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INTERVIEW

2023.12.08

Who-ya ExtendedがTVアニメ『はめつのおうこく』へ捧げる“祈り”。「自己と世界」「自己と他者」という大きなテーマと向き合った「Prayer」へ込めた想いを語る

Who-ya ExtendedがTVアニメ『はめつのおうこく』へ捧げる“祈り”。「自己と世界」「自己と他者」という大きなテーマと向き合った「Prayer」へ込めた想いを語る

ボーカリスト・Who-yaを中心としたクリエイターズユニット・Who-ya Extendedが新たにタッグを組むのは、TVアニメ『はめつのおうこく』。TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のOPテーマ「Q-vism」で彗星のごとくシーンに登場した彼らは、現在では海外のアニメイベントからもオファーが絶えない注目の存在。そんなWho-ya Extendedが紡ぐダークファンタジー作品「Prayer」」のテーマは“祈り”だ。この曲に辿り着くまでにどのような想いがあったのか。また、ライブユースなカップリング曲から彼らのライブ観も紐解く。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

海外のステージ経験から持ち帰ったライブ表現を今、発揮中

――前回のインタビューの際に「このあと海外でのライブがある」というお話をしてくださいましたが、実際、海外でのステージはいかがでしたか?

Who-ya 今夏はアメリカのシカゴ、ブラジルのサンパウロ、それからドイツのマンハイムの3ヵ国に行ってきました。これまでの海外のライブといえば、SACRA MUSICに移籍してすぐにサウジアラビアでのライブ出演があったのですが、それからやや期間が空いての海外のライブとなりました。やっぱり、日本でライブをしているときの自分とお客さんの関係性と、海外とでは全然空気感が違うんです。日本と海外というだけではなく、シカゴとサンパウロも、マンハイムも、主言語も違うし、ライブの空間でのノリの感じも違う。その国の国民性を知ることができて、様々な国でライブをすることはすごく面白い経験と時間になりましたね。

――特に面白かったのはどんな経験ですか?

Who-ya ブラジルだと英語よりも日本語のほうが通じるんですよ。現地の方に教えていただいたのですが、世界で2番目に日本人が多く住んでいる国だとのことで。日系の方も多いですし日本語に触れ合う機会も多いらしくて、MCでも日本語を交えてお話することが多かったです。アメリカではもちろん英語でMCもしたのですが、北米と南米の違いは面白かったです。しかもブラジルって日本からすると、地球上で裏側にあたる場所。こんなに遠く離れているのに、こんなに日本と近しい関係値だということを現地に行ったことで初めて知ることができました。あと、ドイツの人たちは日本人に似ているな、ということを体感したことも面白い経験でした。僕の肌感としてですが、すごく紳士的で、仕事に対してすごく真面目ですし、時間をきっちり守る感じがあったんです。キーボードの方と2人でのステージで静かな場面も作ったのですが、しんと聴いてくれていたんです。盛り上がるところはすごく盛り上がるし、静かなパートでは静寂の中で聴いてくれるところに、リアルな場でちゃんと音楽を受け取りにきてくれているんだな、と感じました。

――ライブのリアクションはいかがでしたか?

Who-ya すべての国が、熱量で溢れまくっていることを感じましたし、特にブラジルが個人的には凄まじさを感じました。アメリカもドイツも盛り上がりましたが、今お話をしたようにブラジルは心の距離も近いというか。日本語の歌でも一緒に歌ってくれましたし、その熱量は一番大きかったです。

――そんなライブから持ち帰ったものはありましたか?

Who-ya もう、たくさんありすぎました。海外から帰ってきてすぐに“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”や“ナガノアニエラフェスタ”などライブイベントへの出演が続いたのですが、そこには海外でのライブ経験を活かすことができたと思っています。

Who-ya Extendedと『はめつのおうこく』が結ぶ“祈り”

――そのWho-ya Extendedが手がける、TVアニメ『はめつのおうこく』EDテーマ「Prayer」が完成しました。アニメのエンディングはどんな存在だと思われますか?

Who-ya 個人的に思うのは「余韻」です。オープニングは第1話やそこから2話、3話と進んでいくなかで物語が始まるときに毎週聴くものだけど、エンディングは30分間物語を見てきたあとに流れるもの。『はめつのおうこく』にフィーチャーして作った曲ではありますが、「Prayer」は自分が1人の視聴者となったときに作品を見たあとの印象を形作っていけるように、というイメージで作りました。第1話のあとに、聴いたときにはこんなふうに感じたけれど、第2話を終えて聴いたときにはまた少し違って聴こえるような、毎週違う余韻を物語によって感じられるような、そんな幅を持たせた曲にしたいと思いました。

――そんな『はめつのおうこく』という作品に対してはどのような印象がありますか?

Who-ya 今までもダークヒーローものやダークファンタジーの作品をたくさんやらせていただいているのですが、今回の作品もすごくシリアスなものだなと思いました。元々『はめつのおうこく』の原作を読んでいて物語の流れも知っていたのですが、とにかくこの話って悲しいですし、しかも「悲しい」や「シリアス」という言葉だけでは片づけられない「生々しさ」があるんですよね。それに、原作だけではなくアニメもそうなのですが、話を読み進めていって、その先のテーマを見ると自分たちの生きる世界ともリンクしているところもあるなと気づくんです。内容としてはダークファンタジーで、魔術と科学という覇権がありつつも、自分たちにも置き換えられるのではないか、という視点で読んでいます。

――楽曲を作ろうと向き合ったときには、物語の終わりに毎週流れるエンディングとしてこの物語のどういう部分に心を寄せようと思われたのでしょうか。

Who-ya 全体としてダークな世界観ではあるけれど、主人公のアドニスがいて、彼を育てた魔女のクロエがいて、ヒロインのドロカがいる三つ巴で進んでいく話ですが、僕はアドニスの見ているものって“クロエとの世界”だと思っていて。クロエは第1話で死んでしまうけれど、そんなクロエに対するアドニスの感情は愛情でも友情でもなく、彼が唯一知る“世界”、それがクロエなんですよね。どちらかというと誰かに向けた言葉や誰かに向けた感情というよりも、自己と世界がすべて、という対比なんじゃないかと思ったんです。それが楽曲を作るにあたって自分たちの世界ともリンクしているものなのかなと思い、「祈り」というテーマがありつつ「自己と世界」「自己と他者」を大きなテーマにしました。

――こうして出来た1曲ですが、ご自身的に苦戦されたところはありましたか?

Who-ya 「Prayer」はサウンド的にすごくストレートなんです。途中からギターも入ってきますが、序盤はピアノと声だけ。1曲を通じて音数も少ないこともあり、聴いてくれる人にはよりダイレクトに言葉が伝わると思うので、そこでの言葉の選び方には苦労しました。自分としてはなるべく難しい言葉を使うよりも、歌詞を読んだだけでも伝わる言葉選びをしたいと思ったので、ここも苦心しました。しかも「Prayer」は“僕”と“君”というよりは自己と内面の歌なので、どちらかというと自分の内面世界から外に向けて歌っている曲にしたかったんです。

サビ頭の“どうか”に込めた想い

――歌い方もこれまでとは少し雰囲気が違うと感じました。表現するうえで意識されたことはどんなことでしょうか。

Who-ya 言葉選びと少しリンクしますが、言葉や発音、発声まで良い意味ですべてが聞き取れてしまう曲なので、“エモ”です。「エモい」よりも「エモ」を意識しました。感情を乗せるという意味でも、今までのレコーディングの中でも一番この想いを乗せる割合が強い歌になりました。特にサビ頭の“どうか”という言葉には強く感情を込めました。「Prayer」は祈る人の歌なので、楽曲が出来て、マスタリングスタジオで完成したもの聴きながら“どうか”というワード選びに対して自分自身「よく出来たな」と感じました。“どうか”で始まることで願いや祈りという世界観のすべてが伝わると感じましたし、歌としてもここが最も想いが伝わるところだろうと思います。

――MVもシンプルでしたが、リップシンクで歌っていると楽曲について改めて感じるものもあったのではないでしょうか。

Who-ya MV自体は2カットの長回しなんです。自分自身も楽曲の言葉と音と自分の歌と向き合い続けて、それを映像でより伝わるようにするためにはどうしたらいいかと考えながら歌ったので大変ではありましたが、その甲斐もあってとても意味のあるMVになりました。

――実際にアニメのエンディングとしてご覧になっていかがでしたか?

Who-ya 初めて観たのが先行上映会だったのですが、本当に嬉しかったです。原作ファンだからこそ「この物語はどこまでアニメとして表現が出来るのだろう」と思っているところもあったのですが、すごく原作に忠実ですし、アニメになったことでさらにリアルに受け止められるようになったその生々しさ。アドニスとクロエ、ドロカの三つ巴な感じが伝わってくるなかで「Prayer」を聴いたときに、「ハマった!」と思いましたね。作品自体にも「Prayer」を大切にしてもらえているんだなと感じましたし、自分自身も俯瞰して観たときに「この物語のこの場所には『Prayer』が存在していてほしいな」と思えました。そういう意味でも嬉しかったです。

――ライブでやるときにはどんなふうに表現したいですか?

Who-ya 実は一度、先行配信日に出演していた大阪のライブイベント“MINAMI WHEEL”のステージでやらせていただいたのですが、難しかったんです。ストレートなものほど難しい。ライブって、自分がいて、マイクを持って、ステージに立っていて、数メートル先にはお客さんがいる。こういう曲は音数も少ないですし、歌っている人によりスポットが当たる曲なので、音や言葉の持っている世界観をよりダイレクトにぶつけるような感覚があるんです。この先もライブでもどんどんやっていくことになるので、様々な色を感じてもらえるような歌に育てていきたいです。

次ページ:「普遍」を歌い、ライブで会場と共鳴する――そんな曲を作りたかった

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