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REPORT

2023.11.04

“君”と“僕”の出会いを喜び合い、fhána とともに“憂鬱の向こう側”へ――「fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”」レポート

“君”と“僕”の出会いを喜び合い、fhána とともに“憂鬱の向こう側”へ――「fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”」レポート

fhánaのメジャーデビュー10周年を記念したスペシャルライブ「fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”」が、10月7日、東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催された。約3時間、全23曲(メドレーで披露された楽曲をカウントに入れると全26曲)のミュージックジャーニー。そこにはバンドがこれまで辿ってきた歩みと、大きな転換期を経て新体制としての意欲に満ちた今この瞬間、そしてこの先に向けた期待のすべてが詰まっていた。彼らが事前に宣言していた通り、“fhánaの過去・現在・未来を祝福する”特別な一夜の記録を、ここにお届けする。

TEXT BY 北野 創

音と光が織り成す圧倒的な光景!fhánaのライブバンドとしての凄み

ライブは、バンドのこの10年の軌跡を辿るオープニングムービーで幕を開けた。ステージ前面に大きく張られた紗幕に投影される、fhánaがメジャーデビューから積み重ねてきた珠玉の作品たちのタイトルと共に辿る彼らの歩み。その時間の厚み、バンドが様々なタイアップ作品やふぁなみりー(※fhánaのファンネーム)と出会うことで築き上げてきたキャリアの歴史が、改めて実感される。そして紗幕が上がると、ほぼ暗闇のステージに、ランタンのような灯を持った佐藤純一(Key、Cho)が姿を現す。彼は薄暗いステージを慎重に進みながら、やがてキーボードの置いている場所まで辿り着き、静かに音を奏で始める。その優雅な音色が紡ぐのは「Outside of Melancholy 〜憂鬱の向こう側〜」のメロディ。彼らのライブでは欠かせない楽曲だ。そこに同じく灯を手にしたkevin mitsunaga(サンプラー、etc)が現れて、グロッケンの演奏で加わり、楽曲がサビの部分に至ると、towana(Vo)もまた灯を携えて登場。いつもとは違うピアノと鉄琴だけの簡素だが美しいアレンジ、3人だけの演奏と歌が、新しいfhánaの世界へと誘う。

そしてストリングスの流麗なイントロが鳴り響き、ステージが一気に明るくなると、旅の始まりを告げる歌「World Atlas」がスタート。ギターに中西(HoneyWorks)と本多 秀(インナージャーニー)、ベースに前田恭介(androp)、ドラムスに河村吉宏という、新体制のサポートメンバーと共に奏でる躍動感に満ちたサウンド、そしてtowanaがフラッグを片手に振りながら響かせる伸びやかなハイトーンボイスによって、世界は光に包まれる。オーディエンスもクラップしたり、グッズのフラッグを左右に振ったりしながら、お互いの“出会い”を祝福し合うかのようだ。そのゆったり心地良いグルーヴから、アップテンポな「コメットルシファー 〜The Seed and the Sower〜」で一足飛びにギアを上げると、間髪入れず「tiny lamp」に突入。ツインギター編成によってたくましさを増したバンドサウンドが、会場に爽やかな熱気を注いでいく。そして現時点での最新シングル「Runaway World」へ。fhána史上最もロックと言っても過言ではない本楽曲が、バンドのタフな演奏、観客による盛大なクラップとコールによって、完全無欠のロックアンセムへと変貌していく。サビ後半の“君を守ると決めたら チカラが沸き上がるよ”のフレーズではkevinと共に観客も大合唱し、towanaのひと際パワフルな歌声とラリーの応酬。元々熱い楽曲ではあるが、ライブでの化けっぷりに驚かされてしまった。

ここで佐藤の簡単な挨拶を挿み、「今日は最後までfhánaの音楽の旅をお楽しみください」と告げると、早々に次の楽曲「いつかの、いくつかのきみとのせかい」へ。ステージ後方の幕が上がって大きな照明装置が姿を現し、光の演出と共に優しくもどこかセンチメンタルな景色を広げていく。さらにドラムの4カウントから始まったのが、バンドのメジャーデビューを飾った1stシングル表題曲「ケセラセラ」。その切なく胸を締め付ける旋律、towanaの可憐なパフォーマンスが、甘やかな気持ちを呼び起こす。そして「僕たちがメジャーデビューする前、10年以上前に作ったこの曲を聴いてください」(佐藤)との言葉に続いて、今夏にリリースされた10周年ベストアルバム『fhána Best Album「There Is The Light」』にて新録された「true end」を披露。シリアスな響きを持ったこの楽曲、今回のライブでは特に照明演出による魅せ方が素晴らしく、まるでバグったように激しい明滅を続けるライトが、誰にも抗うことのできない時間の奔流を思い起こさせるなか、ステージ中央で直立して歌うtowanaの姿が、“時の河”を超越してそこに在り続ける存在のようで、圧倒的な世界観を作り上げていた。

続く「現在地」では、佐藤もギターを手にしてトリプルギター編成に。towanaが佐藤のそばに近寄って向き合いながらパフォーマンスする一幕も。そこから「little secret magic」に雪崩れ込み、さらにアグレッシブさを増したギターサウンドが会場のボルテージをさらに引き上げる。そのロックの衝動全開なパフォーマンスに、ライブバンドとしてのfhánaの新たな一面を見ることができた。ちなみに「現在地」と「little secret magic」はどちらもfhánaのギタリストだった元メンバー・yuxuki wagaが作曲した楽曲。彼の楽曲を含めたうえで10周年ライブを組み立ててくれたことに、嬉しさを感じたふぁなみりーも多かったのではないだろうか。

その後のMCパートで、この10年を歩んでこれたのは、ふぁなみりーの支えがあってこそと、改めて感謝の気持ちを言葉にして深くお辞儀するメンバーの3人。そしてここからはバンド史上初の試みとなるメドレーへ。まずはミラーボールが七色の光を投げかけるなか「虹を編めたら」をワンコーラス披露すると、続いてライブの鉄板曲「Hello! My World!!」で客席からクラップと「ヘイ!ヘイ!」という熱い掛け声を引き出し、「ワンダーステラ」では赤色のライトが鮮烈な景色を描くなか激しくも美しい音を叩きつける。それらシングル表題曲の連打に続く形で、towanaとkevinの2MCによるラップチューン「GIVE ME LOVE〜fhána Rany Flow Ver.〜」をドロップ。この10年でラップもこなすライブの盛り上げ隊長となったkevinが楽しそうにステップを踏む姿につられてこちらも思わず笑顔になってしまう。その流れでバンドメンバーの紹介となり、各々がファンキーなソロを披露すると、ラストはkevinがラップをかまして「Say Ho!」「Say fhána!」「Say ふぁなみりー!」とコール&レスポンスで盛り上げる。

そんな賑やかなメドレーから繋がるように、煌びやかなイントロに導かれて始まったのは「Relief」。メンバー紹介の間に衣装を着替えてステージに戻ってきたtowanaが、4つ打ちの高揚感溢れるリズムとエモーショナルなサウンドに乗せて、しなやかで力強い歌声を会場全体に響き渡らせる。さらに楽曲とシンクロした照明演出の美しさ。fhánaのライブは以前から照明に対する深いこだわりが感じられたが、今回のライブのサブタイトルが“There Is The Light”だったことからもわかるように、この日は新たな次元に突入した印象で、特に「Relief」での音と光が織り成すスペクタクルは、筆舌に尽くしがたいものがあった。

その音と光の果てに連れていかれるような圧倒的な体験から休まる暇もなく、そこからシームレスに「愛のシュプリーム!」に突入。kevinが再びマイクを握ってステージ前に躍り出すと、towanaとスピーディーな掛け合いラップを畳みかけてオーディエンスを煽情。サビではkevinのダンスに合わせて観客も踊ってLINE CUBE SHIBUYAがダンスフロアに早変わりする。至上の愛に溢れたステージングで沸くなか、kevinが「皆さん、まだ元気はありますよね!一緒に“chu chu yeah!”してもらっていいですか?」と呼びかけて、今やfhánaの一番の代表曲となった「青空のラプソディ」へ。誰もが期待していたであろう最高の流れに会場は大興奮。kevinがステージ狭しと動き回って煽るなか、サビではお馴染みの振付をみんなで踊り、Dメロでは掛け声やクラップで熱狂する。この日一番と言える盛り上がりと一体感が、幸福な景色を作り上げた。さらに続けてダメ押しとばかりに「divine intervention」を披露。バンドの鋭くも疾走感溢れる演奏と同期して瞬く青いライトの鮮烈さ、これだけのエネルギッシュかつ高難度な楽曲を立て続けに歌唱しても、まるで疲れを感じさせないどころか、さらに眩しさを増していくtowanaのクリアボイス。圧巻とも言えるパフォーマンスに、fhánaの地力を感じ取ることができた。

fhánaとふぁなみりーの光に溢れた未来、10周年の先に待っているもの

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