REPORT
2023.11.22
ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!」発の”現実(リアル)”と”仮想(キャラクター)”が同期するバンド、MyGO!!!!!。2022年4月に本格始動し、今夏に放送されたTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』と共に一層注目を集めている彼女たちが、またも大きな熱狂を届けてくれた。
11月4日、過去最大規模となる東京ガーデンシアターでのワンマンライブ“BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!!「ちいさな一瞬」”。彼女たちにとって初の「バンドリ!」のナンバリングライブへの参加、そしてTVアニメ放送後初の単独公演。色んなタイミングと色んな人々の想いが重なって生まれた“ちいさな一瞬”の奇跡をレポートする。
■BanG Dream! 12th☆LIVE DAY1 : Poppin’Party レポート
■BanG Dream! 12th☆LIVE DAY3 : RAISE A SUILEN レポート
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY ハタサトシ、池上夢貢(GEKKO)
東京ガーデンシアターは最大収容人数8,000人を誇る大型施設。アリーナ席に加えて、バルコニー席が3階分あり、上を見上げなくては見渡せないほど高いところまで客席が並んでいる。その最上フロアにまでファンが詰めかけ、心地良い熱気が会場を満たすなか、照明が暗転してついにライブが開演。ステージ前面に張られた紗幕にオープニング映像が投影され、吹きすさぶ風の音に合わせて、燈(CV:羊宮妃那)の朗読とも呟きとも取れる言葉がつらつらと流れていく。“このパンクロックの中で同じ熱になれるいまがすべて”(「焚音打」)など、彼女たちの楽曲の歌詞のフレーズが織り込まれた、そのメッセージに込められているのは、“迷子”でも前に進むことを選んだ彼女たち、MyGO!!!!!のひたむきな意志。本公演のタイトルにも引用された歌詞の一節“ちいさな一瞬 あつめたい”(「迷路日々」)という言葉で映像が締め括られると、無骨なロックチューン「無路矢」でライブはスタート。ずっしりしたリズムと重々しいギターサウンド、そのなかで凛々しく歌う燈と楽奈(CV:青木陽菜)のホイッスルボイスが、言葉を狼煙のように天高くまで届けていく。引き続きステージ前面に張られた紗幕にはリリックビデオが映し出され、その映像越しにバンドの演奏する姿が見える格好だ。楽しそうにギターを弾く愛音(CV:立石 凛)の笑顔が眩しい。
続く「名無声」も紗幕にリリックビデオを投影しながら進行。テンポアップした演奏に合わせて客席からはクラップが巻き起こり、バンドもメンバー4人のコーラスが合わさって結束感が増加。オーディエンスも一緒に「Oh oh oh♪」と声を上げて、名も無き人々の声が一体となって1つの音楽を作り上げる。燈は歌詞の最後の一節“何者でもない僕で”の箇所で、右手の拳を高く突き上げてみせた。
MCでは、愛音が客席に「東京から来た人は?」と呼びかけ、その返事を受けて「じゃあみんな“ANON TOKYO”ってこと?」と喜んでいると、立希(CV:林 鼓子)から「はあ?何言ってんの?東京は愛音のものじゃないし。皆さんもあんまり甘やかさないでください」と諫める、アニメの小ネタを絡めたやり取りも。「りっきー、厳しいー」と文句をたれる愛音に、燈が「でも、優しいところも、ある…」と立希をフォローし、立希がドギマギしながら「と、燈、いいよ、大丈夫。ありがとう」と返すくだりも、アニメで描かれていた彼女たちのノリそのままだ。配信で観覧している人に向けてコールを呼びかけて、会場から「はーい!」と声が上がると「ほんとに?」と冷静にツッコむ楽奈、「きっと声が直接聞こえたんだよ」と優しく諭すそよ(CV:小日向美香)。そういった些細な会話のラリーもまた、MyGO!!!!!というバンドの”現実(リアル)”と”仮想(キャラクター)”の同期をさらに強めていく。
そんな5人の会話をもうしばらく見ていたい気持ちもあったが、楽奈の「早くライブしたい」という発言を受けてライブは再開。ここで彼女たちのライブでは定番となっているカバー曲が連続で披露される。まずは「Henceforth」(Orangestar)。2022年6月に燈の「歌ってみた」動画が公開されたのち、今年4月に開催された“4th LIVE”でライブ初披露されたナンバーだ。燈の澄んだハイトーンボイスが夏空のようにどこまでも高く昇っていく。そこから立希のドラムが4つ打ちのリズムを刻み始め、バンドが“1st LIVE”の頃からレパートリーにしている「猛独が襲う」(一二三)へ。サイドステップを踏みながら軽やかにギターを弾く楽奈、キメのフレーズで見つめ合いながら息を合わせて演奏するそよと立希。バンドのたくましい演奏を飛び越えて心に刺さってくる燈の歌声。客席からも「オイ!オイ!」と野太い声が上がる。
そして愛音が「じゃあ次はこの曲を聴いてください!オンベース、そよ!」と告げると、そよがベースソロを披露。他メンバーがクラップを煽るなか、太くグルーヴィーなソロでオーディエンスを惹きつける。その演奏が徐々に聞き覚えのあるフレーズを形作っていき、お馴染みのギターリフが加わって、MyGO!!!!!屈指のライブ曲「影色舞」に突入。ステップを踏んだり、クルリと回ったり、動きを合わせながらパフォーマンスする燈、愛音、楽奈。特に両手をピョコンと広げながら回る燈の姿は、アニメを観たうえだとペンギンのポーズのようにも見えてかわいらしい。ファンもペンライトを左右に振って体を揺らせながら盛り上がる。
さらに、“1st LIVE”の頃からワンマンでは欠かさず演奏しているライブの鉄板曲「swim」(04 Limited Sazabys)。青春パンク~メロコア直系のアグレッシブな音楽性の原点にもあたるナンバーと言えるだろう。楽奈がギターソロを弾く場面で燈が彼女と背中合わせになって音と心を通わせ合い、離れ際にお互いの拳を突き合わせて、燈がDメロを歌い始める、本楽曲ではお馴染みとなっているルーティンもまた、青春を感じさせて何度観ても胸が熱くなる。その「swim」から間髪入れず「音一会」に繋げる流れは、本公演における最初のピークポイント。2ビートのリズムが叩き出す熱狂、パンクロックの熱の中に、その場にいるすべての人間が飲み込まれていく。ラスサビ前、「このちいさな一瞬も忘れずに、僕たちは、叫び続けるんだ!」と必死に言葉を届ける燈のカリスマティックな存在感、それと呼応するようにますます熱を帯びていく演奏、会場が一丸となって歌う「Wow wow」という声。一瞬一瞬の奇跡を具現化したようなかけがえのないひと時が、そこには確かにあった。
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