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INTERVIEW

2023.11.29

叶が届ける、切なさの滲む青春群像劇――TVアニメ『オーバーテイク』OP主題歌「Tailwind」で描いた世界観や2024年に向けた想いを語る

叶が届ける、切なさの滲む青春群像劇――TVアニメ『オーバーテイク』OP主題歌「Tailwind」で描いた世界観や2024年に向けた想いを語る

にじさんじ所属のバーチャルライバーとして活動を開始したがアーティストデビューを果たしたのは2022年7月のこと。「アーティストデビューをしてからたくさんの楽曲をレコーディングした」と話す叶のイメージが、歌を、音楽を通してどんどん膨らみ、広がり続けていることを感じさせる幅広いサウンドワールドを展開中だ。そんな叶が、自身初となるアニメ主題歌を歌う。モーターレースを舞台にした青春群像劇『オーバーテイク』のOP主題歌である「Tailwind」との出会いから、バラエティ豊かなシングル収録曲の話まで余すことなく語る!

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

想像以上に様々な形で受け止めてくれた前作『How Much I Love You』

――前回は1st single「How Much I Love You」についてたっぷりとお話を伺いましたが、ご自身の恋愛観が詰まったあの1枚をリリースされたあとの反応はいかがでしたか?

 リリースのあとにファンの方と1対1でおしゃべりをするイベントがあったのですが、みんな好きな曲が違っているのが面白かったです。ラブソングとなると、みんな似たようなタイプの曲が好きなのかと思っていたので、意外な結果になったのが良かったな、と思いましたし、たくさん聴いてもらえたんだと思うととても嬉しかったです。

正解はない、すべての愛に対しての“肯定”――にじさんじ・叶、1st single「How Much I Love You」に込めた想いと彼の声が紡ぐ3つの「恋」に迫る

――楽曲を作ってリスナーに渡した側として、様々な形で受け取ってもらえることについてどのような感想がありますか?

 この人はこういう恋愛が好きなんだな、こういう恋愛をしてきたんだろうなっていうのを感じられたんですよね。みんな、好きな曲って違うんだなぁって思いつつ。でも、そうやってそれぞれに感想を持ってもらえるのは嬉しいことですよ。なんだったら「ちょっと歌ってください」って方もいらっしゃいました。そのときに感じたのですが、好きなフレーズを教えてもらうと、“君”という言葉が入っていたり、1人に向けて歌っていたりする歌詞が好まれているなという気づきがあって、それは新たな発見でした。

――MVも非常に素敵な恋愛ドラマになっていたので、気持ちや情景も重ねやすかったかもしれないですね。

 まず「わたしのリンゴ」から始まって、「How Much I Love You」が出て、最後に「minority」、という3曲、MVが順番に出ましたが、それを最後に繋げて見てみるとMVのキャストさんのお芝居からも世界観が伝わりやすくなるように作ってもらえていたんですね。全部が発表されたあとに、視聴者の皆さんも順番に1作目から見直したっておっしゃっていました。それも嬉しかったです。

――MVの制作には叶さんのアイディアなどもあったのでしょうか?

 今回は曲の段階で「この曲はこういうイメージで作りました」とお伝えしていたので、それをモチーフにして作ってくださったようです。とにかくアップされる順番もよくて、僕的にはすごく素敵な形で届けてもらえたことが嬉しかったです。物語としても、「そういうことだったのか!」と最後の「minority」で感じましたし、本当に「上手くやっていただいた」という感想でした。MVってすごいなって思いましたし、自分の曲だとなおさら身近に感じましたね。

初のアニメタイアップは喜びと驚きとプレッシャーと。

――その叶さんの新たなシングル「Tailwind」が完成しました。今回はTVアニメ『オーバーテイク』のOP主題歌です。まずは叶さんの思うアニメのOP主題歌のイメージをお聞かせください。

 僕の思う主題歌は、曲を聴いてアニメの情景が思い浮かぶのか、それともアニメを見て曲が思い浮かぶか、というのは作品によって違いがあるとは思いますが、そういった相互関係にあるもの、というイメージです。

――ご自身の中で思い出深い、または印象深いアニメOP主題歌というと?

 アニメ『鋼の錬金術師』での、ポルノグラフィティさんの「メリッサ」ですね。僕にとってのアニメOP主題歌というと、一生この曲のイメージです。「メリッサ」を聴けば『ハガレン』を思い出すし、『ハガレン』を見れば「メリッサ」を思い出す、そんな1曲です。アニメ主題歌って、曲自体がアニメに寄っているような曲、例えば『ドラゴンボール』の「CHA-LA HEAD-CHA-LA」とか、『ONE PIECE』の「ウィーアー!」とか。それから、関連しているけど別のものとして存在している曲もあると思いますが、「メリッサ」がアニメ主題歌としてだけではなく愛されている曲だとしても、やっぱり僕としてはアニメが浮かんでくる、そんな曲だと思っています。

――アニメ主題歌をやります、と聞いたときのご心境というと?

 ビビりました、びっくりですよ!恐れ多かったですね。もちろんすごく嬉しいんですよ?アニメタイアップのお話自体が初めてのことでしたし。でもやっぱりビビりましたし、プレッシャーもありました。

――楽曲が生まれるきっかけとなった『オーバーテイク』という作品自体にはどのような印象をお持ちですか?

 アニメのタイアップ曲をやります、と聞いたときにはまだ作品の概要しかわからなかったんです。大体どういうお話で、どういう世界観で、どういう子たちがその物語を生きているのか、くらいの情報だったのですが、「どういうことだろう……」と思っていたんです。レーサーの物語とはいえ、バトルするレースなのか、レーサー同士の物語なのか、努力をしたり、壁にぶち当たったりしていくような感じかな、とか、色々と考えていたところで曲が届いたんです。それでイメージがようやく見えた感覚でした。

――そのイメージとは?

 僕の中では「レースに向かって努力をしている人が、小さなところから大きな舞台へと昇っていくサクセスストーリーの幕明けの歌」と思いながら歌わせていただいたのですが、いざOPムービーを見たときに「この表現で良かったんだ」と思えて。「歌い方は正解だった!」と思いましたね。

――OP主題歌を作ります、と決まったときに叶さんからのリクエストはあったのでしょうか。

 「どういう曲ですか?」と聞くことはありましたが、「こうして欲しいです」という提案やリクエストは特にありませんでした。でも、ここまでたくさん楽曲を作ってきていただきましたし、僕がどういう曲が得意で、どんな音楽が好きなのかも知ってくださっている方たちなので、僕も安心感を持ってお任せしました。

次ページ:語り掛けるような歌詞がのる爽やかな楽曲は、叶史上初のサウンド感!

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