INTERVIEW
2023.11.22
デビュー20周年を迎えたFLOWがカバーアルバム『FLOW THE COVER ~NARUTO縛り~』の次に放つのは、TVアニメ『帰還者の魔法は特別です』OPテーマ「GET BACK」。主人公・デジール・アルマンが繰り広げる物語を高速バンドサウンドに乗せてドラマチックに再現した。20周年の歩みを振り返りながら、KOHSHI(vo)、KEIGO(vo)、TAKE(g)、GOT’S(b)、IWASAKI(ds)の対話から、本作に込めた思いを探った。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
──まずは7月1日、幕張メッセで開催された“FLOW 20th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE 2023 ~ アニメ縛りフェスティバル ~”の感想から聞かせてください。
TAKE 20年の間に培ってきたアニメとの関係性、ライブの在り方、自分たちにしかできない表現が集約されたお祭りになりましたね。20年目にして過去最多動員。本当に嬉しい限りです。FLOWに関わってもらっている皆さんと一緒に楽しんだ1日でした。
KEIGO 関係性のある皆さんに力を貸してもらえたのが本当に嬉しくて。無茶なお願いをしているのはわかってるんです(笑)。でも快く協力してくれて、それが一番嬉しかったですね。
KOHSHI デビュー当時からは考えられないというか。いろいろな人たちのおかげであんなに大きなフェスができて、しかも「20周年おめでとう!」とみんなに言われて。本当に、20年やってきて良かったなと思える1日でしたね。
IWASAKI あんな壮大な景色、なかなか見られないですよね。自分たちの広げた風呂敷の中に、1万人規模の人たちが来てくれるなんて、人生の中でもなかなかあることじゃない。だからすごく焼き付いていますね。
──IWASAKIさんは2019年の日本武道館での単独公演“FLOW LIVE BEST 2019 in 日本武道館 ~神祭り~”の時も景色が焼き付いている、というお話をされていましたよね。
IWASAKI そうそう。忘れられない景色が更新されてますね。震えるものがありました。
TAKE 冥土の土産ですね(笑)。
──GOT’Sさんはいかがでしたか。
GOT’S 前回(“FLOW 超会議 2020 ~アニメ縛りリターンズ~”)ではなかったコラボもあって。前回を超えるには、ってことでコラボをしたり、いろいろな方を呼んだり、ってことをして。長い時間をかけて準備ができて、本番1日でどんっと出し切って。体力的なところはしんどかったけど、楽しかったですね。
TAKE クリエイターズトーク(有識者編)では、リスアニ!の馬嶋(亮)編集長にも出ていただいて、ありがたかったですね。“カラオケFLOW”の審査員もやっていただきましたから。海外でアニメフェスに出させてもらうなかで、カラオケ大会やコスプレショーを見てきたものを自分たちの中で形にしました。
──先ほどGOT’Sさんのお話にもありましたがコラボレーションもすごかったですね。
TAKE FLOW×GRANRODEOに始まり、ORANGE RANGE、あやねる(佐倉綾音)、影山ヒロノブさんと、本当にいろいろな人たちとコラボレーションもさせてもらって。影山さんに関しては、レジェンドをお招きできて、本当に幸せでしたね。やりたいことが全て叶った1日でしたね。
──20周年を迎えられたことについてはどう思われていますか?
TAKE びっくり!
KEIGO 急に一言(笑)。
GOT’S 世間も色々と変わりましたよね。アナログからデジタルの世界になり。バンドを始めた頃は、紙のフライヤーを作って配ってましたからね。
TAKE 福岡の天神に配りに行ったよね。
KOHSHI めちゃくちゃ断られてね(笑)。当時はデビュー前だから、FLOWのことは誰も知らないし、当然と言えば当然なんですけども。
──当時は紙のフライヤーを街やライブハウスで配るのも文化のひとつでした。音楽の変遷を振り返ったときに、バンドとしてはどのように変わってきたと思いますか。
GOT’S バンドの環境も、目指す方向性もどんどん変わっていったように思いますね。気づいたらアニメの主題歌が出来ていたり、海外に行くことができたり。狙って活動したわけではなかったですけど、結果的にすごく良かったなと。結果オーライの20年になったなと思います。
──インディーズ時代には「贈る言葉」(2003)のリメイクのヒットがありました。そして20周年を迎えた今年には「贈る言葉(20周年アニバーサリーバージョン)」のMVには、海援隊のボーカリストである武田鉄矢さんが出演されています。
TAKE スタッフさんに提案していただいたんです。「それが実現したら面白いよね」って。「贈る言葉」はFLOWの歴史の中で出発点。しかし当時は、自分たちのオリジナルじゃない曲で知ってもらったという十字架を背負ってもいました。そういう意味では、20年経った今だからこそできるコラボだったのかなと思いますね。それだけ月日が経ったのだろうなと。
──月日を経て、今はMADKIDという後輩もできましたね。インタビューでお話をうかがうなかで、FLOWから受けた影響は大きいんだろうなと。
TAKE 嬉しいですよね。バンドを続けていくなかで、次世代の子たちがそう言ってくれて、活躍してくれて。しかも一緒にステージに立てるというのは幸せなことですよ。
──夏には『FLOW THE COVER ~NARUTO縛り~』のリリースもありました。『NARUTO』に対しての思いも教えてください。
KEIGO 僕らが初めて出会ったアニメ作品で。あの出会いがあったからこそ、いろいろなアニメに出会うことができました。海外でライブができているのも、『NARUTO -ナルト-』のおかげです。「GO!!!」をはじめ、テーマソングだけでも5曲、関連する曲を含めると全部で9曲担当させてもらっていて、ずっと一緒に歩んでいる感覚がありますね。自分たちは「戦友」と呼んでいるのですが、バンドとしての世界を広げてくれた大事な作品です。テレビアニメ『NARUTO -ナルト-』と自分たちは20周年で同期。僕らから『NARUTO -ナルト-』への感謝の気持ちを表現したいなということで、名曲をカバーさせてもらいました。
──新しい「GO!!!」の最新バージョンが収録されていますね。
KEIGO 「GO!!!」は間違いなく、FLOWのライブで一番演奏してきた曲なんです。月日を経て進化してきた「GO!!!」をお届けしました。
──「GET BACK」の制作はどのように?
TAKE TVアニメ『帰還者の魔法は特別です』のOPテーマということで、まず制作の方と打ち合わせさせていただき、アニメの世界観を理解し、原作を読んだ上で制作に入りました。今回は韓国のコミックスとのことで、縦読みかつフルカラーで作られていて、とても色鮮やかな印象を持ちました。そこからインスパイアするものというのもたくさんあって。特に魔法陣が印象的で、その感じを音に落とし込めないかなというところで、ギターリフを作っていきました。FLOW史上、シングルでは最速BPMの200です。IWAちゃんは手がもげるんじゃないかなってくらい、速いドラムを叩いてくれました。
──そこを目指した理由というのは?
TAKE まさにさっきお話していた音楽の変遷が関係しています。生の人間がやってきたバンドの在り方から、ボカロが誕生して、人智を超えた音楽が出てきたというのが面白い変化としてあって。今回は転生モノの作品ということで、新しいジャンルに合うんじゃないかなって思っていました。
──今回の曲を皆さんに渡したときはどんな反応だったんです?
GOT’S 「最高だぜ!」と。
KEIGO 一言で(笑)。
GOT’S ばしっと言わないと! テンポも良い感じでしたね。以上です!(笑)
KEIGO 飛び出したのに(笑)。新しい作品と出会うと、今までFLOWでやってこなかったような音楽が生まれるんだなと改めて思いましたね。疾走感にプラスアルファある曲で、ライブで映えそうだなという印象がありました。アニメ縛りをやっていると、アニメに寄り添った曲ではあるけれど、自分たちがライブでやってきた曲だからこそ「ライブ曲だな」と実感するんです。確実に「GET BACK」もそういう曲になるんだろうなと。
IWASAKI 想定内ではありました。さっきTAKEも言ってたけど、人智を超えたボカロのような音楽が出てきたり、アイドルの後ろにメタル系のバンドが入っていたりっていうのが、若者の間では普通に聴かれていて。スピード感のあるものに関しては、世の中的にポピュラーになっていて。だからスピード感に関しては想定内だったものの、想像以上に起承転結がハッキリとした曲だったので、アプローチはそれぞれ考えましたね。速いパッセージで大変なこともありましたけど、自分の中で身体の使い方を変えてクリアしていきました。これがまた新しい一歩になれば良いなと思っていたので、レコーディングは楽しかったですけどね。
──KOHSHIさんはこの曲を受けて、どのような思いを込めて作詞をされたんでしょうか。
KOHSHI 打ち合わせをした時にテーマをいろいろと聞いて、原作を読んで。転生モノはテーマがはっきりしているんですよね。取り戻したい自分の未来があって、しかも『帰還者の魔法は特別です』がとても面白い世界だったので、打ち合わせでお話を聞いているときから脳みそがぐるぐると回っていました。
──レコーディングで新しい発見もあったのでしょうか。
TAKE 実はもう1年前になるんです。『Voy』と平行して作ってたんですよ。
KEIGO むしろ英語バージョンのほうがフレッシュなんですよ。半年前くらいです。
KOHSHI 苦戦しましたね、発音とか(苦笑)。『Voy』のツアー中、楽屋でずっと練習していました。
KEIGO そうそう、英語で吹き込んでもらったものをずっと聴いてて。ボーカルブースに監修の方に入ってもらうというのは初めての経験でした。「今の良かったよ!」とか言ってもらえるっていう(笑)。
──それは新鮮ですね。
KOHSHI 自分が書いた歌詞を英語にしてもらったのも新鮮でした。しかも巧みに音に合わせてくる。きっと意識して翻訳してくれたんだなと、歌いながら感じていましたね。
TAKE そもそもなんでEnglishバージョンを作ったかと言うと『帰還者の魔法は特別です』は韓国でも放送されるということで、英語バージョンも欲しいということだったんです。今はインターネットで世界に発信できる時代ですから。YOASOBIさんが全てEnglishバージョンを作っているようにね。
──それこそMADKIDも作っていますよね。Englishバージョンを作ることが主流になりつつあるっていう。
TAKE そうですね。それだけアニソンって世界共通のものなんですよね。
──「GET BACK」というストレートなタイトルはどのようにして?
KOHSHI 打ち合わせで一番印象的だったんですよね。取り戻すという、物語の軸となるテーマをタイトルにしつつ。偶然にも、僕らもずっと取り戻したかった普段の生活になりつつあるタイミングで。
──“奪われたSmile”という言葉は、コロナ禍の自分たちのことも思い出しました。
KOHSHI 自分たちの生活と物語がリンクするところもあったんですよね。今だからこそ意味のあるタイトルになったなと思っています。そうじゃなければ、幕張でのアニメ縛りもできていなかったかもしれませんから。そういう意味で、取り戻せてきたのかなと。「GET BACK」と、ライブでみんなで歌えるというのも良いですよね。
──そういう意味では「LOST」のタイトルにも、色々考えさせられるところがありますね。もちろんこれは、『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』メインストーリー第2部主題歌に寄り添った言葉ではあるのですが。
KOHSHI 確かに。言われて気づきましたけど、「GET BACK」で取り戻して、「LOST」は失うだから、コロナ禍を言い当ててるようなシングルですね。作っているときはコロナ禍まっただ中でしたからね。少なからず影響はあったとは思います。とは言え、『ロストストーリーズ』の主人公の復讐をテーマにして歌詞は書きました。その復讐の末に何が手に入るんだろう……という。
TAKE アニメで言うところのR2(『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ R2』)の後半のところにお話が入ってくるということだったので、それに対して曲は書き下ろしています。
──『コードギアス』ともお付き合いが長くなってきましたよね。
TAKE ありがたいことに6曲目になります。もう「COLORS」(ドギアス 反逆のルルーシュ』前期オープニングテーマ、PS2・PSP用ゲームソフト『コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS』主題歌)が16年前になるんですよね。当時の深夜アニメは今のような市民権がなくて。その中でカルト的な人気を誇り、こんなにも長く携われる作品になるとは思っていなかったので、本当に出会いに感謝ですね。
──「LOST」の制作について、具体的に教えていただいてもいいですか?
TAKE R2で物語が激化していく中で……当時同じタイミングで「WORLD END」(2009)を書かせてもらいましたが、谷口 悟朗監督から「物語が悲惨になっていくから、オープニングだけは明るくして欲しい。希望を持たせて欲しい」といったお話があったんですね。物語については僕らもよく知っているので、そこに寄り添うような楽曲を提示させてもらいました。
──ストリングスも印象的で、その壮大さが『コードギアス』の世界にマッチしているなと感じていました。
TAKE 自分の中で『コードギアス』の縛りじゃないんですけども「WORLD END」「PENDULUM」「DICE」「デイドリーム ビリーヴァー」、そして今回の「LOST」と、全部ストリングス有りのサウンドにしています。作品の優麗な世界観やブリタニアの在り方にマッチするんじゃないかなと思って。
GOT’S ベースでは一音を長く使うようなプレイが多くて、FLOWにしては珍しいタイプの楽曲だなという印象があります。それでいて、ライブでヘヴィな空気を出せる曲でもあるなと。
IWASAKI ごっちゃんも言っていた通り、長い音符感を出すというのも、ひとつの命題でした。ミディアムだからと言って力的にセーブしているかと言われたらそうではなくて、わりとガッツリ、力強く気持ちを乗っけて演奏しています。今ライブでもそういう感じでできています。速い曲とはまた違う気持ちの乗せ方ができる曲だなと思っています。FLOWの良い一面が出せたんじゃないかなと。
KEIGO 『コードギアス』にマッチしてるなと思いますね。曲調は壮大だけど、心情が生々しく描かれていて。『コードギアス』も世界を変えてやろうというルルーシュがいたり、戦争だったりの中で、それぞれの心情が描かれていることが印象的な作品です。これだけ付き合ってきたからこその、『コードギアス』に対する表現ができたのかなと思っています。
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