リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2023.12.03

【特集】10年の時を経たからこそ表現できた“春日未来”の姿――TVアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』春日未来役・山崎はるかインタビュー

【特集】10年の時を経たからこそ表現できた“春日未来”の姿――TVアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』春日未来役・山崎はるかインタビュー

日曜の朝10時、テレビをつけると『アイドルマスター ミリオンライブ!』のアニメが流れる――プロデューサー(「アイドルマスター」ファンの呼称)たちが10年間待ち望んだ世界が、いま現実となっている。春日未来・最上静香・伊吹 翼を中心にした39人のアイドルの成長と765プロライブ劇場の始まりを描いた本作は、TVアニメの放送に先立って実施された劇場先行上映でも高い評判を得た。

春日未来を演じている山崎はるかは、「10年経ってアニメ化されて良かった」と語っていたが、キャラクターと過ごしてきた時間のぶん、アニメではありったけの想いを込めて、大事に大事に演じていたことが伝わってくるインタビューだった。関わる人それぞれの熱い想いが集まり、最後の感動に繋がったと確信できるはずだ。

※アニメ最終話までのネタバレを含みますので、ご注意ください。

【特集】アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』夢を追うアイドルたちの“きらめく世界”に迫る

「私たち『ミリオンライブ!』なんで」と胸を張れるライブシーン

――誕生から10年を経て、アニメ化された率直な想いをお聞かせください。

山崎はるか ここまできたら「10年経ってからやって良かったな」と、私はすごく思っています。今の時代、色んなアイドルアニメがあるなかで、それぞれのキャラクターを知る時間が10年もあったアイドルアニメってほかにはないと思うんです。私たちにとっても、自分のキャラクターだけでなく、ほかのキャラクターへの理解も高められる時間があったんですよね。これがオーディションに受かって、数ヵ月後にアフレコをするアニメであったら、みんながここまで「うん、うん、わかってくれてるよ!それそれ!」っていうところまでは到達できなかったと思うんです。もちろん、スタッフの皆さんが作ってくださった映像、音楽、脚本、すべて含めてですけど、演技や歌い方といった細かい部分の表現は、この10年があったからこそできたものなのかなと思っています。

――アニメを観ていても、キャラクターの良さが伝わってくるんですよね。

山崎 信号機(春日未来・最上静香・伊吹 翼のこと)がセリフとしては多いですけど、どのアイドルも、こういうキャラクターなんだなってすぐにわかるような演技をしていて、やっぱりみんなってすごいんだなと思いました。ゲームは1人で収録しているので、会話も相手の声を聞けていないんですけど、アニメで会話を聞いたときに、ライブやラジオで、素のキャストに会う機会が多いのに、演者の顔が出てこないのもすごいと思ったんですよ!だからそれが、みんなが「ミリオンライブ!のアニメすごいじゃん!」と言ってくれている理由なのかなって。

――10年やってきたからこその強みが出ていたんですね。

山崎 あと、「知ってる知ってる!」っていう元ネタがたくさんできたという部分も大きいですよね。漫画やゲーム、リアルライブで起こった出来事やキャストの癖……アイマスって、結構キャストとアイドルが同化してくるところがあるんです。もしこれが、7~8年前にアニメ化されていたら、全然違うストーリーだったんじゃないかなって思うので、『ミリオンライブ!』にとっては、いっぱいネタができた最高のタイミングでアニメ化できたと思うので、ネガティブな感情は一切ないです!

山崎はるか

山崎はるか

――それに元ネタを知らなくても、きっとこの2人はこういう関係性なんだろうなってわかるんですよね。それに39人を一気に動かせるのも、10年のアニメ技術の蓄積があってこそだと思うのですが、実際アニメを観ていかがでしたか?

山崎 第1、2、3幕の劇場先行上映を観るためのムビチケを1枚ずつもらってはいたんですけど、各幕最低3回は観ていて(笑)。第1幕に関しては5回観ているんです。自分のやったお仕事として観たのは1回。それ以外は普通に観たいと思って観たり、友達に薦めたいから誘って行くみたいな感じだったんですけど、それがすごく楽しくて!最初はみんなが動いているのを感慨深く観ていたんですけど、途中から普通に良いアニメじゃん!ってなっていて(笑)。良い話だし、未来ちゃんも本当に良い子なんですよね。それと、初見のような気持ちで観る回とかもやってみて、「新規でも楽しいね!」なんて友達としゃべったりしていました。

――ライブシーンも劇場だと、より迫力がありますしね。

山崎 第3幕は特に「劇場で観て良かった!」って思いました。「アイドルマスター」シリーズって、そのあとに付く言葉が色々あるじゃないですか。その中で、『ミリオンライブ!』という“ライブ”が付くブランドにとって、堂々と「私たち、『ミリオンライブ!』なんで」って言えるくらい、ものすごいライブシーンだったんですよね。ここは自分がほとんど関係していないこともあって、100%褒められる部分だと思いました(笑)。そのくらい、白組の皆さんの技術がすごかった。演出を考えてくれた監督や演出家さんと、モーションキャプチャーのダンサーさんたちが本当に素晴らしかったので、劇場で観られて良かったし、ライブビューイングでライブを観ている気分でした。

――応援上映もありましたよね。

山崎 第1幕と第3幕は応援上映にも行っています(笑)。応援上映って、お客さんがどこで笑っているのか、どこで拍手をするのかわかるところが良いんですよ。この応援上映をキャストに見せてあげたほうがいいんじゃないかと思うくらい、すごく褒められている気持ちになって、嬉しくなりました。

――自己肯定感が高まるのですね(笑)。もちろん、今放送されているTVアニメでも楽しんでほしいですよね。

山崎 劇場で第1幕を観ていて、これってどこで区切られているんだろう、と思うくらい続いていたんですよね。でもテレビで観たときに、ちゃんと良いところで終わっていて、来週また観ようという気持ちになったので、テレビはテレビでいいですよね!予告も良い感じで笑いもあるし。アフレコは1話ずつ収録していたはずなんですけど、もう遠い記憶過ぎて……(笑)。

「私が一番この子を知っている」というそれぞれの自負

――では、OP主題歌「Rat A Tat!!!」の印象を教えてください。

山崎 印象……、そうですね、正直なところ最初は「思ってたんと違う!」って思いました(笑)。それはマイナスの意味ではないんですけど、「READY!!」「CHANGE!!!!」という先輩たちの曲があるので、それの3曲目くらいのイメージでいたんです。私たちは765プロだから、 シンデレラガールズさんとかSideMさんは違うんだろうなと思っていたので。だから虹色がOP映像に出るような曲を想像していたから、「Rat A Tat!!!」ってすっごくエモくない?こういう感じでいくんだ!と思ったんですよね。

――エモ、ですか?

山崎 出だしのピアノの音が印象的なんですけど、765プロのOPって、ど頭がサビ始まりで、最初から銀テが飛んでるみたいなイメージだったんです。でも「Rat A Tat!!!」って、ちょっと静かに始まるから、そこでエモーショナルな雰囲気が出ているなと思ったし、それが意外だったのかもしれないです。

――この曲のレコーディングはいかがでしたか?

山崎 歌う前に、どうやって歌いましょうという相談はさせていただきました。ちょうど10周年系の曲を録ったり、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(以下、ミリシタ)の軸の曲をやっている最中で、アニメの全容を知っている状態ではなかったんですよね。だから未来ちゃんの軸が10年分あって、色んなことを覚えた未来ちゃんを演じてきているので「どの軸の未来ちゃんでいきましょうか」と。それこそ、アニメで未来ちゃんが完走仕切ったところなのか、それとも最初に戻るのかとかを相談させていただいて。

――相当奥が深いですね。

山崎 だから、10周年記念楽曲の「Crossing!」を歌っている未来ちゃんとは違うんですよ。あれは激エモな未来ちゃんで歌っているので。そしてアニメ軸で考えると、第2話のオーディションのときの歌い方でもない。アニメ軸でアイドルになった未来ちゃん、みたいなところは意識して歌ったので、今「ミリシタ」で聴ける最新の曲から考えると、時系列を少し戻した感じなのかなって思います。

――どの時期感で歌うかで、だいぶ変わるのですね。

山崎 アニメの曲は、絶対に大事だなと思ったし、特に新規の方が最初に聴くかもしれない曲だから超大事に歌いました。あとオープニングっていうのも、自分がオタクなだけに大事すぎる!って思ったので(笑)。

――芝居面でも、どのくらいの経験値を持った未来ちゃんでと言われたら、すぐにそこへいけるのですか?

山崎 もちろん、いけます!多分、みんないけると思いますね。そのくらい長くやってきているし、色々なスタッフさんを含めても、アイドルとの付き合いは私たち声優が一番長いんじゃないかな?っていうくらいなので。だから、この現場は、「私が一番この子を知っている」っていう自負が、それぞれにあると思うんですよ。だから、相談をさせていただいたうえで「これでどうですか」っていうものを、みんな自分から提案していたんじゃないかな。

――10年経ったからこそ、という最初の話にも繋がりますね。先程少し話に出ましたが、第2話のオーディションシーンでの「Rat A Tat!!!」は、どう歌ったのですか?かなり絶妙だったと思うのですが。

山崎 あれは歌詞の横にアフレコの映像を置いて歌いました。未来ちゃんはアイドルになりたい夢を見つけたものの、静香ほどアイドルになりたくてしょうがないわけではない。「夢が欲しかったなかで見つけた、1つの夢」というくらいなんですね。だから静香ちゃんとの温度差はありつつ、でも部活の助っ人をやっているくらいなので何に対しても全力でやることを前提に、アイドルとしては超絶未熟な感じで歌いました。だから、何かがあったらすぐにそっちに気が向いてしまう。それに、聴いている人のことはまだ考えられないと思ったので、歌詞に対して気持ちを込めるということはしませんでした。歌は音楽の授業と鼻歌くらいで、オーディションの練習では静香とのダンスレッスンに費やしていたので、歌はあまり練習していないだろうなぁと。

――それであの歌い方だったんですね。静香が歌えなくなるところでも、カバーする感じではなかったですし。

山崎 そのシーンも、相談させてもらったんですよ。「歌わない、という手はないですか」と(笑)。実際、あの場面で未来は歌えないんじゃないかと思ったんですよね。私なら中学生でオーディションを受けて、隣の子があんな風になっていたら「どうしたの?一回止める?」ってなっちゃうと思ったので。でも、ここは止まらずに歌い続けてくださいということだったので、ギリギリのところまで落として、意識は99%静香にいってるくらいの歌い方にしました。で、音を持つ“『希望』”で静香ちゃんが戻ってからは、最初よりも楽しい気持ちが入った歌い方をする、みたいな。

――やはりすごいこだわりがあったのですね。

山崎 でもそれができたのも、これまでがあってこそだなと思います。多分、ころちゃん(田所あずさ)もMachicoも色んなことを考えながらのオーディションシーンだったと思うので、良い意味で、すごくバラバラになったなと思います。

――歌の中で立ち直るという演出でしたし、個々のキラキラも伝わってくるシーンになっていたと思います。

山崎 “きらめけ 世界!”は、この3人が何かを持っていると思ってくれる、プロデューサーが光にやられるシーンでもあったので、そこはこの先の未来を見せちゃうくらいの歌い方をしないとなって思いながら歌っています。だから第5話の「We Have A Dream」は、そこよりも少し成長していて、事務所に入り、ちゃんとしたレッスンを受けて、仲間と歌う意識も持っている未来ちゃんにしているんですよ。エモすぎず、でも歌いたい!歌いたい!っていう、このときの未来の気持ちを意識していました。上手く歌うってことはそんなに考えてはいなくて、それよりも気持ちを届けることを上手にできる子なので、それを意識した感じです。それに「We Have A Dream」は、初めてお客さんの前で歌えて嬉しいという気持ちがあるので、色んな未来ちゃんの感情を込めたつもりです。

次ページ:「REFRAIN REL@TION」「Rat A Tat!!!」のこだわり

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP