リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2023.12.09

TVアニメ『新しい上司はど天然』EDテーマ「花束」をリリース!今までとは違うアプローチに挑戦したLenny code fictionに楽曲への思いを聞く

TVアニメ『新しい上司はど天然』EDテーマ「花束」をリリース!今までとは違うアプローチに挑戦したLenny code fictionに楽曲への思いを聞く

4人組ロックバンド・Lenny code fictionが、TVアニメ『新しい上司はど天然』のEDテーマ「花束」をタイトルに掲げたシングルをリリースする。

タイトルを聞いて、2016年にリリースした「Flower」(テレビアニメ『ALL OUT!!』OPテーマ)を思い出す人もいるのではないだろうか。片桐は以下のように述べている。

「Flower」は自分の決意でした。色んな経験が集まって花束になって、ようやく心から「贈る」言葉を書けました──と。2ndアルバム『ハッピーエンドを始めたい』を経て、より自己を解放できるようになった今。贈られた「花束」には、Lenny code fictionの今の彼らならではの新たな表現に満ち溢れている。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

今までにないほど手応えを感じるツアーに

──現在2ndアルバム『ハッピーエンドを始めたい』のツアー中ですが、手応えはいかがですか?

片桐 航 (Vo.Gt.) アルバムのリリースツアーなので、2ndアルバム収録曲を中心にやってるんですけども、2ndアルバムのテーマに「自分の素直な気持ちを出す」というところがあるので、結構自然体にできているような気がします。今までは作品としてガッツリ固めてきて、ライブではそれを完成させるという意識だったんですけど……MCも歌い方も対話のような雰囲気で、柔らかくなっている気がします。演奏、表情にも、各々の性格が乗っていて。今までとは違ったツアーになりながらも、それが性に合っているようにも感じています。

ソラ (Gt.) 今回のツアーで確かな手応えを感じています。僕らが今やっているのって、感情が見えるライブなんだなと思うんです。それが「ライブが良い」ということにつながるんだろうなと思っていて。一人ひとり感情が丸出しなんです。盛り上がるところは盛り上がるし、バラードで心に届く場面もあるし。笑いもあり、涙もあり、最後は笑い泣きのような状態でライブ会場を去っていく感じが、とてもハートフルだし、人間味があるなって。

Kazu (Ba.) 今までは気合いを入れてツアーに挑んでいたんですけども、ものすごくフラットな状態でライブをすることができています。自分がいちばんライブを楽しめてるな、と感じるくらい。自分が楽しかったら自然と周りのメンバーも楽しくなるし、お客さんも楽しくなると思うんです。僕の中ではすごく珍しいんですけど……毎回のライブが頂点を越えてる実感がありますね。

KANDAI (Dr.) ライブ中ってお客さんが気づいていないかもしれないところで、トラブルだったり、ミスをしてしまったりと、いろいろなことが起きるんです。でも何か起きてもあまりアタフタしなくなって、むしろニヤッとできるくらいの余裕が生まれました。それも経て、あまり考えすぎずにライブができるようになったような気がしますね。その日にしかできないライブというものが自然とできています。しかもツアー初日から良いテンションでいけたような気がします。ツアー初日って探り探りなところがあったんです。でもバチッと決まって。(インタビュー段階では)明日が3本目の名古屋。良い流れできてるし、俺も毎回最高潮を更新できている実感もあります。

──バンドとしての高みを更新されている中で「花束」がリリースとなります。今作でアニメタイアップは8作目になりますが、『新しい上司はど天然』は今まで主題歌を手掛けられてきた作品とは一味違いますよね。

ソラ そうなんです。これまではバトルものが多くて。ある意味『ALL OUT!!』もバトルものと言えると思うんです。だからこういう日常系は本当に初めてなので、最初は「大丈夫かな?」という不安もありました。なるべく作品に寄り添ったものをとは思いつつも、やはりバンドなので最終的にはロックな音になりますし。でもエンディングで流れたときに、聴こえ方がガッツリ変わった印象があって。当初は「なんだかんだとロックな曲になったな」と感じていたんですが、映像と共に見るとバラードに感じるところがありました。 オープニングではなくてエンディングだからこそ、この感覚が味わえたのかなと考えると、エンディングって良いなと思いました。

片桐 ソラも言ってた通り今まではバトルものが多かったので、正直「書けるかな」という不安はあったんです。でもアルバムで素直な気持ちに向き合っていたので、その延長にある曲として、テーマとしてもピッタリだなと思っていました。

──アルバムで「幸せとは何か」ということも突き詰めたからこそ、日常感も描けるといいますか。

片桐 そうですね。だから思ったよりも苦労しなかったんです。2ndアルバム前の自分たちだったら、書けてなかったかもしれません。

Kazu 良い機会を与えてもらえたなと思っていましたね。最初は航が言ってた通り、「俺等でこの作品の主題歌を作れるのかな」と言った不安もありました。でもこれまでとは違った作品だからこそ「今までにない曲をどうレニーとして出そうか」ということを考えて、今までとは違うアプローチに挑戦することができました。この作品に携わらなかったら、こういうテイストの曲は生まれなかったと思います。すごく楽しい制作でしたね。

KANDAI 俺の場合は後輩から勧められて原作を読んでたんですよ。だから「マジ!? やったー!」って感じでしたね(笑)。

──主題歌が発表になった時、後輩の方からはどのような反応が?

KANDAI めちゃくちゃ喜んでましたね。でも過去一くらい、いろいろな人から連絡がくるんですよ。みんな好きなんだなと。

「花束」におけるメンバーそれぞれの挑戦

──先程Kazuさんからもこれまでとは違ったサウンドに挑戦したというお話がありましたが、サウンドには洋楽感も漂っているように感じました。サウンドメイキングはどのように考えられていたんでしょうか。

片桐 日常や素直さをイメージした時に、繊細な表現にしたいなと思ったんです。繊細さって今までの自分たちにとってはちょっと新しくて。どうせなら今までの音作りや構成を一新して、技術的にも新しいことをやっていこうよって話し合いからどんどんと進んでいったような感じです。原曲はもっとバンドサウンドに近かったんですけど、せっかくなら隅々まで新しいことに挑戦してみたいなと。

ソラ それこそおっしゃっていただいた通り、洋楽感は意識していて。2ndアルバムくらいからやっているUKの音を意識していました。メンバーによって違うかもしれないんですけど、僕の中では「花束」はいちばんUK感があるなと思っていて。自分が好きなブリット・ポップな雰囲気が出せたように感じています。開けたかった引き出しをやっと開けることができたという感覚もありましたね。

Kazu 僕にとっていちばん大きな変化はエレキベースじゃないことなんですよ。シンセベースで弾いています。話し合いの中で「軽やかな一定のリズムが続くビートにしよう」というアイデアがあって。じゃあエレキベースじゃなくて、シンセベースのほうが面白いんじゃないかなと。

──無知で恐縮なのですが、鍵盤で弾くとなると意識的には全然違うものになります?

Kazu そうですね。今回は人力でエレクトロを表現するというか。ベース的にはあえて単調なフレーズを続けているので……機械的な繰り返しのフレーズのシンセベースと生ドラムの融合が面白いのかなと思っています。

──ライブではどう表現される予定なのでしょうか。

Kazu それは今悩んでいるところなんですよ(笑)。でもあえて、エレキベースで弾くのも楽しいのかなとも思っていて。模索しているところですね。

片桐 そのままライブで表現しても良いし、セットリストによってはもっとライブアレンジでエモーショナルにしても、バラードにしても良いし。どちらにも転べる曲なので、新しい武器になれば良いかなと思っています。

ドラムテックはつけずに、自ら音を追求

──KANDAIさんには、どのような挑戦があったのでしょうか。

KANDAI 初めてドラムテックを入れずに録っているんですよ。8枚目のシングルにして初めて。自分の機材を自分でチューニングをして、どう音を作っていくかも自分で考えました。でもインディーズの頃はずっとそうやっていたんですよね。環境に甘えてじゃないんですけども(笑)、なんとなく不安もあるし、自然とドラムテックにお任せするようになって。でもプロデューサーと話して、自分でやってみようと。で、やってみたらやってみたで、すごく面白くて。ひとりでスタジオにこもり続けました。正直プレイの内容的には、今までやってきた音に比べると手数も少ないですし、シンプルなんです。でも、どうやったら自分の理想の音になるかを考えながら過ごした制作期間を経て、ものすごく成長できたなと。

──なぜこのタイミングで、自分自身でやってみようと?

KANDAI プロデューサーから「自分でやってみない?」という話をずっとされていたんですよ。手伝うから最初は気楽にやってみてとも言われていたんですが、確かにやってみたら確かにこれはやったほうが良いなと。こういう機材がほしいな、これをチョイスしたいな、とかも思うようになって、ドラムをやってる友だちに、機材を貸してもらったことも。考えることが多い分、大変は大変なんですけど、ドラマーとして成長できたように思います。

──片桐さんにとっての挑戦というのも、改めてうかがってもいいですか。

片桐 全体的な音の感じもとても新しいですし。歌詞の話になるんですけど“コンビニ”“電車”といった日常会話で使うような単語は今まで全然使ってこなくて。でもあえて、そういう言葉をいっぱい使おうと。それが歌詞の面における新しい挑戦かなとも思います。

──後半に向かうにつれて、さまざまな景色を彷彿させる言葉が登場しますね。その中で“さよならが嫌いな僕らでいたいなずっと”と伝えていて。

片桐 旅をしてる感じも出たらいいなと思っていたんです。自由な表現をしたかったので、家でゆっくりしている日常というよりかは、どこかに出かけたり、人といるけど気を使わずに縛られずに過ごすことができていたり、っていう。それで“コンビニ”“電車”“海”といろいろな場所を作りました。それは新しかったかもしれません。

──冒頭の言葉はアルバムを聴いている人からするとニヤリとしてしまうところがあって。

片桐 そうですね。そこはつながっているところがあって。アルバムで自分の性格を出したので、知ってくれている人はこの曲を聴いて「あの人間が作った曲なんだな」と肌感でちゃんと分かるようになっているとは思います。

──さきほど旅という言葉がありましたが、それを表現したかのようなMVも、いつも以上にナチュラルな印象です。

片桐 それも新しいのかなと。海沿いのロケーションだったり、都内のハウススタジオだったりで撮って。1日で完成したんですよ。メンバーが今やりたいことを監督さんが聞いてくれて。メンバーの素直な表情が出ているんじゃないかなと思っています。

次ページ:2023年の今のリアルも含まれたラブソング「チープナイト」

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP