、ここから徐々に復活して、最後は必殺技を撃ってください」と言われたんですよ(笑)。気持ちだけではなくてものすごく技術も頭も使ってやるレコーディングでしたね。

――面白いディレクションですね。ただ、復活したあとの一声はみんなの心を一気に掴みましたから、まさに必殺技の破壊力がありました。あそこは気持ち良さもありましたか?

田所 いやぁ、そんな余裕はなかったです。職人の気持ちでした(笑)。

――なるほど(笑)。でも、最初にそういう録り方をしてから普通のレコーディングをするのも珍しいですよね。

田所 そうですね。あと、私からのリクエストとして、歌い慣れた状態にはなっておきたかったので、先に普通のレコーディングのようにワンコーラスを本気で歌って録ってもらったんです。そのテイクは使わなかったんですけど。

――劇中の静香も練習のときはしっかり歌えていたと思いますし、それと同じ状況にしたかったのですね。

田所 そうです。

――その話を聞くと、職人でありつつ、やっぱり演者・役者だなと感じます。そして、オープニング主題歌としての「Rat A Tat!!!」を改めてレコーディングしたときは、どのように歌ったのでしょうか?

田所 オーディションシーンでは苦しい部分が多く出てしまったので、こちらは「楽しい」「嬉しい」「ワクワク」を前面に出しています。メロディをしっかり取って“上手く歌う”よりも、嬉しいといった“気持ちを優先”して、今よりも若さやフレッシュさを出すようにして歌いました。

「Gift Sign」は大きな流れを意識して収録

――チーム曲や全体曲の前に、静香がソロで歌唱した曲についてお聞きします。話数は飛びますが、第9話では(如月)千早が「Snow White」を歌っている姿に衝撃を受け、1人海岸で歌います。こちらもアフレコブースで録ったのですか?

田所 これはレコーディングスタジオで録りました。

――レコーディングはいかがでしたか?

田所 千早さんの音源を聴いて覚えていったので、千早さんの印象がすごく入ってしまって……。でも、千早さんと静香ちゃんは全然違いますから(千早さんの歌い方を)なぞる感じにはしたくない、静香ちゃんらしい歌にしたいと思いました。そう思っても、どうしてもなぞってしまう部分があって、レコーディング中に「静香らしさってなんですかね?」と聞いたくらい、すごく悩みましたね。あと、シンプルにキーが高かったです。2人の得意なキーが違うのも難しい部分でしたね。それに、劇中で歌う静香ちゃんは千早さんとはまったく感情が違って、苦しかったりつらかったり、現状が上手くいかなくて歯がゆかったり……なので、台本のト書きや映像を見ながら、その気持ちになって歌いました。心になにか詰まった感じを出せたらいいなって。

――そして、第10話では2曲歌います。1曲目はソロではないですが、ラジオ(アイドルマスター ミリオンラジオ!)でも驚いたと話していた「G線上のアリア」です。

田所 まさかの選曲すぎて、そういうアニソンがあるのかなって思ったくらいでした(笑)。1人で歌うわけではなかったのが救いですね。この曲は人に届けることを意識して、暖かく、伸びやかに歌えたらいいなと思って歌いました。

――歌はもちろん、胸のつかえが取れたような表情も印象的でした。そして、チャリティーコンサートで歌った「Gift Sign」はまさに圧巻でしたが、楽曲の印象やレコーディングについてお聞かせください。

田所 個人的に、静香ちゃんに1番似合うのは「晴れやかな曲」だと思っているので、すごくピッタリだなというのが最初の印象です。今まで自分のことを歌うことが多かったですけど、アニメの中で「聴いている人に届けたい」という気持ちに気づくので、レコーディングでもそれをすごく意識しました。キャラクターであるよりも人間である感じというか、そこに存在している、本当に立って歌っている感じ。この曲はひとつの言葉に気持ちを乗せるのではなく、もっと大きく広い感じを意識して歌っています。

――テクニカルにこの部分をこうしよう、とやるのではなく?

田所 そうですね。なにかの1単語を立たせるとかではなく、その気持ちを持ち続ける感じでした。なので、細かな流れではなく、大きな流れを意識しています。「Gift Sign」は基本的にワンテイクで最初から最後まで録ったんですよ。最終的に少し変えた部分はあるかもしれませんが、それを2つくらい用意し、聴き比べて選びました。

――最近だと1Aのみとか、さらにその中のいち部分だけもう一回とか、そういう録り方をすることも多いですからね。

田所 そういう切り貼りではなく、この曲はもっと全体の流れを大事にしたかったんです。

――だからこそ、すごく気持ちが伝わってきました。ここは歌唱だけでなく、未来と翼が背中を押してくれて、シーンとしても素敵でしたよね。

田所 そうなんです。2人が翼(羽根)になってくれて。アイドルになりたいって気持ちもずっと話せず、1人で抱え込んでしまうタイプだった静香ちゃんが2人に頼れるようになったのは、彼女の成長を感じられてとても好きなシーンです。

――ちなみに、先日の“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-3 R@ISE THE DREAM!!!”DAY2で歌ってみてどうでしたか?

田所 めちゃくちゃ緊張しました。そもそもプロデューサーさんは誰もフルサイズを聴いたことがない状態で。それも不思議な感覚でしたし、アニメで大事に描いていただいたことを大切にしたかったし、その思い出に寄り添いたかったし……色々な緊張があって。でも、いつものように自分のことを歌う曲ではないので、人に届けたい気持ちを大事にしたいと思いました。私も静香ちゃんと似ていて気持ちが内に内に入っていくタイプですけど、晴れやかに届けるために、袖で「楽しい気持ちになろう!」と必死にニコニコ笑顔を作ってからステージに行ったんですよ。

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