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INTERVIEW

2023.11.08

第3期fripSide、成長の1年を経て放たれるニューアルバム『infinite Resonance 2』をsat、Hisayo、Maoが語る

第3期fripSide、成長の1年を経て放たれるニューアルバム『infinite Resonance 2』をsat、Hisayo、Maoが語る

阿部寿世、上杉真央という2人のボーカリストを迎え、fripSideがPhase 3として新たな旅を始めて1年以上が経過した。今夏のライブハウスツアーを経て、満を持してリリースされるニューアルバム『infinite Resonance 2』は、そんなボーカリストの成長とfripSideとしての進化と深化がより感じられる、3人のエレメントが共鳴する傑作となった。そこで今回は、この夏のボーカリストの成長、そしてそれがアルバムにどう影響したのかを含めて、『infinite Resonance 2』の共鳴する音楽について、八木沼、阿部、上杉の3人に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

自分はこのツアーで頑張って独り立ちできた(Mao)

――ニューアルバム『infinite Resonance 2』のお話の前に、まずはこの夏に行われたツアーについてお伺いします。今回は初めてsatさんが不在のなかでのステージとなりましたが、ボーカリストのお2人にとってはどんなツアーでしたか?

上杉真央(以下、Mao) 昨年の夏のツアーは何かあったらsatさんに頼ることができるみたいな気持ちがあったと思います。というか何かあったら頼らなきゃいけないくらい自分があたふたしたツアーだったんですけど、今年の夏はsatさんが私たち2人の成長のためにステージを託してくれて、ボーカルの2人で前に立ってリードしていかなきゃいけないという試練を与えてくれました。去年は自分のナヨナヨを知ったツアーでもありましたし、実際遠慮していたところもあったんです。でも、今年の夏はそうするわけにもいかないので、なるべく積極的に、ちゃんと前に出よう前に出ようと臨んだツアーでしたね。

――自分たちが引っ張っていくんだという自覚が生まれた?

Mao そうですね。人前でしゃべるのすら本当に苦手だった状態から始めたのが、最後のほうではちゃんと自分1人で、ファンのみんなに対して話すことができたなと思います。それだけでも自分はこのツアーで頑張って独り立ちできた気がします。

八木沼悟志(以下、sat) このツアーでMaoは本当に変わったよ。この1年で自信がついた。プロデューサーからすると、彼女は実力はあるし、踊りも始めたばかりだけどどんどん吸収してきている。でもMCやアーティストとしての立ち居振る舞いというところで、「こんなにできるのになんで自信がないんだろう?」ってずっと思っていて。そこで今回は2人を野に放ったわけです。そこで一番変わったのがMaoだと思うし、今回で自信がついたのかそれとも出しどころがなかったものが出てきたのかはわからないけど、1つのトピックとしてすごく良かった。

――一方でHisayoさんはいかがでしたか?

阿部寿世(以下、Hisayo) 去年のツアーではsatさんがいる安心感や、何かあっても頼れるという状況が常にあったのに対して、今回はMaoちゃんとのコミュニケーションも必然的に増えて、自分たちで考えることや自分たちでアクションを起こすという、誰にも甘えられない状況で頑張ってステージやっていくという経験を積むことができました。歌やダンスもそうですけど、お客さんとの一体感というものを毎ステージ考えて、以前からsatさんもよくおっしゃっていた、“お客さんとの心の対話”や距離感というものを意識して、「誰1人置いていかないぞ!」という気持ちで挑んだステージでした。

sat ライブハウスじゃないとできないコミュニケーションっていうのがあって。会場が大きくなるとお客さんとも距離が遠くなるし、ホールはホールで難しさがある。でもその第一歩として、ライブハウスというのは彼女たちにとって成長の場だったんですよね。最初に第3期fripSideとしてお披露目したときは、ありがたいことにさいたまスーパーアリーナだったわけでしょ?逆に僕やnaoさんはそれこそライブのお客さんが3人の頃からスタートしているわけで。3人から1万人になるのと逆で、1万人から150人になるのってプロセスとしては変に感じるけど、それをやらないとまたあの大舞台に自分たちの力で辿り着くことが到底できないんじゃないかって思う。だから2人にはnaoさんや南條(愛乃)さんが経験してきたようなステップアップを経験してほしかったんです。僕たちが経験してきたようなことを2人にも経験してもらって、3年、5年経ったときに「すごいアーティストになったな」って言われてほしいんです。だから僕もそこは、叩かれても曲げずにやっていきたい。俺だってライブハウスでやるの好きだしさ(笑)。

――satさんも我慢して2人に任せていた部分はありますよね。

sat 鹿児島公演とか観に行ったんですけど、2人がアンコール前にメイク直しや着替えている最中、「俺出ちゃおうかな?」ってウズウズしちゃってスタッフが必死に「satさん、我慢、我慢」って。やっぱりまだまだ、僕からするともっとお客さんと濃密な時間を過ごして欲しいとか、こうすればもっと楽しいのに、とかって部分は見ててどうしてもありましたからね。

3人が色んな提案や判断をして、総合的な戦力が上がった(sat)

――そんな2人が夏のツアーのなか、satさんは『infinite Resonance 2』の制作に入っていたわけですが、satさんがツアーでの2人の成長にある程度予測しながらの制作だったわけですか?

sat 予測はできないんですよ。これはスポーツ選手と一緒で、来年の今頃どんな成績を出してるかなんてわからないですよね。ただ、僕が考えてるよりもこの1年で2人とも大きく成長しましたよね。2人を選んで心底良かったなと思っています。

――結果として予測を上回る成長を遂げていたと。

sat 2人とも、歌は当然上手い。だけどこのツアーを経て表現力がついた。あと提案ができるようになってきたんですよ。僕がアウトプットした曲に対して「私はこう歌おうと思うんですけど、どうですか?」とか「これってこういうことですよね?」って先回りができる。だから『infinite Resonance』と『double Decades』のときはこっちが「こうしてくださいね」って言ったことに対してやってもらうという感じだったけど、今回は違うんです。僕たちの解釈や提案というものが織り込まれたアルバムになった。これは2年目の目標でもあったんです。

――ちなみにレコーディングはツアーから時間を置かずに行われたんですよね?

sat ほとんどがそうですね。なので2人とも疲れきっていたはずなんですよ。でもそういうときに、色んな提案や色んな歌い方ができていて。ある種余裕ができていたんでしょうね。レコーディングというものに対して背伸びして、120くらいで臨まないといけなかったものが、100に下がり80に下がり、その余分で事前に自分で考えたり、レコーディングで自ら色んな提案をしてくれるようになったんですよね。

Mao 昨年出したアルバムのタイミングは、そのときのライブやアルバムに全集中で、そもそもレコーディングをどうやってやったらいいのか?みたいな不安があって、まだ掴みきれていないまま求められたことをやるというところに必死になりすぎていたんです。でも今年は、ツアーで2人だけでステージに立たせてもらったことで、「自分から何かをやらなきゃ」というところと、「やってもいいんだ、遠慮しなくてもいいんだ」という気持ちが強くなってきて。遠慮せずにぶつかってもいいからそのまま提案してみて、ぶつかったらぶつかったでそのとき考えようって、積極的な気持ちが乗っかったなと思っています。

Hisayo やっぱりツアーを回っていざアルバムのレコーディング始まるってなったときに、改めてレコーディングについて自分の意見や、satさんが言った提案をMaoちゃんともすり合わせできました。

sat 相乗効果を2人で話し合って狙っているのがわかるんですよ。レコーディングは順番に歌うんだけど、先にやったほうが「あっちがこう歌ったから私はこう歌う」とか「こう歌ってるところに私がこうハモをつけて合わせていこう」とかアジャストと変化というのが段階を経ずにできるようになってきた感じはある。

――そうした成長というものがアルバムにもしっかり封じ込められていると思います。アルバム冒頭の「Invisible Wings」から「Red Liberation」への流れは特にそれを感じられて、また2人の表現力に深みが出た一方で、サウンドの大きさや緻密さというものも如実に感じられるようになったといいますか。

sat 2期の後半から、高音質やサウンドのキレ、クリアさ、音の像もはっきりとしようと思っていて。音って色んな解釈があるんだけれども、この5年で同じことを良くしようと取り組んできたんですよ。2人のボーカルもその一端を担ってくれているのかな。ボーカルレコーディングの音質も、マイクを立てる瞬間から相当こだわってレコーディングしているので、2人の声もよく録れてるんじゃないかなと思います。それでいうと『infinite synthesis 6』より『infinite Resonance』や『double Decades』のほうがいいし、今回は去年の2枚よりもいいし、というところでは進化できていますね。そこは2人をボーカリストに選んだときにすでにテーマとしてあって、楽曲のクオリティを高めてくれるボーカリストというのが大命題でした。

――まさにサウンドとボーカルが共鳴しながら一体となる音楽といいますか。そこはボーカルのお2人も感じているところですか?

Mao Hisayoとコミュニケーションをよりとるようになって、語尾の歌い方でも、この音は真っ直ぐに歌いたいのか上げて歌いたいのか、そういった細かいところを擦り合わせできたからこそ、より足並みが揃った感じは今回のアルバムで見えてるかなと思いますね。逆に1人1人で歌うところに関しては、「私はこう歌いたいけど、きっとHisayoはこう歌うんだろうな」みたいに、2人が変に寄せ合わないようにみたいなところも意識をしていますね。

sat そこは3人それぞれがそうだったんだと思う。各々色んな提案や判断をして、総合的な戦力がちょっと上がったかなという。『infinite Resonance』、“無限の共鳴”というタイトルにしたのはそういうことで、『1』よりも『2』、じゃあ『3』になってその共鳴がもっと上がるといいなとは思っています。

――その共鳴というテーマは、アルバムであるとより出やすい環境にありますよね。

sat タイアップじゃない曲というのはフリーテーマで作るわけなので、フリーテーマで作った作詞、作編曲に対して、フリーテーマで歌ったら完全フリーになるわけですよ。そこでどういうものができるかというのは1つの物差しにあるかな。そういった方向性を僕だけじゃなくて、3人が決めるものというのが増えましたね。

――ソングライティングという面でも、サウンドのビッグさの一方で、例えば「Freezing rain」などメロディがより研ぎ澄まされてきたかなと。

sat いやあ、まだまだ書けるね(笑)。今回も1期2期のセルフカバーが入っているんだけど、昔書いたメロディってやっぱり今の自分とは違うんだよね。それをまた調和させるアルバムワークっていうのがちょっと大変だったかな。2人ともよく歌ってくれまして。

次ページ:私たちが成長できた状態で、3人での完全体というfripSideを見せる(Hisayo)

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