2022年10月にスタートしたTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』は、爆発的なヒットを記録。作中で登場するバンド「結束バンド」による音楽も大ヒットした。そして2023年5月21日には、結束バンドのキャスト陣が生バンドの演奏をバックに歌うライブイベント「結束バンドLIVE-恒星-」が Zepp Haneda (TOKYO)にて開催。多くのファンを熱狂させた。その模様を収めたBlu-ray/DVDが11月22日に発売される。
さらにBlu-ray/DVDの発売に先駆けて、2023年11月17日(金)~11月30日(木)の2週間、期間限定で劇場上映されることも決定した。そこで結束バンドのキャスト、後藤ひとり役の青山吉能と喜多郁代役の長谷川育美に、あの熱かったライブを振り返ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一
――率直に、ライブを終えたときはどんな気持ちでしたか?
長谷川育美 もうはるか昔の感じがするし、「夢だったんじゃないの?本当にやったっけ?」みたいな感じもあるんです。
青山吉能 ファンの皆さんが拳だけを突き上げるライブというのがすごく珍しくて(※同ライブではペンライトの使用は控えるようアナウンスされた)。キラキラなサイリウムがあるライブばかりを経験してきたので、バンドのライブに来た!という感じがして、すごく新鮮でした。
長谷川 事前にペンライト禁止と伝えていたわけではなかったので、きっと何本かはあるだろうと思っていたのですが、本当に1本もなかったので、ちょっと感動しました。「手ばっかりだーっ!」みたいな(笑)。ライブのMCでも「手がすごい!」みたいなことは言っていた気がしますけど、今までの声優活動では見たことのない景色でした。あと、お客さんが潰されそうなくらいパンパンに入っていて……。
青山 でも、総じてみんな楽しそうで、逆に羨ましかったです。
長谷川 アニメ好きな方が多かったと思うので、お客さんにとっても、新鮮なライブだったんじゃないかなって思います。
――そのライブがBlu-rayになるだけでなく、期間限定で劇場公開もされるんですよね。
青山 もう最高ですよね!大きなスクリーンで観られる機会なんてないですから。自分たちの顔を大画面で観られることへの不安は置いておいて(笑)。私たちは結束バンドのライブをお客さんとして受け取ったことがなかったので、それを皆さんと同じように受け取れる機会ができて素直に嬉しいです。
長谷川 私も大きいスクリーンに自分自身が映ることに、戸惑いと「大丈夫かな?」っていう気持ちはありますけど、劇場だと家のテレビで観るのとはまた違った音響だし、きっと『ぼっち・ざ・ろっく!』の音楽チームは、それ用のサウンドを用意されると思うので、そういう面でも、劇場ならではの楽しみ方ができるんじゃないかなってワクワクしています!
――セットリスト的には、どんなところに注目してほしいですか?
長谷川 1曲目に何を歌うかは、みんな想像して来ていたと思うんです。そこでイントロがない「ひとりぼっち東京」から始まるというのは、きっと最初の衝撃としてインパクトはあったんじゃないかなと思います。
――長谷川さんの声から始まりましたからね。実際に歌ってみていかがでしたか?
長谷川 ここが私の第一声目だったんですけど、歌い出したら「あ、いける!」って思いました。
青山 かっけー!実際、キマッてたしね。オープニングでバンドの方々がちょっと早めに出て盛り上げる演奏をしたあとで、ステージに向かっていく育美の背中を見て、最初は「頑張れ!頑張れ!」って祈っていたんですけど、あまりにもかっこよすぎて、私たちはみんな目がハート!ガチ恋してました(笑)。
長谷川 最初、ステージ袖で3人(青山、鈴代紗弓、水野 朔)が送り出してくれたんです。
青山 動画も撮っていて、3人の「キャー!」って声が入っている動画があるくらい、超かっこよすぎて、シビれました。
――そんな青山さんはアンコールからの登場だったじゃないですか。
青山 そうなんですよ!待ちが長すぎ!(笑)。育美とか、朔や紗弓が自分の曲を終えて、すっごい清々しい顔をして帰ってくるんですよ。そこで「お疲れ!」とかやっているんですけど、こっちは気が気じゃないっていう。
長谷川 逆に追い詰められていく感じだよね(笑)。
青山 そう!でも、あまりに清々しい顔で帰ってくるので、よほど楽しいんだなと思って、ワクワクする部分もありましたし、それこそ育美が「ひとりぼっち東京」を歌い出した瞬間のお客さんのボルテージの上がり方とか、予期していなかったクラップとか、本番までわからなかったお客さんの反応を袖で感じることができたので、そこで勇気をもらいながら待つことができて。自分にとって良い時間だったなと思います。
――ちなみに、ステージ裏はどんな感じだったのですか?
長谷川 控室は私たち2人が一緒だったんですけど、よっぴー(青山)はずっとギターを持っていて。
青山 持ちながら雑談していました(笑)。もう体の一部というくらい馴染ませておきたくて。ピックを落としたらどうしようとか、起こりうるアクシデントを考えるんですけど、ギター経験がなさすぎて、それすらわからないんです。だからとりあえず馴染ませとこう!と思って。私以外のメンバーだと、朔は全然楽屋にいなくて、袖で一生ステージに釘付けになってたり、紗弓はそわそわ、行ったり来たりしていて……。
長谷川 逆に私はずっとステージに出ているから裏のエピソードを何も知らないんです。だからライブが終わったあとにやっとスマホを触れて、「X(旧Twitterの)トレンドにめっちゃ上がってるよ!」って興奮して言ったら、「ずっと前から入ってるよ」って言われて。「温度差っ!」みたいな(笑)。
青山 私たちは裏でずっとスマホを見て、ハッシュタグを追ったりしていたから。
――配信で観ている人が、ものすごく多かったですからね。
青山 有料チケットなのに、アニメのリアルタイム実況みたいに盛り上がっていて、「全世界、みんな観てるの?」と思うくらいすごくて。終わったあとにコメントをすべて見返せないくらいたくさんの反応をいただきました。
長谷川 わかる!私も追いきるのは諦めるしかないって思ったから。
――それぞれのパフォーマンスはいかがでしたか?
青山 育美は、いい意味で化け物だと思いました!歌が上手い人はたくさんいますけど、歌心があるんですよね。上手いだけでは収まらない何かが1曲1曲、すべてに詰まっていて、かつ、ちゃんと喜多(郁代)ちゃんとしての歌でもあるんです。喜多ちゃんであり育美である、みたいなハイブリッドなライブが見られたし、「ここで手を伸ばしてくれたらいいな」って思うところも、全部やってくれる!
長谷川 あははは(笑)。そうだった?
青山 アニメで喜多ちゃんがやっていたことを全部拾ってくれるのが嬉しくて。同業者として見ても、「私にあれを求められてもできませんよ!」っていうのは本当に言いたい……あの、私のコメント、全然止まらないんですけど、大丈夫ですか?
長谷川 本当にずっと褒めてくれるんです(笑)。
青山 だってこれが「20年くらいアーティスト活動をやってます!」っていうのであればわかりますけど、育美は1人で長時間ライブをするのが初めてだったので、「おいおい、マジかよ!」と……。そのくらい喉の耐久力やパフォーマンスもすごかったし、向上心もすごく感じて。4月に作品のイベント(「ぼっち・ざ・ろっく!です。」)があって、そこでミニライブもしたんですけど、育美がその出来に対して「悔しい」と言っていたことも知っていたんですね。私としては「何が悔しいんだろう、100点満点なのだが?」って感じだったんですけど、5月では150点満点を出してくれて、この人はどこまでもストイックなんだなって感じたし、しかも頑張ってますよ感を出さないところも尊敬できるし、本当にすごいんです!
――悔いというのは、ライブのMCでもおっしゃられていましたけど、声のペース配分などでしょうか。生バンドも初めてだろうし、思った以上に声が出てしまったところもあったのかなと思ったのですが。
長谷川 いや、生バンドで歌うことに関しては、やりにくさとかは一切なかったんです。それよりもお客さんの熱量に圧倒されてしまったんです。しかも4月のイベントは会場(ヒューリックホール東京)がZeppより小さめだったので、酸素の量もリハと全然違っていて。お客さんの声の大きさもすごくて、自分も想定以上に声を出してしまったから、酸素が足りなくなってしまった。今まで1人で歌ったことがないからこそ、そういう状況になることがわからなかったんです。そこに上手く対応できずに、圧倒されたまま終わっちゃったなぁと思って。そこから、これはヤバい!と。その日は2曲だったんですけど、2曲でこれだったら、13曲なんて歌えないじゃん!と思って。
青山 そうだよなぁ。
長谷川 そこからものすごい危機感に襲われて、まずは体力をつけることから始めて、ペース配分のこととかも考えて、1カ月でやれることはとにかく全部やろうと思いました。
青山 ジムに行ったりもしていたよね。
長谷川 ジムに行くか、カラオケにこもるか。とにかくこの1カ月は頑張る!って思って、頑張っていました。
――経験は大事ですからね。
長谷川 そうですね。4月はライブのことがまだ全然わからなかったので。それに、お客さんに圧倒されたので、次のライブは絶対に負けない!と。盛り上げるのはこっち側の役目なので、「主導権は私です!」くらいの気持ちで臨みました。メンタルも絶対に大事だと思ったので。
――それがあって、あの最高のライブになったのですね。では次に、青山さんのパフォーマンスはどうでしたか?
長谷川 さっきすごく褒めてくれましたけど、この人だって十分バケモノじゃないですか?アンコールに出てくるなんて、相当心にきますよ。しかもギターを弾きながら「転がる岩、君に朝が降る」を歌うなんて誰も知らない中で、ギターを抱えてステージに出て行ったら、そりゃあお客さんも「うわーっ!」ってなりますよ。その声援を受けたうえで歌い始めるなんて……私だったらまともに弦が押さえられないと思います。「1回トーク挟ませてもらっていいですか?」ってなる(笑)。そのくらい、会場の空気感がわかっているかどうかって大事で。リハでステージに立っても、お客さんがいない状態なので全然景色が違うから、何が目の前に待っているのかわからない状態で、まだ始めたばかりのギターを持って、しかもギターソロまで弾くなんて、すごい度胸ですよ!本当にすごいと思う!
青山 できて良かった〜(笑)。
長谷川 みんなで楽器をやっていたとしたら、同じ仲間がいるし、分かち合える感情もあるじゃないですか。でも私たち(他の結束バンドのキャスト)はやっていないわけですし、一緒にご飯に行くときも、よっぴーだけギターを背負って来たりするんです。だから、頑張っていることはわかっていたし、よっぴーも自分からは大変とか言わないんですよ。そうやって練習をして、本番であのパフォーマンスを見せられるって、やっぱりすごいと思うんです。「人間って、そんなに短期間で、Zeppでギターを持って歌えるようになるの?」って思いました。
――感動的なステージでしたよね。
長谷川 歌も表情も良かった!きっと本人的には悔しいところもあったと思うんです。練習のほうが上手くいっていたこともあると思うし。
青山 音源だけでも差し替えてくれ〜って思う。
長谷川 でも、その上手くいかなかった部分も含めて、全部良かったです!表情にも感情が表れていました。
青山 普段は表情と歌と振りを考えていれば済むところに、ギターのことが加わると、表情のことなんて考えられないくらい必死になるんですよね。だから後で配信を観て、「顔、やばっ!」ってなりました(笑)。
長谷川 全然そんなことなかった!いい表情がにじみ出ているのを見て、「勝てないな」って思ったから。
青山 ありがとう!私も表情ってもっと素の感情が出ても良かったりするんだなぁって思いました。
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