今、絶対に注目しておくべきバンドがいる。その名前はAliA(アリア)。AYAME(Vo)、EREN(Gt)、RINA(Vn)、TKT(Key)、SEIYA(Ba)による5人組ハイブリッドロックバンドだ。代表曲「かくれんぼ」がTikTokなどのSNSで人気を集め、YouTubeの再生数は5,000万回以上を記録。ボーカルのAYAMEは、俊龍による音楽プロジェクト・Sizukにフィーチャリングシンガーとして参加していることもあり、すでに知っている人も多いはずだ。
そんなバンドの新曲「あいことば」は、陽キャ女子×陰キャ男子の凸凹カップルが織りなす青春ラブコメTVアニメ『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。』(以下、『キミゼロ』)のEDテーマとして書き下ろされた、ピュアなフィーリングに満ちた甘酸っぱくも清々しいミディアムバラード調のナンバー。実はアニメやゲーム作品からインスパイアを受けることも多いという彼らが、本楽曲に込めた想い、そしてアニメの魅力についてたっぷりと語る!
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――新曲「あいことば」はTVアニメ『キミゼロ』のEDテーマになりますが、AliAとアニメの接点をさかのぼると、以前にも「limit」という楽曲がWEBアニメ 『異能のアイシス』のOPテーマに使われていましたよね。
EREN そうですね。ただ、あれは書き下ろしで作ったわけではないんですよね。
SEIYA ゼロから作品にインスパイアされて楽曲を制作すること自体、今回の「あいことば」が初めてになりますね。「realize」(ドラマ「火村英生の推理2019」主題歌)も元々あった楽曲を使ってもらったので。
EREN ただ、僕らは普段からアニメをイメージして楽曲を書くことが多いので、作品に向けて楽曲を書くこと自体には慣れているんです。それこそ自分は『ヒロアカ(僕のヒーローアカデミア)』が好きなので、そこから刺激を受けて作った楽曲もあったりして。たまにYouTubeのコメント欄で「この楽曲、〇〇(作品名)っぽい」って当てている人がいるのを見ると「伝わってる!」と思いますね(笑)。しかもそれが1~2人とかの人数ではないので、作品に向けて楽曲を書く力はあると思います。
SEIYA 別に作品を観て「これに合わせた楽曲を作ろう」という感じではなくて、制作のときにみんなで「最近このマンガとかアニメ面白くない?」みたいな話をすることが多くて、そういう話がそのとき作っている楽曲に影響を与えることがよくあるんです。
――ということは、今回のアニメタイアップのお話は待望だったのでは?
AYAME めっちゃ嬉しかったです!
EREN とはいえ、アニメのタイアップであれば何でもよかったわけではなくて。AliAとしてやる意味が必要だと思うし、僕は好きなアニメもあれば、あまり好みじゃないアニメもあるので。
――以前、Sizukの取材でAYAMEさんにお話を聞いたとき、AliAのメンバーは全員アニメ好きと伺ったことがあります。せっかくなので皆さんの好きなアニメについて教えていただけますか?
EREN 僕は食わず嫌いせず幅広く観るようにしているのですが、そのなかでも人気になる作品には面白さが詰まっているなと思っていて。『ヒロアカ』や『ONE PIECE』といったジャンプ系の作品や、新海 誠さんや細田 守さんの映画のように、人の心の動きが感動的に描かれている王道の作品が好きです。あとは『シュタゲ(STEINS;GATE)』みたいにストーリーが面白い作品や、いわゆるレジェンドアニメと呼ばれる作品、例えば『涼宮ハルヒの憂鬱』や『まどマギ(魔法少女まどか☆マギカ)』が入り口にあったりします。ほかにも映画並みのクオリティの作品、アニメだから観ることのできる世界が広がっている濃い作品も好きですね。『鬼滅の刃』や『進撃の巨人』『メイドインアビス』……これ、話し始めると長くなりますね(笑)。
TKT 今、俺たちが話す選択肢をだいぶ削ったからね(笑)。僕が一番好きな作品は『ONE PIECE』なんですけど、アニメにハマったきっかけは『化物語』です。『化物語』は見せ方を含めて普通ではない表現の仕方が多い。セリフばかりが続くシーンも、上手いこと画で表現しているのがすごく良くて、ハマりましたね。
RINA 私も『化物語』はめっちゃ好き!私は王道の作品も好きだし、ちょっとマニアックな作品やダークファンタジーものもよく観ています。『メイドインアビス』も大好きだし、あとは『文豪ストレイドッグス』みたいにミステリー要素が入っている作品、深いところまで描かれていて考察できるような作品も好きですね。
AYAME 私は基本的に主人公が圧倒的な作品が好きですね。でも、昔は『ONE PIECE』以外のアニメを観たことがなかったくらい、アニメとはあまり縁がなかったんです。それがAliAと出会って、初めてERENくんの家に行ったときに教えてもらったのが『ヒロアカ』で。そこからアニメがめちゃくちゃ好きになって、死ぬほど漁るようになりました。私はAliAのおかげで、アニメという青春を謳歌するようになったんです(笑)。
SEIYA そういえばみんなで(『ヒロアカ』を)観たなあ。
RINA 『リゼロ(Re:ゼロから始める異世界生活)』にもハマっていたよね。
AYAME すっごくハマった(笑)。あと、私は小中学生の頃にケータイ小説とか少女マンガを読むのが好きだったので、今はその延長線上で恋愛系のアニメにハマっていて。だから『キミゼロ』のお話をいただいたときもめちゃくちゃ嬉しかったんですよ。今ハマっているのは『わたしの幸せな結婚』で、ああいうきれいな恋愛作品が大好きです。
EREN 俺も観たよ。「旦那さま……」(『わたしの幸せな結婚』の主人公・斎森美世が、婚約者の久堂清霞を呼ぶときのセリフ)っていうやつだよね。
AYAME そう、清霞を観て「かっこいい……」とか思いながら、1人で楽しんでいる時間が好き(笑)。2人が恋心を抱きながら進んでいくのを観ているだけで幸せだなあって。今回の『キミゼロ』もそうですけど、やっぱり私は少女マンガを読んで育ってきたので、心をくすぐられるものがあるというか、「こんな恋愛がしたかったなあ」ってなるんですよね(笑)。
SEIYA 僕は好みの系統で言うと『PSYCHO-PASS サイコパス』『Fate/Zero』『86―エイティシックス―』みたいに、残酷な世界で主人公たちがそれに抗って生きるような世界観の作品が好きですね。AliAの楽曲に、AYAMEが歌詞を書いた「impulse」という楽曲があるんですけど、自分自身もああいう“なにくそ感”で生きてきたところがあるんですよ。「バンドでのし上がってやる!」という気持ちが強いので、そういう気持ちに共感できる主人公のアニメをよく観ていました。
AYAME めっちゃわかる!
SEIYA それがベーシックとしてありつつ、AliAを始めてからは、メンバーに薦められて、人と人の心の繋がりを描くような作品を観るようになりました。アニメというのは、厳しい環境の中での人の心も描かれるし、優しい世界での人の心の強さも描かれるから、ジャンル的にはバトルものから恋愛ものまで色々あるけれど、“人の心”という部分は共通していると思うんですよね。以前の僕は、かたくなに『君の名は。』を観ないようにしていて……。
TKT でも、僕らが「SEIYA、これは絶対に観た方がいいから」って説得して観せたんですよ。
EREN うちに呼んで、部屋を暗くして、僕が持っているちょっと高めのゲーミングヘッドホンを付けさせて。
SEIYA そう、イスに座らされると、目の前に画面があって、ヘッドホンを付けさせられて(笑)。それを観たのも、そのときに制作していた楽曲があって、ERENに「この新曲で伝えたい想いは、この作品を観てもらったら伝わると思うから」って言われたからなんですよね。メンバーそれぞれ影響を受けてきたものは違うけど、実際にみんなが感化されてきたクリエイティブな作品に触れると、「こういう想いも素敵だな」と感じるし、お互いの共通言葉になるんですね。それまで言葉では伝えられなかった感覚も、「この作品のこういう感じだよね」ということをキーワードにして、新曲やライブに落とし込むことができる。アニメを通してコミュニケーションのワードが増えた感覚ですね。
――アニメを共通言語にして、楽曲やライブのイメージを擦り合わせていく。面白いですね。ちなみにAliAの音楽性において、アニメ音楽から影響を受けている部分はありますか?
EREN 楽曲に関しては僕が中心に制作しているのですが、僕はいわゆる“アニソン”と言われるものをあまり通っていなくて。でも、近年は、音楽アーティストとアニメ作品の掛け算で作られる楽曲が増えてきていると思うし、そういう楽曲はすごく良いなと思います。例えば『東京喰種トーキョーグール』は、TK(TK from 凛として時雨)さんの「unravel」があったから作品がさらに素敵になったと思うし、逆にアニメがあったからあの楽曲もさらにエモくなったと思うんですよね。あとは『機動戦士ガンダムUC』でも、澤野弘之さんの作る強烈な音楽があるから、「ユニコーン!」っていうセリフがさらに熱いものになったと思いますし。そういう関わり方としての音楽には影響を受けています。
SEIYA 僕はAliAを始める前から澤野さんの音楽が個人的に好きで、劇伴に興味を持つようになったのが『ギルティクラウン』という作品だったんです。僕はsupercellとEGOISTも大好きなんですけど、その主題歌とは別に劇中で流れるかっこいい音楽を聴いて「これは何なんだろう?」と思ったんですよね。それが「βios」という楽曲だったんですけど、当時はまだ今ほど澤野さんの情報も多くなかったし、しかも澤野さんはサントラの曲名に変わった文字を使うので、検索しづらくて(笑)。そのときからアニメの中で流れる音楽を作っている人のことも意識して掘り下げるようになって、その後にAliAのメンバーと出会って、そういう好きな音楽の話で共感し合う感じでしたね。
――アニメの音楽もバンドの共通言語の1つとしてあったわけですね。
SEIYA (ERENは)AliAを結成するときから、久石 譲さんやジブリの音楽のことを話していたので、「なんか壮大なことをやろうとしてるなあ」と(笑)。でも、その話で意気投合した部分があったんですよね。
EREN 「キングダム ハーツ」の音楽とかね。
SEIYA そうそう、スタート画面の音楽とか、トワイライトタウンの音楽がエモいんだよね、みたいな話をして。
AYAME 始まった……!
EREN 「俺の夏休み――終わっちゃった」(「キングダム ハーツII」の登場キャラクター・ロクサスのセリフ)からの……。
EREN・SEIYA トゥールルルー♪(同シーンで流れるBGM「Roxas」のメロディを口ずさむ)。
EREN これなんですよ。これがノスタルジーなんですよね(笑)。
SEIYA 音楽を聴いて情景が浮かんだり、その場面の登場人物の気持ちになれるのが良い作品だと思っています。ジブリの音楽も聴けば、みんな同じ気持ちになれるじゃないですか。
――アニメやゲーム作品を共通言語にするのがどういうことか、今のやり取りでわかった気がします(笑)。あともう1つ、アニメに絡めて聞きたいことがありまして。AliAの代表曲「かくれんぼ」は、TikTokなどでアニメのMAD動画に合わせて使われることが多いですが、あのバズについて皆さんはどのように受け止めていますか?もちろん意図して狙ったわけではないと思うのですが。
EREN 元々アニメの豊かさや疾走感、青春感みたいなものを表現した楽曲なので、結果的に意図してああなった部分もあると思います。きっとそういう部分をアニメ好きの方が感じ取って、ああいう使い方をしてくれたんだと思うんです。だからアニメに対する強い想い、僕らの熱量が伝わっているということなんですよね。
TKT 歌詞は僕が書いたんですけど、それこそ色んなアニメを意識して書いたんですよ。だからこそ色んなアニメの場面に合うんだと思うし、そうやって作ったから今、こういう形になっているんだと思います。
SEIYA 僕らは楽曲に込めた想いや景色を伝えるために、ジャケットやMVも作っていて。最初のYouTubeのコメントの話もそうですけど、聴いてくれる人がその熱量を汲み取ってくれるんですよね。それは自分たちの想いは届くということの指標にもなるし、これからも余計な策を考えたり時代に合わせることなく、シンプルに自分たちが作りたいものを作っていけばいいんだなって思います。
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