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REPORT

2023.11.24

Myukの歌声が指し示す景色、彼女の人生が育んだ音楽を感じるひと時に――ワンマンライブ“Knockin’ On Night Door Vol.5”1st stage レポート

Myukの歌声が指し示す景色、彼女の人生が育んだ音楽を感じるひと時に――ワンマンライブ“Knockin’ On Night Door Vol.5”1st stage レポート

アニメーション映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」の主題歌「Gift」が注目を集めるソロアーティスト・Myuk。11月5日に下北沢ADRIFTにて2公演開催された彼女の自主企画イベント“Knockin’ On Night Door Vol.5”は、楽曲の主人公や彼女のシンガーとしての心情をじっくりと味わえる時間であり、彼女がやわらかさと優しさの中に、様々な感情を込めることができるシンガーであることを再確認するライブだった。このレポートでは、その第1部の模様を書き残す。

TEXT BY 沖さやこ
PHOTOGRAPHY BY 松原裕之

瑞々しいボーカルで多彩に染め上げる、色とりどりのラブソング

夜空を彷彿とさせる穏やかなストリングスのSEが流れると、サポートメンバーの大久保友裕(Gt)、西野恵未(Key)、andropの前田恭介(Ba)、the peggiesの大貫みく(Dr)に続き、ブルーグリーンとブラックのドレスに身を包んだMyukが登場。「フェイクファーワルツ」でこの日の幕を開けた。アコースティックギターを抱えたギターボーカルスタイルの彼女は、可憐さと毒気を併せ持ったボーカルと、ワルツのリズムで展開するサウンドスケープが、エモーショナルかつ艶やかに会場一帯を包み込んだ。

「弱気になってしまうとき、すべてを捨ててしまいたくなる。たぶんきっと、そんなあなたを待っている世界がある」

ギターを置きハンドマイクスタイルになったMyukは、西野のピアノに乗せて台詞を呟くと、「シオン」を歌い出す。その声は、深い愛情に満ちた歌詞に祈りを込めるようだ。「星に願いを」ではピアノとボーカルのみだったところに徐々にアコースティックギター、リズム隊が加わり、音のレイヤーをドラマチックに重ねる。そのサウンドデザインは夜空を彷彿とさせ、張り裂けそうな気持ちをメロディに乗せるMyukの声からは、冬の空を白く染める光景が思い浮かんだ。

挨拶を済ませたあとは「冬にぴったりのこの曲を」と告げ、心地良いリズムのイントロに乗せて「Snow」へ。シティポップテイストのサウンドに、幸せを味わうような甘い歌声を響かせる。がらりと声色を変えるわけではないのに、曲によって異なる輝きを宿らせることができるのは、彼女のボーカルの特徴の1つであろう。再びアコースティックギターを構えて披露した「あふれる」は、主人公が抱える片思いならではの恋心が自分の心に乗り移るような感覚になるほどだった。

「自分を好きになれない。誰かみたいに上手に生きられない。あの日君を見ていたのは、それを全部壊してくれたから」

再びハンドマイクスタイルになり台詞を真っ直ぐに口にすると、歌い出したのは「アイセタ」。大きな愛情が綴られた同曲と、Myukの真摯で伸びやかな高音が、会場を陽だまりのように包み込んだ。

Myukのライブにドラマーが参加するのは今回が初めてのこと。つまり、彼女にとって初めてのフルバンドセットのライブである。「まさか自分が歌っている後ろでみくちゃんがドラムを叩いてくれる日が来るなんて、高校生の頃はまったく想像していなかった」と語る彼女は、ドラマーの大貫について「みくちゃんは能力者だと思っていて。みくちゃんの周りにはハッピーなオーラがふわふわと浮かんでいて、その場にいるみんながいつの間にかハッピーになっているんです」と大貫の参加に喜びの表情を見せた。

次ページ:Myukの人生が育んだ音楽とリスナーへの愛情

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