REVIEW&COLUMN
2023.12.01
monaより一足早く、アイドルシリーズからデビューした男性アイドルユニット・LIP×LIPも、メンバー2人がアイドルユニットとしての結束を深めていくドラマを、楽曲から感じ取ることができるのが魅力だ。梨園で育ちならがらも歌舞伎の道を諦めたクールな染谷勇次郎(CV&Vo:内山昂輝)と、人当たりも良く明るいが、実際は無愛想で女嫌いな柴崎愛蔵(CV&Vo:島﨑信長)。はじめは不仲で衝突を繰り返しているが、アイドル活動を続けるうちに信頼し合い、仲間として成長していく。その波乱のストーリーは、結成秘話を描いた映画「LIP×LIP FILM×LIVE〜この世界の楽しみ方〜」でも語られた。
アイドルである彼らの楽曲には、「ロメオ」や「ノンファンタジー」のように、聴き手に恋人目線を届ける甘いラブソングが多い。だが、LIP×LIPがファンの心を掴んで離さないのはやはり、2人が困難を乗り越えて紡いできた熱い絆を感じさせてくれる曲たちの存在が大きい。
ラブソングのテイストがありながらも、僕にとって君の存在は必要不可欠だと、LIP×LIP2人の関係性を想起させるフレーズが胸に迫る「必要不可欠」、“お前がいるから俺はやれる”とバディ感を歌う「ロデオ」。リアルアイドルでは描かれることのない“不仲”が、物語として描かれているからこそ、それを乗り越えた2人のドラマにファンは想いを馳せられるのだ。
そして、LIP×LIPの物語に先輩アイドルとして登場する、ストリート系ダンスボーカルユニット・Full Throttle4(CV&Vo:斉藤壮馬・内田雄馬・柿原徹也・増田俊樹)にも、それぞれに複雑な環境や悲しい過去があり、Full Throttle4で初めてかけがえのない仲間を見つけられたというドラマがある。LIP×LIPをフィーチャリングしてライバル同士の共闘を描く「新時代」では、お互いのユニットだけでなく、音楽で高め合う2組の絆も感じられ熱い気持ちになる。Full Throttle4が主人公となった作品はまだ発表されてはいないので、今後の展開にも期待したい。
HoneyWorksアイドルの物語からは、さらなる大ヒット曲も生まれた。それが昨年から今年にかけてTikTokやYouTubeで人気を博した「可愛くてごめん feat. ちゅーたん (CV:早見沙織)」だ。キャッチーなサビのフレーズに合わせて投げキッスをするダンス動画が大流行し、昨年末にはSEVENTEENやNCT、IVEといったK-POPアーティストがダンス動画を投稿し、爆発的なヒットソングとなった。
この、ちゅーたんは、LIP×LIPのマネージャー見習いとなった主人公・涼海ひよりの奮闘を描くTVアニメ『ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜』の登場人物・中村千鶴が、LIP×LIPを推し活するためにバイトに励むメイド喫茶での別名だ。ちゅーたんは、アイドルキャラクターではないが、歌っている曲は見事なアイドルソング。しかも、HoneyWorksアイドルの熱烈なファン目線が彼女の物語にはあり、ちゅーたんの最新曲「すきっちゅーの!」では、ガチ恋“推し活”ファンのリアルな気持ちがより強く描かれている。アイドルからファンへの愛情とともに、ファンからアイドルへの愛情がバックストーリーとして同時に楽しめるからこそ、アイドルの世界を強固にするという二重構造がまた、HoneyWorksアイドルの面白さでもある。
そして「告白実行委員会~アイドルシリーズ~」を生んだHoneyWorksは、2021年より、リアルアイドルグループ・可憐なアイボリーや高嶺のなでしこのサウンドプロデュースも手がけている。どちらもオリジナル楽曲だけでなく、HoneyWorksキャラクターの楽曲カバーを多く披露しているのも、ほかのリアルアイドルグループにはない面白さだ。HoneyWorks楽曲を通じてバーチャルアイドルとリアルアイドルが出会う、新しいアイドル表現を提示している。
バーチャルとリアルを自在に行き来するHoneyWorksが、アイドルを題材に今後どんな展開を見せてくれるのか。ぜひ注目していきたい。
HoneyWorks 公式サイト
https://honeyworks.jp/
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